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電力 ・ 11 / 16

配電方式(単相2線式〜三相4線式)

読み終えると、こうなる

受変電設備や配電盤の配線を見て、単相か三相か・中性線があるかないかを見分け、その方式が選ばれた理由(コスト・用途)を説明できるようになる

  • 単相2線式・単相3線式・三相3線式・三相4線式を、電線の本数と中性線の有無で見分けられ、三相4線式が使われる典型的な場面(単相・三相混在負荷への対応)も挙げられる
  • 単相3線式が単相2線式より電線材料を節約できる理由を、線路損失一定の条件から自分で計算して示せる
  • 単相3線式の中性線が欠相(断線)したときに、どちら側の電圧が上昇し危険なのかを判断でき、あわせて不平衡電流を均等化するバランサの働きと、接続前後の電流・線路損失の変化を計算できる
  • 高圧配電系統の放射状方式・ループ方式・スポットネットワーク方式の違い、および柱上開閉器・高圧カットアウトが配電線路のどこで何を切り離すための機器かを説明できる。あわせて低圧配電系統の構成(放射状方式・バンキング方式・低圧ネットワーク方式)の違いと、バンキング方式特有のカスケーディング現象・保護協調、地中配電線路と架空配電線路を比較したときの得失も説明できる
考えてみよう

分電盤を開けると、家庭用の100V回路につながる電線は2本なのに、エアコン用の200V回路には 3本つながっていることがある。工場の動力盤に行けば、今度は3本や4本の電線が束になっている。

なぜ配電方式ごとに電線の本数が違うのか。100Vと200Vを同じ配電方式から同時に取り出せる 仕組みはどうなっているのか。

このトピックを読み終えるころには、受変電設備や配電盤の配線を見て、単相か三相か・中性線が あるかないかを見分け、その方式が選ばれた理由(コスト・用途)を説明できるようになっている。

配電方式の違いは、電線の本数と、中性線(基準となる0V側の電線)を持つかどうかで整理すると 見通しがよくなる。

単相2線式 — 最も単純な、電線2本の方式

電源側の2本の電線(行きと帰り)だけで負荷に電力を送る、最も基本的な方式。一般的な家庭用の 100V照明・コンセント回路に使われる。構造は単純だが、大きな電力を送ろうとすると電流が増え、 太い電線が必要になるという弱点がある。

単相3線式 — 中性線を挟んで、100Vと200Vを同時に取り出す

2つの100V回路を、1本の中性線(N線)を共有する形でまとめた方式。外側の2本の電線(L1・L2) の間からは200V、それぞれの電線と中性線の間からは100Vが取り出せる。家庭の分電盤で、 照明・コンセントは100V、エアコンは200Vという使い分けができるのはこの方式のおかげだ。

平衡負荷(L1側とL2側の電流が等しい状態)では、中性線に流れる電流は理論上0Aになる。 しかし実際の負荷は完全には平衡しないため、中性線にはL1とL2の電流の差が流れる。

なぜ単相3線式は電線材料を節約できるのか

単相2線式で100V・2000Wを送るには、電流 I1=2000/100=20I_1 = 2000/100 = 20A が、往復2本の電線に流れる。

これを単相3線式で、同じ2000Wを2つの100V回路に均等に分けて送ると、1回路あたりの電流は I3=1000/100=10I_3 = 1000/100 = 10A に半減する(平衡負荷なら中性線の電流は0A)。

線路損失は電流の2乗に比例する(W=I2rW = I^2 r)ため、電流が半分になれば、同じ損失に収める うえで許容できる抵抗(=電線の断面積の逆数に比例)は4倍まで広げられる。つまり、 必要な断面積は単純な半分ではなく、1/4で済む。

電線3本の材料量=3×14=0.75,単相2線式(2本、断面積1)との比=0.752=0.375\text{電線3本の材料量} = 3 \times \frac{1}{4} = 0.75,\quad \text{単相2線式(2本、断面積1)との比} = \frac{0.75}{2} = 0.375

中性線を電圧線と同じ太さと仮定しても、単相3線式に必要な電線材料の総量は、 単相2線式のわずか37.5% で済む計算になる。

「電流が半分だから材料も半分」という早合点に注意。損失は電流の2乗で効くため、 電流が1/2になれば許容抵抗は4倍、断面積は1/4——という2乗の関係を思い出せば、 37.5%という数字にも納得がいく。

三相3線式・三相4線式 — 中性線の有無で用途が変わる

三相3線式は、3本の電線だけで構成され、中性線を持たない。モーターなどの動力設備に多い 200V配電の標準的な方式だ。

三相4線式は、この3本に中性線を1本加えた方式。相線と中性線の間から単相負荷を、3本の相線 からは三相負荷を、同じ配電系統から取り出せる。単相・三相の負荷が混在する需要家に、 1系統の配電でまとめて対応できるのが最大の利点だ。

なぜ中性線の断線(欠相)が危険なのか

単相3線式は便利な反面、中性線が断線(欠相)すると危険な状態になる。中性線が切れると、 L1側とL2側の2つの負荷は、線間電圧(200V)の区間に直列に接続された状態になる。

これは、直流回路の分圧の法則で見た「大きい抵抗ほど多くの電圧を受け持つ」という関係と まったく同じ構造だ。消費電力の小さい(=抵抗が大きい)側の負荷ほど、より多くの電圧を 受け持つことになり、定格電圧を超える過電圧にさらされる。逆に消費電力の大きい側は電圧が 下がる。「軽い負荷のほうが安全なはず」という直感とは逆に、軽負荷側が過電圧で壊れる という点が、この事故の見落とされやすいところだ。

電材商社として配電方式を扱う実務では、単相3線式の中性線の健全性(欠相の有無)を確認する ことが、需要家設備を守るうえで軽視できないポイントになる。

バランサ — 単相3線式の不平衡電流を均等化する

中性線の欠相が「不平衡負荷が引き起こす事故」だったのに対し、バランサは、その不平衡 そのものを軽減するために線路の末端(負荷側)に接続する平衡装置だ。1:1の巻線比を持つ 小形の変圧器のような構造をしており、外側の2本の電圧線間に接続し、その中間点を中性線に つなぐ。

L1側とL2側の負荷電流が異なる(不平衡な)状態でバランサを接続すると、バランサの巻線が 両側の電流差を埋め合わせるように働き、電源側から見た2本の電圧線の電流はそれぞれL1・L2 電流の平均値にそろい、中性線に流れる不平衡電流はほぼ0に近づく。このときバランサの巻線 自体に流れる電流は、L1・L2の電流差の半分(I1I2/2|I_1-I_2|/2)にあたる。

例題

L1側に40A、L2側に24A(いずれも力率100%)の不平衡負荷が接続された単相3線式線路に、 バランサを接続する。

バランサの巻線に流れる電流は、

40242=8A\frac{|40-24|}{2} = 8\text{A}

接続後、電源側の2本の電圧線にはそれぞれ平均値 (40+24)/2=32(40+24)/2=32A が流れる。電圧線・中性線の 抵抗をいずれも0.25Ωとすると、線路損失(バランサ自体の損失は除く)は次のように変化する。

接続前:0.25×(402+242+162)=0.25×2432=608W\text{接続前:}0.25\times(40^2+24^2+16^2)=0.25\times2432=608\text{W} 接続後:0.25×(322+322+02)=0.25×2048=512W\text{接続後:}0.25\times(32^2+32^2+0^2)=0.25\times2048=512\text{W}

不平衡電流が均等化された分だけ中性線の電流が減り、線路損失も608Wから512Wへ、96W 減少する。

バランサは「電圧を上げる装置」ではなく「電流を均等化する装置」だと覚える。接続後は 電源側2本の電流がL1・L2の平均値にそろい、中性線の不平衡電流とそれに伴う線路損失が 減る、という一連の流れをセットで押さえておくと計算問題でも迷わない。

配電系統の構成 — 放射状方式とループ方式

ここまで見てきた単相2線式・単相3線式・三相3線式・三相4線式は、1本の配電線の中の電線の 構成の話だった。これとは別の視点として、変電所から需要家まで配電線路全体をどうつなぐか という系統構成にも、代表的な2つの方式がある。

放射状方式(樹枝状方式)は、配電用変電所を根元にして、木の枝のように分岐しながら末端の 需要家まで電気を送る、最も単純な構成だ。線路がシンプルな分、建設費は安く済む。ただし、 途中の区間で事故が起きると、その先(末端側)は電気の供給元を失い、まとめて停電してしまう。

ループ方式(環状方式)は、線路の末端同士を結合開閉器でつなぎ、環状(ループ)に 構成する方式だ。事故が起きた区間だけを両側の開閉器で切り離せば、残りの区間は反対方向からの 迂回路で電力供給を続けられる。停電範囲を事故区間だけに絞れるため信頼度は高いが、線路や 開閉器の数が増える分、放射状方式より建設費はかさむ。負荷密度の高い都市部など、停電の 影響が大きい地域で採用されやすい。

放射状方式とループ方式の関係は、保護協調の考え方(事故区間だけを切り離す)と発想が近い。 ループ方式は「迂回路をあらかじめ用意しておく」ことで信頼度を確保する構成、放射状方式は 「迂回路を持たない代わりに安く済ませる」構成、とコストと信頼度のトレードオフで捉えるとよい。

低圧配電系統の構成 — もう一段細かい「低圧幹線をどう引き出すか」の話

前節の放射状方式・ループ方式は、変電所から需要家までの配電線路全体(主に高圧側)を どうつなぐかという話だった。これとは別に、配電用変電所(または配電用変圧器)の 二次側から、低圧幹線をどう引き出すかという、もう一段細かい粒度の分類がある。

  • 放射状方式:配電用変電所(配電用変圧器)ごとに低圧幹線を1本引き出す、最も 単純な構成。構成が簡単で保守が容易なため、日本国内で最も広く採用されている。
  • バンキング方式:同一の特別高圧・高圧幹線に接続された2台以上の配電用変圧器の 二次側を、低圧幹線で並列に接続する構成。電圧降下を抑えつつ電力損失を減らし、 需要の増加にも融通性をもって対応できる。
  • 低圧ネットワーク方式:複数の特別高圧・高圧幹線から、ネットワーク変圧器・ ネットワークプロテクタを通じて低圧幹線に供給する構成。特別高圧・高圧幹線側が 1回線停電しても、低圧側の需要家には無停電で供給を続けられる、最も信頼度の高い 方式で、大都市中心部で実用化されている。
ここで登場する「放射状方式」は、前節で見た配電線路全体(変電所〜需要家)の系統構成 としての放射状方式とは**粒度が異なる**別の分類だと区別しておく。前節は「線路全体を どうつなぐか」、ここは「低圧幹線をどこから何本引き出すか」という、より狭い範囲の 話であり、同じ用語でも指している対象が違う点に注意する。

バンキング方式は複数台の変圧器を並列接続することで信頼度・融通性を高める構成だが、 弱点もある。低圧側に事故が生じて1台の変圧器が使用できなくなると、残りの変圧器に 負荷が集中して過負荷になり、ヒューズが次々と連鎖的に溶断して広範囲に停電を引き起こす おそれがある。この現象をカスケーディングと呼ぶ。

カスケーディングを防ぐには、変圧器どうしを連系する箇所に設ける区分ヒューズの 動作時間が、各変圧器の一次側に設けられる高圧カットアウトヒューズの動作時間より 短くなるよう保護協調をとる必要がある。区分ヒューズを先に溶断させて故障の影響を 連系区間の中だけに閉じ込めれば、健全な変圧器側への過負荷の連鎖を止められる。

カスケーディングは「バンキング方式の利点(融通性)と表裏一体の弱点」だと捉えると 覚えやすい。防止策は「区分ヒューズを高圧カットアウトヒューズより先に溶断させる」、 すなわち区分ヒューズの動作時間の方を短く設定する、という一点に尽きる。

スポットネットワーク方式 — 都心の高層ビル・大規模工場向けの、さらに信頼度の高い方式

放射状方式・ループ方式よりもさらに高い信頼度が求められる場面――負荷密度が極めて高い都心部の 高層ビルや、停電が許されない大規模工場の受電設備――には、スポットネットワーク方式という 配電方式が使われる。

スポットネットワーク方式は、特別高圧地中配電系統(22kVまたは33kV)から2回線以上で受電する 方式だ。特別高圧側から需要家側へ向かって、ネットワーク変圧器→プロテクタヒューズ→プロテクタ 遮断器→ネットワーク母線、という順に機器が並ぶ構成が一般的で、複数系統の受電回線をネットワーク 母線で並列に接続する。

このとき鍵になるのがプロテクタ遮断器(および直列に組み合わせるプロテクタヒューズ)だ。 特別高圧側の1回線で事故が起きても、プロテクタ遮断器がその回線だけを自動的にネットワーク母線 から切り離すため、残りの健全な回線からの受電を継続でき、需要家側は停電を経験しない。

スポットネットワーク方式を理解する鍵は「2回線以上を、母線の手前で自動的に切り離せる構成に している」という一点にある。ループ方式が『事故区間を切り離して迂回路から送る』方式だったのに 対し、スポットネットワーク方式は『複数回線が最初から並列に受電しており、事故回線だけを自動的 に切り離す』方式だ。同時に複数回線を使っているという点で、ループ方式よりもさらに高い信頼度を 実現している。

地中配電線路と架空配電線路の得失 — 何と引き換えに景観・信頼性を得るのか

ここまで見てきたスポットネットワーク方式は地中配電系統を前提にした方式だったが、そもそも 地中配電線路と、鉄塔・電柱に電線を張る架空配電線路を比べたとき、双方にどんな 得失があるのかを整理しておこう。

地中配電線路の最大の利点は、電柱・電線が地上から見えなくなることによる都市の景観向上 と、台風などの自然災害時や、車両・樹木などが電線に接触する他物接触による事故が少ない点 にある。地上の視界を電線が遮らず、強風で電線が切れる・電柱が倒れるといった事故のリスクも 架空配電線路より小さい。

一方で、地中配電線路には見過ごせない欠点もある。ケーブルを地中に埋設するための掘削工事 を要するため、架空配電線路と比べて建設費が高額になり、工期も長くなりやすい。また、 一度埋設した後に需要が増加しても、追加の掘削工事なしに設備を増強することは容易ではない。 さらに、地中送電線路の性質(本トピックの姉妹トピックで見た内容)と同じく、地中配電線路は 導体間の距離が近く対地静電容量が架空配電線路より大きいため、無負荷・軽負荷時に受電端 電圧が送電端電圧を上回るフェランチ効果の影響を受けやすい。

地中配電線路の得失は「掘削工事を要するかどうか」という1つの性質から、利点・欠点の両方が 連鎖的に生まれていると捉えると覚えやすい。掘削しない(地上に電線を張る)架空配電線路は、 安く・早く作れる代わりに、景観を損ない他物接触事故のリスクを抱える。掘削する地中配電線路は その逆で、景観・事故防止では優れるが、建設費・工期・増設のしやすさでは架空配電線路に劣る。 「地中配電線路はすべての面で優れている」と単純化しないよう注意する。

配電線路の開閉器類 — どこで何を切り離すか

配電線路には、事故時や作業時に電気を安全に切り離すための開閉器類が、線路のあちこちに 設置されている。役割ごとに整理すると次のようになる。

  • 柱上開閉器:配電線路の途中に設置され、事故時や作業時にその区間だけを切り離す 区分開閉器。気中形・真空形・ガス形などの種類があり、手動操作による手動式と、 制御器による自動式がある。前節で見たループ方式の結合開閉器も、この柱上開閉器の一種だ。
  • 高圧カットアウト:柱上変圧器の一次側に設置される開閉器。内蔵する高圧ヒューズが、 変圧器の過負荷時や内部短絡故障時、雷サージなどによる短時間大電流の通過時に溶断し、 変圧器そのものを保護する。
  • パッドマウント変圧器:地中配電系統で使われる、変圧器と開閉器などの機器を一体の 金属製箱の中に収めた機器。地上に設置しながら、内部の機器を保護しつつコンパクトに まとめられる構成になっている。
柱上開閉器は「線路の途中を区分する」ため、高圧カットアウトは「変圧器そのものを守る」ため、 と設置目的の違いで区別すると覚えやすい。線路の話か、個々の変圧器の話かで対象を切り分ければ、 名前が似た機器を取り違えにくくなる。

冒頭の「電線の本数がなぜ違うのか」の答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 単相3線式の中性線には常に電流が流れない、と思い込む

    なぜ引っかかる平衡負荷(2つの100V回路の電流が同じ)のときは中性線の電流は0Aになるが、実際の負荷は完全に平衡することはまれで、不平衡分の電流が中性線に流れる。断線したときの危険性を過小評価しがちになる。

    見破り方中性線の電流は「2つの回路の電流の差」であり、平衡度合いに応じて流れると考える。断線時は、2つの負荷が電源電圧いっぱいの区間に直列でつながる状態に変わる、という点を思い出す。

  2. 三相3線式と三相4線式の違いを「電圧の高さ」で覚えてしまう

    なぜ引っかかる実際の本質的な違いは中性線(N線)の有無であり、電圧の大小は方式の違いそのものではない。

    見破り方図の電線の本数を数え、中性線があるかないかで判別する。三相3線式は3本、三相4線式は中性線を加えた4本という数え方を基準にする。

  3. 単相3線式の材料節約効果を「電流が半分だから材料も半分」と単純に考えてしまう

    なぜ引っかかる電線の損失は電流の2乗に比例する(W=I²r)。電流が半分になっても、同じ損失に収めるために必要な抵抗(=1/断面積)は4倍まで許容できるため、断面積は単純な半分ではなく1/4で済む。

    見破り方損失一定の条件式 W=I²r を思い出し、電流が1/nになったとき許容抵抗はn²倍、つまり必要な断面積は1/n²になる、という2乗の関係を確認する。

  4. 放射状方式の方が「線路がループ状に張り巡らされている」、ループ方式の方が「単純な枝分かれ」だと、名前の印象と逆に覚えてしまう

    なぜ引っかかる「放射状」という言葉の響きから、放射状に広がる=複雑な網目状の構成を連想しやすく、実際には単純な樹枝状構成である放射状方式と、環状に結ぶループ方式のイメージが入れ替わりやすい。

    見破り方放射状方式は変電所から末端へ木の枝のように分岐していくだけの構成(樹枝状方式とも呼ぶ)、ループ方式は結合開閉器で線路の末端同士をつなぎ環状(ループ)にする構成、と図の形から思い出す。事故時にループ方式は迂回路が確保できる分、信頼度は高いが建設費もかさむ、という向きも合わせて覚える。

  5. バランサを『電圧を底上げする装置』だと誤解する

    なぜ引っかかる『バランサ』という名前から漠然と電力を補う機器のようなイメージを持ちやすく、電圧調整用の機器(SVRなど)と混同しやすい。

    見破り方バランサの役割は電圧を上げることではなく、L1側とL2側の不平衡な電流を均等化すること。接続後は電源側の2本の電流がそろい、中性線の不平衡電流と、それに伴う線路損失・電圧降下の不均衡が小さくなる、という『電流の均等化』が本質だと覚え直す。

  6. バンキング方式は変圧器を並列接続して信頼度を高める方式だから、故障時のリスクはむしろ小さいと思い込む

    なぜ引っかかる『複数台を並列接続して融通性が上がる』というバンキング方式の利点だけを覚えていると、1台故障時に他の変圧器へ過負荷が連鎖するカスケーディングという弱点を見落としやすい。

    見破り方バンキング方式の利点(電圧降下抑制・損失低減・需要増加への融通性)と、弱点(カスケーディングのリスク)は表裏一体だと捉える。弱点を防ぐには、連系箇所の区分ヒューズの動作時間を変圧器一次側の高圧カットアウトヒューズより短くする保護協調が必要、という対策までセットで覚える。

  7. スポットネットワーク方式とループ方式を、どちらも『事故時に停電範囲を抑える、信頼度の高い配電方式』という共通点だけで同一視してしまう

    なぜ引っかかる両方式とも高信頼度の配電方式として並べて紹介されることが多く、仕組みの違いを曖昧にしたまま同じものとして覚えてしまいやすい。

    見破り方ループ方式は『1本の線路を環状につなぎ、事故区間を切り離して反対側からの迂回路で送る』方式、スポットネットワーク方式は『最初から複数回線を並列に受電しており、事故回線だけを自動的に切り離す』方式、という仕組みの違いに立ち返る。対象とする需要規模(面的に広がる配電系統全体か、1需要家への集中受電か)も異なる。

  8. 地中配電線路は建設費が高い分、あらゆる面で架空配電線路より優れていると思い込む

    なぜ引っかかる『高額=高性能』という単純な発想で、景観向上・事故の少なさという利点だけを見て、地中配電線路特有の欠点(需要増加への設備増強のしにくさ、フェランチ効果の影響の受けやすさ)を見落としやすい。

    見破り方地中配電線路の利点(景観・他物接触事故の少なさ)と欠点(建設費・工期・設備増強のしにくさ・フェランチ効果の影響)を、それぞれ別の観点として並べて確認する。『掘削工事が要る』という1つの性質が、建設費の高さと設備増強のしにくさの両方の原因になっている、と原因を対応づけて覚えると混同しない。

参考文献・出典

理解度チェック(15問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、15問で確認しよう。 内訳は基本8問・応用3問・ひっかけ4問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 15 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 単相2線式は最も単純な配電方式。単相3線式は2つの100V回路を1本の中性線でまとめ、同じ配電方式から100Vと200Vを同時に取り出せる
  2. 単相3線式は、同じ線路損失の条件で比べると単相2線式よりも少ない電線材料で済む(後述の計算で37.5%になることを確認する)
  3. 三相3線式は中性線を持たず、動力(モーター等)向けの配電に使われることが多い。三相4線式はこれに中性線を加え、単相負荷と三相負荷を同一系統から供給できる
  4. 単相3線式の中性線が欠相(断線)すると、負荷の小さい側の電圧が上昇し、負荷の大きい側は低下する——分圧の法則と同じ理屈で起きる危険な事故
  5. バランサは、単相3線式線路の末端に接続する平衡装置(1:1の巻線を持つ小形の変圧器)で、L1側とL2側の不平衡電流を均等化する。接続後は電源側の2本の電圧線に流れる電流がそれぞれ平均値(L1・L2電流の和の半分)にそろい、中性線の不平衡電流はほぼ0になる。バランサの巻線自体に流れる電流は、L1・L2の電流差の半分(|I1−I2|/2)に相当し、この均等化によって線路の電力損失も低減する
  6. 低圧配電系統の構成には、配電用変電所(または配電用変圧器)ごとに低圧幹線を1本引き出す放射状方式(構成が簡単で保守が容易、日本で最も広く採用)、同一の特別高圧・高圧幹線に接続された2台以上の配電用変圧器の二次側を低圧幹線で並列接続するバンキング方式(電圧降下・電力損失を抑え需要増加への融通性を高める)、複数の特別高圧・高圧幹線からネットワーク変圧器・ネットワークプロテクタを通じて低圧幹線に供給する低圧ネットワーク方式(1回線が停電しても無停電で供給できる最も信頼度の高い方式、大都市中心部で実用化)の3種類がある
  7. バンキング方式では、低圧側の事故で1台の変圧器が使用できなくなると、残りの変圧器が過負荷になりヒューズが次々と連鎖的に溶断して停電が広範囲に広がるカスケーディングという現象が起きる可能性がある。これを防ぐには、変圧器どうしを連系する箇所の区分ヒューズの動作時間を、各変圧器一次側の高圧カットアウトヒューズの動作時間より短くする保護協調が必要になる
  8. 高圧配電系統には放射状方式(樹枝状方式)とループ方式(環状方式)があり、ループ方式は結合開閉器で線路をつないで環状に構成するため、事故時に迂回して停電範囲を狭められる分、建設費は放射状方式より高くなる。柱上開閉器(気中形・真空形・ガス形)は配電線路の事故時・作業時にその区間だけを切り離す区分開閉器で、高圧カットアウトは柱上変圧器の一次側に設置され、内蔵する高圧ヒューズが変圧器の過負荷・内部短絡時に溶断する保護機器
  9. 都心部の高層ビルや大規模工場など、負荷密度が極めて高い大口需要家には、22kVまたは33kVの特別高圧地中配電系統から2回線以上で受電するスポットネットワーク方式が使われる。事故が起きた回線だけをプロテクタ遮断器(プロテクタヒューズと組み合わせて使われる)が自動的にネットワーク母線から切り離すため、需要家側は停電を経験しない、放射状方式・ループ方式よりもさらに信頼度の高い方式
  10. 地中配電線路は架空配電線路と比較して、電柱・電線がなくなることによる都市の景観向上と、台風などの自然災害時や車両・樹木などの他物接触による事故の少なさが利点になる。一方で、掘削工事を要するため架空配電線路より高額な建設費・長い工期がかかるほか、需要増加に応じた設備増強も掘削を伴う分だけ容易ではない。ケーブルの対地静電容量が架空電線路より大きいため、フェランチ効果(軽負荷時に受電端電圧が送電端電圧を上回る現象)の影響を受けやすい点も欠点として押さえておく
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