火力発電所の性能表に「熱効率41%」と書かれているのを見て、それが何を意味するか、 そして残りの59%がどこへ消えているのか、説明できるだろうか。
蒸気タービンを回すという一見単純な仕組みの中に、効率を1%でも上げるための工夫が 何重にも仕込まれている。
このトピックを読み終えるころには、火力発電所のパンフレットの数字から、 その裏にある仕組みと工夫を読み解けるようになっている。
種明かしは、火力発電が ランキンサイクル という閉じたサイクルで運転されており、 熱効率とはこのサイクルの中で「投入した熱のうち、どれだけを実際の仕事に変えられたか」の 割合だという事実にある。
火力発電の仕組み — ランキンサイクル
火力発電は、燃料を燃やして得た熱でボイラの水を高温高圧の蒸気に変え、その蒸気で タービンを回し、タービンに直結した発電機で発電する。タービンで仕事を終えた蒸気は 復水器で冷やされて水に戻り、給水ポンプで再びボイラに送られる——この閉じたサイクルを ランキンサイクル と呼ぶ。
熱源が燃焼であることを除けば、「高温高圧の蒸気でタービンを回す」という構造そのものは 汽力発電の基本形であり、後述する原子力発電とも共通する部分が多い。
熱効率の計算
熱効率は、投入した燃料の熱エネルギーのうち、どれだけを発電機出力として取り出せたかの 割合で、次の式で求まる。
は発電機出力[kW]、 は燃料消費量[kg/h]、 は燃料発熱量[kJ/kg]だ。3600という 係数は、[kW]で1時間発電したときの電力量[kWh]を、熱量の単位kJに換算するために 掛けている(1kWh=3600kJ)。分母のB×Hは、1時間あたりに投入した燃料の熱エネルギー[kJ/h]で、 分子の3600Pは1時間あたりに取り出せた電気エネルギー[kJ/h]にあたる。
例題
発電機出力50,000kW、燃料消費量15,000kg/h、燃料発熱量40,000kJ/kgの火力発電所の熱効率は 何%か。
所内率と送電端電力量 — 発電機出力がそのまま送電されるわけではない
熱効率の式で使った発電機出力Pは、発電機が「発生した」出力そのものだった。しかし発電所には、 給水ポンプ・送風機・各種補機など、発電所自身を動かすために使う電力(所内電力)が必ず 必要になる。発電機が発生した電力(発電端電力)から、この所内電力を差し引いた残りが、 実際に送電線へ送り出される送電端電力だ。
所内率は、発電端電力のうち所内電力が占める割合を表す。発電機出力が時間帯によって 変化する場合は、まず各時間帯の発電機出力[MW]に運転時間[h]を掛けて合計し、1日分の 発電端電力量[MWh]を求めたうえで、最後に(1−所内率)を掛けて送電端電力量を求める。
例題
定格出力300MWの火力発電所が、所内率3%のもとで次のように運転した。
| 時刻 | 発電機出力[MW] |
|---|---|
| 0時〜6時 | 100 |
| 6時〜9時 | 300 |
| 9時〜18時 | 250 |
| 18時〜22時 | 300 |
| 22時〜24時 | 100 |
まず各時間帯の出力×時間を合計し、発電端電力量を求める。
送電端電力量は、これに(1−所内率)を掛ける。
ボイラ効率・タービン室効率・発電機効率 — 総合効率を3段階に分解する
前節で計算したη=3600×発電端電力量/(BH)×100という熱効率は、燃料の熱が電気になるまでの 道のり全体を通した効率だ。この道のりは、実際には次の3つの段階に分けられる。
- ボイラ効率ηB:燃料の発熱量のうち、ボイラの中で水・蒸気が実際に受け取った熱の割合。 燃焼ガスの熱が煙突からそのまま逃げてしまう分などがロスになる。
- タービン室効率ηT:蒸気が持つ熱エネルギーのうち、タービンで軸の回転力(軸出力)に 変換できた割合。
- 発電機効率ηG:タービンの軸出力のうち、発電機が電気エネルギーとして出力できた割合。
この3段階を経て、燃料の熱は最終的に電気になる。つまり、これまで使ってきた熱効率 (発電端熱効率)は、実はこの3つの効率の積だったことになる。
タービン室効率・発電機効率がカタログ値などで分かっている場合、総合効率をこの2つの効率で 割り戻せば、直接測定しにくいボイラ効率を逆算できる。
例題
定格出力8000kWの重油専焼汽力発電所が20日間連続運転し、そのときの重油使用量は800t、送電端 電力量は3200MW・hであった。重油の発熱量を43000kJ/kg、タービン室効率を45%、発電機効率を 97%、所内率を4%として、このボイラ効率を求める。
まず発電端電力量を求める。
総合効率(発電端熱効率)を求める。
タービン室効率・発電機効率で割り戻し、ボイラ効率を逆算する。
タービン使用蒸気量の計算とボイラ内の設備構成
熱効率がサイクル全体の「投入熱に対する仕事の割合」を見る指標だったのに対し、タービンが実際に どれだけの蒸気を使って仕事をしているかを表すのが使用蒸気量だ。蒸気1kgが持つ熱エネルギーは エンタルピー[kJ/kg]という量で表され、タービン入口と復水器入口(=タービン出口)の エンタルピー差Δhが、蒸気1kgあたりタービンで取り出せる理論上の仕事にあたる。
はタービン出力[kW]、は使用蒸気量[kg/s]、はタービン効率だ。求めたGの単位はkg/sなので、 t/h(トン毎時)に直すには3600s/h÷1000kg/tを掛ける(=3.6を掛ける)。
例題
タービン出力126,000kW、タービン効率90%、タービン入口における蒸気のエンタルピーが3300kJ/kg、 復水器入口における蒸気のエンタルピーが2600kJ/kgであるとき、使用蒸気量は何t/hか。
ボイラの内部では、水・蒸気の系統と燃焼ガスの系統が、それぞれ別の経路で主要設備を通過しながら 熱をやり取りしている。
水・蒸気側は、給水ポンプで送られた水がまず節炭器(エコノマイザ)で燃焼ガスの余熱により 予熱され、蒸気ドラムへ入る。蒸気ドラムで気水分離された飽和蒸気は過熱器でさらに加熱されて 過熱蒸気となり、高圧タービンへ送られる。再熱サイクルを採用している場合は、高圧タービンで 仕事をした蒸気が再熱器で再加熱されたのち低圧タービンへ送られる。
燃焼ガス側は、火炉で燃料を燃やして生じた高温の燃焼ガスが、過熱器・節炭器の順に通過しながら 熱を渡して温度を下げ、続いて空気予熱器で燃焼用空気を温め、その後電気集じん装置で ばいじんを除去してから煙突へ排出される。
ボイラの循環方式 — 自然循環・強制循環・貫流
ここまで見てきた蒸気ドラム・過熱器・節炭器といった設備は、ボイラの中を水と蒸気が どうやって流れているかによって、構成が変わってくる。ボイラは水の循環方式によって、 大きく3種類に分けられる。
- 自然循環ボイラ:蒸発管内の水(比重の大きい水)と蒸気を含んだ水(比重の小さい気液 混合物)の密度差だけを駆動力にして、ポンプを使わずに自然対流で水を循環させる方式。 構造が単純だが、蒸気圧力が高くなるほど水と蒸気の密度差が小さくなり、循環力が不足しやすい。
- 強制循環ボイラ:循環ポンプを使って強制的に水を循環させる方式。自然循環では 循環力が不足する、より高い蒸気圧力域まで対応できる。
- 貫流ボイラ:蒸気ドラムを持たず、給水ポンプの圧力だけで水を管内に一方向へ押し流し ながら、予熱・蒸発・過熱までを一連の管路の中で連続的に行う方式。ドラムという大きな 圧力容器が不要になるため、超臨界圧のような非常に高い蒸気圧力のボイラに向く。
蒸気ドラムを持つ自然循環ボイラ・強制循環ボイラでは、ドラム内部に汽水分離器が設置 されている。蒸発管を通って加熱された水は、飽和蒸気と水が混ざり合った気液混合物として ドラムに戻ってくる。汽水分離器はこの気液混合物から飽和蒸気だけを分離し、過熱器へ送り出す 役目を持つ。水の方はドラム内に留まり、再び蒸発管へ送られて循環を続ける。
電気集じん装置 — 微粒子を「帯電させて」捕まえる
燃焼ガス側の最後に登場した電気集じん装置は、火力発電所で発生する灰じんなどの微粒子を 除去するための設備だ。フィルタで物理的にこし取るのではなく、微粒子を電気的に帯電させて 引き寄せるという原理で捕集する点に特徴がある。
典型的な電気集じん装置は、細い線状の放電電極と、広い面を持つ平板状の集じん電極を 向かい合わせに配置した構造をしている。この電極間に高電圧を印加すると、電界が集中しやすい 線状の放電電極の周囲でコロナ放電が発生する。コロナ放電によって生じたイオンが、燃焼ガス 中を漂う微粒子にまとわりつくことで微粒子を帯電させ、帯電した微粒子はクーロン力によって 平板状の集じん電極へ引き寄せられて付着する。集じん電極に付着した微粒子は、槌でたたく などして落とし、灰として回収する。
排ガス対策 — 脱硝・脱硫・燃焼条件の調整
電気集じん装置が取り除くのは灰じんなどの粒子状物質だが、火力発電所の排ガスにはこのほかにも、 燃料に含まれる窒素分・硫黄分に由来する窒素酸化物(NOx)・硫黄酸化物(SOx)という ガス状の大気汚染物質が含まれる。これらを取り除く・減らすための代表的な方法を見ておこう。
窒素酸化物を除去する対策を脱硝と呼び、代表的な方式が接触還元法だ。排ガス中に アンモニアを注入し、触媒の上で窒素酸化物をアンモニアと反応させて、無害な窒素と水に 分解する。
硫黄酸化物を除去する対策を脱硫と呼び、代表的な方式が湿式石灰石-石こう法だ。 石灰石(炭酸カルシウム)と水を混ぜたスラリー(懸濁液)を排ガスに接触させ、硫黄酸化物を 吸収・除去する。このとき生じる副産物が石こうで、石こうボードの原料などに再利用される。
脱硝・脱硫が燃焼後の排ガスから有害物質を取り除く対策なのに対して、燃焼条件そのものを 調整してNOxの発生量を減らす対策もある。
- 二段燃焼法:燃焼用空気を二段階に分けて供給する方式。一次燃焼域ではあえて空気を 不足させ(燃料過剰の状態で)燃焼させることでNOxの生成を抑え、不足した分の空気は 二次燃焼域で供給して燃料を完全燃焼させる。
- 排ガス混合(再循環)法:燃焼用空気に、排出される燃焼ガスの一部を再循環させて混合する 方式。燃焼ガスを混ぜることで燃焼温度が下がり、高温になるほど発生しやすいNOxの生成が 抑制される。
熱効率を上げる工夫
ランキンサイクルの熱効率を上げるための代表的な工夫には、次のようなものがある。
- 再熱サイクル:高圧タービンで一度膨張して温度・圧力が下がった蒸気を、再びボイラ (再熱器)に戻して加熱し直してから低圧タービンに送る。
- 再生サイクル:タービンの途中から蒸気の一部を抜き出し(抽気)、ボイラへ送る給水を あらかじめ温めておく。給水を温める分、ボイラで投入すべき熱量が減る。
- 蒸気の高温高圧化:タービンに送る蒸気の温度・圧力を上げるほど、理論上取り出せる 仕事の割合(熱効率)が上がる。
- コンバインドサイクル:ガスタービンで一度発電したあとの高温の排気ガスを排熱回収 ボイラに通し、そこで作った蒸気で蒸気タービンをさらに回す2段構えの発電方式。1つの燃料から 2回発電することになり、総合熱効率が汽力発電単独より高くなる。
再生サイクルの説明で見落としやすいのが、給水加熱器が温めているのはどこの温度かという点だ。 給水加熱器は、タービンから抽気してきた蒸気の熱を使ってボイラへ送る給水を温める設備であり、 上がるのは給水の温度であって、抽気した蒸気そのものの温度(抽気温度)を上げているわけでは ない。蒸気の温度をあらためて上げ直しているのは、前段の再熱サイクル(ボイラの再熱器で蒸気を 再加熱する仕組み)であり、再生サイクルとは狙いが異なる。
復水器の役割 — なぜ「冷やす」ことが効率アップにつながるのか
復水器は、タービンで仕事を終えた蒸気を冷却水で冷やして水に戻す装置だ。一見すると 排熱を処理するだけの後始末の設備に思えるが、実はここにも効率向上の仕掛けがある。
蒸気を冷やして水に戻すと体積が急激に小さくなるため、復水器の内部は大気圧よりはるかに 低い、真空に近い状態になる。タービンの入口(高温高圧の蒸気)と出口(復水器側の低い圧力)の 圧力差が大きいほど、蒸気が持つエネルギーをより多くタービンの回転仕事として取り出せる。 つまり復水器が「真空を保つ」こと自体が、熱効率の向上に直接つながっている。
蒸気タービンの種類 — 衝動タービンと反動タービン
ここまでは「蒸気の熱エネルギーをどれだけ無駄なく仕事に変えるか」というサイクル全体の 話だったが、その仕事を実際に取り出すタービン自体にも、原理の異なる2つの方式がある。
衝動タービンは、高温高圧の蒸気をノズルで加速・膨張させ、高速の蒸気流をつくってから 前面の羽根(ランナ)にぶつけ、その衝突の力(衝動力)で羽根を回転させる方式だ。羽根そのものの 蒸気の通路は断面積が一様なので、羽根の入口と出口で蒸気圧力はほぼ変化しない。圧力降下は ノズルの中だけで一気に起きている、というのが衝動タービンの特徴になる。
反動タービンは、固定羽根でも蒸気を膨張させたうえで回転羽根に送り、羽根から蒸気が 排出されるときの反動力も回転力として利用する方式だ。羽根の中でも蒸気が膨張し続けるため、 羽根の入口と出口で圧力が下がる。
汽力発電所を守る保護装置
火力(汽力)発電所には、タービンやボイラ、発電機が異常な状態に陥ったときに機器を守るための 保護装置が何重にも組み込まれている。「何が異常になったら」「どこで検知して」「何を止めるか」を 装置ごとに対応づけて覚えると整理しやすい。
- 非常調速機:負荷が急に失われるなどしてタービンの回転速度が定格を超えて上昇したとき、 自動的に蒸気止弁を閉じてタービンへの蒸気供給を止める。回転部分が遠心力で破損する 「オーバースピード事故」を防ぐ、タービン側の最終防衛ラインにあたる。
- 燃料遮断弁:ボイラ水の循環が何らかの原因で悪くなったとき、燃料の供給を遮断してバーナの 火を消す。水の循環不良のまま燃焼を続けると、熱を奪う水がない水管だけが加熱され続けて 焼損してしまうため、それを未然に防ぐ役割を持つ。
- 安全弁:ボイラ内部の蒸気圧力が設計上の限度を超えたとき、自動的に蒸気を外部へ放出して 圧力の上昇を抑え、圧力容器や配管の破損を防ぐ。
- トリップ装置:タービンの軸受油圧が異常に低下したとき、軸受の焼き付き・損傷を防ぐために タービンを緊急停止させる。
- 比率差動継電器:発電機の固定子巻線内部で短絡事故が起きたとき、巻線の両端(中性点側と 端子側)を流れる電流の差から異常を検出し、発電機を系統から切り離して保護する。
ここまでの5つは、いずれも運転中の異常を検知して機器を守る保護装置だった。これとは別に、 停止中のタービンを守るための装置にターニング装置がある。タービンを停止した直後の ロータは、内部にまだ高温を保っている。この状態で回転を完全に止めたまま放置すると、ロータの 上側と下側でわずかな温度差が生じ、自重も加わって、ロータがごくわずかにたわむ(曲がる) おそれがある。ターニング装置は、停止中も低速でロータを回転させ続けることで、ロータの一部だけが 局所的に冷えて変形するのを防ぐ役割を持つ。起動前の暖機運転や、停止後の冷却が完了するまでの 間に使われる。
タービン発電機の構造 — なぜ細長い円筒形で、なぜ水素で冷やすのか
ここまで見てきたのは、蒸気の熱エネルギーをどう効率よく回転エネルギーに変えるかという タービン側の話だった。この回転エネルギーを電気に変えるタービン発電機そのものの構造にも、 高速回転という条件から生まれた工夫が詰まっている。
火力発電所のタービン発電機には、2極の回転界磁形三相同期発電機が広く使われる。タービンは 50Hzの系統なら3000min⁻¹、60Hzの系統なら3600min⁻¹という高速で回転するため、これに直結する 発電機の極数は最も少ない2極が基本になる(N=120f/pの式で、極数pが小さいほど同じ周波数に 対する回転速度Nは大きくなる)。また、大電流が流れる電機子巻線は動かない固定子側に置き、 比較的小さな励磁電流だけをブラシを介して回転子側に流す回転界磁形の構成にすることで、 大電流をブラシで受け渡す必要をなくしている。
この高速回転は、回転子の形にも影響する。回転子には強い遠心力がかかり続けるため、 水車発電機のように大径で磁極が突き出た突極形にはできない。タービン発電機の回転子は、 遠心力に耐えられるよう細径で軸方向に長い円筒形になる。
発電機の容量が大きくなるほど、電機子巻線で発生する熱(銅損)や鉄心の熱(鉄損)も増える。 これを効率よく逃がすため、大容量のタービン発電機では密封形の水素冷却方式が採用される。 水素は空気より比重が小さいため、回転子が空気を掻き回すことで生じる風損を抑えられ、また 熱伝導率が空気より高いため冷却効果にも優れる。密封した容器内に水素を封入して使うのは、 空気中の酸素と混ざると爆発の危険があるためで、水素濃度や純度を常時監視する設備とセットで 運用されている。
水素冷却の詳細特性 — 比熱・不活性性・爆発防止・軸受シール
水素冷却方式について穴埋め問題で問われるのは、比重・熱伝導率だけではない。まず比熱 (同じ温度上昇に必要な熱量)も水素は空気より大きく、これも冷却効率の高さに寄与している。 「冷却効率の高さ=比熱」「風損の小さささ=比重」というように、それぞれ別の物理量が 対応している点を区別しておきたい。
水素はまた、化学的に不活性(他の物質と反応しにくい)な気体でもある。この性質のため、 空気で満たす場合に比べて発電機内部の巻線などの絶縁物を劣化させにくい。加えて、水素ガス 圧力を高めるほど、大気圧の空気よりもコロナ放電が生じ難くなるという利点もある。
水素と空気が混ざり合うと、水素ガス濃度が一定範囲内になったときに爆発の危険性が生じる。 これを防ぐため、発電機内部の水素ガス濃度を自動的に90%以上に維持する設備が組み込まれて いる。また、発電機内の水素ガスが回転軸に沿って機外へ漏れ出さないよう、軸受の内側には 油膜によるシール機能(オイルフィルムシール)が備えられている。
同期発電機の短絡比 — 鉄機械・銅機械という呼び名の意味
ここまで見てきた突極形(水車発電機)と円筒形(タービン発電機)という回転子の形の違いは、 発電機の電気的な特性にもそのままつながっている。突極形の水車発電機は、鉄心の鉄量が多く 体格も大きいことから鉄機械、円筒形のタービン発電機は、大きな出力を得るために電機子 巻線の導体量(銅量)を増やす構造であることから銅機械とも呼ばれる。
この呼び名の違いは、短絡比という指標の大小と結びついている。短絡比とは、無負荷で 定格電圧を発生させるのに必要な励磁電流と、端子を短絡した状態で定格電流を流すのに必要な 励磁電流との比で表される値で、この値が大きいほど、発電機の同期インピーダンス(百分率 同期インピーダンス%Zs)は小さくなるという近似的な逆数の関係にある。
鉄機械(突極形・水車発電機)は体格が大きく重量も重いぶん高価になるが、短絡比が大きく、 同期インピーダンスは小さい。この結果、負荷変動に対する電圧変動率が小さく、系統に 事故が起きたときの安定度も高く、さらに線路の静電容量による進み電流(充電電流)を 無理なく受け入れられる線路充電容量も大きいという利点を持つ。
一方、銅機械(円筒形・タービン発電機)は、高速回転に適したコンパクトな構造ゆえに界磁 巻線を施せる場所が制約され、大きな出力を得るには電機子巻線の導体量を増やすほかない。 そのため短絡比は小さく、同期インピーダンスは大きくなる。電圧変動率・安定度・線路充電 容量のいずれも鉄機械には及ばないが、その分小形・軽量・経済的という利点を持つ。
ガバナフリー運転と速度調定率 — 複数の発電機が周波数変化をどう分担するか
ここまでは1台の発電機・1つのサイクルの中の効率の話だったが、実際の電力系統には多数の 発電機が同時に接続され、常に変動する需要に合わせて出力を調整し合っている。この調整の 土台になっているのがガバナフリー運転と速度調定率の考え方だ。
発電機には、タービンの回転速度(=系統周波数)を検出し、蒸気弁や水量調整弁の開度を 自動で加減する調速機(ガバナ)が付いている。需要が増えて系統周波数がわずかに下がると、 ガバナがそれを検知して自動的に出力を増やす方向に弁を開く——これがガバナフリー運転で、 系統全体の周波数を一定に保つための最も基本的な自動応答になる。
このとき、周波数の変化量に対して出力をどれだけ変化させるかという発電機ごとの特性を表すのが 速度調定率Rだ。
は周波数の変化量、は定格周波数、は出力の変化量、は定格出力だ。 Rは「出力を100%変化させるのに必要な周波数の変化率」を表す指標で、Rが小さい発電機ほど、 わずかな周波数変化で大きく出力を変化させる——つまり周波数調整への寄与が大きくなる。
同じ系統に同期して接続されている発電機は、瞬時値としては全て同じ1つの周波数変化Δfを 共有する。発電機ごとに違うのはΔfではなく、定格出力と速度調定率であり、この2つの 違いから、それぞれの発電機がどれだけ出力を分担するかが決まる。
例題
定格出力500MW・速度調定率4%の火力発電機Aと、定格出力200MW・速度調定率5%の水力発電機Bが 同じ系統に接続され、両機ともガバナフリー運転を行っている。負荷が急増して系統周波数が50Hzから 0.1Hz低下したとき、それぞれの出力増加分は次のように求まる。
定格出力はAがBの2.5倍あるが、速度調定率もAの方がBより小さいため、出力増加分の比(25MW対8MW)は 定格出力の比よりもさらにAに偏る結果になる。定格出力と速度調定率、両方を確認しないと分担は 求められない、という点がこの計算の要点だ。
燃焼反応とCO2排出量の計算 — 反応式の重量比から逆算する
ここまで見てきた熱効率が「投入した熱のうち、どれだけを電気に変えられたか」という割合の 話だったのに対し、火力発電所が排出する二酸化炭素(CO2)の量は、燃料そのものの 化学的な燃焼反応から計算できる。
石炭・重油などの燃料には炭素・水素などの成分が含まれており、燃焼するとそれぞれ次の 反応を起こす。
このうち、CO2を発生させるのは炭素の燃焼だけだ。水素の燃焼は水(H2O)を生じるだけで、 CO2の発生には関与しない。CO2排出量を計算するときは、燃料重量のうち炭素の重量比の 部分だけを使う、という点がまず押さえるべき出発点になる。
炭素の重量からCO2の重量を求めるには、両者の原子量の比を使う。炭素の原子量は12、 CO2(炭素1個・酸素2個)の分子量は12+16×2=44なので、炭素の重量にこの比(44/12)を 掛ければ、その炭素がすべて燃焼したときに発生するCO2の重量が求まる。
例題
石炭消費量100t/hの火力発電所があり、石炭の化学成分は重量比で炭素が72%とする(残りの 成分は燃焼に影響しないものとする)。1時間あたりに発生するCO2の重量を求める。
まず1時間あたりの炭素消費量を求める。
これに炭素とCO2の原子量比(44/12)を掛けると、
理論空気量の計算 — 酸素量から空気量への「もう一手間」
CO2排出量の計算は、燃料の重量から反応式の重量比をたどる計算だった。これとよく似た構成で、 燃料を完全燃焼させるために最低限必要な空気量(理論空気量)を求める問題も出題される。
理論空気量の計算は、次の3段階で進める。
- 燃焼反応式(C+O2→CO2、2H2+O2→2H2O)から、燃料中の炭素・水素の物質量[mol]に見合う 必要酸素量[mol]を求める。
- 標準状態における気体1molの体積22.4L(=0.0224m³)を掛けて、必要な酸素の体積に換算する。
- 空気中の酸素濃度(体積比で約21%)で割り、酸素だけでなく空気全体としての体積に 割り戻す。
例題
炭素12kg(炭素の原子量12、1molの気体標準状態の体積を22.4Lとする)を完全燃焼させるために 必要な理論空気量を求める。
まず炭素の物質量を求める。
C+O2→CO2より、炭素1molの燃焼に酸素1molが必要なので、必要な酸素量は1,000mol。これを体積に 換算すると、
最後に酸素濃度21%で割り、理論空気量を求める。
実務との接点 — 「無駄をどれだけ減らせるか」という発想は電材業界にも通じる
火力発電の熱効率向上策——投入したエネルギーのうち、実際に使える割合をどれだけ増やせるか ——という発想は、受変電設備の力率改善にも通じる。進相コンデンサを設置して力率を改善するのも、 「投入した電力のうち、実際に仕事に使える有効電力の割合を増やす」という意味では、 火力発電所が再熱・再生サイクルで熱効率を上げる考え方と本質的に同じ構造をしている。
冒頭の「熱効率41%」の意味と、残り59%がどこへ消えているのか——答え合わせは理解度チェックの 最後の問題でしてみよう。