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電力 ・ 2 / 16

火力発電の仕組みと熱効率

読み終えると、こうなる

火力発電所のパンフレットにある「熱効率〇%」という数字を見て、その裏にあるランキンサイクルの構造と、効率を上げるためにどんな工夫が仕込まれているかを言い当てられるようになる

  • 発電機出力・燃料消費量・燃料発熱量から熱効率をη=3600P/(BH)×100で計算でき、ランキンサイクルの構成(ボイラ・タービン・復水器・給水ポンプ)と節炭器・過熱器等の役割、タービン出力とエンタルピー差からの使用蒸気量計算も説明できる。あわせてボイラの循環方式(自然循環・強制循環・貫流)と汽水分離器の役割、電気集じん装置の原理も説明でき、発電機出力の時間別運転パターンと所内率から送電端電力量・発電端熱効率を計算できる。発電端熱効率(総合効率)をボイラ効率・タービン室効率・発電機効率の積に分解し、送電端電力量・所内率・他の2つの効率からボイラ効率を逆算することもできる
  • 再熱サイクル・再生サイクル・コンバインドサイクルという効率向上策や、衝動タービン・反動タービンの違いを、それぞれ何をしているかという観点で区別して説明できる。あわせてタービン発電機の一般的な構造(2極の回転界磁形三相同期発電機、円筒形回転子、大容量機での水素冷却)とその理由、さらに水車発電機(鉄機械・突極形)とタービン発電機(銅機械・円筒形)の短絡比・同期インピーダンス・電圧変動率・安定度・線路充電容量の違いも説明できる
  • 複数の発電機が並列運転しているとき、速度調定率とガバナフリー運転の仕組みから、系統周波数の変化に応じた各発電機の出力分担を計算できる。あわせて燃料に含まれる炭素・水素の重量比と燃焼反応式から、燃料消費量に対応する二酸化炭素の発生量や、完全燃焼に必要な理論空気量を計算できる
  • 火力発電所の排ガス対策のうち、脱硝(窒素酸化物の除去)に使われる接触還元法、脱硫(硫黄酸化物の除去)に使われる湿式石灰石-石こう法、燃焼段階でNOx生成そのものを抑える二段燃焼法・排ガス混合(再循環)法の違いを、対象とする物質(NOxかSOxか)と対策の段階(燃焼後の除去か、燃焼条件の調整か)で区別して説明できる
考えてみよう

火力発電所の性能表に「熱効率41%」と書かれているのを見て、それが何を意味するか、 そして残りの59%がどこへ消えているのか、説明できるだろうか。

蒸気タービンを回すという一見単純な仕組みの中に、効率を1%でも上げるための工夫が 何重にも仕込まれている。

このトピックを読み終えるころには、火力発電所のパンフレットの数字から、 その裏にある仕組みと工夫を読み解けるようになっている。

種明かしは、火力発電が ランキンサイクル という閉じたサイクルで運転されており、 熱効率とはこのサイクルの中で「投入した熱のうち、どれだけを実際の仕事に変えられたか」の 割合だという事実にある。

火力発電の仕組み — ランキンサイクル

火力発電は、燃料を燃やして得た熱でボイラの水を高温高圧の蒸気に変え、その蒸気で タービンを回し、タービンに直結した発電機で発電する。タービンで仕事を終えた蒸気は 復水器で冷やされて水に戻り、給水ポンプで再びボイラに送られる——この閉じたサイクルを ランキンサイクル と呼ぶ。

ボイラタービン復水器給水ポンプボイラ\text{ボイラ} \to \text{タービン} \to \text{復水器} \to \text{給水ポンプ} \to \text{ボイラ}

熱源が燃焼であることを除けば、「高温高圧の蒸気でタービンを回す」という構造そのものは 汽力発電の基本形であり、後述する原子力発電とも共通する部分が多い。

熱効率の計算

熱効率は、投入した燃料の熱エネルギーのうち、どれだけを発電機出力として取り出せたかの 割合で、次の式で求まる。

η=3600×PB×H×100[%]\eta = \frac{3600 \times P}{B \times H} \times 100 \quad [\%]

PP は発電機出力[kW]、BB は燃料消費量[kg/h]、HH は燃料発熱量[kJ/kg]だ。3600という 係数は、PP[kW]で1時間発電したときの電力量PP[kWh]を、熱量の単位kJに換算するために 掛けている(1kWh=3600kJ)。分母のB×Hは、1時間あたりに投入した燃料の熱エネルギー[kJ/h]で、 分子の3600Pは1時間あたりに取り出せた電気エネルギー[kJ/h]にあたる。

例題

発電機出力50,000kW、燃料消費量15,000kg/h、燃料発熱量40,000kJ/kgの火力発電所の熱効率は 何%か。

η=3600×5000015000×40000×100=180,000,000600,000,000×100=30%\eta = \frac{3600 \times 50000}{15000 \times 40000} \times 100 = \frac{180{,}000{,}000}{600{,}000{,}000} \times 100 = 30\%
3600という数字に迷ったら「1kWhは3600kJ」という単位換算だけを思い出せばよい。 P[kW]を1時間続けたときの電力量P[kWh]をkJに直すために3600を掛けている、というだけの ことで、複雑な物理法則が隠れているわけではない。

所内率と送電端電力量 — 発電機出力がそのまま送電されるわけではない

熱効率の式で使った発電機出力Pは、発電機が「発生した」出力そのものだった。しかし発電所には、 給水ポンプ・送風機・各種補機など、発電所自身を動かすために使う電力(所内電力)が必ず 必要になる。発電機が発生した電力(発電端電力)から、この所内電力を差し引いた残りが、 実際に送電線へ送り出される送電端電力だ。

送電端電力=発電端電力×(1所内率)\text{送電端電力} = \text{発電端電力} \times (1 - \text{所内率})

所内率は、発電端電力のうち所内電力が占める割合を表す。発電機出力が時間帯によって 変化する場合は、まず各時間帯の発電機出力[MW]に運転時間[h]を掛けて合計し、1日分の 発電端電力量[MWh]を求めたうえで、最後に(1−所内率)を掛けて送電端電力量を求める。

例題

定格出力300MWの火力発電所が、所内率3%のもとで次のように運転した。

時刻発電機出力[MW]
0時〜6時100
6時〜9時300
9時〜18時250
18時〜22時300
22時〜24時100

まず各時間帯の出力×時間を合計し、発電端電力量を求める。

100×6+300×3+250×9+300×4+100×2=600+900+2250+1200+200=5150MWh100\times6+300\times3+250\times9+300\times4+100\times2=600+900+2250+1200+200=5150\text{MWh}

送電端電力量は、これに(1−所内率)を掛ける。

5150×(10.03)=5150×0.974995.5MWh5150 \times (1-0.03) = 5150 \times 0.97 \approx 4995.5\text{MWh}
所内率の計算でつまずくとしたら、ほぼ確実に「掛ける順番」だ。各時間帯の出力に先に 所内率を掛けてから合計するのではなく、まず時間帯ごとの出力×時間をすべて合計して 発電端電力量という1つの数値を確定させ、そのあとに(1−所内率)を1回だけ掛ける、という 順序を守る。発電端熱効率を計算する場合は、この所内消費を差し引く前の発電端電力量の方を 使う(熱効率η=3600×発電端電力量/(燃料消費量×発熱量)×100)点にも注意したい。

ボイラ効率・タービン室効率・発電機効率 — 総合効率を3段階に分解する

前節で計算したη=3600×発電端電力量/(BH)×100という熱効率は、燃料の熱が電気になるまでの 道のり全体を通した効率だ。この道のりは、実際には次の3つの段階に分けられる。

  1. ボイラ効率ηB:燃料の発熱量のうち、ボイラの中で水・蒸気が実際に受け取った熱の割合。 燃焼ガスの熱が煙突からそのまま逃げてしまう分などがロスになる。
  2. タービン室効率ηT:蒸気が持つ熱エネルギーのうち、タービンで軸の回転力(軸出力)に 変換できた割合。
  3. 発電機効率ηG:タービンの軸出力のうち、発電機が電気エネルギーとして出力できた割合。

この3段階を経て、燃料の熱は最終的に電気になる。つまり、これまで使ってきた熱効率 (発電端熱効率)は、実はこの3つの効率のだったことになる。

η総合=ηB×ηT×ηG\eta_{\text{総合}} = \eta_B \times \eta_T \times \eta_G
「熱効率」と一口に言っても、燃料→ボイラ→タービン→発電機という3段階のどこで生まれる 無駄を指しているのかを区別する必要がある。η=3600×発電端電力量/(BH)×100で求まるのは、 あくまで3段階すべてを通した**総合効率**(発電端熱効率)だ。ボイラ効率だけを知りたい場合、 この総合効率をそのままボイラ効率だと思い込まないよう注意する。

タービン室効率・発電機効率がカタログ値などで分かっている場合、総合効率をこの2つの効率で 割り戻せば、直接測定しにくいボイラ効率を逆算できる。

ηB=η総合ηT×ηG\eta_B = \frac{\eta_{\text{総合}}}{\eta_T \times \eta_G}

例題

定格出力8000kWの重油専焼汽力発電所が20日間連続運転し、そのときの重油使用量は800t、送電端 電力量は3200MW・hであった。重油の発熱量を43000kJ/kg、タービン室効率を45%、発電機効率を 97%、所内率を4%として、このボイラ効率を求める。

まず発電端電力量を求める。

発電端電力量=320010.043333.3MWh=3,333,300kWh\text{発電端電力量} = \frac{3200}{1-0.04} \approx 3333.3\text{MWh} = 3{,}333{,}300\text{kWh}

総合効率(発電端熱効率)を求める。

η総合=3600×3,333,300800,000×43,000×10034.9%\eta_{\text{総合}} = \frac{3600 \times 3{,}333{,}300}{800{,}000 \times 43{,}000} \times 100 \approx 34.9\%

タービン室効率・発電機効率で割り戻し、ボイラ効率を逆算する。

ηB=34.90.45×0.97=34.90.436579.9%\eta_B = \frac{34.9}{0.45 \times 0.97} = \frac{34.9}{0.4365} \approx 79.9\%
この計算の骨格は「①送電端電力量と所内率から発電端電力量を求める→②発電端電力量と燃料 条件から総合効率(発電端熱効率)を求める→③タービン室効率・発電機効率で割り戻してボイラ 効率を求める」という3段階の順序に尽きる。どの効率がどの段階の話をしているかを取り違えな ければ、既に知っている所内率・発電端熱効率の計算の延長として解ける。

タービン使用蒸気量の計算とボイラ内の設備構成

熱効率がサイクル全体の「投入熱に対する仕事の割合」を見る指標だったのに対し、タービンが実際に どれだけの蒸気を使って仕事をしているかを表すのが使用蒸気量だ。蒸気1kgが持つ熱エネルギーは エンタルピー[kJ/kg]という量で表され、タービン入口と復水器入口(=タービン出口)の エンタルピー差Δhが、蒸気1kgあたりタービンで取り出せる理論上の仕事にあたる。

P=G×Δh×ηG=PΔh×ηP = G \times \Delta h \times \eta \quad \Longrightarrow \quad G = \frac{P}{\Delta h \times \eta}

PPはタービン出力[kW]、GGは使用蒸気量[kg/s]、η\etaはタービン効率だ。求めたGの単位はkg/sなので、 t/h(トン毎時)に直すには3600s/h÷1000kg/tを掛ける(=3.6を掛ける)。

例題

タービン出力126,000kW、タービン効率90%、タービン入口における蒸気のエンタルピーが3300kJ/kg、 復水器入口における蒸気のエンタルピーが2600kJ/kgであるとき、使用蒸気量は何t/hか。

G=126000(33002600)×0.9=126000630=200kg/s=200×3.6=720t/hG = \frac{126000}{(3300-2600) \times 0.9} = \frac{126000}{630} = 200\text{kg/s} = 200 \times 3.6 = 720\text{t/h}
GをΔhとηで割るという式の形を、毎回「タービン出力=蒸気量×エンタルピー差×効率」という 掛け算から逆算して思い出すとよい。効率ηは常に分母に置く——効率が下がるほど、同じ出力を 得るために必要な蒸気量は増える、という直感と一致させて覚えると取り違えを防げる。

ボイラの内部では、水・蒸気の系統と燃焼ガスの系統が、それぞれ別の経路で主要設備を通過しながら 熱をやり取りしている。

水・蒸気側は、給水ポンプで送られた水がまず節炭器(エコノマイザ)で燃焼ガスの余熱により 予熱され、蒸気ドラムへ入る。蒸気ドラムで気水分離された飽和蒸気は過熱器でさらに加熱されて 過熱蒸気となり、高圧タービンへ送られる。再熱サイクルを採用している場合は、高圧タービンで 仕事をした蒸気が再熱器で再加熱されたのち低圧タービンへ送られる。

燃焼ガス側は、火炉で燃料を燃やして生じた高温の燃焼ガスが、過熱器・節炭器の順に通過しながら 熱を渡して温度を下げ、続いて空気予熱器で燃焼用空気を温め、その後電気集じん装置で ばいじんを除去してから煙突へ排出される。

水・蒸気側と燃焼ガス側、どちらも「まだ熱をあまり奪われていない・与えられていない設備ほど 高温側に近い」という順序で並んでいると考えると覚えやすい。水側は節炭器(予熱)→蒸気ドラム→ 過熱器(さらに加熱)と、だんだん温度を上げていく順序。燃焼ガス側は逆に、火炉を出た直後の 最も高温なガスが過熱器・節炭器を通るごとに熱を奪われ、空気予熱器・電気集じん装置を経て 排出される、という対の関係で押さえておくとよい。

ボイラの循環方式 — 自然循環・強制循環・貫流

ここまで見てきた蒸気ドラム・過熱器・節炭器といった設備は、ボイラの中を水と蒸気が どうやって流れているかによって、構成が変わってくる。ボイラは水の循環方式によって、 大きく3種類に分けられる。

  • 自然循環ボイラ:蒸発管内の水(比重の大きい水)と蒸気を含んだ水(比重の小さい気液 混合物)の密度差だけを駆動力にして、ポンプを使わずに自然対流で水を循環させる方式。 構造が単純だが、蒸気圧力が高くなるほど水と蒸気の密度差が小さくなり、循環力が不足しやすい。
  • 強制循環ボイラ:循環ポンプを使って強制的に水を循環させる方式。自然循環では 循環力が不足する、より高い蒸気圧力域まで対応できる。
  • 貫流ボイラ:蒸気ドラムを持たず、給水ポンプの圧力だけで水を管内に一方向へ押し流し ながら、予熱・蒸発・過熱までを一連の管路の中で連続的に行う方式。ドラムという大きな 圧力容器が不要になるため、超臨界圧のような非常に高い蒸気圧力のボイラに向く。
3つの方式は「水をどうやって循環させているか」で区別すると覚えやすい。自然循環は 密度差まかせ、強制循環はポンプで後押し、貫流はそもそも循環させず一方通行——という 駆動力の違いで整理すれば、名前から中身を思い出せる。

蒸気ドラムを持つ自然循環ボイラ・強制循環ボイラでは、ドラム内部に汽水分離器が設置 されている。蒸発管を通って加熱された水は、飽和蒸気と水が混ざり合った気液混合物として ドラムに戻ってくる。汽水分離器はこの気液混合物から飽和蒸気だけを分離し、過熱器へ送り出す 役目を持つ。水の方はドラム内に留まり、再び蒸発管へ送られて循環を続ける。

電気集じん装置 — 微粒子を「帯電させて」捕まえる

燃焼ガス側の最後に登場した電気集じん装置は、火力発電所で発生する灰じんなどの微粒子を 除去するための設備だ。フィルタで物理的にこし取るのではなく、微粒子を電気的に帯電させて 引き寄せるという原理で捕集する点に特徴がある。

典型的な電気集じん装置は、細い線状の放電電極と、広い面を持つ平板状の集じん電極を 向かい合わせに配置した構造をしている。この電極間に高電圧を印加すると、電界が集中しやすい 線状の放電電極の周囲でコロナ放電が発生する。コロナ放電によって生じたイオンが、燃焼ガス 中を漂う微粒子にまとわりつくことで微粒子を帯電させ、帯電した微粒子はクーロン力によって 平板状の集じん電極へ引き寄せられて付着する。集じん電極に付着した微粒子は、槌でたたく などして落とし、灰として回収する。

放電電極が線状、集じん電極が平板状——この形の違いは、それぞれの役割から導ける。放電電極は 先端に電界を集中させてコロナ放電を起こす必要があるので、断面積の小さい線状が向く。集じん 電極は帯電した微粒子を面全体で受け止める必要があるので、広い面積を確保できる平板状になる。 形状を丸暗記するより、「放電させる側か、捕集する側か」という役割から形を思い出す方が 取り違えにくい。

排ガス対策 — 脱硝・脱硫・燃焼条件の調整

電気集じん装置が取り除くのは灰じんなどの粒子状物質だが、火力発電所の排ガスにはこのほかにも、 燃料に含まれる窒素分・硫黄分に由来する窒素酸化物(NOx)硫黄酸化物(SOx)という ガス状の大気汚染物質が含まれる。これらを取り除く・減らすための代表的な方法を見ておこう。

窒素酸化物を除去する対策を脱硝と呼び、代表的な方式が接触還元法だ。排ガス中に アンモニアを注入し、触媒の上で窒素酸化物をアンモニアと反応させて、無害な窒素と水に 分解する。

硫黄酸化物を除去する対策を脱硫と呼び、代表的な方式が湿式石灰石-石こう法だ。 石灰石(炭酸カルシウム)と水を混ぜたスラリー(懸濁液)を排ガスに接触させ、硫黄酸化物を 吸収・除去する。このとき生じる副産物が石こうで、石こうボードの原料などに再利用される。

脱硝と脱硫は、対象とする物質(NOxかSOxか)と使う薬剤(アンモニアか石灰石か)で対応づけて 覚えると混同しにくい。「N(窒素)→アンモニア→接触還元法」「S(硫黄)→石灰石→湿式石灰石 -石こう法」という頭文字のつながりを手がかりにするとよい。

脱硝・脱硫が燃焼後の排ガスから有害物質を取り除く対策なのに対して、燃焼条件そのものを 調整してNOxの発生量を減らす対策もある。

  • 二段燃焼法:燃焼用空気を二段階に分けて供給する方式。一次燃焼域ではあえて空気を 不足させ(燃料過剰の状態で)燃焼させることでNOxの生成を抑え、不足した分の空気は 二次燃焼域で供給して燃料を完全燃焼させる。
  • 排ガス混合(再循環)法:燃焼用空気に、排出される燃焼ガスの一部を再循環させて混合する 方式。燃焼ガスを混ぜることで燃焼温度が下がり、高温になるほど発生しやすいNOxの生成が 抑制される。
排ガス混合法で燃焼温度を「下げる」方向は間違えやすいポイントだ。燃焼ガスを混ぜると聞くと 温度が上がりそうに感じるが、実際には酸素濃度の低い燃焼済みガスが混ざることで局所的な 燃焼温度が下がり、高温であるほど生成が進むNOxを抑える方向に働く。

熱効率を上げる工夫

ランキンサイクルの熱効率を上げるための代表的な工夫には、次のようなものがある。

  • 再熱サイクル:高圧タービンで一度膨張して温度・圧力が下がった蒸気を、再びボイラ (再熱器)に戻して加熱し直してから低圧タービンに送る。
  • 再生サイクル:タービンの途中から蒸気の一部を抜き出し(抽気)、ボイラへ送る給水を あらかじめ温めておく。給水を温める分、ボイラで投入すべき熱量が減る。
  • 蒸気の高温高圧化:タービンに送る蒸気の温度・圧力を上げるほど、理論上取り出せる 仕事の割合(熱効率)が上がる。
  • コンバインドサイクル:ガスタービンで一度発電したあとの高温の排気ガスを排熱回収 ボイラに通し、そこで作った蒸気で蒸気タービンをさらに回す2段構えの発電方式。1つの燃料から 2回発電することになり、総合熱効率が汽力発電単独より高くなる。
これらの対策はどれも別々のものに見えるが、狙いは1つ「投入した熱を、途中で無駄にする分を 減らして、できるだけ多く仕事(発電)に回す」ことに尽きる。再熱・再生は蒸気サイクルの中で 熱を使い回す工夫、コンバインドサイクルは1つの燃料から2段階で仕事を取り出す工夫、と 整理すると覚えやすい。

再生サイクルの説明で見落としやすいのが、給水加熱器が温めているのはどこの温度かという点だ。 給水加熱器は、タービンから抽気してきた蒸気の熱を使ってボイラへ送る給水を温める設備であり、 上がるのは給水の温度であって、抽気した蒸気そのものの温度(抽気温度)を上げているわけでは ない。蒸気の温度をあらためて上げ直しているのは、前段の再熱サイクル(ボイラの再熱器で蒸気を 再加熱する仕組み)であり、再生サイクルとは狙いが異なる。

「給水温度」と「抽気温度」は、似た文脈で並んで出てくるが指している対象が違う。給水加熱器が 上げるのはボイラへ向かう給水の温度で、抽気してきた蒸気自体の温度をさらに上げているわけでは ない。蒸気そのものの温度を上げ直すのは再熱サイクルの役割であり、再生サイクル(給水加熱)と 混同しないよう、「誰の温度が上がっているか」を主語で区別しておく。

復水器の役割 — なぜ「冷やす」ことが効率アップにつながるのか

復水器は、タービンで仕事を終えた蒸気を冷却水で冷やして水に戻す装置だ。一見すると 排熱を処理するだけの後始末の設備に思えるが、実はここにも効率向上の仕掛けがある。

蒸気を冷やして水に戻すと体積が急激に小さくなるため、復水器の内部は大気圧よりはるかに 低い、真空に近い状態になる。タービンの入口(高温高圧の蒸気)と出口(復水器側の低い圧力)の 圧力差が大きいほど、蒸気が持つエネルギーをより多くタービンの回転仕事として取り出せる。 つまり復水器が「真空を保つ」こと自体が、熱効率の向上に直接つながっている。

蒸気タービンの種類 — 衝動タービンと反動タービン

ここまでは「蒸気の熱エネルギーをどれだけ無駄なく仕事に変えるか」というサイクル全体の 話だったが、その仕事を実際に取り出すタービン自体にも、原理の異なる2つの方式がある。

衝動タービンは、高温高圧の蒸気をノズルで加速・膨張させ、高速の蒸気流をつくってから 前面の羽根(ランナ)にぶつけ、その衝突の力(衝動力)で羽根を回転させる方式だ。羽根そのものの 蒸気の通路は断面積が一様なので、羽根の入口と出口で蒸気圧力はほぼ変化しない。圧力降下は ノズルの中だけで一気に起きている、というのが衝動タービンの特徴になる。

反動タービンは、固定羽根でも蒸気を膨張させたうえで回転羽根に送り、羽根から蒸気が 排出されるときの反動力も回転力として利用する方式だ。羽根の中でも蒸気が膨張し続けるため、 羽根の入口と出口で圧力が下がる。

2つの方式の違いは「圧力降下がどこで起きているか」に尽きる。衝動タービンはノズルだけで 一気に圧力を落として羽根にぶつける、反動タービンは羽根自体の中でも圧力を落とし続ける。 この違いから、圧力の高い蒸気(圧力降下量が大きい)は衝動タービンに、比較的圧力の低い 蒸気は反動タービンに向く、という使い分けが生まれる。大容量の汽力発電所では、高圧段に 衝動タービン、中低圧段に反動タービンを組み合わせて使う構成も見られる。

汽力発電所を守る保護装置

火力(汽力)発電所には、タービンやボイラ、発電機が異常な状態に陥ったときに機器を守るための 保護装置が何重にも組み込まれている。「何が異常になったら」「どこで検知して」「何を止めるか」を 装置ごとに対応づけて覚えると整理しやすい。

  • 非常調速機:負荷が急に失われるなどしてタービンの回転速度が定格を超えて上昇したとき、 自動的に蒸気止弁を閉じてタービンへの蒸気供給を止める。回転部分が遠心力で破損する 「オーバースピード事故」を防ぐ、タービン側の最終防衛ラインにあたる。
  • 燃料遮断弁:ボイラ水の循環が何らかの原因で悪くなったとき、燃料の供給を遮断してバーナの 火を消す。水の循環不良のまま燃焼を続けると、熱を奪う水がない水管だけが加熱され続けて 焼損してしまうため、それを未然に防ぐ役割を持つ。
  • 安全弁:ボイラ内部の蒸気圧力が設計上の限度を超えたとき、自動的に蒸気を外部へ放出して 圧力の上昇を抑え、圧力容器や配管の破損を防ぐ。
  • トリップ装置:タービンの軸受油圧が異常に低下したとき、軸受の焼き付き・損傷を防ぐために タービンを緊急停止させる。
  • 比率差動継電器:発電機の固定子巻線内部で短絡事故が起きたとき、巻線の両端(中性点側と 端子側)を流れる電流の差から異常を検出し、発電機を系統から切り離して保護する。
非常調速機・トリップ装置は「タービンを止める」保護、燃料遮断弁・安全弁は「ボイラ側の異常」に 対する保護、比率差動継電器は「発電機内部」を守る保護、というように、保護対象がタービン・ ボイラ・発電機のどこにあるかで3グループに整理すると覚えやすい。

ここまでの5つは、いずれも運転中の異常を検知して機器を守る保護装置だった。これとは別に、 停止中のタービンを守るための装置にターニング装置がある。タービンを停止した直後の ロータは、内部にまだ高温を保っている。この状態で回転を完全に止めたまま放置すると、ロータの 上側と下側でわずかな温度差が生じ、自重も加わって、ロータがごくわずかにたわむ(曲がる) おそれがある。ターニング装置は、停止中も低速でロータを回転させ続けることで、ロータの一部だけが 局所的に冷えて変形するのを防ぐ役割を持つ。起動前の暖機運転や、停止後の冷却が完了するまでの 間に使われる。

非常調速機とターニング装置は、どちらも「タービンの回転」に関わる装置という共通点だけで 覚えると混同しやすい。非常調速機は運転中の異常な回転速度上昇を止める装置、ターニング装置は 停止中のロータを低速で回し続けてたわみを防ぐ装置——「動いているときの話か、止まっている ときの話か」で区別すると取り違えない。

タービン発電機の構造 — なぜ細長い円筒形で、なぜ水素で冷やすのか

ここまで見てきたのは、蒸気の熱エネルギーをどう効率よく回転エネルギーに変えるかという タービン側の話だった。この回転エネルギーを電気に変えるタービン発電機そのものの構造にも、 高速回転という条件から生まれた工夫が詰まっている。

火力発電所のタービン発電機には、2極の回転界磁形三相同期発電機が広く使われる。タービンは 50Hzの系統なら3000min⁻¹、60Hzの系統なら3600min⁻¹という高速で回転するため、これに直結する 発電機の極数は最も少ない2極が基本になる(N=120f/pの式で、極数pが小さいほど同じ周波数に 対する回転速度Nは大きくなる)。また、大電流が流れる電機子巻線は動かない固定子側に置き、 比較的小さな励磁電流だけをブラシを介して回転子側に流す回転界磁形の構成にすることで、 大電流をブラシで受け渡す必要をなくしている。

この高速回転は、回転子のにも影響する。回転子には強い遠心力がかかり続けるため、 水車発電機のように大径で磁極が突き出た突極形にはできない。タービン発電機の回転子は、 遠心力に耐えられるよう細径で軸方向に長い円筒形になる。

「回転子の形」は回転速度と対で覚えるとよい。高速回転のタービン発電機は細径・円筒形(少ない 極数・小さい半径で遠心力に耐える)、低速回転の水車発電機は大径・突極形(多い極数で低い 回転速度でも必要な周波数を作る)——回転速度が先にあって、それに合わせて回転子の形が 決まる、という順序で考えると取り違えない。

発電機の容量が大きくなるほど、電機子巻線で発生する熱(銅損)や鉄心の熱(鉄損)も増える。 これを効率よく逃がすため、大容量のタービン発電機では密封形の水素冷却方式が採用される。 水素は空気より比重が小さいため、回転子が空気を掻き回すことで生じる風損を抑えられ、また 熱伝導率が空気より高いため冷却効果にも優れる。密封した容器内に水素を封入して使うのは、 空気中の酸素と混ざると爆発の危険があるためで、水素濃度や純度を常時監視する設備とセットで 運用されている。

水素冷却の詳細特性 — 比熱・不活性性・爆発防止・軸受シール

水素冷却方式について穴埋め問題で問われるのは、比重・熱伝導率だけではない。まず比熱 (同じ温度上昇に必要な熱量)も水素は空気より大きく、これも冷却効率の高さに寄与している。 「冷却効率の高さ=比熱」「風損の小さささ=比重」というように、それぞれ別の物理量が 対応している点を区別しておきたい。

水素はまた、化学的に不活性(他の物質と反応しにくい)な気体でもある。この性質のため、 空気で満たす場合に比べて発電機内部の巻線などの絶縁物を劣化させにくい。加えて、水素ガス 圧力を高めるほど、大気圧の空気よりもコロナ放電が生じ難くなるという利点もある。

水素と空気が混ざり合うと、水素ガス濃度が一定範囲内になったときに爆発の危険性が生じる。 これを防ぐため、発電機内部の水素ガス濃度を自動的に90%以上に維持する設備が組み込まれて いる。また、発電機内の水素ガスが回転軸に沿って機外へ漏れ出さないよう、軸受の内側には 油膜によるシール機能(オイルフィルムシール)が備えられている。

水素冷却の穴埋め問題は「比熱・比重・不活性・水素濃度・軸受シール」の5点をセットで 思い出せるかがすべてだ。比熱は冷却効率、比重は風損、不活性は絶縁物への影響、水素濃度は 爆発防止(90%以上を維持)、軸受シールは油膜(窒素ガスではない)——という対応を、 それぞれ別の役割として整理しておくと取り違えない。

同期発電機の短絡比 — 鉄機械・銅機械という呼び名の意味

ここまで見てきた突極形(水車発電機)と円筒形(タービン発電機)という回転子の形の違いは、 発電機の電気的な特性にもそのままつながっている。突極形の水車発電機は、鉄心の鉄量が多く 体格も大きいことから鉄機械、円筒形のタービン発電機は、大きな出力を得るために電機子 巻線の導体量(銅量)を増やす構造であることから銅機械とも呼ばれる。

この呼び名の違いは、短絡比という指標の大小と結びついている。短絡比とは、無負荷で 定格電圧を発生させるのに必要な励磁電流と、端子を短絡した状態で定格電流を流すのに必要な 励磁電流との比で表される値で、この値が大きいほど、発電機の同期インピーダンス(百分率 同期インピーダンス%Zs)は小さくなるという近似的な逆数の関係にある。

K100%ZsK \approx \frac{100}{\%Z_s}

鉄機械(突極形・水車発電機)は体格が大きく重量も重いぶん高価になるが、短絡比が大きく、 同期インピーダンスは小さい。この結果、負荷変動に対する電圧変動率が小さく、系統に 事故が起きたときの安定度も高く、さらに線路の静電容量による進み電流(充電電流)を 無理なく受け入れられる線路充電容量も大きいという利点を持つ。

一方、銅機械(円筒形・タービン発電機)は、高速回転に適したコンパクトな構造ゆえに界磁 巻線を施せる場所が制約され、大きな出力を得るには電機子巻線の導体量を増やすほかない。 そのため短絡比は小さく、同期インピーダンスは大きくなる。電圧変動率・安定度・線路充電 容量のいずれも鉄機械には及ばないが、その分小形・軽量・経済的という利点を持つ。

短絡比の大小と同期インピーダンスの大小は「反比例」の関係にあることをまず押さえる。 そのうえで「短絡比が大きい=鉄機械(水車発電機・突極形)=電圧変動率小・安定度高・ 線路充電容量大」「短絡比が小さい=銅機械(タービン発電機・円筒形)=コンパクトで経済的」 という2つの型をセットで覚えれば、回転子の形の違いから電気的特性まで芋づる式に導き出せる。

ガバナフリー運転と速度調定率 — 複数の発電機が周波数変化をどう分担するか

ここまでは1台の発電機・1つのサイクルの中の効率の話だったが、実際の電力系統には多数の 発電機が同時に接続され、常に変動する需要に合わせて出力を調整し合っている。この調整の 土台になっているのがガバナフリー運転速度調定率の考え方だ。

発電機には、タービンの回転速度(=系統周波数)を検出し、蒸気弁や水量調整弁の開度を 自動で加減する調速機(ガバナ)が付いている。需要が増えて系統周波数がわずかに下がると、 ガバナがそれを検知して自動的に出力を増やす方向に弁を開く——これがガバナフリー運転で、 系統全体の周波数を一定に保つための最も基本的な自動応答になる。

このとき、周波数の変化量に対して出力をどれだけ変化させるかという発電機ごとの特性を表すのが 速度調定率Rだ。

R=Δf/fnΔP/Pn×100[%]R = \frac{\Delta f / f_n}{\Delta P / P_n} \times 100 \quad [\%]

Δf\Delta fは周波数の変化量、fnf_nは定格周波数、ΔP\Delta Pは出力の変化量、PnP_nは定格出力だ。 Rは「出力を100%変化させるのに必要な周波数の変化率」を表す指標で、Rが小さい発電機ほど、 わずかな周波数変化で大きく出力を変化させる——つまり周波数調整への寄与が大きくなる。

速度調定率の式は、上の式をΔPについて解いた形で覚えておくと、複数台の分担計算にそのまま 使える。 ΔP=Pn×Δffn×100R\Delta P = P_n \times \frac{\Delta f}{f_n} \times \frac{100}{R}

同じ系統に同期して接続されている発電機は、瞬時値としては全て同じ1つの周波数変化Δfを 共有する。発電機ごとに違うのはΔfではなく、定格出力PnP_nと速度調定率RRであり、この2つの 違いから、それぞれの発電機がどれだけ出力を分担するかが決まる。

例題

定格出力500MW・速度調定率4%の火力発電機Aと、定格出力200MW・速度調定率5%の水力発電機Bが 同じ系統に接続され、両機ともガバナフリー運転を行っている。負荷が急増して系統周波数が50Hzから 0.1Hz低下したとき、それぞれの出力増加分は次のように求まる。

ΔPA=500×0.150×1004=500×0.002×25=25MW\Delta P_A = 500 \times \frac{0.1}{50} \times \frac{100}{4} = 500 \times 0.002 \times 25 = 25\text{MW} ΔPB=200×0.150×1005=200×0.002×20=8MW\Delta P_B = 200 \times \frac{0.1}{50} \times \frac{100}{5} = 200 \times 0.002 \times 20 = 8\text{MW}

定格出力はAがBの2.5倍あるが、速度調定率もAの方がBより小さいため、出力増加分の比(25MW対8MW)は 定格出力の比よりもさらにAに偏る結果になる。定格出力と速度調定率、両方を確認しないと分担は 求められない、という点がこの計算の要点だ。

燃焼反応とCO2排出量の計算 — 反応式の重量比から逆算する

ここまで見てきた熱効率が「投入した熱のうち、どれだけを電気に変えられたか」という割合の 話だったのに対し、火力発電所が排出する二酸化炭素(CO2)の量は、燃料そのものの 化学的な燃焼反応から計算できる。

石炭・重油などの燃料には炭素・水素などの成分が含まれており、燃焼するとそれぞれ次の 反応を起こす。

C+O2CO2,2H2+O22H2O\text{C} + \text{O}_2 \to \text{CO}_2, \qquad 2\text{H}_2 + \text{O}_2 \to 2\text{H}_2\text{O}

このうち、CO2を発生させるのは炭素の燃焼だけだ。水素の燃焼は水(H2O)を生じるだけで、 CO2の発生には関与しない。CO2排出量を計算するときは、燃料重量のうち炭素の重量比の 部分だけを使う、という点がまず押さえるべき出発点になる。

炭素の重量からCO2の重量を求めるには、両者の原子量の比を使う。炭素の原子量は12、 CO2(炭素1個・酸素2個)の分子量は12+16×2=44なので、炭素の重量にこの比(44/12)を 掛ければ、その炭素がすべて燃焼したときに発生するCO2の重量が求まる。

CO2の重量=炭素の重量×4412\text{CO}_2\text{の重量} = \text{炭素の重量} \times \frac{44}{12}

例題

石炭消費量100t/hの火力発電所があり、石炭の化学成分は重量比で炭素が72%とする(残りの 成分は燃焼に影響しないものとする)。1時間あたりに発生するCO2の重量を求める。

まず1時間あたりの炭素消費量を求める。

100t/h×0.72=72t/h100\text{t/h} \times 0.72 = 72\text{t/h}

これに炭素とCO2の原子量比(44/12)を掛けると、

72t/h×4412=264t/h72\text{t/h} \times \frac{44}{12} = 264\text{t/h}
この計算でつまずくとしたら、①炭素の重量比を先に掛け忘れて燃料の総重量のままCO2換算して しまう、②CO2換算比(44/12)を掛け忘れて炭素重量のまま答えてしまう、のどちらかがほとんどだ。 「燃料重量→(炭素の重量比を掛ける)→炭素重量→(44/12を掛ける)→CO2重量」という2段階の 掛け算を、毎回同じ順序で踏むと取りこぼさない。

理論空気量の計算 — 酸素量から空気量への「もう一手間」

CO2排出量の計算は、燃料の重量から反応式の重量比をたどる計算だった。これとよく似た構成で、 燃料を完全燃焼させるために最低限必要な空気量(理論空気量)を求める問題も出題される。

理論空気量の計算は、次の3段階で進める。

  1. 燃焼反応式(C+O2→CO2、2H2+O2→2H2O)から、燃料中の炭素・水素の物質量[mol]に見合う 必要酸素量[mol]を求める。
  2. 標準状態における気体1molの体積22.4L(=0.0224m³)を掛けて、必要な酸素の体積に換算する。
  3. 空気中の酸素濃度(体積比で約21%)で割り、酸素だけでなく空気全体としての体積に 割り戻す。
理論空気量=理論酸素量0.21\text{理論空気量} = \frac{\text{理論酸素量}}{0.21}
つまずきやすいのは3番目の手順だ。燃焼に直接使われるのは酸素だが、ボイラへ実際に送り込むのは 空気であり、空気中の酸素はおよそ21%しか含まれていない。理論酸素量を求めた時点で満足せず、 必ず0.21で割って空気全体の体積に直す一手間を踏む。理論空気量は理論酸素量のおよそ100/21≒4.8倍 になる、という桁の感覚を覚えておくと検算にも使える。

例題

炭素12kg(炭素の原子量12、1molの気体標準状態の体積を22.4Lとする)を完全燃焼させるために 必要な理論空気量を求める。

まず炭素の物質量を求める。

12,000g÷12g/mol=1,000mol12{,}000\text{g} \div 12\text{g/mol} = 1{,}000\text{mol}

C+O2→CO2より、炭素1molの燃焼に酸素1molが必要なので、必要な酸素量は1,000mol。これを体積に 換算すると、

1,000mol×22.4L/mol=22,400L=22.4m31{,}000\text{mol} \times 22.4\text{L/mol} = 22{,}400\text{L} = 22.4\text{m}^3

最後に酸素濃度21%で割り、理論空気量を求める。

22.4m3÷0.21106.7m322.4\text{m}^3 \div 0.21 \approx 106.7\text{m}^3

実務との接点 — 「無駄をどれだけ減らせるか」という発想は電材業界にも通じる

火力発電の熱効率向上策——投入したエネルギーのうち、実際に使える割合をどれだけ増やせるか ——という発想は、受変電設備の力率改善にも通じる。進相コンデンサを設置して力率を改善するのも、 「投入した電力のうち、実際に仕事に使える有効電力の割合を増やす」という意味では、 火力発電所が再熱・再生サイクルで熱効率を上げる考え方と本質的に同じ構造をしている。

冒頭の「熱効率41%」の意味と、残り59%がどこへ消えているのか——答え合わせは理解度チェックの 最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 熱効率の公式で3600を掛け忘れる、またはB・Hの単位(時間あたりか瞬間値か)を混同する

    なぜ引っかかるP[kW]は瞬間出力、B[kg/h]は1時間あたりの消費量というように、時間の扱いが式の項目ごとに異なるため、単位をそろえる3600という係数の意味を意識しないと計算を誤りやすい。

    見破り方P[kW]を1時間分の電力量[kWh]とみなし、それをkJに直すために3600を掛けている、という導出の意味を毎回思い出してから式を立てる。

  2. 再生サイクルの給水加熱器が上げているのは『給水の温度』であって、『抽気した蒸気そのものの温度』ではないという区別を見落とす

    なぜ引っかかる『抽気した蒸気で給水を温める』という一連の流れを、言葉の上で『抽気温度を上げる仕組み』と読み違えやすい。実際に温度が上がるのはボイラへ送る給水の方であり、抽気してきた蒸気自体の温度をさらに上げているわけではない。

    見破り方『何の温度が、何によって上がるのか』を主語で区別する。再生サイクルでは、タービンから抽気した蒸気が持つ熱を使って給水を温める(給水温度が上がる)のであって、抽気された蒸気そのものの温度を上げる操作ではない。蒸気の温度を上げ直す操作は、再熱サイクル(ボイラの再熱器で蒸気を再加熱する)の役割であり、再生サイクルとは別物だと区別する。

  3. 蒸気の温度・圧力を上げることが効率向上につながる理由を理解せず、対策名だけを丸暗記する

    なぜ引っかかる個々の対策(再熱・再生・高温高圧化・コンバインドサイクル)を名前だけで暗記していると、設問で条件が変わったときにどれが当てはまるか判断できなくなる。

    見破り方それぞれの対策が「投入した熱をどれだけ無駄なく仕事に変えるか」という一つの原則にどうつながっているかを、自分の言葉で説明できるかを確認する。

  4. 復水器を「排熱を捨てるだけの後処理設備」と誤解する

    なぜ引っかかる冷やして水に戻すという見た目の動作だけを見ると、効率とは無関係な後処理に思える。

    見破り方復水器がタービン出口の圧力を下げていること、圧力差が大きいほどタービンで取り出せる仕事が増えることを、圧力差と仕事量の関係として押さえておく。

  5. 非常調速機・燃料遮断弁・安全弁・トリップ装置・比率差動継電器を、名前だけで丸暗記して保護対象を取り違える

    なぜ引っかかるどれも「異常時に何かを止める・遮断する」装置という点で似ており、名前と保護対象(タービンの回転速度、ボイラ水の循環、蒸気圧力、軸受油圧、発電機内部の短絡)の対応を覚えないまま名称だけ暗記すると混同しやすい。

    見破り方「何が異常になったら」「どこで検知して」「何を止めるか」を装置ごとに一文で言えるかを確認する。タービン系(非常調速機・トリップ装置)、ボイラ系(燃料遮断弁・安全弁)、発電機系(比率差動継電器)と保護対象で3グループに分けて覚えるとよい。

  6. 衝動タービンと反動タービンを名前の印象だけで覚え、羽根前後の圧力変化の有無や適した蒸気条件を逆に覚えてしまう

    なぜ引っかかる「衝動」「反動」という名前だけでは、どちらが羽根の中でも蒸気を膨張させているかが直感的に分かりにくい。

    見破り方「ノズル(固定部)だけで一気に膨張・加速させてから羽根にぶつける=衝動タービン、羽根自体(固定羽根・回転羽根の両方)でも蒸気を膨張させ続ける=反動タービン」という、圧力降下がどこで起きるかの違いから考え直す。衝動タービンは羽根の前後で蒸気圧力がほぼ等しく圧力の高い蒸気に向き、反動タービンは羽根の中でも圧力が下がり比較的圧力の低い蒸気に向く、という対応をセットで覚える。

  7. タービン発電機の回転子構造を、水車発電機と同じ大径・多極の突極形だと思い込む

    なぜ引っかかる「発電機の回転子」という共通のくくりで覚えていると、水力発電(低速回転)向けの突極形のイメージをそのままタービン発電機(高速回転)に当てはめてしまいやすい。

    見破り方回転速度の違いから考え直す。タービン発電機は50Hz/60Hzに直結する高速回転(3000〜3600min⁻¹)のため、遠心力に耐えられるよう細径・軸方向に長い円筒形の回転子になる。水車発電機は低速回転のため、大径で磁極が突き出た突極形になる——回転速度と回転子の形はセットで対になっている。

  8. 短絡比が大きいほど、同期インピーダンス(%Zs)も大きくなると誤解する

    なぜ引っかかる『大きい』という言葉が短絡比・同期インピーダンスの両方に登場するため、両者が同じ向きに動くと直感的に思い込みやすい。

    見破り方短絡比Kと百分率同期インピーダンス%Zsは近似的に反比例(K≈100/%Zs)の関係にあると覚え直す。短絡比が大きい鉄機械(水車発電機)ほど同期インピーダンスは小さく、電圧変動率・安定度・線路充電容量の面で有利になる、という向きをセットで押さえる。

  9. タービン使用蒸気量の計算で、タービン効率ηを掛けるべきところを掛け忘れる、または分子と分母を取り違える

    なぜ引っかかるP=G×Δh×ηという関係を「効率をどこに掛けるか」まで意識せず、P/Δhだけで蒸気量を出してしまいやすい。効率は実際に取り出せる仕事を目減りさせる方向に働くという感覚を忘れると、分子に掛けてしまう誤りも起きやすい。

    見破り方タービン出力P[kW]は、蒸気1kgあたりの理論上の仕事Δh[kJ/kg]に蒸気量G[kg/s]とタービン効率ηを掛けたものだと考える。P=G×Δh×ηの形に式を立ててからG=P/(Δh×η)と逆算すれば、効率を分母に置くべきことを毎回導き直せる。

  10. 並列運転する複数の発電機について、系統周波数の変化Δfがそれぞれの発電機で別々の値になると誤解する

    なぜ引っかかる発電機ごとに速度調定率Rや定格容量Pnが異なるため、出力の変化量ΔPも当然それぞれ異なる。この『発電機ごとに違う』という感覚を、周波数変化Δf自体にまで広げて誤解してしまいやすい。

    見破り方同じ系統に同期して接続されている発電機は、瞬時値としては全て同じ1つの周波数(同じΔf)を共有する、という大前提に立ち返る。発電機ごとに異なるのはΔfではなく、速度調定率Rと定格容量Pnであり、それによって出力分担ΔPが変わってくる。

  11. 燃料中の水素の重量も、炭素と同じようにCO2の発生量計算に含めてしまう

    なぜ引っかかる燃料の元素組成として炭素・水素の重量比がセットで与えられることが多く、両方とも「燃える成分」という共通点から、どちらもCO2排出量の計算にそのまま使ってしまいやすい。

    見破り方燃焼反応式をC+O2→CO2、2H2+O2→2H2Oと分けて書き出す。CO2を生じるのは炭素の燃焼だけであり、水素の燃焼はH2O(水)を生じるだけでCO2には関与しない、という反応式の違いに立ち返る。CO2排出量の計算には、燃料重量のうち炭素の重量比の部分だけを使う。

  12. 電気集じん装置の放電電極・集じん電極の形状を逆に覚え、線電極と平板電極のどちらが放電側かを取り違える

    なぜ引っかかる「電極」という共通の言葉でくくられているため、放電を起こす側(線電極)と、微粒子を捕集する側(平板電極)のどちらがどちらの形状かが曖昧になりやすい。

    見破り方放電電極は先端に電界を集中させて放電(コロナ放電)を起こす必要があるため、断面積が小さく先端が尖った線状の形が向く。集じん電極は帯電した微粒子を面全体で受け止めて捕集する側なので、広い面積を確保できる平板状になる、という機能の違いから形状を導き直す。

  13. 送電端電力量を求める際、所内率を掛ける対象を発電機出力の合計(発電端電力量)ではなく、個々の時間帯の出力に先に掛けてしまい二重に計算する、あるいは所内率を足し算で処理してしまう

    なぜ引っかかる所内率が「発電所内部で消費する電力の割合」だという定義を意識せずに式を立てると、(1−所内率)を掛けるべきところを、所内率をそのまま引き算・掛け算の対象に混同しやすい。

    見破り方先に全時間帯の出力×時間を単純に合計して発電端電力量[MWh]を1つの数値として確定させる。そのうえで、送電端電力量=発電端電力量×(1−所内率)という1回だけの掛け算で仕上げる、という順序を毎回踏む。

  14. 総合効率(発電端熱効率)とボイラ効率を同じものだと思い込み、η=3600×発電端電力量/(BH)×100で求めた値をそのままボイラ効率として扱ってしまう

    なぜ引っかかる『効率』という言葉が繰り返し出てくるため、燃料の熱がボイラ・タービン・発電機という3段階を経て電気になる過程を意識せずに、式1本で求まる総合効率を、その中の1段階であるボイラ効率と同一視してしまいやすい。

    見破り方η=3600×発電端電力量/(BH)×100で求まるのはボイラ・タービン室・発電機の3段階すべてを通した総合効率(発電端熱効率)であり、η総合=ηB×ηT×ηGという積の形をしている。ボイラ効率ηBだけを知りたい場合は、先に総合効率を求め、そこからタービン室効率ηT・発電機効率ηGで割り戻す(ηB=η総合/(ηT×ηG))という、もう1段階の計算が必要になる。

  15. 水素冷却の穴埋め問題で、比熱と比重、活性と不活性を取り違える

    なぜ引っかかる『冷却効率が高い理由』も『風損が小さい理由』も、どちらも水素の物性値に関する話という点で似ており、比熱(熱を蓄える能力)と比重(密度)のどちらが冷却効率に、どちらが風損に対応するかを逆に覚えやすい。また『活性』『不活性』も日常語としての印象が薄く、どちらが絶縁物に優しいかを迷いやすい。

    見破り方『冷却効率が高い=比熱が大きい(同じ体積でより多くの熱を運べる)』『風損が小さい=比重が小さい(軽いので掻き回す抵抗が小さい)』という対応を、それぞれ別の物理量として覚え直す。絶縁物への影響は『不活性=反応しにくい=劣化させにくい』という言葉の意味そのものから素直に導ける。

  16. ターニング装置を非常調速機と同じ『タービンの回転を止める・制御する装置』として混同する

    なぜ引っかかるどちらもタービンの回転に関わる装置という点で似ており、名前だけを見ると役割の違い(運転中に異常時の回転上昇を止めるのか、停止中に低速回転させ続けるのか)が曖昧になりやすい。

    見破り方非常調速機は『運転中の異常な回転速度上昇を止める』保護装置、ターニング装置は『停止中の高温ロータを低速でゆっくり回し続け、曲がりを防ぐ』装置——動いているときの話か、止まっているときの話かで区別する。

  17. 理論空気量の計算で、燃焼に必要な酸素の物質量・体積までは求めたのに、そのまま空気の体積として扱ってしまう(酸素濃度21%で割る最後の一手間を忘れる)

    なぜ引っかかる燃焼に直接使われるのは酸素だが、実際にボイラへ供給するのは空気であり、空気中の酸素濃度は体積比で約21%しかない。理論酸素量を求めた時点で計算が終わったと錯覚しやすい。

    見破り方『理論酸素量→理論空気量』の変換では、必ず酸素濃度21%で割る一手間が必要だと覚え直す。理論空気量は理論酸素量のおよそ100/21≒4.8倍になる、という桁の感覚を検算に使う。

  18. 脱硝(NOx除去)と脱硫(SOx除去)で使う薬剤・方式を取り違え、アンモニアで硫黄酸化物を、石灰石で窒素酸化物を除去すると誤解する

    なぜ引っかかるどちらも『排ガス中の有害物質を薬剤で除去する』という共通の枠組みで語られるため、アンモニア+触媒(脱硝)と、石灰石+水(脱硫)の対応が入れ替わりやすい。

    見破り方名前の由来から覚え直す。脱硝=窒素酸化物(NOx)の除去=アンモニアを触媒上で反応させる接触還元法。脱硫=硫黄酸化物(SOx)の除去=石灰石(炭酸カルシウム)と水の混合液で吸収し石こうを副生する湿式石灰石-石こう法。二段燃焼法・排ガス混合法は、これらとは別の『燃焼段階でNOx生成そのものを抑える』対策であることもセットで区別する。

参考文献・出典

理解度チェック(35問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、35問で確認しよう。 内訳は基本16問・応用12問・ひっかけ7問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 35 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 火力発電はボイラ→タービン→復水器→給水ポンプ→ボイラと巡るランキンサイクルで、蒸気の熱エネルギーをタービンの回転エネルギーに変える
  2. 熱効率はη=3600P/(BH)×100[%]で求まる。Pは発電機出力[kW]、Bは燃料消費量[kg/h]、Hは燃料発熱量[kJ/kg]
  3. 熱効率を上げる代表的な工夫は、再熱サイクル・再生サイクル・蒸気の高温高圧化・コンバインドサイクル
  4. 再生サイクルの給水加熱器は、ボイラへ送る給水の温度を上げる(=ボイラで投入すべき熱量を減らす)ための設備であり、タービンから抽気した蒸気そのものの温度(抽気温度)を上げているわけではない。『給水温度』と『抽気温度』は指している対象がそもそも違う
  5. 復水器は蒸気を冷やして水に戻すだけでなく、タービン出口側を真空に近づけることで効率そのものを底上げしている
  6. 汽力発電所には非常調速機・燃料遮断弁・安全弁・トリップ装置・比率差動継電器など、タービン・ボイラ・発電機それぞれを守る保護装置が何重にも組み込まれている
  7. 衝動タービンは蒸気をノズルで加速・膨張させてから羽根にぶつける方式で、羽根の入口と出口で蒸気圧力はほぼ等しく、圧力が高い蒸気条件に向く。反動タービンは固定羽根でも蒸気を膨張させ排気の反動力も回転力として利用する方式で、羽根の入口と出口で圧力が下がり、比較的圧力の低い蒸気条件に向く
  8. 火力発電所のタービン発電機には、2極の回転界磁形三相同期発電機が広く使われる。タービンの高速回転(50Hzで3000min⁻¹、60Hzで3600min⁻¹)に合わせるための極数の少なさと、大電流が流れる電機子巻線を固定子側に置き、ブラシを介する励磁電流だけを回転子側に流す回転界磁形の構成が理由。高速回転による強い遠心力に耐える必要から、回転子は水車発電機のような大径・多極の突極形ではなく、細径で軸方向に長い円筒形になる。発電機の大容量化に伴い、大容量機では密封形の水素冷却方式が採用される。水素は空気より比重が小さく風損(回転による空気抵抗の損失)が少なく、熱伝導率も高いため冷却効果に優れる
  9. 水車発電機(突極形)は鉄心の鉄量が多く体格も大きいことから鉄機械、タービン発電機(円筒形)は電機子巻線の導体量(銅量)が多いことから銅機械とも呼ばれる。この呼び名は短絡比の大小と結びつき、短絡比が大きいほど同期インピーダンス(百分率同期インピーダンス%Zs)は小さくなるという近似的な逆数関係(短絡比K≈100/%Zs)にある。鉄機械(水車発電機)は短絡比が大きく同期インピーダンスが小さいぶん、電圧変動率が小さく、安定度が高く、線路充電容量も大きいが、体格が大きく高価になる。銅機械(タービン発電機)は逆にコンパクト・経済的な一方、短絡比は小さく同期インピーダンスは大きい
  10. タービンの使用蒸気量はG[kg/s]=P/(Δh×η)(P:タービン出力、Δh:タービン入口と復水器入口のエンタルピー差、η:タービン効率)で求まり、ボイラでは水・蒸気側が節炭器→蒸気ドラム→過熱器→(再熱器)、燃焼ガス側が過熱器→節炭器→空気予熱器→電気集じん装置の順に主要設備を通過する
  11. 速度調定率R[%]は、周波数(回転速度)の変化率に対する出力変化率の割合を表す指標で、R=(Δf/fn)/(ΔP/Pn)×100という式で定義される。同じ系統に同期して接続されガバナフリー運転をしている複数の発電機は、系統に生じた周波数変化Δfを共有するため、この式を変形したΔP=Pn×(Δf/fn)×(100/R)から、各発電機の出力分担を個別に計算できる
  12. 火力発電の燃焼反応は、炭素がC+O2→CO2、水素が2H2+O2→2H2Oという反応式にしたがう。燃料中の炭素の重量に、二酸化炭素と炭素の原子量の比(CO2/C=44/12)を掛ければ、その炭素分がすべて燃焼したときに発生するCO2の重量が求まる。水素の燃焼はH2Oを生じるだけでCO2の発生には関与しない点に注意する
  13. 燃料を完全燃焼させるために必要な最小限の空気量を理論空気量と呼ぶ。求め方は3段階:①燃焼反応式(C+O2→CO2、2H2+O2→2H2O)から、燃料中の炭素・水素の物質量[mol]に対応する必要酸素量[mol]を求める、②標準状態の気体1molの体積22.4Lを掛けて必要な酸素の体積に換算する、③空気中の酸素濃度(約21%)で割って、酸素だけでなく空気全体としての体積に割り戻す。理論空気量は理論酸素量よりおよそ100/21≒4.8倍大きくなる
  14. 火力発電所の排ガス対策には、窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝と、硫黄酸化物(SOx)を除去する脱硫がある。脱硝の代表的な方式である接触還元法は、排ガス中にアンモニアを注入し、触媒上で窒素酸化物を窒素と水に分解する。脱硫の代表的な方式である湿式石灰石-石こう法は、石灰石と水の混合液(石灰石スラリー)で排ガス中の硫黄酸化物を吸収・除去し、副産物として石こうを回収する。これらとは別に、燃焼段階そのものでNOxの生成を抑える方法もあり、二段燃焼法は燃焼用空気を二段階に分けて供給し、一次燃焼域を空気不足(燃料過剰)にしてNOxの生成を抑えたうえで、二次燃焼域で残りの空気を供給して完全燃焼させる。排ガス混合(再循環)法は、燃焼用空気に排ガスの一部を再循環・混合することで燃焼温度を下げ、NOxの生成を抑制する
  15. ボイラは水の循環方式によって自然循環ボイラ・強制循環ボイラ・貫流ボイラに分けられる。蒸気ドラムを持つボイラでは、内部の汽水分離器が蒸発管から送られてくる飽和蒸気と水を分離し、蒸気だけを過熱器へ送る
  16. 電気集じん装置は、線状の放電電極と平板状の集じん電極の間に高電圧を印加してコロナ放電を起こし、生じたイオンで灰じんなどの微粒子を帯電させ、クーロン力で集じん電極に捕集する。集じん電極に付着した微粒子は槌でたたくなどして落とし、灰として回収する
  17. 発電機出力が時間帯によって変化するとき、送電端電力量[MWh]は、各時間帯の発電機出力[MW]×時間[h]を合計した発電端電力量に、所内率(発電所内部で消費する電力の割合)を差し引いた(1−所内率)を掛けて求める。発電端熱効率はこの発電端電力量を使い、η=3600×発電端電力量[kWh]/(燃料消費量[kg]×発熱量[kJ/kg])×100で計算する
  18. 発電端熱効率(総合効率)は、ボイラ効率ηB(燃料の発熱量のうち、ボイラで蒸気が実際に受け取った熱の割合)・タービン室効率ηT(蒸気の熱エネルギーのうち、タービン軸出力に変換できた割合)・発電機効率ηG(タービン軸出力のうち、電気出力に変換できた割合)の3段階の積、η総合=ηB×ηT×ηGに分解できる。送電端電力量・所内率からまず発電端電力量とη総合を求め、ηT・ηGが分かっていればηB=η総合/(ηT×ηG)として、直接測定しにくいボイラ効率を逆算できる
  19. 大容量タービン発電機の水素冷却方式には、比重の小ささ・熱伝導率の高さ以外にも押さえるべき性質がある。水素は比熱(同じ温度上昇に必要な熱量)が空気より大きく、これも冷却効率の高さに寄与する。また水素は化学的に不活性(他の物質と反応しにくい)であるため、空気で満たす場合に比べて巻線などの絶縁物を劣化させにくい。水素と空気が混ざると一定の濃度範囲で爆発の危険があるため、自動的に水素ガス濃度を90%以上に維持する設備を備え、発電機内部の水素が回転軸に沿って機外へ漏れないよう、軸受の内側に油膜によるシール機構を設けている
  20. 汽力発電所のタービンには、非常調速機などの運転中の保護装置とは別に、停止中のロータを守るターニング装置がある。タービン停止直後は高温のロータが自重でわずかにたわむ(曲がる)おそれがあるため、ターニング装置で低速回転させ続けることで、ロータが局所的に冷えて変形するのを防ぐ
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