考えてみよう
設備更新の相談を受けた工場から、古い変圧器の銘板に書かれた「150kVA」という数字だけが
手がかりとして渡された。設備台帳を洗い出すと、電動機やヒーターの定格容量の合計は230kW。
力率はおおむね0.9だという。
需要率も不等率も分かっているのに、このままでは新しい変圧器の容量をいくつで提案すればいいのか
判断がつかない。需要電力から変圧器容量まで、あと1つ足りない計算がある。
このトピックを読み終えるころには、需要率・不等率で求めた需要電力から、実際にカタログで
選ぶべき変圧器容量まで、迷わず一本の計算でつなげられるようになっている。
種明かしは、需要率・不等率の計算が「有効電力(kW)」の世界で完結するのに対し、
変圧器のカタログはすべて「皮相電力(kVA)」で表記されているという、単位のズレにある。
このズレを埋めるのが力率(cosφ)だ。
変圧器容量は「有効電力」ではなく「皮相電力」で決まる
需要率・不等率を使って求めた合成最大需要電力は、有効電力(kW)——実際に仕事をする電力の値だ。
だが変圧器のカタログを見ると、容量は必ずkVA(皮相電力)で書かれている。この2つを結びつけるのが力率で、
cosφ=皮相電力有効電力
という関係にある。この式を皮相電力について解くと、
変圧器容量[kVA]=cosφ合成最大需要電力[kW]
となる。力率は1以下の値なので、有効電力を力率で割ると、必ずそれより大きい値になる。
例題
合成最大需要電力90kW、力率0.9のとき、必要な変圧器容量はいくらか。
0.990kW=100kVA
迷ったら「掛けると小さくなる、割ると大きくなる」で検算する。力率は1以下の値だから、
有効電力に力率を掛けると値は小さくなり、割ると大きくなる。皮相電力(変圧器容量)は
有効電力より必ず大きいはずなので、割り算が正しいと確認できる。
規格容量から選ぶ — 「計算値以上」が鉄則
計算で出た必要容量ぴったりの変圧器が市販されているとは限らない。変圧器は50kVA、75kVA、
100kVA、150kVA、200kVAというように、あらかじめ決められた規格容量の中から選ぶのが実務だ。
このとき鉄則になるのが、計算値「以上」で最も近い規格容量を選ぶこと。計算値をわずかでも
下回る容量を選んでしまうと、通常の使用でも過負荷になり、変圧器の劣化や保護装置の動作(停電)
につながる。
例題
必要な変圧器容量が計算上138kVAだった場合、100kVA・150kVA・200kVAという規格容量の中から
どれを選ぶべきか。
138kVAに最も近いのは100kVAだが、これでは必要量を下回ってしまう。150kVAを選ぶのが正しい。
「一番近い値」ではなく「計算値以上で一番近い値」という条件を、常にセットで意識する必要がある。
需要率・不等率から変圧器容量までの一本の流れ
ここまでの内容と前のトピックの需要率・不等率を組み合わせると、次のような一続きの計算になる。
- 各設備の設備容量 × 需要率 → 個々の最大需要電力[kW]
- 個々の最大需要電力の合計 ÷ 不等率 → 合成最大需要電力[kW]
- 合成最大需要電力 ÷ 力率 → 必要な変圧器容量[kVA]
- 規格容量の中から、3の計算値以上で最も近いものを選定
例題
設備容量150kW・需要率60%の設備Aと、設備容量100kW・需要率50%の設備Bがある。不等率1.4、
力率0.9として、必要な変圧器容量を求める。
A:150×0.6=90kW,B:100×0.5=50kW
合成最大需要電力=1.490+50=1.4140=100kW
必要な変圧器容量=0.9100≈111kVA
規格容量の中に100kVAと150kVAがあれば、111kVAを下回る100kVAでは不足するため、150kVAを選ぶことになる。
変圧器のV結線(V-V結線)— 3台のうち1台が使えなくなったときの運用
単相変圧器3台をΔ-Δ結線にして三相電力を供給しているバンクで、1台が故障・停止したとき、残りの2台をV結線(V-V結線)に組み替えれば、応急的に三相電力の供給を続けることができる。
単相変圧器の定格容量をP[kVA]とすると、V結線としたときにバンク全体で供給できる容量(V結線容量)PVは、Δ-Δ結線時の3台合計3P[kVA]よりも小さくなり、次の関係になる。
PV=3×P
2台の変圧器を使っているのに、単純に2Pではなく√3×P(≈1.73×P)にしかならない。2台分の定格容量の合計2Pに対する実際に取り出せる容量$P_V$の比(変圧器利用率)は、$P_V/2P=\sqrt{3}/2\approx0.866$となり、2台分の能力を100%使い切れているわけではない。「2台使っても√3倍にしかならない」という感覚のずれが、V結線を扱う設問で見落としやすいポイントだ。
例題
定格容量40kVAの単相変圧器3台をΔ-Δ結線にして、消費電力60kW(遅れ力率0.90)の三相平衡負荷に電力を供給していた。3台のうち1台が故障し、残りの2台をV結線として使用する場合、このバンクは定格容量に対して過負荷になるか。
V結線としたときのバンク容量は、
PV=3×40≈69.3 kVA
負荷の皮相電力は、消費電力60kWを力率0.90で割って求める。
S=0.9060≈66.7 kVA
66.7kVAは、V結線バンクの容量69.3kVAを下回っているため、この例ではV結線に切り替えても過負荷にはならない。
V結線への切替えで過負荷になるかどうかは、「負荷の皮相電力(消費電力÷力率)」と「V結線バンクの容量(√3×単相変圧器1台の定格容量)」の大小関係で決まる。負荷の皮相電力がV結線容量を上回っていれば、その差がそのまま過負荷量[kVA]になる。故障後も負荷を減らさずに運用を続けたい場合、この過負荷の有無をまず確認する必要がある。
力率改善後の消費電力を、バンク容量から逆算する
V結線・Δ-Δ結線を問わず、変圧器バンクが供給できる皮相電力には上限(バンクの定格容量)がある。この上限いっぱいまで三相負荷に電力を供給しているとき、力率が分かれば、そのとき接続されている負荷の消費電力(有効電力)を逆算できる。
P負荷=Sバンク容量×cosθ
例えば、Δ-Δ結線に復旧した定格容量120kVAのバンクに、力率改善用の進相コンデンサを接続し、バンクの定格容量を超えない範囲で最大限まで三相平衡負荷を増やしたところ、力率が0.95(遅れ)になったとする。このときの負荷の消費電力は、
P負荷=120×0.95=114 kW
進相コンデンサを接続すると、負荷全体(電源側から見た)の力率が改善される(1に近づく)。同じ皮相電力(バンクの定格容量いっぱい)でも、力率が高いほど、そこに乗せられる有効電力(消費電力)は大きくなる。「コンデンサを追加した分だけ、負荷の消費電力そのものが自動的に増える」わけではなく、あくまで力率が改善された結果、同じ皮相電力の枠の中により多くの有効電力を収められるようになる、という関係を区別しておく。
力率改善に必要な進相コンデンサの容量を計算する
ここまでは、力率を「所与の値」として扱い、有効電力から変圧器容量(皮相電力)を逆算する話だった。実務ではもう一歩踏み込んで、「力率が悪い負荷に、どれだけの容量の進相コンデンサを追加すれば、目標の力率まで改善できるか」を計算する場面がある。
力率改善の考え方は、電力を有効電力(P)・無効電力(Q)・皮相電力(S)の直角三角形で捉えるところから始まる。負荷の有効電力Pは変わらないまま、コンデンサが打ち消す無効電力の分だけ、皮相電力(見かけの電力)が小さくなる——これが力率改善の仕組みだ。
改善前の力率をcosθ1、改善後の力率をcosθ2とすると、必要な進相コンデンサの容量Q[kvar]は、次の式で求められる。
Q=P×(tanθ1−tanθ2)
tanθは、cosθから sinθ=√(1−cos²θ) を求め、tanθ=sinθ/cosθの順に計算する。
例題
有効電力200kW、力率0.6(遅れ、sinθ1=0.8)の負荷の力率を1.0まで改善するために必要な進相コンデンサの容量を求める。
tanθ1=0.60.8≈1.333,tanθ2=0(力率1.0のとき)
Q=200×(1.333−0)≈267kvar
Qの式で使うのはcosθの差ではなく、tanθの差だ。コンデンサが打ち消しているのは無効電力(P×tanθ)であって、力率という比率そのものではない。「力率の差をそのまま使えばよい」という直感に流されず、いったんtanθ(無効電力と有効電力の比)に変換してから引き算する、という一手間を忘れないようにする。
力率を1.0まで完全に改善する必要は、実務上は必ずしもない。目標をcosθ=0.9程度に置くケースも多い。この場合はtanθ2も0ではなくなるため、改善前後のtanθをそれぞれ求めてから差を取る、という同じ手順を繰り返すことになる。
直列リアクトル付き進相コンデンサ — なぜコンデンサの端子電圧は回路電圧より高くなるのか
実際の高圧受電設備では、進相コンデンサを単体で接続するのではなく、コンデンサと直列にリアクトル(SR:直列リアクトル)を接続した「進相コンデンサ設備」として施設することが多い。直列リアクトルの主な目的は、電源側や負荷側で発生する高調波電流がコンデンサに集中して流れ込むのを抑制することにある。
ここで見落としやすいのが、この直列リアクトルが、コンデンサ自身の端子電圧を回路電圧より高く押し上げてしまう、という副作用だ。
コンデンサSCとリアクトルSRが直列に接続された回路を、線間電圧Vの高圧回路に接続する状況を考える。コンデンサのリアクタンスをXC、リアクトルのリアクタンスをXLとすると、この直列回路に流れる電流Iは、コンデンサとリアクトルのリアクタンスが打ち消し合った実効リアクタンス(XC−XL)によって決まる。
I=XC−XLV
このIがコンデンサ自身にかかる電圧V_SCは、I×XCで求められる。
VSC=I×XC=XC−XLV×XC=1−XCXLV
リアクトルのリアクタンスXLがコンデンサのリアクタンスXCのk倍(例えば6%や8%)だとすると、この式はV_SC=V/(1-k)と書き換えられる。kは1より小さい正の値なので、1-kは1より小さくなり、結果としてV_SCはVより必ず大きくなる。
例題
線間電圧3,000Vの高圧回路に、直列リアクトル付き三相コンデンサ設備を接続する。リアクトルSRのリアクタンスXLが、コンデンサSCのリアクタンスXCの8%のとき、コンデンサSCの端子電圧を求める。
VSC=1−0.083,000=0.923,000≈3,261V
「リアクトルを直列に入れる」と聞くと、電圧降下の話と同じ感覚で「電圧が下がるはずだ」と思い込みやすい。だが実際には、コンデンサとリアクトルのリアクタンスが逆方向(進み・遅れ)に働くため、両者が打ち消し合って回路の実効的なインピーダンスは**小さくなり**、電流はむしろ**増える**。そしてこの増えた電流が、コンデンサの高いリアクタンスにそのままかかるため、コンデンサ自身の端子電圧は回路電圧より高くなる——という一見直感に反する結果になる。コンデンサを選定する際は、この電圧上昇を見込んだ定格電圧のものを選ぶ必要がある。
高調波に対するインピーダンスの変化 — 第n次高調波では、リアクトルとコンデンサが逆方向に動く
直列リアクトル付き進相コンデンサ設備を語るとき、これまでは基本波(電源周波数そのもの)だけを前提にしていた。しかし実際の受電設備には、整流器やインバータなどの高調波発生源から、基本波の整数倍の周波数を持つ高調波電流が流れ込んでくることがある。この高調波に対して、コンデンサとリアクトルはまったく逆の反応を示す。
リアクトルのリアクタンスXL、コンデンサのリアクタンスXCは、それぞれ次の式で表される。
XL=2πfL,XC=2πfC1
XLは周波数fに比例し、XCは周波数fに反比例する。第n次高調波は周波数が基本波のn倍になるため、リアクトルのインピーダンスはn倍に増加し、コンデンサのインピーダンスは1/n倍に減少する。配電線のインピーダンス(変圧器・電線路のインダクタンス分)も、リアクトルと同じくインダクタンス性なので、高調波に対してはn倍に増加する。
「高調波になるとインピーダンスが変わる」というところまでは覚えやすいが、その変化の**方向**を取り違えると計算を誤る。合言葉は「コイルは高調波で強くなる(n倍)、コンデンサは高調波で弱くなる(1/n倍)」。周波数が上がるほどコイルは電流の変化を嫌って抵抗が増し、コンデンサは電荷の出入りが追いつきやすくなって抵抗が減る、という物理的なイメージとセットで覚えると混同しにくい。
例題
基本波(50Hz)に対するインピーダンスが、配電線Ẑs1=j2Ω、直列リアクトルẐSR1=j15Ω、コンデンサẐSC1=−j300Ωである高圧進相コンデンサ設備を考える。第5次高調波に対するそれぞれのインピーダンスを求める。
Z˙S5=j2×5=j10 Ω,Z˙SR5=j15×5=j75 Ω,Z˙SC5=−j300×51=−j60 Ω
コンデンサ設備側(リアクトルとコンデンサの直列合成)のインピーダンスは、
Z˙SR5+Z˙SC5=j75−j60=j15 Ω
高調波発生機器が流し込んだ電流は、配電線側(系統)とコンデンサ設備側の、どちらか一方だけに流れるわけではない。2つの経路が並列につながっている状態なので、それぞれのインピーダンスの大きさに応じて電流が分流する(インピーダンスが小さい経路ほど、より多くの電流を引き込む)。系統に流出する高調波電流を抑えたい場合、コンデンサ設備側のインピーダンスを相対的に小さく保つ設計が意味を持つ、という理屈がここにつながる。実際の分流計算は回路の接続形態によって式が変わるため、個々の単線結線図に沿って確認する必要がある。
高圧又は特別高圧で受電する需要家には、系統に流出させる高調波電流の抑制に関するガイドラインがあり、次数ごと・電圧階級ごとに、契約電力1kW当たりの流出電流上限値[mA/kW]が示されている。需要家の契約電力にこの上限値を掛けることで、その需要家からの高調波電流の流出をどこまで許容するかという基準値を求められる。具体的な数値・適用条件(需要形態による緩和措置等)は、実務・受験ともに最新のガイドラインで確認することが前提になる。
低圧幹線の許容電流 — 電動機の割合が高いほど、太い幹線が必要になる
ここまでは「変圧器全体の容量」を扱ってきたが、変圧器から先、工場内に張り巡らされる低圧幹線(分電盤へ電気を送る太い配線)にも、それぞれ必要な太さ(許容電流)を決める計算がある。
低圧幹線に、電動機又はこれに類する起動電流が大きい機器(以下「電動機等」)と、それ以外の一般的な電気使用機械器具が接続されている場合、電気設備技術基準の解釈は、幹線に必要な許容電流Iaの求め方を、電動機等の定格電流の合計IMと、それ以外の機械器具の定格電流の合計IHの大小関係で使い分けている。
IM≤IH のとき: Ia≥IM+IH
IM>IH のとき: Ia≥1.25×IM+IH (IM≤50A),Ia≥1.1×IM+IH (IM>50A)
なぜIM>IHになった途端に割増しが必要になるのか。電動機は起動する瞬間、定格電流よりずっと大きな起動電流を一時的に流すという性質を持つ。電動機等の割合(IM)が全体の中で大きいほど、幹線が同時にさらされる起動電流のインパクトも大きくなるため、単純な合計(IM+IH)では足りず、IMの側にだけ割増し係数(1.25倍または1.1倍)を掛ける。IMが大きくなるほど幹線が太くなるという傾向自体は変わらないが、割増しの掛け方に一段階の判定が挟まる、という構造を押さえておく。
例題
低圧幹線に接続される電動機等の定格電流の合計IMが40A、他の電気使用機械器具の定格電流の合計IHが20Aのとき、必要な幹線の許容電流Iaを求める。IM(40A)はIH(20A)より大きく、かつ50A以下なので、
Ia≥1.25×40+20=50+20=70A
幹線を保護する過電流遮断器の定格電流 — 「小さいほうを取る」という考え方
幹線の太さ(許容電流Ia)が決まったら、次はその幹線を保護する過電流遮断器の定格電流Ibを決める。ここにも、電動機等の起動電流を踏まえた考え方が出てくる。
Ib≤3×IM+IH,かつIb≤2.5×Ia
過電流遮断器の定格電流は、電動機等の起動電流を踏まえた上限(3×IM+IH)と、幹線そのものの許容電流から決まる上限(2.5×Ia)の、両方を満たさなければならない。つまり実際に使える上限は、この2つの計算値のうち小さいほうになる。
例題(続き)
先ほどのIM=40A、IH=20A、Ia=70Aの幹線を保護する過電流遮断器の定格電流Ibの上限を求める。
3×IM+IH=3×40+20=140A,2.5×Ia=2.5×70=175A
2つの値のうち小さいほうが実際の上限になるため、Ib≦140Aとなる。
「2つの式のどちらか一方だけを見て判定してしまう」のが、この計算で最も起きやすいミスだ。3×IM+IHと2.5×Iaは、それぞれ別の理由(電動機等の起動電流、幹線自体の耐量)から出てくる上限であり、遮断器はそのどちらの上限も超えてはならない。だから常に「小さいほうを採用する」という一手間を忘れないようにする。
低圧幹線の過電流遮断器は「省略」できることがある
ここまで幹線の許容電流Iaと、それを保護する過電流遮断器の定格電流Ibの上限を見てきた。この2つの計算は「幹線には必ず専用の過電流遮断器を付ける」ことを前提にしていたが、電気設備技術基準の解釈は、一定の条件を満たせば、幹線の電源側に新たに過電流遮断器を施設しなくてよい例外を認めている。
低圧幹線の電源側電路には、原則としてその低圧幹線を保護する過電流遮断器を施設しなければならない。ただし、次のいずれかに該当するときは、この施設を省略できる。
- 幹線の許容電流が、電源側の過電流遮断器の定格電流のおおむね55%以上である場合(長さの制限なし)
- 電源側の過電流遮断器に直接接続する長さおおむね8m以下の幹線であって、許容電流がその過電流遮断器の定格電流のおおむね35%以上である場合
- 電源側の過電流遮断器に直接接続する長さおおむね3m以下の幹線であって、負荷側に他の低圧幹線を接続しない場合
- 幹線に電気を供給する電源が太陽電池のみであって、幹線の許容電流がその幹線を通過する最大短絡電流以上である場合
4つの条件は「許容電流の割合」と「幹線の長さ」という2つの軸のトレードオフで整理すると覚えやすい。許容電流の割合が十分高ければ(55%以上)長さは問わない。割合がそこまで高くなくても(35%以上)、幹線が短ければ(8m以下)許容される。割合を問わないほど幹線が極端に短ければ(3m以下、ただし負荷側に他の幹線を接続しないことが条件)許容される——幹線が細く・条件が緩くなるほど、求められる長さの上限も厳しくなる、という反比例の関係になっている。太陽電池のみを電源とする場合の緩和は、この2つの軸とは別の切り口(最大短絡電流との比較)で成り立っている。
なぜこのような省略が認められるのか。過電流遮断器は本来、幹線が過電流によって焼損するのを防ぐための装置だ。幹線の許容電流が電源側遮断器の定格電流に対して十分高い割合を占めていれば、電源側の遮断器が動作する電流域に達する前に、その幹線自体が焼損するリスクは実務上小さいと考えられる。また幹線が極端に短ければ、そもそも過電流にさらされる区間・時間が限られ、リスクが小さくなる、という理屈で整理できる。
低圧屋内配線の電線の太さ — 表の値をそのまま使ってよいとは限らない
低圧幹線の許容電流Iaを計算で求めたあと、実際に電線を選ぶ場面では、もう1つ見落としやすい手順がある。電気設備技術基準の解釈が示す電線の許容電流の表は、「周囲温度30℃・電線を単独で(他の電線と束ねずに)施設する」という基準条件のもとでの値だ。実際の施工条件がこの基準からずれていれば、表の値をそのまま使うことはできない。
具体的には、次の2つの補正を、表の基本の許容電流に掛け合わせる。
- 電流減少係数 — 同一の管(金属管等)内に収める電線の数が増えるほど、電線同士が熱を持ち寄って放熱しにくくなるため、係数は小さくなる
- 周囲温度による補正係数 — 実際の周囲温度が基準の30℃より高くなるほど、電線が許容できる電流は小さくなるため、係数は1未満に小さくなる。逆に基準より低ければ1を超えることもある
実効的な許容電流=基本の許容電流×電流減少係数×温度補正係数≥負荷電流
「表に載っている許容電流の数値を、そのまま負荷電流と比べればよい」という発想が、この計算でもっとも起きやすい誤りだ。表の値は、あくまで基準条件(周囲温度30℃・単独施設)での話にすぎない。同一管内に複数の電線を収める(実務ではほぼ必ずそうなる)時点で電流減少係数が、周囲温度が基準からずれていれば温度補正係数が、それぞれ効いてくる。表の値だけを見て「これで足りる」と判断すると、実際にはオーバーヒートのリスクがある細い電線を選んでしまいかねない。
例題
三相3線式の低圧屋内配線を金属管工事で施設する。負荷電流は35A、同一管内に収める電線は4本(電流減少係数0.63)、周囲温度による温度補正係数は1.08とする。次の表(基本の許容電流、周囲温度30℃・単独施設を基準とする目安値)の中から、条件を満たす電線の公称断面積の最小値を求める。
| 公称断面積 | 基本の許容電流(目安) |
|---|
| 2.0mm² | 24A |
| 3.5mm² | 34A |
| 5.5mm² | 46A |
| 8mm² | 57A |
| 14mm² | 82A |
5.5mm²で実効的な許容電流を求めると、
46A×0.63×1.08≈31.3A
これは負荷電流35Aに届かない。8mm²で計算すると、
57A×0.63×1.08≈38.8A
35A以上を満たすため、8mm²が必要な電線の太さになる。表の基本の許容電流だけを見比べると5.5mm²(46A)でも35Aを上回るため足りるように錯覚しやすいが、電流減少係数・温度補正係数を掛けた実効値で判定しなければならない。
変圧器の1日の損失と全日効率 — 鉄損と銅損は、増え方が違う
変圧器容量を決めるときには「必要な容量以上を選ぶ」という話をしてきたが、実際に使ってみると変圧器そのものが電力を消費する——これが損失だ。変圧器の損失は、性質がまったく異なる2種類に分かれる。
- 鉄損(無負荷損) — 変圧器の鉄心を磁束が通ることで生じる損失。負荷の大小に関係なく、一次側に電圧が加わっている間は常に一定の大きさで発生し続ける
- 銅損(負荷損) — 巻線の抵抗を負荷電流が流れることで生じる損失(I²R損)。負荷電流の2乗、つまり負荷率の2乗に比例して増減する
「損失は負荷が大きいほど増える」という直感は、銅損には当てはまるが鉄損には当てはまらない。鉄損は、変圧器が無負荷(出力ゼロ)で電圧だけがかかっている状態でも、満足に発生し続ける。この違いを混同すると、1日の損失電力量の計算で鉄損にまで負荷率を掛けてしまう誤りにつながる。
1日の損失電力量を求める — 鉄損は時間だけ、銅損は負荷率の2乗×時間
1日の損失電力量を求めるには、鉄損と銅損を別々に計算してから合計する。
1日の鉄損による電力量=Pi×24h
1日の銅損による電力量=Pc×∑(負荷率2×その負荷率で運転した時間)
例題
定格容量50kVA(力率1.0で運転)、鉄損200W、全負荷時銅損800Wの変圧器が、1日のうち8時間は定格の全負荷(負荷率1.0)、残り16時間は半分の負荷(負荷率0.5)で運転したとする。
鉄損による1日の損失電力量は、負荷にかかわらず24時間分発生する。
200W×24h=4,800Wh=4.8kWh
銅損による1日の損失電力量は、負荷率の2乗を、その負荷率で運転した時間ごとに掛けて合計する。
800W×(1.02×8h+0.52×16h)=800W×(8+4)h=9,600Wh=9.6kWh
1日の損失電力量は、この2つを合計した4.8+9.6=14.4kWhになる。
銅損の計算で「負荷率を2乗する」のを忘れ、そのまま1乗で掛けてしまうミスが起きやすい。負荷率0.5での運転は、負荷率1.0での運転に比べて負荷電流が半分になるが、銅損(I²R損)は電流の2乗に比例するため、損失は半分ではなく4分の1(0.5²=0.25倍)にまで落ちる。「半分の負荷だから損失も半分」という直感は、銅損には通用しない。
全日効率 — 1日を通じた「出力÷(出力+損失)」
変圧器の効率は、瞬間的な負荷率で決まる効率(規約効率)とは別に、1日を通した出力電力量と損失電力量から求める全日効率という指標がある。
全日効率=1日の出力電力量+1日の損失電力量1日の出力電力量×100 (%)
先の例題の変圧器は、8時間は50kW、16時間は25kWの出力だったので、1日の出力電力量は50×8+25×16=800kWh。損失電力量は先ほど求めた14.4kWhなので、全日効率は次のようになる。
800+14.4800×100≈98.2%
軽負荷の時間が長い変圧器ほど、負荷の大小に関係なく発生し続ける鉄損の割合が相対的に大きくなり、全日効率は下がりやすい。変圧器容量を必要以上に大きく選定すると、常に軽負荷運転になりがちで、この意味でも効率面の無駄が生じる——容量選定で「計算値ぴったりを避けつつ、過大にもしない」というバランスが求められる理由の一つが、ここにある。
水力発電所の年間発電電力量と溢水日数 — 電気施設管理としての運用計画
ここまでは「ある瞬間の変圧器容量」を扱ってきたが、電気施設管理では、水力発電所のように水量が季節で変動する電源の年間の運用計画を見積もる場面もある。この計算の出発点になるのは、電力科目でも扱う水力発電の出力の式だ。
P=9.8×Q×H×η[kW]
Qは実際に水車に使用する水量[m³/s]、Hは有効落差[m]、ηは水車効率と発電機効率を掛け合わせた総合効率だ。
電気施設管理として年間発電電力量を見積もるときに見落としやすいのが、河川から発電所へ流れ込む水量(流込み水量)と、水車が実際に使用できる水量が、常に一致するとは限らないという点だ。発電所には設備容量に対応する最大使用水量Qmaxが決まっており、流込み水量Qinがこれを上回る期間があっても、発電所はQmaxを超えて水を使うことはできない。使い切れなかった水は、そのままダム・取水口から下流へ放流するしかなく、これを溢水と呼ぶ。
年間発電電力量を見積もるときは、期間ごとに「流込み水量Qinと最大使用水量Qmaxのどちらが小さいか」をまず確認する。Qin≦Qmaxの期間は流込み水量Qinをそのまま使用水量として計算できるが、Qin>Qmaxの期間は使用水量をQmaxで頭打ちにし、超過分(Qin−Qmax)は発電に使われず放流される溢水として扱う。流込み水量をそのまま出力計算に使ってしまうと、Qmaxで頭打ちになる期間の出力を過大に見積もってしまう。
例題
ある水力発電所は、有効落差40m、総合効率0.85、最大使用水量3.0m³/sで運転している。年間を、豊水期(120日間、平均流込み水量4.0m³/s)と、それ以外の期間(245日間、平均流込み水量2.5m³/s)の2つに単純化して、年間発電電力量と溢水が発生する日数を求める。
豊水期は流込み水量(4.0m³/s)が最大使用水量(3.0m³/s)を上回るため、使用水量は3.0m³/sで頭打ちになり、超過分の1.0m³/sは溢水になる。
P1=9.8×3.0×40×0.85≈999.6kW
それ以外の期間は流込み水量(2.5m³/s)が最大使用水量(3.0m³/s)以下なので、流込み水量をそのまま使用できる。
P2=9.8×2.5×40×0.85≈833.0kW
年間発電電力量は、それぞれの期間の出力に、その期間の時間数[h]を掛けて合計する。
E=P1×120日×24h+P2×245日×24h≈999.6×2,880+833.0×5,880≈777.7万kWh
溢水が発生するのは、流込み水量が最大使用水量を上回っている豊水期の120日間である。
この計算のポイントは2つある。(1)出力は期間ごとに使用水量が変わるため、期間を分けて別々に計算してから合算する(変圧器の全日効率の計算で、負荷率ごとに損失電力量を分けて計算したのと同じ発想)。(2)溢水日数は、流込み水量が最大使用水量を「上回っている」期間の日数であって、発電所が止まっている日数ではない——豊水期の120日間も発電所はフル稼働(最大使用水量3.0m³/sで運転)しているが、それでも使い切れない水があるために溢水が生じる、という点を混同しないようにする。
設備利用率 — 「1年間フル稼働していたら」との比較
年間発電電力量を求めたあと、その発電所がどれだけ稼働率高く使われたかを一目で示す指標が設備利用率だ。
設備利用率=定格出力[kW]×8,760時間年間発電電力量[kWh]×100 (%)
8,760時間は、1年間(365日)を24時間で割らずに掛けた時間数(24h×365日)で、平年の1年間の総時間にあたる。分母の「定格出力×8,760時間」は、その発電所を1年間ずっと定格出力で運転し続けたと仮定した場合の、理論上の最大発電電力量だ。実際の年間発電電力量が、この理論上の最大値に対してどれだけの割合だったかを示すのが設備利用率になる。
例題
定格出力5,000kWの水力発電所が、1年間で3,942万kWhを発電したとする。
設備利用率=5,000×8,76039,420,000×100=43,800,00039,420,000×100≈90%
設備利用率が90%ということは、豊水期の溢水や渇水期の出力低下、点検停止などがあっても、年間を通せば定格出力の9割程度で運転し続けたのと同じだけの電力量を発電できた、ということを意味する。水力発電は、河川流量の変動や渇水、点検・補修による計画停止などがあるため、設備利用率が100%になることは通常ない。
全日効率との違い — 「損失」を扱うか「稼働実態」を扱うか
設備利用率は、前のトピックで扱った変圧器の全日効率と、式の形がよく似ているために混同しやすい。全日効率は「1日の出力電力量÷(1日の出力電力量+1日の損失電力量)×100」で、変圧器という設備そのものが、投入した電力をどれだけ無駄なく出力側に伝えられたか——効率(ロスの少なさ)を測る指標だった。一方、設備利用率は「年間発電電力量÷(定格出力×8760時間)×100」で、損失(ロス)という概念は式のどこにも出てこない。
2つの指標を見分ける手がかりは、式に「損失」が入っているかどうかだ。全日効率は分母に損失電力量を足すことで、設備自体のエネルギー変換効率を測っている。設備利用率は分母が「定格出力×時間」という理論上の最大発電量であり、実際にどれだけその最大値に近い稼働ができたかという**稼働実態**を測っている。「割合を求める式」という表面的な共通点だけで2つを同一視すると、全日効率の式に発電電力量を当てはめたり、設備利用率の式に損失電力量を混ぜ込んだりする誤りにつながる。どちらも電気施設管理の分野で扱う指標だが、「効率(ロスの少なさ)」の話か「稼働率(どれだけ使われたか)」の話かを、先に区別しておく必要がある。
なぜ電材商社の実務でこの計算が重要か
変圧器の容量選定を誤ると、影響は両方向に出る。小さく見積もりすぎれば過負荷による事故や
頻繁な保護装置の動作につながり、大きく見積もりすぎれば無駄なコストがかかるだけでなく、
軽負荷時に鉄損(無負荷でも常に発生する損失)の割合が相対的に増え、効率が落ちる。
更新提案や新設の見積もりに関わる場面では、需要率・不等率・力率という3つの数字を
一連の流れとして扱えるかどうかが、そのまま提案の精度に直結する。
冒頭の「設備容量230kW、力率0.9」の工場に、いくつの変圧器を提案すべきか——
答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。