キュービクルの中の変圧器を見ると、外箱には太い接地線が、低圧側の配電盤には別の接地線が、それぞれつながっている。同じ「接地」という言葉でも、どちらも同じ抵抗値の基準で施工されているわけではない。
しかも、変圧器の低圧側中性点につながる接地線の抵抗値は、隣の現場の同じ変圧器とは違う数値が基準になっていることがある。同じ機種の変圧器なのに、なぜ抵抗値の基準が現場ごとに変わるのか。
このトピックを読み終えるころには、キュービクルの中のどの接地線が何のためにあり、なぜB種接地工事だけが現場ごとに違う数値を持つのかを、自分で説明できるようになっている。
種明かしは、接地工事がA種からD種までの4種類に分かれ、それぞれ「何を、どんな事故から守るか」が異なる点にある。特にB種接地工事だけは、他の3種とは違う設計思想で数値が決まる。
A種・C種・D種 — 電圧が高いほど、抵抗値は厳しくなる
A種・C種・D種の3つは、対象設備の使用電圧が高いほど接地抵抗値の基準が厳しく(小さく)なる、という分かりやすい関係にある。
| 種類 | 主な対象 | 接地抵抗値 |
|---|---|---|
| A種 | 高圧・特別高圧機器の外箱、避雷器など | 10Ω以下 |
| C種 | 300Vを超える低圧機器の外箱等 | 10Ω以下(漏電遮断器0.5秒以内なら500Ω以下) |
| D種 | 300V以下の機器の外箱、コンセントの接地極等 | 100Ω以下(漏電遮断器0.5秒以内なら500Ω以下) |
A種は高圧・特別高圧という最も危険な電圧を相手にするため、3種の中で最も厳しい10Ω以下が求められる。C種とD種はどちらも低圧の機器が対象だが、300Vという境界を挟んで抵抗値が10Ω以下と100Ω以下に分かれる。300Vを超える機器は感電時のリスクがより大きいため、D種より厳しい基準になる。
いずれも0.5秒以内に動作する漏電遮断器を施設した場合、C種・D種は500Ω以下まで緩和される。遮断器が高速に電路を切ってくれるなら、接地側に求める性能はそのぶん譲ってよい、という交換条件がここにも表れている。
接地抵抗値だけでなく、接地線そのものの太さにも基準がある。A種接地工事に用いる接地線は、引張強さ1.04kN以上の容易に腐食し難い金属線、又は直径2.6mm以上の軟銅線を用いる。高圧・特別高圧機器の外箱に施す接地工事だからこそ、地絡時に流れうる大きな電流に耐え、施工中の機械的な力にも負けない太さ・強度が求められる。B種接地工事の抵抗値が1線地絡電流Igから逆算する「式」だったのに対し、接地線の太さそのものは、この後見るような系統ごとの計算を経ずに決まる、比較的固定的な基準だ。適用条件の細部(低圧電路の中性点に施設する場合の扱いなど)は、電気設備技術基準の解釈の最新版で確認すること。
B種接地工事 — 「固定値」ではなく「式」で決まる唯一の種類
ここまでの3種は、対象の電圧区分さえ分かれば抵抗値が一意に決まる。ところがB種接地工事だけは違う。
B種接地工事は、高圧または特別高圧電路と低圧電路とを結合する変圧器の低圧側中性点(中性点がない場合は低圧側の1端子)に施す接地工事だ。この接地工事の目的は、高圧側の電線が低圧側の電線と接触してしまう「高低圧混触事故」が起きたとき、低圧側の電位が異常に上昇するのを抑えることにある。
高圧の電気が万一低圧側に混触すると、低圧側の配線・機器には本来より大幅に高い電圧がかかり、感電や火災のおそれが一気に高まる。B種接地工事は、変圧器の低圧側中性点を大地としっかり結び付けておくことで、混触時に低圧側の電位が跳ね上がるのを抑える役目を負っている。
は、その変圧器が高圧側で地絡を起こしたときに流れる1線地絡電流[A]だ。変圧器の容量・電線こう長・系統の構成によって、この の大きさは現場ごとに変わる。だからB種接地工事の抵抗値は、他の3種のような固定値ではなく、 を代入して初めて決まる式として与えられている。冒頭で「同じ機種の変圧器なのに、現場ごとに基準の数値が違う」ことが起きていたのは、この が現場の系統条件によって変わるからだ。
接地する箇所は、低圧電路の構成によって変わる
ここまでは「低圧側中性点に接地する」という原則だけを見てきたが、実際にはすべての変圧器に都合よく中性点があるわけではない。電気設備技術基準の解釈は、低圧電路の構成に応じて、B種接地工事を施す箇所を次の3パターンに分けている。
- 低圧側に中性点がある電路 → 低圧側の中性点(原則)
- 低圧電路の使用電圧が300V以下で、中性点への接地が施し難い電路(単相2線式など、そもそも中性点を持たない構成) → 低圧側の1端子
- 低圧電路をあえて非接地方式で運用している電路 → 高圧巻線又は特別高圧巻線と低圧巻線との間に設けた金属製の混触防止板
単相2線式(100Vなど)の小型変圧器のように、そもそも低圧側に中性点という概念がない構成では、低圧側の1端子にB種接地工事を施す。一方、低圧電路を非接地方式にしている変圧器(絶縁変圧器で低圧側を非接地化しているケースなど)では、低圧巻線に直接つながる箇所ではなく、高圧巻線と低圧巻線の間に物理的に挟み込んだ金属製の板——混触防止板——にB種接地工事を施す。低圧巻線そのものは非接地のままにしつつ、巻線間の板を接地することで、混触時に高電圧が低圧側へそのまま伝わるのを間接的に防ぐ、という守り方になる。
遮断が速いほど、基準は緩和される
高圧側電路を自動的に遮断する装置を設けている場合、B種接地工事の抵抗値はさらに緩和される。
原則の150/Igから、300/Ig、600/Igへと、遮断が速くなるほど分子の数字が大きくなり、基準が緩和されていく。地絡が起きてもすぐに高圧側を切り離せるなら、低圧側の電位上昇にさらされる時間そのものが短くなるため、接地抵抗の側で求める性能を落としてもよい、という考え方だ。
例題
1線地絡電流 が5Aの変圧器に、高圧側電路を自動遮断する装置を設けていない場合、B種接地工事の接地抵抗値の基準はいくらか。
同じ変圧器に、1秒以内に高圧側を自動遮断する装置を追加した場合はどうか。 が3Aなら、
数値だけを見ると「200Ωの方が甘い基準」に見えるが、これは遮断装置という安全側の対策が加わったことで、接地側に求める性能を落としても総合的な安全性が保たれる、という設計だ。
Ig自体も、計算で求めることがある
ここまでの例題は、いずれもIgの値があらかじめ与えられている前提で計算した。だが実務や試験の出題では、Igそのものが与えられず、配電線路の公称電圧とこう長(電線延長)から、Igを先に計算しなければならないことがある。
中性点非接地方式の三相3線式高圧配電線路(電線はケーブル以外を使用)を例にとると、電気設備技術基準の解釈は、1線地絡電流を次の式で求めるとしている。
は配電線路の公称電圧を1.1で除いた電圧[kV]、は同一母線に接続される架空配電線路の電線延長(こう長の合計)[km]だ。
例題(2段階の計算)
公称電圧6,600V、こう長35kmの中性点非接地方式の三相3線式高圧配電線路がある。この配電線路に接続される柱上変圧器の低圧側に施すB種接地工事の接地抵抗値を求める。
まずVを求める。
これを1線地絡電流の式に代入する。
このをB種接地工事の抵抗値の式に代入すると、
このように、B種接地工事の接地抵抗値を求める計算は、「配電線路の電圧・こう長からIgを求める」→「IgからR_Bを求める」という2段階になっていることがある。の式だけを覚えていても、自体が問題文に与えられていない出題形式には対応できない。
静電容量から地絡電流を求める、もう1つの計算方法
配電線路のこう長から1線地絡電流Igを求める実務式(I₁=1+((V/3)L-100)/150)とは別に、線路の対地静電容量から理論的に地絡電流を求める計算方法もある。中性点非接地方式の高圧配電線路で一線完全地絡事故が起きたとき、地絡電流Igは、線路の対地静電容量C[F]・線間電圧V[V]・角周波数ω(=2πf)を使って、次の近似式で概算できる。
例題
線間電圧6,600V・周波数50Hzの中性点非接地方式の高圧配電線路で、線路の全対地静電容量が0.15μFのとき、一線完全地絡事故が発生した場合の地絡電流を求める。
地絡電流は、線路側と需要設備側に分流する
需要設備が高圧配電線路につながっている場合、線路には線路自体の対地静電容量C1のほかに、需要設備側の対地静電容量C2も存在する。線路のどこかで一線完全地絡事故が起きると、地絡電流Igは、この線路側C1と需要設備側C2の比に応じて分流する。需要設備の受電点に設置された零相変流器(ZCT)が検出できるのは、Igのうち需要設備側へ分流した分だけであり、おおむね次の割合になる。
なぜB種だけ、この式で決まるのか
A・C・D種は「その機器・電路にどれだけの電圧がかかっているか」という、施設した時点で決まっている条件から抵抗値が決まる。だがB種が守っているのは、混触という事故が起きたときに低圧側へ流れ込む電流の大きさそのものだ。同じ電圧区分の変圧器でも、系統の構成や電線のこう長が違えば、地絡時に流れる電流 は変わる。だからB種だけは、施設時点の固定値ではなく、その系統の実際の地絡電流から逆算する式で基準が与えられている。
キュービクルの設計・選定に関わる実務では、変圧器の容量や系統構成が変われば、その都度 を計算し直し、B種接地工事の抵抗値が基準を満たしているかを確認する。A・C・D種のように一度覚えれば済む数値ではなく、系統ごとに計算し直す数値だという点が、B種を扱ううえで最も重要な心構えになる。
接地抵抗は、計算で見積もり・現場で測る
ここまでの話は、いずれも「接地抵抗の基準値がいくつか」という話だった。では実際の接地抵抗そのものは、どうやって求めるのか。
棒状の接地棒を大地に打ち込んだときの接地抵抗は、大地抵抗率ρ[Ω・m]と接地棒の長さL[m]・直径d[m]から、次のような式で理論的に近似できることが知られている。
この式は、接地極を設計する段階で「このくらいの長さ・太さの接地棒を打てば、おおよそこの程度の抵抗値になりそうだ」という見積もりに使うものだ。実際に施工した接地極の抵抗値は、土質のばらつきや含水率、気温などの影響を受けるため、この式だけで済ませず、現場で実測して確認する必要がある。
電位降下法(E-S-H法)— 現場での測定の基本形
実務で最もよく使われる接地抵抗の測定法が「電位降下法」だ。被測定接地極(E、抵抗を測りたい対象)から離れる方向に、電流を流すための補助接地極(H)と、電位を測るための補助接地極(S)を、E・S・Hの順に一直線上へ配置するのが基本の考え方になる。
測定の考え方を、自作の数値例で見てみる。E-H間に1Aの電流を流し、E-S間の電位差を測定したところ15Vだったとすると、接地抵抗はオームの法則と同じ考え方で求められる。
この15Ωという値が、実際に大地に打ち込んだ接地極の抵抗値であり、先ほどの理論式で見積もった値とはズレることがある。設計段階の見積もりと、施工後の実測値の両方を押さえておくのが、接地工事を扱う実務の基本になる。E・S・Hの配置間隔や測定条件の細かな数値基準は、現場の状況によって調整が必要になるため、詳細は電気設備技術基準の解釈や測定器メーカーの手順を確認するとよい。
接地工事の「種類」とは別に、「場所」の話がある
ここまでは「どの接地工事(A〜D種)を、どんな抵抗値で施すか」という話だった。だがそれ以前に、そもそも電路のどこに接地を施すことができるのか、という「場所」の規定も別にある。電路は大地から絶縁するのが原則であることは、電気設備技術基準の全体構造を扱ったトピックで見たとおりだが、その原則には、目的を持った例外がいくつも用意されている。
電路の保護装置の確実な動作の確保、異常電圧の抑制又は対地電圧の低下を図るために必要な場合、次のような場所に接地を施すことができる。
- 電路の中性点(使用電圧が300V以下の電路において中性点に接地を施し難いときは、電路の一端子)
- 特別高圧の直流電路
- 燃料電池の電路又はこれに接続する直流電路
もう1つ、計器用変成器の2次側電路にも接地の定めがある。高圧計器用変成器の2次側電路には、D種接地工事を施す。計器用変成器は高圧側の電圧・電流を、継電器や計器が扱いやすい小さな値に変換する機器であり、その2次側(低電圧側)が万一1次側と混触した場合に備え、D種接地工事によって感電・機器損傷のリスクを抑える。
接地工事そのものを省略できる条件 — 地絡遮断装置の省略条件とは別の制度
ここまで見てきたA〜D種の接地工事は「施す」ことを前提にした話だった。ところが電気設備技術基準の解釈は、一定の条件を満たせば、接地工事そのもの(機械器具の金属製外箱等に対するD種接地工事など)を省略してよい場合も定めている(電気設備技術基準の解釈第29条)。この後見る「地絡遮断装置(漏電遮断器)の省略条件」とは別の制度であり、しかも紛らわしいことに、どちらの制度にも似た言葉が登場する。
接地工事そのものを省略できる代表的な条件は、次のとおりだ。
- 交流の対地電圧が150V以下(直流の使用電圧が300V以下)の機械器具を、乾燥した場所に施設する場合
- 水気のある場所以外の場所に施設する低圧用の機械器具に電気を供給する電路に、電気用品安全法の適用を受ける漏電遮断器(定格感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以下の電流動作型のものに限る)を施設する場合
- 機械器具の金属製外箱等の周囲に、適当な絶縁台を設けて施設する場合
地絡遮断装置 — 「接地」と対になる、事故発生後の遮断
接地工事が、事故が起きたときに電位上昇を抑えたり感電のリスクを下げたりする「受け身」の対策だったのに対し、地絡遮断装置は、地絡事故そのものを検知して電路を自動的に切り離す「能動的」な対策になる。この2つは、どちらも地絡事故への備えという共通の目的を持ちながら、役割が異なる。
低圧の金属製外箱を有する機械器具の電路には、電路に地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置(漏電遮断器)を施設するのが原則だ。ただし、次のような場合には、この装置を省略できることがある。
- 機械器具を乾燥した場所に施設する場合
- 電路の系統電源側に絶縁変圧器を施設し、当該絶縁変圧器の機械器具側の電路を非接地とする場合
- 機械器具内に過電流遮断器を取り付け、かつ電源引出部が損傷を受けるおそれがないように施設する場合
- 機械器具に簡易接触防護措置を施す場合
高圧又は特別高圧の電路にも、地絡遮断装置を施設すべき箇所が定められている。代表的な箇所は次の3つだ。
- 発電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所から引き出される電路の引出口
- 他の者から電気の供給を受ける受電点の負荷側の電路
- 配電用変圧器(単巻変圧器を除く)の負荷側の電路
キュービクルの更新提案では、地絡遮断装置(漏電遮断器・地絡継電器)の選定だけでなく、「この機械器具はそもそも地絡遮断装置が必須の対象か、省略できる条件を満たしているか」を確認できると、過不足のない保安提案につながる。
冒頭のキュービクルで、変圧器の低圧側中性点につながる接地線の抵抗値が現場ごとに違っていた理由——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。