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機械 ・ 8 / 16

直流電動機の原理と特性

読み終えると、こうなる

制御盤の中でモーターが「回る力」と「回転速度」をどうやって生み出しているかが式でつながり、直巻電動機になぜベルト駆動を避けろと言われるのかまで説明できるようになる

  • 端子電圧・電機子電流・電機子抵抗から逆起電力Ebを計算でき、始動の瞬間に大電流が流れる理由(Eb=0)から始動抵抗が必要な理由も説明できる。速度が上昇するにつれて始動抵抗を段階的に切り替える多段始動でも、切替直前の逆起電力を求めて必要な抵抗値を計算できる。V>EbかEb>Vかで電動機運転と回生制動が切り替わることも、電圧方程式から説明できる
  • 界磁磁束を強める・弱めると、回転速度がそれぞれどう変化するかを式から即座に判断でき、大電流域では電機子反作用によって磁束がわずかに減少し、速度・トルク特性が単純な比例関係から外れる(速度は下がりにくくなる、トルクは頭打ちになる)ことも説明できる
  • 直巻電動機を無負荷で運転してはいけない理由を、磁束と速度の関係から説明でき、直巻構造を交流駆動に応用した交流整流子モータ(ユニバーサルモータ)がなぜ交流でも一方向のトルクを出せるかも説明できる
  • 永久磁石電動機の始動電流から電機子抵抗を逆算し、定格運転時の効率を計算できる
考えてみよう

古い工場のクレーンやエレベーターの改修現場で、「直流電動機の界磁巻線の抵抗を 少し上げて速度を落とすつもりだったのに、なぜか逆に回転が速くなった」という話を 聞くことがある。

界磁を絞れば磁力が弱くなるのだから、力も弱くなり、回転もゆっくりになりそうな ものだ。それなのに、なぜ界磁を弱めると電動機は逆に速く回るのか。

このトピックを読み終えるころには、直流電動機がどうやってトルクと回転速度を 生み出しているかを式で説明でき、「界磁を弱めると速くなる」という一見直感に反する 挙動も、当然の結果として言い当てられるようになっている。

種明かしは、前のトピックで見た直流発電機とまったく同じ式が、電動機では 向きを変えて働いているという事実にある。

電動機の原理 — フレミング左手の法則とトルクの発生

磁界の中に置かれた導体に電流を流すと、フレミングの左手の法則に従って導体には 力(トルク)が働く。直流電動機はこの原理で回転力を生み出しており、整流子とブラシは 発電機のときと同じく、回転が進んでも常に同じ向きにトルクが発生し続けるよう、 電機子巻線への接続を機械的に切り替え続けている。

発生するトルクは、磁束と電機子電流の積に比例する。

T=kΦIaT = k\Phi I_a

kkは機械の構造で決まる定数だ。磁束が強いほど、そして電機子電流が大きいほど、 電動機はより大きな力(トルク)を出す。

逆起電力と電圧方程式 — 電動機は発電機を兼ねている

電動機の電機子も、回転しながら磁束を切っている以上、発電機と同じ原理で起電力を 生んでいる。ただしこの起電力は、外部から流し込もうとする電流を打ち消す向き (レンツの法則)に働くため、逆起電力と呼ばれる。式の形は発電機の起電力の式と まったく同じだ。

Eb=pZΦN60aE_b = \frac{pZ\Phi N}{60a}

端子電圧VVは、この逆起電力EbE_bに、電機子抵抗RaR_aでの電圧降下を足したものになる。

V=Eb+IaRaV = E_b + I_aR_a

発電機の式(E=V+IaRaE = V + I_aR_a、起電力から電圧降下を引くと端子電圧になる)と 似ているようで、電機子抵抗の電圧降下の効き方が逆向きになっている点に注意したい。 電動機は外部から電気エネルギーを取り込む側であり、電流が逆起電力に逆らって 流れ込むには、端子電圧が逆起電力より必ず高くなければならない。

例題

端子電圧200V、電機子電流20A、電機子抵抗0.5Ωの直流電動機がある。この電動機の逆起電力は いくらか。

Eb=VIaRa=20020×0.5=190VE_b = V - I_aR_a = 200 - 20 \times 0.5 = 190\text{V}

速度とトルクの関係 — 界磁を弱めると、なぜ速くなるのか

電圧方程式をNNについて解くと、回転速度は次の形にまとまる。

NVIaRaΦN \propto \frac{V - I_aR_a}{\Phi}

磁束Φ\Phiは分母にある。つまり界磁を弱めて磁束を小さくすると、速度は大きくなる。 これが「弱め界磁」と呼ばれる速度制御の原理だ。磁束を弱めると発生トルクは (T=kΦIaT=k\Phi I_aより)小さくなるが、その代わり回転速度は上げられる——出力(トルク×速度に 比例する量)をおおむね一定に保ったまま、速度域を広げる制御として使われる。

「磁束を弱める=力が弱くなる=遅くなる」という連想に引っぱられると、この関係を 逆に覚えてしまいやすい。式の形(Φが分母)さえ思い出せば、弱め界磁で速度が上がる ことは機械的に導ける。迷ったら、極端な値で検算するとよい。Φを限りなく0に近づければ、 式全体は限りなく大きくなる——磁束をほぼなくすと、電動機は際限なく速く回ろうとする (暴走)という、この後の直巻電動機の話ともつながる直感だ。

電機子反作用と、直線から外れる大電流域の特性

ここまでのN(VIaRa)/ΦN \propto (V-I_aR_a)/\PhiT=kΦIaT=k\Phi I_aという関係は、磁束Φ\Phiが 電機子電流の大きさによらずほぼ一定という前提の上に成り立つ近似だ。カタログに載っている 実際のn-I特性(速度と電機子電流の関係を表すグラフ)やT-I特性(トルクと電機子電流の 関係を表すグラフ)を見ると、小~中電流域ではこの近似がよく当てはまる一方、電機子電流が 大きくなる領域では、グラフが単純な直線から少しずつ外れていく。

原因は電機子反作用だ。電機子巻線に電流が流れると、電機子自身もまた磁界を作る。 電機子電流が大きいほどこの磁界も強くなり、界磁が作る本来の磁束を弱める向きに働く (詳しくは同期発電機の電機子反作用と同じ考え方だが、直流機では界磁磁束をわずかに 減少させる方向に働く)。つまり大電流域では、Φ\Phiは一定ではなく、電機子電流の増加に つれてわずかに減少していく。

このΦ\Phiの減少が、速度・トルクの両特性に次のような形で表れる。

  • n-I特性(速度)N(VIaRa)/ΦN \propto (V-I_aR_a)/\Phi の分母Φ\Phiが電流とともに わずかに小さくなるため、電機子電流の増加による(VIaRa)(V-I_aR_a)の減少という速度を下げる 効果の一部を、分母の減少が相殺する。結果として、大電流域の速度低下は、小電流域の 傾きから外挿した直線予測よりも緩やかになる
  • T-I特性(トルク)T=kΦIaT=k\Phi I_a で、IaI_aが増えてもΦ\Phiがわずかに減っていく分、 トルクの増加は電機子電流に単純比例せず、大電流域では頭打ち傾向になる。
「Φはほぼ一定」という前提は、あくまで小~中電流域でよく成り立つ近似にすぎない。 カタログのn-I特性・T-I特性グラフが大電流域で直線から外れて描かれていたら、それは 電機子反作用によってΦが減少し始めているサインだと読み取る。Φの減少は、速度の 下がり方を緩やかにする一方、トルクの増え方を頭打ちにする——どちらも「Φが分母か 係数か」という式の形をたどれば、機械的に方向を導ける。

始動時の大電流と始動抵抗 — 制御盤で見る始動器の役割

回転を始める前の一瞬(N=0N=0)は、逆起電力EbE_bもゼロだ。電圧方程式は V=IaRaV=I_aR_aだけになるため、電機子抵抗という小さな値だけで電流の大きさが決まってしまう。

例題

電機子抵抗0.5Ω、定格端子電圧200V、定格電流20Aの分巻電動機を、始動抵抗を使わずに そのまま端子電圧を加えて直入れ始動した。始動の瞬間に流れる電流はいくらか。

Istart=VRa=2000.5=400AI_{\text{start}} = \frac{V}{R_a} = \frac{200}{0.5} = 400\text{A}

定格電流20Aの実に20倍にもなる。回転が上がるにつれて逆起電力が発生し、電流は 自然に減っていくが、始動の瞬間だけはこの抑えがまったく効かない。制御盤に 組み込まれた始動抵抗器や電子式ソフトスタータは、まさにこの始動の瞬間だけ 電機子回路に抵抗を追加し、回転が上がるにつれて段階的に抵抗を抜いていくことで、 過大な始動電流を抑えている。

多段始動抵抗器 — 抵抗を切り替える瞬間の逆起電力を手がかりにする

実務の始動抵抗器は、1段の抵抗をいきなり抜くのではなく、回転速度が上がるにつれて 段階的に抵抗を減らしていく多段式になっていることが多い。ここで押さえておきたいのは、 2段目以降の抵抗値を求めるときは、始動の瞬間(Eb=0E_b=0)とは違う考え方が必要になる、 という点だ。

電動機は最初の抵抗値のまま既にいくらか回転しており、抵抗を切り替える直前には、 その回転速度に対応した逆起電力EbE_bがすでに発生している。このEbE_bは、切替の前後で (速度がほとんど変わらないとみなせる短い時間なら)共通の値として使える。

切替前:Eb=VIa(Ra+R1),切替後:V=Eb+Ia(Ra+R2)\text{切替前:} E_b = V - I_a(R_a+R_1), \qquad \text{切替後:} V = E_b + I_a'(R_a+R_2)
「始動抵抗の計算=Eb=0」という最初の印象を引きずると、2段目の抵抗を求めるときも 同じEb=0の式を使ってしまいやすい。だがEbが0になるのは回転速度が本当に0の瞬間 (最初の始動時)だけだ。抵抗を切り替える直前は、まず「切替前の抵抗のままの電圧方程式」 からEbを求め、そのEbを「切替後の電圧方程式」に持ち込む、という2段階の手順を踏む。

例題(自作の数値例)

界磁磁束を一定に保った直流電動機がある。電機子抵抗0.4Ωの電機子巻線と直列に始動抵抗 (可変抵抗)が接続されており、内部抵抗が無視できる電圧220Vの直流電源に接続した。静止状態で 電源に接続した直後の電機子電流は110Aだった。

R1=VIaRa=2201100.4=2.00.4=1.6ΩR_1 = \frac{V}{I_a} - R_a = \frac{220}{110} - 0.4 = 2.0 - 0.4 = 1.6\Omega

始動後、徐々に回転速度が上昇し、電機子電流が55A(始動時の半分)まで減少した。電機子電流を 再び110Aまで増やすため、始動抵抗の値をR1(1.6Ω)からR2に変化させる。

まず、抵抗を切り替える直前(まだR1=1.6Ωのまま、電機子電流55A)の逆起電力を求める。

Eb=VIa(Ra+R1)=22055×(0.4+1.6)=220110=110VE_b = V - I_a(R_a+R_1) = 220 - 55\times(0.4+1.6) = 220 - 110 = 110\text{V}

この瞬間は速度が変わらないとみなし、切替後は同じEb=110E_b=110Vのまま、目標の電機子電流110Aで 電圧方程式を立てる。

220=110+110×(0.4+R2)0.4+R2=1.0R2=0.6Ω220 = 110 + 110\times(0.4+R_2) \quad\Rightarrow\quad 0.4+R_2 = 1.0 \quad\Rightarrow\quad R_2 = 0.6\Omega

抵抗値はR1=1.6ΩR_1=1.6\OmegaからR2=0.6ΩR_2=0.6\Omegaへと小さくなる——回転速度が上がって逆起電力が 育ってきた分だけ、始動抵抗が担う電圧降下の役割を減らせる、という関係がこの計算に表れている。

永久磁石電動機の効率 — 始動電流から電機子抵抗を逆算する

小形の直流電動機には、界磁に電磁石ではなく永久磁石を使うタイプがある。界磁巻線が 存在しないため界磁側の銅損がなく、損失は電機子抵抗による銅損だけ——という単純な構造が 効率計算の見通しをよくしてくれる。

ここで役に立つのが、さきほどの始動電流の考え方だ。始動の瞬間(N=0N=0Eb=0E_b=0)は 電圧方程式がV=IaRaV=I_aR_aだけになるので、始動電流IstartI_{\text{start}}が分かれば、そこから 電機子抵抗を逆算できる。

Ra=VIstartR_a = \frac{V}{I_{\text{start}}}

電機子抵抗が分かれば、定格運転時の電流IaI_aにおける銅損(Ia2RaI_a^2R_a)が求まり、 入力電力VIaV I_aとの差から効率を計算できる。

η=VIaIa2RaVIa=1IaRaV\eta = \frac{V I_a - I_a^2 R_a}{V I_a} = 1 - \frac{I_a R_a}{V}
始動電流と定格電流は、登場する場面がまったく違う。始動電流は「電機子抵抗Raを逆算する ための手がかり」であり、効率計算そのものに使うのは、あくまで定格運転時の電流だ。 2つの電流を取り違えないよう、それぞれが式のどこで使われるかを分けて覚えておく。

例題(自作の数値例)

界磁に永久磁石を用いた小形直流電動機がある。電源電圧は定格の100V、始動電流は20A、 定格電流は4Aである。損失は電機子巻線による銅損しか存在しないものとして、定格運転時の 効率を求める。

Ra=10020=5Ω,η=14×5100=10.2=0.880%R_a = \frac{100}{20} = 5\Omega, \qquad \eta = 1 - \frac{4 \times 5}{100} = 1 - 0.2 = 0.8 \rightarrow 80\%

回生制動 — 電動機はブレーキにもなる

電気自動車やフォークリフトのような、直流電動機で駆動される移動体には、上り坂では 電動機として力行し、下り坂では発電機としてブレーキをかける「回生制動」という 運転モードが使われることがある。この2つのモードの切り替えを、電圧方程式 V=Eb+IaRaV=E_b+I_aR_aから読み解いてみよう。

界磁に永久磁石を使い磁束Φ\Phiが一定の直流機を積んだ車両が、上り坂・下り坂の どちらも同じ一定速度で走行しているとする。車両はどちらの坂でも同じ向きに進んで いるため、直流機の回転方向は変わらない。磁束Φ\Phiも一定。逆起電力は Eb=kΦNE_b=k\Phi Nで決まるから、回転方向も磁束も変わらなければ、Ebの大きさも向きも 変わらない

「電動機運転から回生制動へ切り替わる=内部の様子もすべて逆転するはず」という 連想は誤り。切り替わっているのは逆起電力Ebの向きではなく、**端子電圧VとEbの 大小関係**である。V>Ebの間は電源から直流機へ電流が流れ込み(電動機運転)、 何らかの方法でV<Ebにできれば、今度は直流機から電源へ電流が流れ出す (回生制動)。
  • 上り坂(電動機運転、V>Eb):端子電圧が逆起電力より高いため、電流は 電源から直流機へ向かって流れ込む。電機子電流IaI_aと磁束Φ\Phiの向きから 決まるトルクT=kΦIaT=k\Phi I_aは、車両を前進させる(加速・登坂を助ける)向きに働く。
  • 下り坂(回生制動、V<Eb):磁束・回転方向が変わらずEbも同じ大きさ・向きの ままなのに、何らかの制御(電源側の変換器の出力電圧を下げる制御など)によって 端子電圧VVEbE_bより低く抑えると、電流は逆向き——直流機から電源へ向かって 流れ出す。電機子電流IaI_aの向きが反転した結果、トルクT=kΦIaT=k\Phi I_aの向きも 反転し、車両の動きを妨げる制動(ブレーキ)方向のトルクになる。回生された 電気エネルギーは電源(バッテリーなど)に送り返される。
問われがちなのは「上り坂から下り坂に変わるとき、何が反転して何が反転しないか」だ。 反転しないのは逆起電力Ebの向き・大きさ。反転するのは、VとEbの大小関係の結果として 生じる**電機子電流の向き**と**トルクの向き**——この対応を、極端な状況(VをEbより 少しだけ下げた瞬間を想像する)で検算すると取り違えにくい。

分巻・直巻・複巻の違いと、直巻電動機の暴走リスク

界磁の与え方は発電機と同じく、分巻・直巻・複巻に分かれる。

  • 分巻電動機:界磁が端子電圧に並列接続され、負荷が変わっても磁束Φはほぼ 一定に保たれる。速度が負荷によらず安定しているため、工作機械などに向く。
  • 直巻電動機:界磁が電機子・負荷と直列接続され、負荷電流がそのまま界磁電流に なる。始動時など電流が大きいときほど磁束も強くなるため、始動トルクが非常に 大きく、クレーンや電車の駆動など大きな始動トルクが必要な用途に向く。反面、 負荷が外れて電流が下がると磁束Φも一緒に下がり、N1/ΦN \propto 1/\Phiの関係から 回転速度が制御不能なほど上昇する——「暴走」と呼ばれる危険がある。直巻電動機は 必ず負荷に直結して使い、外れる恐れのあるベルト駆動などは避けるのが実務上の鉄則だ。
  • 複巻電動機:分巻と直巻の両方の界磁巻線を持ち、双方の特性を組み合わせる。

交流整流子モータ(ユニバーサルモータ)— 直巻構造を交流でも使う

直巻電動機の構造(界磁巻線と電機子巻線の直列接続)をそのまま交流電源で動かせるようにした ものが、交流整流子モータ(ユニバーサルモータ)だ。直流直巻電動機に加える電圧の極性を 逆にしても、界磁巻線と電機子巻線は同じ回路を流れる同じ電流によってつながっているため、 磁束の向きと電機子電流の向きは同時に反転する。トルクは磁束と電機子電流の積 (T=kΦIaT=k\Phi I_a)で決まるので、両方が同時に符号を変えれば積の符号(トルクの向き)は 変わらない——これが交流を流しても一方向の回転力を保てる原理だ。

「交流だから電流の向きが周期的に変わる=トルクも周期的に反転するはず」という直感は、 直流直巻電動機と同じ直列構造を持つ交流整流子モータには当てはまらない。界磁と電機子が 直列でつながっている以上、磁束と電機子電流はいつも『セット』で向きが変わる、という 構造そのものに立ち返れば取り違えない。

交流整流子モータは、直巻電動機由来の特性(始動トルクが大きい、高速回転が可能)を そのまま受け継いでいるため、始動時に大きな力を必要とし高速で回転する小型の機器 ——電気ドリル、電気掃除機、小型ミキサなど——のモータとして広く使われている。 なお、小容量のものは交流・直流のどちらの電源でも使用できる汎用性を持ち、その名の とおりユニバーサルモータと呼ばれる。

冒頭の「界磁を弱めたら速度が上がった」という話——答え合わせは理解度チェックの 最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 電動機の電圧方程式 V = Eb + IaRa を、発電機の関係式(E = V + IaRa)と混同し、V = Eb − IaRa としてしまう

    なぜ引っかかる発電機と電動機では、電機子抵抗による電圧降下の効き方が逆向き(発電機は起電力から電圧降下分を『引く』と端子電圧になり、電動機は逆起電力に電圧降下分を『足す』と端子電圧になる)であるため、片方の式のイメージのまま両方を扱うと符号を取り違える。

    見破り方電動機は外部から電気エネルギーを取り込む側だと考える。電流が逆起電力に逆らって流れ込むには、端子電圧Vが逆起電力Ebより必ず高くなければならない。V>Ebという大小関係を先に押さえれば、V = Eb + IaRa(Vのほうが大きい)が自然に導ける。

  2. 界磁を弱めると、電動機の回転速度は下がると思い込む

    なぜ引っかかる「磁束を弱める=力が弱くなる=遅くなる」という直感的な連想から、N ∝ 1/Φ という反比例の関係を逆向きにとらえやすい。

    見破り方N = (V − IaRa)/(kΦ) の式で、Φが分母にあることを確認する。分母が小さくなれば式全体(速度N)は大きくなる——『弱め界磁で速度が上がる』という結論が、式の形から機械的に出てくる。

  3. 大電流域のn-I特性・T-I特性を、常にN∝(V-IaRa)/Φ、T∝ΦIaの直線関係のまま外挿して予測してしまう(Φを定数として扱い続ける)

    なぜ引っかかる小~中電流域ではΦがほぼ一定とみなせる近似がよく成り立つため、この近似がどんな電流域でも有効だと思い込みやすい。だが電機子電流が大きくなるほど、電機子巻線自身が作る磁界(電機子反作用)が界磁磁束を打ち消す方向に働き、Φは電流とともにわずかに減少していく。

    見破り方カタログのn-I特性・T-I特性グラフで大電流域が直線から外れて描かれていたら、Φ一定の前提が崩れているサインだと読み取る。Φが減少方向に動くと、N∝(V-IaRa)/Φでは分母が小さくなる効果が(V-IaRa)の減少効果を一部相殺し速度の下がり方が緩やかになり、T∝ΦIaでもΦの減少がIaの増加を一部相殺しトルクの増え方が頭打ちになる、という向きで整理する。

  4. 直巻電動機を無負荷(軸に何もつながない、ベルトが外れた状態など)で運転しても、分巻電動機と同様に安全だと考えてしまう

    なぜ引っかかる分巻電動機は界磁磁束がほぼ一定に保たれるため無負荷でも速度が大きく暴走することはないが、直巻電動機は負荷電流(=界磁電流)が減ると磁束Φも一緒に減少し、N ∝ 1/Φ の関係から速度が異常に上昇する——という直巻特有の危険を見落としやすい。

    見破り方直巻電動機を見たら『界磁電流=電機子電流=負荷電流』という直列接続の構造を思い出す。負荷が外れて電流が下がるとΦも下がり、速度が反比例的に跳ね上がることを式で確認する。原則としてベルト駆動を避け、負荷に直結して使う。

  5. 多段始動抵抗の計算で、抵抗を切り替える直前の逆起電力Ebを、切替後も0のままだと誤解してしまう(毎回、始動の瞬間と同じ式V=Ia(Ra+R)を使ってしまう)

    なぜ引っかかる始動抵抗の計算といえば『Eb=0』という最初の条件が強く印象に残っていると、2段目以降の切替でも同じEb=0の式を使い続けてしまいやすい。だが実際には、電動機は最初の抵抗値のまま既に回転を始めており、切替の直前には0ではない逆起電力が発生している。

    見破り方抵抗を切り替える『直前』の状態を、まず最初の抵抗値R1のままの電圧方程式V=Eb+Ia(Ra+R1)から逆算する。この式でEbを求めてから、切替後の式V=Eb+Ia(Ra+R2)に同じEbを使う——Ebがゼロになるのは回転速度が本当に0の瞬間(最初の始動時)だけだと切り分ける。

  6. 永久磁石電動機の効率計算で、始動電流をそのまま定格運転時の電流として使ってしまう

    なぜ引っかかる始動電流は回転速度0(Eb=0)という特殊な瞬間の電流であり、定格運転中に流れる電流とはまったく別の値。問題文に両方の電流が登場するため、効率計算にどちらを使うべきか迷いやすい。

    見破り方始動電流はあくまで『電機子抵抗Raを逆算するための情報』、効率計算に使うのは『定格運転時(実際に仕事をしている状態)の電流』——この2つの役割を分けて整理する。

  7. 交流整流子モータ(ユニバーサルモータ)に交流を流すと、電流の向きが周期的に変わるのでトルクの向きも周期的に反転すると誤解する

    なぜ引っかかる『交流だから電流の向きが周期的に変わる=トルクも周期的に反転するはず』という直感的な連想から、直巻構造ならではの打ち消し合いを見落としやすい。

    見破り方直巻構造(界磁巻線と電機子巻線が直列)であることを思い出す。電源電圧の向きが変わっても、界磁磁束と電機子電流は同じ回路を流れる電流によって『同時に』向きが変わる。トルクは磁束と電機子電流の積で決まるため、両方が同時に符号反転すれば積の符号(トルクの向き)は変わらない。

  8. 電動機運転から回生制動に切り替わるとき、逆起電力Ebの向きが反転すると誤解する

    なぜ引っかかる『運転モードが反転する=内部で起きていることも反転する』という漠然とした連想から、電動機運転と回生制動という『逆』のモードには、逆起電力の向きも逆になるはずだと考えやすい。

    見破り方逆起電力Eb=kΦNは界磁磁束Φと回転速度(向きを含む)Nだけで決まる。坂道を上るときも下るときも車両は同じ向きに進み、磁束も一定(永久磁石など)のままなら、ΦもNも向きが変わらずEbも不変。切り替わるのは端子電圧VとEbの大小関係(V>EbかV<Ebか)であり、それに伴って電機子電流とトルクの向きだけが反転する、と切り分ける。

参考文献・出典

理解度チェック(15問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、15問で確認しよう。 内訳は基本6問・応用5問・ひっかけ4問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 15 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 逆起電力の式:Eb = pZΦN/(60a)(発電機の起電力の式と同じ形。電動機ではこれを「逆起電力」と呼ぶ)
  2. 電圧方程式:V = Eb + IaRa(端子電圧は、逆起電力より電機子抵抗による電圧降下分だけ高い)
  3. 回転速度:N ∝ (V − IaRa)/Φ、トルク:T ∝ ΦIa —— 界磁を弱めると速度は上がり、電機子電流を増やすとトルクは増える
  4. この比例関係はΦがほぼ一定という前提での近似にすぎない。実際は電機子電流が大きくなるほど、電機子自身が作る磁界が界磁磁束を弱める向きに働く電機子反作用によりΦがわずかに減少するため、大電流域のn-I特性(速度-電流特性)・T-I特性(トルク-電流特性)は直線から外れる——速度の低下は直線予測より緩やかになり、トルクの増加は頭打ち傾向になる
  5. 始動の瞬間はEb=0のため、電機子抵抗だけで決まる大きな始動電流が流れる。始動抵抗などによる電流抑制が必要
  6. 始動抵抗を複数段階に分けて切り替える多段始動では、抵抗を切り替える直前の逆起電力Eb(そのときの回転速度に対応する値)をまず求め、切替後の電圧方程式V=Eb+Ia(Ra+R)に目標の電機子電流Iaを代入してRを逆算する、という手順を踏む
  7. 直巻電動機は始動トルクが大きい反面、無負荷になると磁束が減って回転速度が異常に上昇する(暴走)危険があるため、必ず負荷に直結して使う
  8. 永久磁石を界磁に使った直流電動機は界磁巻線の銅損がなく、損失は電機子抵抗による銅損だけ。始動電流Istart(Eb=0)からRa=V/Istartを逆算し、定格電流Iaでの効率はη=1−(Ia×Ra)/Vで求められる
  9. 回生制動:界磁磁束が一定(永久磁石など)で回転方向も変わらないなら、逆起電力Ebの大きさも向きも変化しない。V>Ebなら電動機として運転(電源→機へ電流、加速方向のトルク)、V<Ebなら発電機として回生制動(機→電源へ電流、制動方向のトルク)に切り替わる。坂道を上る電気自動車が下り坂で回生ブレーキに切り替わるとき、逆起電力の向きではなく、端子電圧と逆起電力の大小関係が入れ替わる(電源側の電圧を下げる制御によってV<Ebを作り出す)ことでモードが切り替わる
  10. 交流整流子モータ(ユニバーサルモータ)は、界磁巻線と電機子巻線が直列接続された直流直巻電動機に類似した構造を持つ。電源電圧の極性(交流の場合は瞬時の向き)が反転しても、磁束と電機子電流の向きが同時に反転するため、トルク(磁束と電機子電流の積)の向きは常に一定に保たれる。始動トルクが大きく高速回転が可能という直巻電動機の特性を受け継ぎ、電気ドリル・電気掃除機・小型ミキサなどに使われる。小容量のものは交流・直流のどちらでも使用できる汎用性を持つ
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