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機械 ・ 5 / 16

同期発電機の原理と特性

読み終えると、こうなる

非常用発電機盤の同期投入装置(シンクロスコープ)を見たとき、それが何を監視し、何を防いでいるのかを説明できるようになる

  • 極数と周波数から、同期発電機を回す原動機の回転速度を計算でき、同期インピーダンスと負荷角から出力 P=(EV/Xs)sinδ を計算できる。電機子電流と力率からベクトル図(E=V+jXsIa)を描いて負荷角δを求めることもできる
  • 負荷の力率(遅れ・進み)による電機子反作用の向きと、無負荷飽和試験・短絡試験から求める同期インピーダンスの計算を、あわせて説明できる。回転電機子形と回転界磁形の違い、水車発電機(突極形・低速多極)とタービン発電機(円筒形・高速小径長胴形)の構造上の違いも説明できる
  • 2台の発電機(または発電機と系統)を並行運転させるために一致させる必要がある4条件を挙げられ、条件が崩れた状態で投入すると何が起こるかを説明できる
  • 極数・磁束・巻数・巻線係数から無負荷誘導起電力を計算でき、短絡比の意味(大きい/小さいことが発電機の外形・安定度・電圧変動率に与える影響)を説明できる。%同期インピーダンスと定格電流から、定格電圧に相当する無負荷起電力を発生させる界磁電流での三相短絡電流を計算し、短絡特性の比例関係を使って必要な界磁電流を逆算することもできる
考えてみよう

非常用発電機の制御盤には、シンクロスコープと呼ばれる、針や複数のランプが並んだ計器が 組み込まれていることがある。発電機を系統や他の発電機に接続する(並行運転を始める)前に、 このシンクロスコープを見ながら投入のタイミングを慎重に合わせる。

なぜ、ただスイッチを入れるだけではいけないのか。何を、どこまで一致させないと、 発電機をつなぐことができないのか。

このトピックを読み終えるころには、同期発電機がなぜ「同期」という名前を持つのか、 そして並行運転の投入がなぜ慎重な作業になるのかを、原理から説明できるようになっている。

種明かしは、同期発電機の起電力が回転する界磁の磁束によって生まれているという発電原理と、 その起電力どうしをつなぐときに要求される「4つの一致」にある。

同期発電機の原理 — 回転する界磁が、固定された巻線に起電力を作る

同期発電機の多くは、回転子側にDC(直流)で励磁された界磁(電磁石)を持ち、固定子側に 交流を取り出す電機子巻線を持つ回転界磁形の構造をしている。原動機(タービンやエンジン)で 界磁を回転させると、その磁束を固定された電機子巻線が電磁誘導によって拾い、交流の起電力が 発生する。

発生する交流の周波数は、界磁の回転速度と極数だけで決まる。

f=pN120f = \frac{pN}{120}

pp は極数、NN は原動機の回転速度[rpm]。系統の周波数(50Hzまたは60Hz)に合わせて 発電するためには、この式から逆算した速度で原動機を回す必要がある。

例題

6極の同期発電機で、周波数50Hzの系統に電力を送るには、原動機の回転速度を N=120f/p=120×50/6=1000N = 120f/p = 120\times50/6 = 1000rpm にする必要がある。

「発電機の周波数は回転速度で決まる」という関係は、逆に言えば**回転速度が一定でなければ 周波数も一定に保てない**ということでもある。非常用発電機やタービン発電機の調速機(ガバナ)が、 負荷の変動に対して回転速度を一定に保とうと働き続けているのは、この関係が理由である。

同期発電機の構造 — 回転界磁形が主流な理由と、水車発電機・タービン発電機の違い

同期発電機の原理そのものは「回転する界磁の磁束を、固定された電機子巻線が拾う」という ものだったが、実際にどちらを回転させるかには選択の余地がある。回転子側に電機子を置く 回転電機子形も原理上は可能だが、中〜大容量の発電機では、電機子巻線を固定子側、 界磁巻線を回転子側に置く回転界磁形が主流だ。

電機子巻線は大電流・高電圧を扱う。これを固定側に置けば、絶縁の設計がしやすいうえ、 スリップリングやブラシという機械的接触部品を介さずに、外部へ直接電力を取り出せる。 回転側には、直流の励磁電流だけを流せばよい界磁巻線を置けば済むため、スリップリングを 通す電流も小さく済む——大電流を固定側に、小さな励磁電流だけを回転側に、という 役割分担が回転界磁形の合理性だ。

「固定子=界磁、回転子=電機子」という直流機の対応(前のトピックで見た内容)と、 同期発電機の「固定子=電機子、回転子=界磁」という対応を混同しないこと。直流機は 整流子・ブラシで機械的に整流する必要があるため電機子を回転側に置くしかないが、 同期発電機は整流の必要がなく、大電流を扱う電機子を固定側に置ける——この違いが、 両者の構造を分けている。

回転界磁形の中でも、原動機の種類によって回転子の形状が大きく変わる。

  • 水車発電機:水車は比較的低速でしか回せない原動機のため、Ns=120f/pN_s=120f/pの関係から、 商用周波数(50Hzや60Hz)を発生させるには極数ppを多くする必要がある。多くの磁極を 回転子の外周に配置するため、回転子の直径は軸方向の長さに比べて大きくなる——この形状を 突極形という。
  • タービン発電機:蒸気タービンなどは高速で運転されるため、少ない極数(2極や4極)で 済む。ただし高速回転に耐えるには、回転子の直径を小さく絞り、遠心力を抑える必要がある。 そのぶん軸方向に長くした、円筒形(横軸形)の回転子として作られる。磁極は回転軸と 一体の鍛鋼または特殊鋼で作られ、そこに刻んだスロットに巻線が施される。
「水車=重厚で丸い=円筒形」「タービン=高速=出っ張りがある=突極形」という語感からの 連想は、実際の対応とは逆になる。回転速度と極数の関係(Ns=120f/p)を先に思い出せば、 低速の水車は極数を稼ぐために直径の大きい突極形、高速のタービンは直径を絞った円筒形に ならざるを得ない、という結論が導ける。

電機子反作用 — 負荷の力率が、端子電圧を動かす

発電機に電流が流れると、その電機子電流自体も磁束を作り、界磁が作る本来の磁束に影響を与える。 これを電機子反作用という。この影響の向きは、負荷の力率によって変わる。

  • 遅れ力率(誘導性)の負荷:電機子電流が界磁の磁束を弱める方向に働く(減磁作用)。 界磁電流を変えなければ、端子電圧は低下しやすい。
  • 進み力率(容量性)の負荷:電機子電流が界磁の磁束を強める方向に働く(増磁作用)。 端子電圧はむしろ上昇しやすい。
「誘導性負荷(遅れ)=減磁、容量性負荷(進み)=増磁」という対で覚えると、電圧が下がる 向きか上がる向きかを取り違えにくい。電気工事や設備の現場で、力率の悪い(遅れの大きい) 負荷が多い設備ほど電圧が下がりやすい、という体感とも一致する関係だ。

無負荷時の端子電圧と、定格負荷をかけたときの端子電圧の差を表す指標が電圧変動率であり、 負荷の力率が悪いほど、この電圧変動率は大きくなりやすい。

同期インピーダンスの求め方 — 無負荷飽和試験と短絡試験

同期発電機の内部には、電機子巻線の抵抗やリアクタンス、電機子反作用の影響をまとめて表す 同期インピーダンスZsZ_s(1相あたり)という量がある。電圧変動率や短絡時の電流を計算する うえで欠かせない値だが、これは設計値としてではなく、実際に発電機を試験して求める。

試験は次の2つを組み合わせる。

  1. 無負荷飽和試験:発電機を無負荷(端子開放)のまま定格回転速度で回しながら、界磁電流 IfI_fを0から徐々に増やし、そのときの端子電圧(無負荷誘導起電力)を測定してグラフにする。 鉄心の磁気飽和のため、IfI_fが大きくなるにつれてグラフは直線から外れて頭打ちになる (無負荷飽和曲線)。飽和が始まる前の直線部分を延長した線をエアギャップ線という。
  2. 短絡試験:電機子の端子を短絡した状態で、同じように界磁電流IfI_fを徐々に増やし、 そのとき流れる短絡電流IsI_sを測定してグラフにする(短絡特性)。短絡時は端子電圧がほぼ ゼロで、電流を制限しているのは主に発電機内部のインピーダンスだけなので、このグラフは ほぼ直線になる。

この2つの特性を同じ界磁電流IfI_fの値で比較する。エアギャップ線から求めた誘導起電力EE (相電圧)と、短絡特性から求めた短絡電流IsI_sを使うと、同期インピーダンス(1相あたり)は 次の式で求められる。

Zs=EIsZ_s = \frac{E}{I_s}

例題(自作の簡略化した数値例)

ある同期発電機で、界磁電流IfI_fをある値に設定したとき、エアギャップ線から読み取った相電圧が 230V、同じ界磁電流での短絡特性から読み取った短絡電流が50Aだった。

Zs=23050=4.6 ΩZ_s = \frac{230}{50} = 4.6\ \Omega
無負荷飽和試験だけでは「電流を流したときにどれだけ電圧が落ちるか」が分からず、短絡試験だけ では「無負荷時にどれだけの起電力が出ているか」が分からない。2つの試験を**同じ界磁電流で 組み合わせる**ことで、初めて発電機内部のインピーダンスという1つの量として取り出せる—— これが短絡試験が単独ではなく、必ず無負荷飽和試験とセットで語られる理由だ。

同期発電機の出力 — 負荷角が生み出す力

同期発電機が実際に外部へ送り出す出力(電機子抵抗を無視できる場合の近似式)は、 内部起電力EE・端子電圧VV・同期インピーダンスZsZ_s(ここではリアクタンスXsX_sとみなす)と、 負荷角δ\delta(内部起電力と端子電圧の間の位相差)を使って次の式で表される。

P=EVXssinδP = \frac{EV}{X_s}\sin\delta

負荷(送り出す電力)が増えるほど、この負荷角δ\deltaは広がっていく。ここで注意したいのが、 出力はδ\deltaに比例して増え続けるわけではなく、sinδ\sin\deltaという周期関数に従う点だ。 δ=90°\delta=90°のときsinδ\sin\deltaは最大値1を取り、出力もここで最大になる。δ\deltaがこれを 超えてさらに広がるとsinδ\sin\deltaはむしろ小さくなっていき、出力は減少に転じる。

例題(自作の簡略化した数値例)

ある同期発電機(1相あたり)で、内部起電力E=200E=200V、端子電圧V=200V=200V、同期リアクタンス Xs=4ΩX_s=4\Omega、負荷角δ=30°\delta=30°sin30°=0.5\sin30°=0.5)で運転している。このときの出力(1相分)は いくらか。

P=200×2004×0.5=10000×0.5=5000WP = \frac{200\times200}{4}\times0.5 = 10000\times0.5 = 5000\text{W}
「負荷を増やす=負荷角を増やす=出力が増える」という感覚は、$\delta=90°$までの範囲では 正しい。だがその先も同じ感覚のまま負荷を増やし続けると、実際には出力がむしろ下がり始め、 発電機は同期を保てなくなって脱調する。$\delta=90°$を境に、出力と負荷角の関係が 折り返す——この山型のイメージを持っておくと、負荷角が絡む問題で符号や向きを 取り違えにくい。

ベクトル図で負荷角δを求める — E=V+jXsIa

さきほどの出力の式P=(EV/Xs)sinδP=(EV/X_s)\sin\deltaは、内部起電力EEと負荷角δ\deltaが あらかじめ分かっている前提の式だった。だが実際の問題では、EEδ\deltaが直接 与えられるのではなく、電機子電流IaI_aと力率から、この2つを自分で求めなければ ならない場面がある。ここで使うのが、電機子抵抗を無視できるときに成り立つ ベクトル関係式だ。

E˙=V˙+jXsIa˙\dot{E} = \dot{V} + jX_s\dot{I_a}

端子電圧V˙\dot Vを基準(角度0°)にとり、電機子電流I˙a\dot I_aを力率角φ\varphiだけ 遅らせて(遅れ力率の場合)描く。そこにjXsI˙ajX_s\dot I_a——電機子電流のベクトルに XsX_sをかけ、さらに90°進めたベクトル——を足し合わせると、内部起電力E˙\dot Eが ベクトルとして求まる。E˙\dot Eの位相角が、そのまま負荷角δ\deltaになる。

$jX_s\dot I_a$の「$j$」は、単なる係数ではなく「90°進める」という回転操作を表している。 遅れ力率の電機子電流(電圧より位相が遅れている)であっても、そこに$jX_s$をかける 操作そのものは常に90°進める方向で行う——この向きを固定で覚えておかないと、 ベクトルを足す方向を逆にしてしまい、負荷角の計算が大きくずれる。

例題(自作の数値例)

定格電圧を基準(1.00°1.0\angle0°p.u.)とする同期発電機に、電機子電流0.50.5p.u.、力率0.8 (遅れ、cosφ=0.8\cos\varphi=0.8sinφ=0.6\sin\varphi=0.6)の負荷が接続されている。同期リアクタンス Xs=0.8X_s=0.8p.u.、電機子抵抗は無視できるとき、負荷角δ\deltaを求める。

I˙a=0.536.87°\dot I_a = 0.5\angle{-36.87°} jXsI˙a=j0.8×0.536.87°=0.4(9036.87)°=0.453.13°=0.4×0.6+j0.4×0.8=0.24+j0.32jX_s\dot I_a = j0.8\times0.5\angle{-36.87°} = 0.4\angle(90-36.87)° = 0.4\angle53.13° = 0.4\times0.6 + j0.4\times0.8 = 0.24+j0.32 E˙=V˙+jXsI˙a=(1+0.24)+j0.32=1.24+j0.32\dot E = \dot V + jX_s\dot I_a = (1+0.24) + j0.32 = 1.24+j0.32 δ=arctan(0.321.24)=arctan(0.258)14.5°\delta = \arctan\left(\frac{0.32}{1.24}\right) = \arctan(0.258) \approx 14.5°
遅れ力率の負荷では、電機子電流$I_a$の位相角と、$jX_s$による90°の回転が組み合わさって、 内部起電力$E$の大きさは端子電圧$V$よりも大きくなり、位相は進む——これが負荷角$\delta$の 正体だ。cosφ・sinφが与えられたら、まず$I_a$を極形式(角度付き)で書き、$jX_s I_a$を 実部・虚部に分解してから$V$に足す、という手順を崩さなければ、計算力率の遅れ・進みが 入れ替わっても同じ考え方で対応できる。

無負荷誘導起電力 — 極数・磁束・巻数から起電力そのものを計算する

ここまでは「発電機が作り出した電気をどう送り出すか」を見てきたが、そもそも発電機が どれだけの起電力を作り出すかは、界磁の磁束・回転子の巻数・回転速度(周波数)から 計算できる。1相あたりの無負荷誘導起電力(実効値)は、次の式で求まる。

E=4.44fNkwΦE = 4.44 f N k_w \Phi
  • ff:周波数[Hz]
  • NN:1相あたりの直列巻数
  • kwk_w:巻線係数(分布巻・短節巻によって、集中巻の場合より起電力がわずかに低くなることを表す1未満の係数)
  • Φ\Phi:1極あたりの磁束[Wb]

Y結線の発電機であれば、この式で求まるEEは「相電圧」であり、実際に外部で使う 線間電圧はこの3\sqrt{3}倍になる。

巻線係数kwk_wは、分布巻短節巻という2つの巻き方の工夫によって生まれる係数だ。

  • 分布巻:1つの磁極・1つの相あたりに割り当てるスロット(コイルを収める溝)の数を 複数に分散させる巻き方。毎極毎相スロット数(1極・1相あたりのスロット数)が2以上 であれば分布巻、1であれば集中巻と判定する。
  • 短節巻:コイルのピッチ(コイルの両辺の間隔)を、全節(1磁極ピッチぶん)よりも 意図的に短くする巻き方。

どちらも、集中巻・全節巻に比べると起電力の大きさそのものはわずかに低くなる(これが kwk_wが1未満になる理由)。だが、その代わりに実務上の利点がある。短節巻はコイル端 (コイルエンド、鉄心の外に飛び出す部分)の長さを短くできるため銅の使用量を減らせる。 さらに、分布巻・短節巻のどちらも、起電力の波形に含まれる高調波成分を打ち消す方向に 働くため、より正弦波に近い、歪みの少ない電圧波形が得られる。

巻線係数$k_w$を「起電力を目減りさせるだけの損な係数」と捉えると、なぜわざわざ分布巻・ 短節巻を採用するのかが分からなくなる。実際には、起電力がわずかに下がる代わりに、 銅量の削減(コスト・発熱の低減)と、波形の正弦波化(高調波による障害の抑制)という 2つの実利が得られる——このトレードオフをセットで理解しておく。分布巻かどうかの判定は 「毎極毎相スロット数が2以上か」という具体的な数値で機械的に確認できる。

例題(自作の数値例)

1極あたりの磁束0.1Wb、1相の直列巻数100、巻線係数0.9、周波数50Hzの三相同期発電機 (Y結線)がある。

E=4.44×50×100×0.9×0.11998V2000VE = 4.44 \times 50 \times 100 \times 0.9 \times 0.1 \approx 1998\text{V} \approx 2000\text{V}

線間電圧は、

3×19983460V\sqrt{3} \times 1998 \approx 3460\text{V}
E=4.44fNkwΦという式は、4つの要素(周波数・巻数・巻線係数・磁束)がすべて掛け算で 並んでいるだけの単純な形だ。丸暗記が不安なら「周波数が高いほど、巻数が多いほど、 磁束が強いほど、起電力は大きくなる」という比例関係をまず思い出し、そこに係数4.44と 巻線係数kwを足し込む、という順で組み立てるとよい。Y結線の線間電圧を求める設問では、 相電圧を求めて満足せず、必ず√3倍する一手間を忘れないこと。

短絡比 — 発電機の「頑丈さ」を表す指標

同期発電機のカタログや仕様には、短絡比という値が載っていることがある。これは、

短絡比=無負荷時に定格電圧を発生させるのに必要な界磁電流三相短絡試験で定格電流と同じ大きさの短絡電流を流すのに必要な界磁電流\text{短絡比} = \frac{\text{無負荷時に定格電圧を発生させるのに必要な界磁電流}}{\text{三相短絡試験で定格電流と同じ大きさの短絡電流を流すのに必要な界磁電流}}

という比で表される、発電機の設計上の性格を示す指標だ。

例題(自作の簡略化した数値例)

無負荷時に定格電圧を発生させるのに必要な界磁電流が8A、三相短絡試験で定格電流と同じ 大きさの短絡電流を流すのに必要な界磁電流が10Aの発電機がある。

短絡比=810=0.8\text{短絡比} = \frac{8}{10} = 0.8

短絡比は、同期インピーダンス(%インピーダンス)とほぼ裏返しの関係にあり、発電機の 性格を大きく2つのタイプに分ける目安になる。

  • 短絡比が大きい発電機(鉄機械と呼ばれる):同期インピーダンスが小さく、 電圧変動率が小さい(負荷をかけても電圧が下がりにくい)ため安定度が高い。ただし 鉄心・巻線を多く使う設計になるため、外形寸法が大きくコストも高くなりやすい。
  • 短絡比が小さい発電機(銅機械と呼ばれる):同期インピーダンスが大きく、 電圧変動率が大きいため安定度は劣るが、外形寸法をコンパクトに、コストを抑えて 作りやすい。
短絡比は「大きいほど一方的に優れている」わけではない、トレードオフの指標だと理解しておく。 短絡比が大きい発電機(鉄機械)は安定度・電圧変動率の面で有利だが、その代償として 図体が大きくコストもかさむ。短絡比が小さい発電機(銅機械)はその逆——コンパクトさと 安定度のどちらを優先するかという設計思想の違いが、短絡比という1つの数値に表れている。

%同期インピーダンスと短絡電流 — 定格値を基準にした換算

同期インピーダンスZsZ_sは「1相あたり何Ω」という実際の値(オーム値)で表すこともできるが、 発電機の容量や電圧が違うもの同士を比べにくいという欠点がある。そこで実務では、定格電流 InI_nを流したときの同期インピーダンスによる電圧降下を、定格相電圧に対する割合で表した %同期インピーダンス(%Z)がよく使われる。

%Zを使うと、定格電圧に等しい無負荷端子電圧を発生させる界磁電流のまま三相を短絡させたときに 流れる短絡電流IscI_{sc}を、定格電流InI_nから次の式で求められる。

Isc=In×100%ZI_{sc} = I_n \times \frac{100}{\%Z}
「%Zが大きい=影響が大きい」という印象から、%Zを掛け合わせる式を思い浮かべやすいが、 実際には**反比例**の関係にある。同期インピーダンスがほぼ0(%Zがほぼ0%)に近い発電機を 短絡させれば、電流を妨げるものがほとんどないため短絡電流は際限なく大きくなるはずだ—— この極端な状況を思い出せば、%Zが小さいほど$I_{sc}$が大きくなる式の形を確認できる。

さらに、短絡試験で得られる短絡特性(界磁電流IfI_fと短絡電流IsI_sの関係)は、 短絡時には鉄心がほとんど磁気飽和しないため、ほぼ原点を通る直線(比例関係)になる。 この比例関係を使えば、ある界磁電流での短絡電流が分かっている場合に、別の目標の短絡電流 (たとえばIscI_{sc})に対応する界磁電流を、比例計算だけで逆算できる。

例題(自作の数値例)

%同期インピーダンス50%、定格電流1000Aの三相同期発電機がある。定格電圧に等しい無負荷 端子電圧を発生させる界磁電流のまま三相を短絡すると、

Isc=1000×10050=2000AI_{sc} = 1000 \times \frac{100}{50} = 2000\text{A}

この発電機で、三相短絡電流800Aを流すのに必要な界磁電流が30Aだったとする。短絡特性が 界磁電流にほぼ比例することを使うと、Isc=2000I_{sc}=2000Aに対応する界磁電流は、

If=30×2000800=75AI_f = 30 \times \frac{2000}{800} = 75\text{A}
この計算は、前節で見た短絡比(無負荷時に定格電圧を発生させる界磁電流÷短絡試験で定格電流と 同じ短絡電流を流す界磁電流)を求める計算と、材料はほぼ同じだ。違うのは、%Zという「定格電流 基準の一発の数値」からスタートして、まず$I_{sc}$という短絡電流の目標値を作り、そこから 比例計算で界磁電流を逆算するという2段階の手順を踏む点にある。%Zと短絡比はどちらも 同期インピーダンスの大きさを表す指標であり、$\%Z \approx 100/K_s$($K_s$:短絡比)という おおよその逆数の関係にある。

並行運転の条件 — 4つを一致させて初めてつながる

複数の同期発電機を1つの母線につなぐ(あるいは発電機を系統につなぐ)並行運転では、 つなぐ前に次の4つを一致させる必要がある。

  1. 起電力の大きさが等しいこと
  2. 周波数が等しいこと
  3. 位相が一致していること
  4. 相回転(相順)が一致していること

出力容量(定格kVA)は、この条件には含まれない。容量の異なる発電機どうしでも、 上の4条件さえ満たしていれば並行運転自体は可能である(実際の負荷分担をどう配分するかは 別の設計の話になる)。

4条件のうち、電圧・周波数はメーターの数値としてズレが目に見えやすい。だが**位相**だけは 投入の瞬間まで実感しにくく、もっとも見落とされやすい条件でもある。同期投入装置 (シンクロスコープ)が位相の一致を厳密に監視しているのは、まさにこの見えにくさへの対策だ。

条件が崩れた状態で投入すると、2つの起電力の差分がほぼそのまま循環電流(横流)として流れ、 発電機の軸や巻線に大きな衝撃的な力がかかる恐れがある。非常用発電機の投入操作が 自動同期装置や慎重な手順で行われているのは、この事故を防ぐためである。

冒頭のシンクロスコープが何を監視し、何を防いでいたのか——答え合わせは理解度チェックの 最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 遅れ力率と進み力率で、電機子反作用が端子電圧をどちらに動かすかを逆に覚えてしまう

    なぜ引っかかる『遅れ』『進み』という言葉の印象と、電圧が上がる・下がるという結果が直感的に結びつかないため、暗記だけに頼ると混同しやすい。

    見破り方誘導性負荷(遅れ力率)は電流が磁束を弱める方向(減磁)、容量性負荷(進み力率)は電流が磁束を強める方向(増磁)に働く、という関係を「誘導=減、容量=増」の対で覚え、電圧変動の向きはそこから導く。

  2. 並行運転の条件に『発電機の出力容量(定格kVA)が等しいこと』を含めてしまう

    なぜ引っかかる並行運転は『同じ規模の発電機どうしで行うもの』という思い込みから、容量の一致を条件のひとつだと勘違いしやすい。

    見破り方並行運転の条件は、電圧・周波数・位相・相回転という『波形と回転の合わせ方』に関するものだけである。容量が違っても、電圧・周波数・位相・相回転さえ一致していれば並行運転自体は可能(負荷分担の設計は別問題)と整理する。

  3. 位相のわずかなズレを『多少なら問題ない』と軽視してしまう

    なぜ引っかかる電圧や周波数のズレはメーターで数値として見えやすいが、位相のズレは投入の一瞬まで実感しにくく、許容範囲を甘く見積もりやすい。

    見破り方位相が一致しないまま投入すると、2つの起電力の差分がほぼそのまま短絡電流に近い形で流れうる、という点を思い出す。同期投入装置(シンクロスコープ)が位相の一致を厳密に監視しているのは、このリスクの大きさゆえだと理解しておく。

  4. 同期インピーダンスは、無負荷飽和試験だけ、または短絡試験だけで求まると考えてしまう

    なぜ引っかかる『電圧を測る試験』と『電流を測る試験』のどちらか一方だけでも答えが出せそうに見えてしまうため。

    見破り方同期インピーダンスは電圧と電流の比(Zs = E/Is)である以上、電圧側の情報(無負荷飽和試験)と電流側の情報(短絡試験)を、同じ界磁電流の条件でそろえて組み合わせて初めて求まる、という2試験セットの構造を思い出す。

  5. 負荷角δが大きくなるほど、同期発電機の出力は際限なく増え続けると考えてしまう

    なぜ引っかかる『負荷角=負荷の大きさに応じて広がるもの』という理解から、出力P=(EV/Xs)sinδを、δに比例して増え続ける式だと錯覚しやすい。実際はsinδという周期関数であり、δ=90°を過ぎると値は逆に減っていく。

    見破り方sinのグラフを思い出す。δ=0°でP=0、δ=90°でP=最大(sin90°=1)、δ=180°で再びP=0。δを90°より先まで広げても出力は増えず、むしろ発電機の同期が保てなくなる(脱調する)方向に近づいていく、という山型の関係で理解する。

  6. 無負荷誘導起電力の式E=4.44fNkwΦで、係数4.44や巻線係数kwを忘れて計算してしまう

    なぜ引っかかる起電力の式を『周波数×巻数×磁束』という比例関係の大枠だけで覚えてしまうと、実効値に換算するための係数4.44や、分布巻・短節巻による起電力の低減を表す巻線係数kwを計算から落としやすい。

    見破り方E=4.44fNkwΦという4つの要素(周波数・巻数・巻線係数・磁束)がすべて掛け算で並んでいることを式の形として先に確認してから数値を代入する。Y結線の線間電圧を聞かれているのに相電圧のまま答えてしまう(√3倍を忘れる)誤りも、同じく確認漏れの典型例。

  7. 水車発電機とタービン発電機の回転子形状(突極形・円筒形)を、名前の響きだけで逆に覚えてしまう

    なぜ引っかかる『水車=重厚で大きい=丸い(円筒形)』というイメージや、『タービン=高速回転=出っ張りがある(突極形)』という直感的な連想が、実際の対応関係とは逆であるため混同しやすい。

    見破り方回転速度と極数の関係Ns=120f/pを思い出す。水車は回転速度が低いぶん必要な極数pが多く、多くの磁極を配置するため回転子の直径が大きい突極形にならざるを得ない。タービンは高速回転(少ない極数)で足りるため、遠心力に耐えられるよう直径を絞り軸方向に長くした頑丈な円筒形になる、と回転速度から先に考える。

  8. ベクトル図でjXsIaを足し合わせる向きを間違え、電機子電流Iaをそのまま(回転させずに)足してしまう

    なぜ引っかかるjという虚数単位が『90°進める』という操作を表すことを見落とすと、Iaのベクトルをそのままの向きで足してしまい、負荷角δの計算が大きくずれる。

    見破り方jXsIaは『Iaの大きさにXsをかけ、さらに90°進めた(反時計回りに回転させた)ベクトル』だと確認してから作図・計算する。遅れ力率(Iaが電圧より遅れている)の電機子電流であっても、jXsIaというひとかたまりの操作は常に90°進める、という向きだけは固定で覚える。

  9. 短絡比が大きい発電機ほど『コンパクトで経済的、常に優れている』と誤解する

    なぜ引っかかる短絡比が大きいと電圧変動率が小さく安定度が高いという『良い』特性だけに注目すると、その裏返しとして鉄心・巻線を多く使うため外形寸法とコストが大きくなる(鉄機械と呼ばれる)というトレードオフを見落としやすい。

    見破り方短絡比は『安定性・電圧変動率の小ささ』と『外形・コストの小ささ』が同時には成り立たないトレードオフの指標だと先に押さえる。短絡比が大きい=鉄機械(安定重視・大型)、小さい=銅機械(コンパクト・安定度は劣る)という対で覚え、どちらが一方的に優れているわけではないと理解する。

  10. %同期インピーダンスから短絡電流を求める計算で、In×(%Z/100)のように%Zを掛けてしまい、割り算(In÷(%Z/100))と逆の操作をしてしまう

    なぜ引っかかる『%インピーダンスが大きい=影響が大きい』という漠然とした印象から、%Zを掛け合わせる式のほうが自然に感じられ、実際には割り算(反比例)の関係であることを見落としやすい。

    見破り方極端な値で検算する。%Zが非常に小さい(インピーダンスがほぼ0でほとんど電圧降下がない)発電機ほど、短絡させたときの電流は非常に大きくなるはずだ。%Zを掛ける式ではこの関係が逆になってしまうため、Isc=In×(100/%Z)という『%Zが小さいほどIscが大きい』反比例の形が正しいと確認できる。

  11. 毎極毎相スロット数が1(集中巻)の巻線でも、実際の発電機はほぼすべて分布巻・短節巻を使っているはずだと思い込んでしまう。また短節巻は起電力を弱めるだけの欠点だと考え、高調波を抑える利点を見落とす

    なぜ引っかかる『巻線係数kwは1未満で起電力が下がる』という式だけを覚えていると、分布巻・短節巻がわざわざ採用される理由(銅量の削減・波形の改善)を見落とし、単なる損失要因としてしか捉えられなくなる。毎極毎相スロット数が2以上という具体的な判定基準を知らないと、分布巻かどうかをスロット配置図から読み取れない。

    見破り方巻線係数kwが1未満になるという『欠点』の裏に、コイル端の短縮(銅量削減)と高調波抑制(正弦波に近い波形)という2つの『利点』があることをセットで思い出す。分布巻か集中巻かの判定は、毎極毎相スロット数が2以上かどうかという具体的な数値基準で機械的に確認する。

参考文献・出典

理解度チェック(19問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、19問で確認しよう。 内訳は基本9問・応用4問・ひっかけ6問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 19 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 同期発電機の周波数は $f = \dfrac{pN}{120}$($p$:極数、$N$:原動機の回転速度[rpm])。同期速度で回さない限り、系統周波数と一致した電気を作れない
  2. 回転する界磁(電磁石)の磁束を、固定した電機子巻線が電磁誘導で拾うことで交流の起電力が生まれる
  3. 遅れ力率(誘導性)の負荷をつなぐと電機子反作用は減磁側に働き、端子電圧は下がりやすい。進み力率(容量性)の負荷では逆に増磁側に働き、端子電圧は上がりやすい
  4. 並行運転の条件は「起電力の大きさが等しい」「周波数が等しい」「位相が一致している」「相回転(相順)が一致している」の4つ。出力容量(定格kVA)が異なる発電機どうしでも並行運転できる
  5. 同期インピーダンス Zs は、無負荷飽和試験(エアギャップ線)から得た誘導起電力Eと、短絡試験から得た短絡電流Isを、同じ界磁電流の条件で組み合わせ Zs = E/Is として求める
  6. 同期発電機の出力は P = (EV/Xs) × sinδ(E:内部起電力、V:端子電圧、Xs:同期リアクタンス、δ:負荷角=内部起電力と端子電圧の位相差)で表される。電機子抵抗を無視できるとき成り立つ近似式で、出力は負荷角δの正弦(sin)に比例する
  7. 負荷角δが90°のとき出力は最大になる。δが90°を超えて広がり続けると出力はむしろ減少し、発電機は同期を保てなくなって脱調する
  8. 電機子抵抗を無視できるとき、内部起電力E・端子電圧V・電機子電流Ia・同期リアクタンスXsの間にはE=V+jXsIaというベクトル関係が成り立つ。端子電圧Vを基準(角度0)にとり、電機子電流Iaを力率角φだけ遅らせて(または進ませて)描き、jXsIaを90°進めて足し合わせることで、Eの大きさと位相角(=負荷角δ)を求められる
  9. 同期発電機は、小容量のものを除き電機子巻線を固定子側、界磁巻線を回転子側に設ける回転界磁形が一般的。電機子は大電流・高電圧を扱うため固定側に置くほうが絶縁がしやすく、スリップリングを介さず外部へ直接引き出せる。原動機の回転速度が比較的低い水車発電機は、必要な極数を増やすため回転子の直径が大きい突極形、回転速度が高いタービン発電機は回転子の直径を小さくし軸方向に長くした円筒形(横軸形)になる
  10. 条件が崩れた状態で投入すると、大きな循環電流(横流)が流れ、発電機の軸や巻線に衝撃的な力がかかる恐れがある
  11. 同期発電機の無負荷誘導起電力(1相あたり実効値)は E = 4.44fNkwΦ(f:周波数、N:1相の直列巻数、kw:巻線係数、Φ:1極あたりの磁束)で求まる。Y結線ならこの√3倍が線間電圧になる
  12. 短絡比は、無負荷時に定格電圧を発生させるのに必要な界磁電流を、三相短絡試験で定格電流と同じ大きさの短絡電流を流すのに必要な界磁電流で割った値。短絡比が大きい発電機(鉄機械)は同期インピーダンスが小さく電圧変動率が小さく安定度が高いが、鉄心・巻線を多く使うため外形寸法・コストが大きくなる。短絡比が小さい発電機(銅機械)はその逆の特徴を持つ
  13. %同期インピーダンス%Z[%]は、定格電流Inを流したときの同期インピーダンスによる電圧降下を、定格相電圧に対する割合で表したもの。定格電圧に等しい無負荷端子電圧を発生させる界磁電流のまま三相短絡させたときの短絡電流Iscは、Isc=In×(100/%Z)で求まる(%Zが小さいほど短絡電流は大きくなる、という反比例の関係)。短絡特性(界磁電流と短絡電流の関係)は磁気飽和がほとんど生じずほぼ直線(比例)なので、ある界磁電流での短絡電流が分かっていれば、比例計算でIscに対応する界磁電流を逆算できる
  14. 分布巻か集中巻かは、毎極毎相スロット数(1つの磁極・1つの相あたりに割り当てられるスロット数)が2以上あるかどうかで判定する。短節巻は、コイルのピッチを全節(1磁極ピッチ分)より意図的に短くする巻き方で、コイル端(コイルエンド)の長さを短縮して銅量を減らせるとともに、起電力波形に含まれる高調波成分を打ち消して、より正弦波に近い電圧波形が得られるという2つの利点がある
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