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施工管理法(知識) ・ 5 / 8

安全管理の基礎 — KY活動は『やる気』ではなく『手順』で成果が変わる

読み終えると、こうなる

現場の朝礼を見たとき、それが形式的な儀式ではなく、法令が求める安全管理体制の一部だと分かるようになる。

  • 電気工事で特に注意すべき労働災害の種類(感電・墜落)を挙げられる
  • 高さ2m以上の作業に、なぜ墜落制止用器具の使用等の措置が必要になるかを説明できる
  • KY活動の4ラウンド法を、現状把握から目標設定まで順を追って説明できる
  • 元請と下請が混在する現場で、誰が全体の安全衛生を統括するかを説明できる
考えてみよう

毎朝、現場では作業前に短い朝礼が開かれ、指差し呼称で「ヨシ!」と声を揃える光景が見られる。あれを「形だけの儀式」だと思っている人は少なくない。

だが、あの数分間には、労働災害を防ぐための手順が、実は厳密な順序で詰め込まれている。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、あの朝礼の中身を、手順として説明できるようになっている。

電気工事の現場には、他の建築工事にはない特有のリスクがある。活線(電気が通っている状態)に近い場所での作業による感電災害と、天井裏や高所での配線・機器取付にともなう墜落・転落災害だ。この2つは、電気工事における労働災害の代表格として、常に意識しておく必要がある。

高さ2m ― 墜落防止措置が求められる境目

労働安全衛生規則では、高さ2m以上の箇所での作業について、墜落制止用器具(いわゆる安全帯)の使用等の墜落防止措置を求めている。天井裏の配線作業や、脚立・高所作業車を使う照明器具の取付作業など、電気工事では2mを超える高さでの作業が日常的に発生する。

ここで注意したいのは、**「2m未満なら何もしなくていい」という意味ではない**という点だ。2mという数字は、墜落制止用器具の使用等、特定の措置が義務づけられる境目にすぎない。実際には、足元が不安定な場所や、開口部の近くなど、2m未満でも転落のリスクがある作業は多い。基準値は「最低限守るべきライン」であって、それを下回れば安全対策が不要になる、という単純な話ではない。

KY活動(危険予知活動)― 4ラウンド法という手順

冒頭の朝礼で行われているKY活動(危険予知活動)は、思いつきで危険を挙げ合う場ではなく、4ラウンド法という決まった手順で進める。

KY活動 4ラウンド法 第1R:現状把握 どんな危険が潜んでいるか 第2R:本質追究 重要な危険を絞り込む 第3R:対策樹立 危険への対策を話し合う 第4R:目標設定 行動目標を指差し呼称で確認 朝礼のTBM(ツールボックスミーティング)で毎日この流れを実施する KY活動4ラウンド法の順序(自作の概念図)

第1ラウンドの現状把握では、その日の作業に潜む危険をできるだけ多く洗い出す。第2ラウンドの本質追究では、洗い出した危険の中から特に重要なものを絞り込む。第3ラウンドの対策樹立では、その重要な危険に対する具体的な対策を話し合う。そして第4ラウンドの目標設定で、その日の行動目標を一言にまとめ、指差し呼称で「ヨシ!」と全員で確認する。冒頭の朝礼の掛け声は、この最後の第4ラウンドにあたる。

この一連の流れをその日の作業前に短時間で共有する場が、ツールボックスミーティング(TBM)だ。作業内容・危険箇所・安全対策を確認する場としてKY活動と組み合わせ、「TBM-KY」として毎朝実施している現場が多い。

誰が現場全体の安全を統括するのか

電気工事の現場には、元請(電気工事会社)だけでなく、複数の下請業者の労働者が同時に働いていることが多い。会社が違えば、安全に対する意識や手順にもばらつきが出やすい。このばらつきを埋め、現場全体の安全衛生を1つにまとめる役割を担うのが統括安全衛生責任者だ。

労働安全衛生法第15条により、元請(特定元方事業者)と下請(関係請負人)の労働者を合計した人数が、常時50人以上(ずい道等の建設・橋梁の建設等、特定の仕事は常時30人以上)になる現場では、元請側が統括安全衛生責任者を選任しなければならない。

これに対応して、各下請業者側は安全衛生責任者を選任し、統括安全衛生責任者との連絡・調整の窓口となる。名前が似ているためよく混同されるが、「統括」の有無で、選任する側(元請か下請か)が違うと覚えておくと区別しやすい。

停電させても油断できない ― 残留電荷の放電

電気工事の安全管理では、「電源を切ったから安全」という判断が思わぬ落とし穴になることがある。労働安全衛生規則第339条第1項第2号は、開路した電路が電力ケーブルや電力コンデンサー等を有する電路で、残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものについて、安全な方法によりその残留電荷を確実に放電させることを義務付けている。

ケーブルの絶縁体や力率改善用のコンデンサは、電気を蓄える性質(静電容量)を持つ。そのため、断路器を開放して電源を切った(開路した)あとも、内部に電荷が蓄積されたまま残ることがある。「開路したから、もう電気は流れていない」という判断は半分しか正しくない。**開路したうえで、残留電荷を安全な方法で確実に放電させて、初めて安全な状態になる**、という2段階で考える必要がある。

停電作業の3点セット ― 施錠・表示・監視人/残留電荷の放電/検電と短絡接地

労働安全衛生規則第339条第1項は、停電作業を行う場合に事業者が講じるべき措置を、次の3号にわたって定めている。

措置内容
第1号開閉器の管理開路に用いた開閉器に、施錠・通電禁止に関する所要事項の表示・監視人の配置のいずれか1つを行う
第2号残留電荷の放電電力ケーブル・電力コンデンサー等の残留電荷を安全な方法で確実に放電させる
第3号停電確認と短絡接地電路が高圧又は特別高圧であった場合、検電器具により停電を確認し、かつ短絡接地器具を用いて確実に短絡接地する
ここで見落としやすいのが第3号だ。**検電器具による停電の確認**と、**短絡接地器具による短絡接地**は、名前が似た1つの手続きではなく、それぞれ別の危険に対応する独立した2つの措置になる。検電で「今、電気は流れていない」ことを確認できても、作業中に誰かが誤って開閉器を投入してしまう危険(誤通電)、他の電路と接触してしまう危険(混触)、近くを通る別の電路から電磁誘導で電圧が生じてしまう危険(誘導)は、検電だけでは防げない。短絡接地器具で電路を接地しておけば、こうした危険が生じても電流が大地に逃げ、作業者への感電を防げる。「停電を確認したから、もう安全」という判断で短絡接地を省略すると、この2つ目の防御線が抜け落ちる。

短絡接地器具は、取り付けるときだけでなく、取り外すときの確認も義務付けられている。労働安全衛生規則第339条第2項により、開路した電路に通電を再開しようとするときは、あらかじめ、作業に従事した労働者に感電の危険が生ずるおそれがないこと、及び短絡接地器具を取りはずしたことを確認したあとでなければ、通電してはならない。短絡接地器具を付けたままの電路に通電すれば、地絡・短絡事故につながる。安全のために取り付けた器具が、外し忘れれば今度は事故の原因になる、という点まで押さえておきたい。

作業主任者制度 ― 「危険な作業」すべてに必要なわけではない

労働安全衛生法第14条・同法施行令第6条は、一定の危険・有害な作業について、作業主任者の選任を事業者に義務付けている。代表的な例を挙げる。

作業主任者の種類選任が必要になる作業の条件
足場の組立て等作業主任者つり足場・張出し足場又は高さ5m以上の足場の組立て・解体・変更の作業
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者掘削面の高さ2m以上の地山の掘削の作業
型枠支保工の組立て等作業主任者型枠支保工の組立て・解体の作業
コンクリート破砕器作業主任者コンクリート破砕器を用いて行う破砕の作業
酸素欠乏危険作業主任者酸素欠乏危険場所における作業
ここで注意したいのは、**作業主任者の選任義務は、危険な作業すべてに一律に生じるわけではない**という点だ。義務が生じるのは、労働安全衛生法施行令第6条で個別に列挙された作業だけであり、この列挙に載っていない作業には、作業主任者以外の安全措置(特別教育や個別の規則上の措置など)が求められることはあっても、作業主任者の選任義務そのものは発生しない。停電作業はその代表例で、検電・接地・残留電荷の放電といった措置は必須だが、作業主任者を選任するという枠組みの対象にはなっていない。「危険な作業=作業主任者が必要」という単純な連想ではなく、「施行令に列挙されているかどうか」で判断する必要がある。

明り掘削の安全措置 — 数字が細かいほど、狙われる

地山の掘削作業主任者が選任されるような明り掘削(地表から直接行う掘削)の現場には、選任の要否とは別に、掘削そのものの安全措置にも具体的な数字の基準がある。

措置基準
土止め支保工の点検周期設置後7日をこえない期間ごと(中震以上の地震の後、大雨等で地山が急激に軟弱化するおそれがある事態が生じた後も点検)
砂からなる地山の掘削面のこう配35度以下、又は掘削面の高さ5m未満
スレート等でふかれた屋根上の作業踏み抜きの危険があるときは、幅30cm以上の歩み板を設け、防網を張るなどの措置
高さ又は深さが1.5mを超える箇所安全に昇降するための設備等を設置(作業の性質上著しく困難な場合を除く)
点検周期の『7日ごと』は、日常の感覚で使う『2週間に1回』のような区切りに置き換えられやすい。土止め支保工の点検は、部材の損傷・変形・腐食・変位・脱落の有無、切りばりの緊圧の度合、部材の接続部・交さ部・取付け部の状態を確認する重要な安全確認であり、14日ごとでは労働安全衛生規則第373条の基準を満たさない。同様に、掘削の深さが1.5mを超える場面では、周囲に十分な作業スペースがあるように見えても、昇降設備の設置は省略できない。『スペースが十分=安全』という感覚と、『高さ・深さ1.5m超』という基準は、まったく別の判断軸だ。

玉掛け業務の資格 — 荷の重さではなく、クレーンの吊り上げ荷重で判断する

キュービクルや大型変圧器のような重量機器を、クレーンで吊って搬入する場面では、ワイヤーロープなどをクレーンのフックに掛け外しする玉掛け作業が発生する。この玉掛け業務に必要な資格は、使用するクレーン等の吊り上げ荷重(そのクレーンが吊り上げられる能力の上限)で区分される。

クレーン等の吊り上げ荷重必要な資格
1t以上玉掛け技能講習の修了
1t未満玉掛けの業務に係る特別教育の修了
判断を誤りやすいのは、資格の要否を「実際にそのとき吊っている荷物の重さ」で決めてしまう考え方だ。吊り上げ荷重2tのクレーンを使えば、たとえ実際に吊る荷物が300kg程度の軽い制御盤であっても、玉掛け技能講習の修了者を就かせる必要がある。基準はあくまで**クレーン自体の能力の上限**であって、その日その作業で実際に吊る荷の軽重ではない。

足場の作業床 — 手すり・中さん・幅木を数字で押さえる

高さ2m以上の作業床には、墜落制止用器具の使用等とあわせて、足場そのものの構造にも墜落防止の基準がある。労働安全衛生規則は、足場(電気工事の現場でよく使われる移動式足場=ローリングタワーを含む)の作業床について、次の3点を求めている。

設備高さの基準
手すり等85cm以上
中さん等35cm以上50cm以下
幅木10cm以上

床材間や床材と建地とのすき間は3cm以下とし、資材や工具が隙間から落下しない構造にする。

手すりの高さを「80cmくらいだろう」と日常的な感覚で見積もると、基準の85cm以上に届かない。手すり等・中さん等・幅木は、それぞれ別の高さ基準を持つ3点セットであり、どれか1つを満たせば足りるわけではない。

移動式足場(ローリングタワー)にはもう1つ、固定の足場にはない注意点がある。作業床の上に作業員を乗せたまま、移動式足場を移動させてはならない。移動中に不意な傾きや衝撃があれば、高所の作業床に乗った作業員がそのまま転落する危険があるためだ。移動させるときは、作業床の上に人がいないことを必ず確認する。

なお、高さ5m以上の移動式足場の組立て・解体・変更作業には、後述する足場の組立て等作業主任者の選任も必要になる。「移動式だから足場の組立て等作業主任者の対象外」ということはなく、通常の足場と同じ高さ基準(5m以上)で判定する。

高さ3m — 「人の墜落」とは別の、「物の落下」を防ぐ基準

これまで見てきた「高さ2m以上」は、作業する人が墜落することを防ぐための基準だった。これとは別に、労働安全衛生規則第536条は、高さ3m以上の場所から物体を投下するときの基準を定めている。適当な投下設備を設けるか、監視人を置くなどして、下にいる労働者に物が当たる危険を防止する措置を講じなければならない。この措置が講じられていない場合、労働者は高さ3m以上の場所から物体を投下してはならない。

「高さの基準」としてすでに登場した2mの印象が強いと、物の落下についても同じ2mが基準だと錯覚しやすい。だが2mは**人の墜落**を防ぐための墜落制止用器具等の基準、3mは**物の落下**を防ぐための投下設備・監視人配置の基準であり、対象(人か、物か)も基準の高さも異なる。天井裏の配管作業で出た端材やケーブルの切れ端を、脚立の上から下の資材置き場へ「ちょっとだけ」投げ落とす——という何気ない行為も、高さ3m以上であればこの基準の対象になる。

悪天候時の高所作業 — 装備を強化するのではなく、作業を止める

高さ2m以上の作業に求められるのは、墜落制止用器具の使用等の措置だけではない。労働安全衛生規則第522条は、強風(10分間の平均風速が毎秒10m以上)・大雨(1回の降雨量が50mm以上)・大雪等の悪天候のため、その作業の実施について危険が予想されるときは、労働者を作業に従事させてはならないと定めている。

ここで判断を誤りやすいのが、「危険が予想されるなら、墜落制止用器具をしっかり着用させたうえで作業を続ければよい」という発想だ。墜落制止用器具は、あくまで平常時の墜落防止措置であって、強風で足場が揺れたり、大雨で足元が滑りやすくなったりする悪天候そのものの危険を打ち消す道具ではない。第522条が求めているのは装備の強化ではなく、**作業そのものの中止**。屋外の高所作業を予定している日に、天候の急変が見込まれるときは、器具の点検よりも先に「今日、この作業を続けてよいか」を判断する必要がある。

特別教育で足りる業務、技能講習が必要な業務 — 高所作業車は高さで区分が変わる

建設現場で就業制限のかかる危険業務には、特別教育の修了だけで就業できる業務と、技能講習の修了まで必要な業務がある。アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、研削といしの取替え又は取替え時の試運転、つり上げ荷重1t未満の移動式クレーンの運転は、いずれも特別教育の修了で就業できる。

一方、高所作業車の運転業務(道路上を走行させる運転を除く)は、同じ「高所作業車の運転」という業務の中でも、作業床の高さによって必要な資格が変わる。

作業床の高さ必要な資格
10m未満高所作業車運転の業務に係る特別教育の修了
10m以上高所作業車運転技能講習の修了
「アーク溶接や研削といしの取替えは特別教育で足りる」という知識をそのまま当てはめて、「高所作業車の運転も、業務内容は変わらないのだから特別教育で足りるはず」と一般化すると、10m以上の高所作業車の運転で判断を誤る。同じ「特別教育で足りる業務の一覧」の中に、高さという条件付きで技能講習に切り替わる業務が紛れている、という構造を押さえておく。

特別教育の対象業務をもう少し広げる — 建設用リフト、フォークリフト、そして「1t」の境界線

特別教育で足りる業務は、アーク溶接・研削といしの取替え・高所作業車の運転(10m未満)だけではない。建設現場でよく登場する業務として、建設用リフトの運転と、最大荷重1t未満のフォークリフトの運転も特別教育の修了で就業できる。

ここで玉掛け業務と同じ構造の落とし穴がある。移動式クレーンの**運転業務そのもの**(玉掛けのように荷を掛け外しする業務ではなく、クレーンを操作する業務)も、つり上げ荷重で必要な資格が段階的に変わる。つり上げ荷重**1t未満**は特別教育、**1t以上5t未満**は小型移動式クレーン運転技能講習、**5t以上**は移動式クレーン運転士免許(国家資格)が必要になる。基準はあくまで「1t未満」であり、つり上げ荷重が**ちょうど1t**のクレーンは、この「1t未満」に含まれない。「1t以下なら特別教育で足りる」と読み違えると、境界の1tちょうどのクレーンで判断を誤る。

安全管理は「事故が起きてから」ではなく「起きる前」の設計

安全管理の本質は、事故が起きたあとにどう対応するかではなく、事故が起きる前にどれだけ危険を洗い出し、対策を打てるかにある。KY活動の4ラウンド法も、統括安全衛生責任者の選任も、すべて「起きてから対処する」のではなく「起きる前に手を打つ」ための仕組みだ。

今日試せることとして、身近な作業(電気工事に限らず、脚立を使う作業や車の運転でもよい)を1つ思い浮かべ、KY活動の4ラウンド法の流れ——現状把握、本質追究、対策樹立、目標設定——を自分の頭の中で一度なぞってみるといい。手順として意識するだけで、危険の見え方が変わってくる。

この資格を取ったあと、現場で何が変わるか

高圧の機器や大型のケーブルドラムを現場に納品しに行く機会があったとき、これまでは朝礼の輪の外で待つだけだったのが、合格後はTBM-KYの4ラウンド法が今どの段階を回っているかが分かるようになり、「その作業、統括安全衛生責任者は誰が務めていますか」と、複数業者が混在する現場特有の質問を自分から発せるようになる。安全朝礼を眺めるだけの立場から、その中身を理解した立場への変化だ。

停電させたキュービクルの近くに納品する場面でも、「電源を切っただけで、残留電荷の放電は済んでいますか」と具体的に確認できるようになる。これは形式的な声かけではなく、電力ケーブルやコンデンサが静電容量を持つという知識に裏打ちされた、実質的な安全確認だ。現場の作業員や監督者から見ても、この質問ができる納品担当者は、単に荷物を届けるだけの相手とは違う扱いを受ける。

高さ2m以上の作業や、足場・型枠支保工に作業主任者が必要になる条件を具体的な数字で把握していると、取引先の現場体制に関する会話にも具体的に参加できるようになる。安全管理を「気をつけてください」という一般論ではなく、条文と数字で語れることは、電材商社の担当者としての専門性を一段引き上げ、現場からの信頼を積み重ねる材料になる。

冒頭の問い、朝礼の掛け声には、どんな手順が詰め込まれていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 統括安全衛生責任者(元請側)と安全衛生責任者(下請側)を、同じ役職だと思わせる、あるいは選任する側を入れ替える

    なぜ引っかかる名前が『統括』の有無しか違わず、非常によく似ているため混同しやすい

    見破り方統括安全衛生責任者は、現場全体を統括する元請(特定元方事業者)側が選任する。安全衛生責任者は、各下請業者側が選任し、統括安全衛生責任者と連絡・調整する窓口役を務める、という選任する側の違いで区別する

  2. KY活動の4ラウンド法の順序を入れ替える(対策樹立を先に持ってくる等)

    なぜ引っかかる『危険への対策を考える』ことがKY活動の本題だと思うと、対策樹立をいきなり最初に置いてしまいやすい

    見破り方4ラウンド法は、まず危険そのものを洗い出す現状把握、次に重要な危険を絞り込む本質追究、そのあとで対策樹立、最後に行動目標を指差し呼称で確認する目標設定、という順序が固定されている。対策はいきなり考えるのではなく、危険を把握・絞り込んだあとに検討する

  3. 高さ2m未満の作業には墜落防止の配慮が一切不要だと思わせる

    なぜ引っかかる『2m以上』という基準値だけを覚えると、2m未満なら何をしても問題ないと極端に解釈しやすい

    見破り方『高さ2m以上』は墜落制止用器具の使用等、特定の措置が義務づけられる基準であって、2m未満なら安全配慮が不要という意味ではない。基準値は『最低限のライン』であり、現場の状況に応じてそれ以下の高さでも安全対策を検討するのが実務の考え方だと理解する

  4. 電源を切る(開路する)操作をすれば、それだけで感電の危険はすべて消えると思わせる

    なぜ引っかかる『電気を止めた=もう電気は流れていない』という発想から、開路後にケーブルやコンデンサ内部に電荷が残っている可能性を見落としやすい

    見破り方電力ケーブルの絶縁体やコンデンサは、静電容量を持つため、開路(電源を切る)後も内部に電荷が蓄積されたまま残ることがある。労働安全衛生規則第339条は、この残留電荷を安全な方法で確実に放電させることを求めている。『開路=安全』ではなく、『開路したうえで残留電荷を放電させて初めて安全』という2段階で考える

  5. 危険な作業にはすべて作業主任者の選任が必要だと一律に考え、停電作業にも作業主任者が必要だと思わせる

    なぜ引っかかる足場や型枠支保工など、危険な作業の多くに作業主任者の選任が義務付けられていることを知っていると、『危険な作業=作業主任者が必要』という単純な等式で覚えてしまいやすい

    見破り方作業主任者の選任義務は、労働安全衛生法施行令で個別に列挙された作業だけに生じる。停電作業はこの列挙の対象ではなく、代わりに検電・接地・残留電荷の放電といった別の安全措置が義務付けられている。『危険だから作業主任者』ではなく、『施行令に列挙されているかどうか』で判断する

  6. 足場の手すりの高さを、脚立や一般的な手すりの感覚で『80cm程度あれば十分』と見積もらせる

    なぜ引っかかる手すりというと日常的には80〜90cm程度のイメージがあり、明確な基準値を意識せずに『それらしい数字』で済ませてしまいやすい

    見破り方労働安全衛生規則が定める作業床の手すり等の高さは85cm以上。80cmではこの基準に届かない。手すり等(85cm以上)・中さん等(35cm以上50cm以下)・幅木(10cm以上)の3点セットで、面ではなく数字として覚え直す

  7. 高さ3m未満からの物体投下なら安全対策は不要だと考える、あるいは3mという基準を人の墜落防止基準(高さ2m)と混同する

    なぜ引っかかる『高さの基準』としてこれまで登場した2mの印象が強く、物の落下に関する基準も同じ2mだと思い込みやすい

    見破り方高さ2m以上は、人の墜落を防ぐための墜落制止用器具等の措置基準。高さ3m以上は、物の落下による危険を防ぐための投下設備・監視人配置の基準。『人の墜落』と『物の落下』は別の高さ基準で管理されている、という区別で覚え直す

  8. 玉掛け業務の資格要否を、クレーンの吊り上げ荷重ではなく、実際に吊る荷物の重さで判断させる

    なぜ引っかかる『軽い荷物なら簡単な作業』という現場の感覚から、資格の要否も荷物の実重量で決まると考えてしまいやすい

    見破り方資格区分の基準は、クレーンそのものの吊り上げ荷重(能力の上限)であって、そのとき実際に吊っている荷の重さではない。吊り上げ荷重1t以上のクレーンを使う限り、軽い荷物を吊る作業でも玉掛け技能講習の修了者が必要になる

  9. 土止め支保工の点検周期を、感覚のよい『2週間ごと(14日ごと)』にすり替える

    なぜ引っかかる『2週間に1回』は日常の点検サイクルとしてよく使われる区切りのため、法令の周期もこの感覚に合わせて丸めてしまいやすい

    見破り方労働安全衛生規則第373条が定める土止め支保工の点検周期は『7日をこえない期間ごと』であり、14日ごとでは基準を満たさない。あわせて、中震以上の地震の後や大雨等で地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後にも点検が必要になる

  10. 掘削の深さが1.5mを超えていても、作業に十分なスペースがあれば昇降設備を省略してよいと思わせる

    なぜ引っかかる『スペースが十分=安全』という漠然とした印象から、昇降設備の要否もスペースの広さで決まると錯覚しやすい

    見破り方昇降設備の要否を決めるのはスペースの広さではなく、高さ又は深さが1.5mを超えるかどうかという1点。作業や仮設に十分なスペースがあっても、1.5mを超える箇所では安全に昇降するための設備等の設置が必要になる(作業の性質上著しく困難な場合を除く)

  11. 防網(安全ネット)の網目の大きさを、耐荷重ほど重要ではないと考え、一辺20cm程度の大きな網目でも問題ないと判断する

    なぜ引っかかる防網は『重い物を受け止める頑丈さ』が本質だという印象が強く、網目の細かさという別の基準を見落としやすい

    見破り方防網の網目は一辺の長さ10cm以下と定められている。網目が大きいと、資材や身体の一部がすり抜けてしまい、頑丈な網であっても墜落・落下防止の効果を果たせない。耐荷重と網目の大きさは、別々に確認すべき基準だと区別する

  12. 高さ2m以上の作業中に大雨等の悪天候になったとき、墜落制止用器具を着用させれば作業を続けてよいと思わせる

    なぜ引っかかる『墜落制止用器具=高所作業の安全対策』という理解が強いと、悪天候時も器具の着用で危険を打ち消せると錯覚しやすい

    見破り方労働安全衛生規則第522条は、高さ2m以上の箇所での作業について、強風・大雨・大雪等の悪天候のため危険が予想されるときは、その作業に労働者を従事させてはならないと定めている。墜落制止用器具の着用は平常時の墜落防止措置であって、悪天候による危険を打ち消す代替措置にはならない。悪天候時に取るべき対応は『装備を強化して継続』ではなく『作業の中止』

  13. 高所作業車の運転に必要な資格を、作業床の高さにかかわらず一律に特別教育で足りると思わせる

    なぜ引っかかるアーク溶接や研削といしの取替えなど、多くの業務が特別教育の修了で就業できることを知っていると、高所作業車の運転もすべて特別教育で足りると一般化しやすい

    見破り方高所作業車の運転業務は、作業床の高さ10m未満なら特別教育、10m以上なら高所作業車運転技能講習の修了が必要という2段階の区分がある。『高さによって必要な資格が変わる』業務と、『高さに関係なく特別教育で足りる』業務(アーク溶接、研削といしの取替え、つり上げ荷重1t未満の移動式クレーンの運転等)を混同しない

  14. つり上げ荷重がちょうど1tの移動式クレーンの運転を、『1t未満』と同じ扱いにして特別教育で足りる業務に含めてしまう

    なぜ引っかかる『1t未満』という基準値を『1t以下』と読み違え、境界の値そのものも対象に含まれると考えてしまいやすい

    見破り方移動式クレーンの運転業務は、つり上げ荷重1t未満は特別教育、1t以上5t未満は小型移動式クレーン運転技能講習、5t以上は移動式クレーン運転士免許(国家資格)という3段階で区分される。基準はあくまで『1t未満』であり、ちょうど1tのクレーンは特別教育の修了だけでは運転できず、小型移動式クレーン運転技能講習の修了者が必要になる。『未満』と『以下』を混同しない

  15. 高圧電路の停電を検電器具で確認しさえすれば、短絡接地器具による短絡接地は省略してよいと考える

    なぜ引っかかる『停電を確認した=安全』という感覚から、確認と接地という2つの別々の措置を1つの手続きのように混同しやすい

    見破り方労働安全衛生規則第339条第1項第3号は、検電器具による停電確認と、短絡接地器具による短絡接地の両方を求めている。停電を確認しても、誤通電・他の電路との混触・他の電路からの誘導による感電の危険は別に残るため、短絡接地は省略できない独立した措置だと理解する

  16. 通電を再開する前に、短絡接地器具を取り外したかどうかの確認を省略してよいと考える

    なぜ引っかかる短絡接地器具は『作業を安全にするための道具』という認識が強く、作業終了後にそれ自体が新たな危険源になるという発想に至りにくい

    見破り方労働安全衛生規則第339条第2項により、開路した電路に通電しようとするときは、労働者に感電の危険が生ずるおそれがないこと、及び短絡接地器具を取りはずしたことを、あらかじめ確認しなければならない。短絡接地器具を付けたまま通電すると地絡・短絡事故を引き起こす。取り付けるときだけでなく、取り外すときにも確認が必要な措置だと押さえる

参考文献・出典

理解度チェック(22問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、22問で確認しよう。 内訳は基本9問・応用3問・ひっかけ10問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 22 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 電気工事で特に注意すべき労働災害は、感電災害と、高所作業にともなう墜落・転落災害。活線近接作業や高所での配線・機器取付が多い電気工事は、この2つのリスクと常に隣り合わせになる
  2. 労働安全衛生規則により、高さ2m以上の箇所での作業には、墜落制止用器具の使用等の墜落防止措置が求められる
  3. KY活動(危険予知活動)の代表的な進め方が4ラウンド法。第1ラウンド:現状把握→第2ラウンド:本質追究→第3ラウンド:対策樹立→第4ラウンド:目標設定(指差し呼称・唱和)という順で進める
  4. ツールボックスミーティング(TBM)は、作業前に短時間で行う打ち合わせで、その日の作業内容・危険箇所・安全対策を共有する場。KY活動と組み合わせて「TBM-KY」として毎朝実施されることが多い
  5. 元請(特定元方事業者)と複数の下請の労働者が混在して働く現場では、労働安全衛生法第15条により、労働者の合計が常時50人以上(ずい道等の建設・橋梁の建設等の特定の仕事は常時30人以上)になると、現場全体の安全衛生を統括する統括安全衛生責任者の選任が必要になる
  6. 労働安全衛生規則第339条第1項第2号により、開路した電路が電力ケーブル・電力コンデンサー等を有する電路で、残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものについては、安全な方法により当該残留電荷を確実に放電させなければならない。ケーブルの絶縁体やコンデンサは、電源を切った(開路した)後も内部に電荷が蓄積されたまま残ることがある
  7. 労働安全衛生規則第339条第1項は、停電作業を行う場合に講じるべき措置を3号にわたって定めている。第1号:開路に用いた開閉器に、施錠・通電禁止に関する所要事項の表示・監視人の配置のいずれか1つを行うこと。第2号:残留電荷を安全な方法で確実に放電させること。第3号:開路した電路が高圧又は特別高圧であった場合は、検電器具により停電を確認し、かつ誤通電・他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること
  8. 検電器具により停電(無充電)を確認しただけでは、短絡接地器具を用いた短絡接地を省略してよい理由にはならない。停電を確認したあとも、誤って再通電されてしまう危険(誤通電)、他の電路との混触、近接する他の電路からの誘導による感電の危険が残るため、『停電の確認』と『短絡接地』は、それぞれ別の危険に対応する独立した措置として両方とも必要になる
  9. 労働安全衛生規則第339条第2項により、開路した電路に通電しようとするときは、あらかじめ、作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのないこと、及び短絡接地器具を取りはずしたことを確認した後でなければ行ってはならない。短絡接地器具を取り付けたまま通電すると地絡・短絡事故につながるため、取り付け時だけでなく、取り外す際にも確認が必要な措置になる
  10. 労働安全衛生法第14条・同法施行令第6条により、一定の危険・有害な作業には作業主任者の選任が義務付けられている。代表例は、足場の組立て等作業主任者(つり足場・張出し足場又は高さ5m以上の足場の組立て・解体・変更作業)、地山の掘削作業主任者(掘削面の高さ2m以上の地山の掘削作業)、型枠支保工の組立て等作業主任者、コンクリート破砕器作業主任者、酸素欠乏危険作業主任者など
  11. 停電作業そのものは、作業主任者の選任を要する作業として労働安全衛生法施行令に列挙されていない。停電作業には検電・接地・残留電荷の放電といった別の安全措置が必要だが、『作業主任者を選任する』という枠組みの対象ではない点で、足場や型枠支保工の作業と区別する
  12. 足場(移動式足場を含む)の作業床には、労働安全衛生規則により高さ85cm以上の手すり等と、高さ35cm以上50cm以下の中さん等、高さ10cm以上の幅木を設ける。床材間や床材と建地とのすき間は3cm以下とする。移動式足場(ローリングタワー)は、作業床の上に作業員を乗せたまま移動させてはならない
  13. 労働安全衛生規則第536条により、高さ3m以上の場所から物体を投下するときは、適当な投下設備を設け、監視人を置くなどして労働者の危険を防止する措置を講じなければならない。この措置が講じられていない場合、労働者は高さ3m以上の場所から物体を投下してはならない。人の墜落を防ぐ『高さ2m』の基準とは別に、物の落下を防ぐ『高さ3m』の基準が存在する
  14. クレーン等を用いた玉掛け業務の資格は、クレーンの吊り上げ荷重(そのクレーンが吊り上げられる能力の上限)で区分される。吊り上げ荷重1t以上のクレーン等の玉掛け業務には玉掛け技能講習の修了が必要で、1t未満であれば玉掛けの業務に係る特別教育の修了で足りる。区分の基準はクレーンの吊り上げ荷重そのものであり、実際にそのとき吊っている荷の重さではない
  15. 労働安全衛生規則第373条により、土止め支保工を設けたときは、その後7日をこえない期間ごと、中震以上の地震の後、及び大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に、部材の損傷・変形・腐食・変位及び脱落の有無、切りばりの緊圧の度合、部材の接続部・交さ部・取付け部の状態を点検しなければならない。点検周期は『7日ごと』であり、14日ごとでは基準を満たさない
  16. 手掘りによる地山の掘削では、地山の種類と掘削面の高さに応じて掘削面のこう配の基準が定められている(労働安全衛生規則第356条・第357条)。砂からなる地山は掘削面のこう配35度以下、又は掘削面の高さ5m未満のいずれかを満たす必要がある
  17. 労働安全衛生規則第524条により、スレート・木毛板等でふかれた屋根の上で作業を行い、踏み抜きにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、幅30cm以上の歩み板を設け、防網を張る等の踏み抜き防止措置を講じなければならない
  18. 墜落・飛来崩壊等による危険を防止するために設置する防網(安全ネット)は、厚生労働省「墜落による危険を防止するためのネットの構造等の安全基準に関する技術上の指針」により、網目の一辺の長さを10cm以下としなければならない。網目が大きすぎると、資材や身体の一部がすり抜けてしまい、頑丈なネットであっても墜落・落下防止の効果を果たせない
  19. 労働安全衛生規則第526条により、高さ又は深さが1.5mを超える箇所で作業を行うときは、労働者が安全に昇降するための設備等を設けなければならない(安全に昇降する設備等を設けることが作業の性質上著しく困難なときを除く)。掘削の深さが1.5mを超えるのに昇降設備を省略することはできない
  20. 労働安全衛生規則第522条により、高さ2m以上の箇所で作業を行う場合、強風(10分間の平均風速が毎秒10m以上)・大雨(1回の降雨量が50mm以上)・大雪等の悪天候のため当該作業の実施について危険が予想されるときは、その作業に労働者を従事させてはならない。墜落制止用器具を着用させれば作業を継続してよい、という措置では基準を満たさず、作業そのものを中止する必要がある
  21. 高所作業車の運転業務(道路上を走行させる運転を除く)は、作業床の高さで必要な資格が分かれる。作業床の高さが10m未満の高所作業車の運転は特別教育の修了で足りるが、10m以上の高所作業車の運転には高所作業車運転技能講習の修了が必要。アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、研削といしの取替え又は取替え時の試運転、つり上げ荷重0.5t(1t未満)の移動式クレーンの運転は、いずれも特別教育の修了で就業できる業務
  22. 特別教育の修了で就業できる業務には、上記のほかに建設用リフトの運転の業務、最大荷重1t未満のフォークリフトの運転の業務がある。移動式クレーンの運転業務そのものも、玉掛け業務と同じくつり上げ荷重で区分され、1t未満は特別教育、1t以上5t未満は小型移動式クレーン運転技能講習、5t以上は移動式クレーン運転士免許(国家資格)が必要になる。『1t未満』が基準であり、つり上げ荷重がちょうど1tの移動式クレーンは特別教育の修了だけでは運転できない
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