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電材基礎ケーブル昇降機

エレベーターケーブル完全ガイド|EVV・EVVFの違い・記号の読み方・選定方法(JIS C 3408準拠)

読了目安: 11分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

築40年のマンションでエレベーターのリニューアル工事が進んでいたある日、制御盤の更新作業を終えた技術者が最後の配線接続で手を止めた。既設のテールコード(機械室〜制御盤間の渡り配線)が、新しい制御盤の端子位置まで数十センチ届かない。旧型の制御盤より新型の方が奥行きが数センチ大きく、配線ルートが変わったことでコードの余長が足りなくなっていたのだ。エレベーターケーブルは芯数・仕様によって受注生産になることも珍しくなく、その場で即日調達できるものではない。結局、テールコードだけをカスタム長で急遽手配することになり、竣工予定が数日ずれ込んだ——リニューアル案件では、移動ケーブル本体だけでなく、こうした周辺の渡り配線の長さまで見落とさずに確認しておくことが、工期を守るための地味だが重要なポイントになる。

エレベーターケーブルとは

エレベーターケーブルは、昇降路を上下する「かご」と建物側をつなぐ移動用ケーブルです。JIS C 3408(エレベータ用ケーブル)に規定され、300V以下の昇降機(エレベーター・小荷物専用昇降機など)の配線・移動電線に使われます。走行のたびにケーブル自身が曲がり伸びる過酷な使われ方をするため、固定配線用のケーブルとは別物として設計されています。

  • 丸形(EVV)と平形(EVVF) の2形状があり、さらに補強線の有無(H=入り/L=なし)で低層用・高層用に分かれます
  • 制御信号・電源に加えて、光ファイバ・同軸・LAN複合でかご内カメラ映像や通信も1本にまとめられます

本記事は、JIS C 3408の規格本文と、エレベーターケーブル国内大手・古河電工メタルケーブル(FEMC)の公式情報という一次情報に基づいて、記号の読み方から選定・購入までを整理した解説です(出典はページ末尾に明示)。当サイト運営元の松本電業ではFEMC製エレベーターケーブル・テールコードの見積・手配に対応しています。


1. 【選定マップ】条件からエレベーターケーブルを選ぶ

graph TD
    Start([エレベーターケーブルを選ぶ]) --> SH{断面形状は?}
    SH -->|平形<br>省スペース・整列吊り| F{建物の高さ・芯数は?}
    SH -->|丸形| R{建物の高さ・芯数は?}

    F -->|低層・少芯<br>12〜24芯| FLL[EVVF-LL<br>撚合せ無し・低層用]
    F -->|低層<br>24〜60芯| FL[EVVF-L<br>撚合せ有り・低層用]
    F -->|中高層<br>36〜82芯| FH[EVVF-H<br>補強線入り・高層用]

    R -->|低層<br>16〜48芯| RL[EVV-L<br>補強線なし・低層用]
    R -->|中高層<br>36〜74芯| RH[EVV-H<br>補強線入り・高層用]

    FH --> OPT{映像・通信も通す?}
    RH --> OPT
    OPT -->|必要| MIX[光ファイバ・同軸・LAN<br>複合タイプで手配]
    OPT -->|不要| STD[標準構成で手配]

    classDef low fill:#fef3c7,stroke:#b45309,stroke-width:2px,color:#78350f
    classDef high fill:#dbeafe,stroke:#1d4ed8,stroke-width:2px,color:#1e3a8a
    classDef branch fill:#f8fafc,stroke:#94a3b8,color:#334155
    classDef entry fill:#ffffff,stroke:#334155,stroke-width:2px,color:#0f172a
    class FLL,FL,RL low
    class FH,RH,MIX,STD high
    class SH,F,R,OPT branch
    class Start entry

黄色が低層用(補強線なし)、青色が高層用(補強線入り)・複合対応です。芯数・階高・複合の要否を見積フォームで伝えれば選定から相談できます。


2. 記号の読み方(JIS C 3408)

エレベーターケーブルの型式記号は、JIS C 3408で次のように構成されています。

E  V  V  F  -  H
│  │  │  │     └ 補強線:H=入り / L=なし
│  │  │  └──── 平形(Flat)。無印は丸形
│  │  └─────── シース(外装):V=ビニル
│  └────────── 絶縁体:V=ビニル(R=天然ゴム、P=EPゴム)
└───────────── E=エレベータ用
  • EVV = エレベータ用ビニル絶縁ビニルシース丸形ケーブル
  • EVVF = 同・平形ケーブル
  • -H / -L = 補強線(引張強さ294MPa以上の鋼線)入り/なし

規格上の導体サイズは0.75・1.25・1.4・2mm²の4種類で、耐電圧は1,000Vに1分間耐えることが規定されています。


3. シリーズ比較一覧(FEMC製ラインナップ)

古河電工メタルケーブル(FEMC)の公式ラインナップに基づく比較です。

シリーズ対応階層芯数補強線複合対応
EVVF-LL(平形)低層12〜24芯なし(撚合せ無し)
EVVF-L(平形)低層24〜60芯なし(撚合せ有り)
EVVF-H(平形)高層36〜82芯あり同軸・光ファイバ
EVV-L(丸形)低層16〜48芯(0.75/2mm²)なし
EVV-H(丸形)高層36〜74芯あり同軸(5C-2V相当)・光ファイバ

FEMCはエレベーターケーブルで国内シェアNo.1を公表しており(メーカー公式ページ)、JISのほかGB(中国)・EN(欧州)規格、UL・CSA対応品の製造も案内されています。海外実績としてカー速度12m/秒・ライズ600mの高層物件(天津)が公表されています。

FEMC EVVF(エレベーター用ケーブル)の詳細を見るFEMC テールコードの詳細を見る


4. 選定・発注の実務ポイント

① 芯数は「現状+予備芯」で決める

制御・信号・電源の必要回線数に加え、断線時の切替えや将来増設に備えた予備芯を見込むのが実務の基本です。リニューアル案件では既設ケーブルの芯数構成を確認したうえで、同等以上を選定します。

② ケーブル長は昇降行程から算定し、余長を管理する

移動ケーブルは「かごの走行範囲+端末処理分」で長さを算定します。昇降路内での吊り下げ形状(たるみ)が不均等だと、繰り返し屈曲が一点に集中して断線リスクになるため、施工時の余長管理が重要です。

③ リニューアルは既設型番の確認から

既設メーカー・型番を確認して同規格品を選定するのが基本です。型番が読み取れない場合も、機種・設置年から適合品を照合する方法があります。制御盤更新でテールコードの長さが不足するケースがあるため、テールコードはカスタム長品の手配で対応します。

④ 映像・通信は複合化で1本にまとめる

かご内の防犯カメラ・モニタ・非常通話・LANが必要な場合、同軸・光ファイバ・LAN複合タイプにすると昇降路内の配線本数を減らせます。高層リニューアルで配線スペースが限られる場合に特に有効です。


5. 一段深い理解:エレベーターケーブルが「特別な構造」を持つ理由

固定配線用ケーブルをそのまま使えない理由

エレベーターケーブルは、走行のたびにケーブル自身が繰り返し曲げ伸ばしされるという、固定配線用ケーブルにはない過酷な使われ方をする。一般的な固定配線用ケーブル(VVF等)の導体は、太めの素線を少数本撚り合わせた構造で十分な可とう性を確保しているが、繰り返し曲げが加わる移動用ケーブルでは、同じ構造だと金属疲労で素線が折れやすい。そのためエレベーターケーブルの導体は、固定配線用よりも細い素線を多数撚り合わせる構造にすることで、1本1本の素線にかかる曲げ応力を分散し、屈曲疲労に強くしている。JIS C 3408がエレベーターケーブルを固定配線用ケーブルの規格とは別に定めているのは、この「動くことを前提とした構造」がまったく別物だからだ。

なぜ高層用だけに「補強線」が入るのか

エレベーターケーブルは昇降路内を上下に吊り下げられる形で設置されるため、ケーブル自体の重量が常に下向きの張力として自身にかかり続ける。低層であれば吊り下げ長が短くケーブル自重も小さいため、導体自身の強度で十分自立できる。しかし建物が高くなるほど吊り下げ長が伸びてケーブル自重が増し、ある高さを超えると導体(銅線)だけでは自重を支えきれず、下端部の導体に伸びや断線のリスクが生じる。そこで高層用(EVV-H・EVVF-H)には、引張強さ294MPa以上の鋼製補強線を別途組み込み、ケーブルの自重を導体ではなく補強線側に受け持たせる設計になっている。導体は電気を通す役割に専念させ、機械的な強度は別の部材に分担させるという発想だ。

現場で間違いやすい点:リニューアルは「本体」だけでなく「渡り配線」も要確認

リニューアル案件では移動ケーブル本体(EVV/EVVF)の仕様確認に意識が向きがちだが、機械室〜制御盤間を結ぶテールコードの長さは見落とされやすい。制御盤のメーカー・型式が変わると、盤の奥行きや端子配置が変わり、既設のテールコードでは届かなくなるケースがある。テールコードはカスタム長での受注生産になることが多く、即日調達が難しい部材でもあるため、制御盤更新を伴うリニューアルでは、着工前の時点で新しい制御盤の設置レイアウトとテールコードの必要長を突き合わせておくことが、工期遅延を防ぐ実務上のポイントになる。


6. どこで使われるか

  • ビル・マンションの乗用エレベーター: 新設・リニューアル・保守交換。移動ケーブル(EVV/EVVF)+制御盤まわりのテールコードが対象
  • 小荷物専用昇降機(ダムウェーター): JIS C 3408の適用範囲に含まれる小規模昇降機
  • 保守・メンテナンス: 定期点検で被覆劣化・断線が見つかった際の同仕様品交換。停止時間を最小化するため迅速な手配が求められます

7. どう注文するか——発注のしかた

注文は「品種+芯数×サイズ+長さ」で伝われば進められます。

例: 「EVVF 0.75mm² 30芯 を 45m」
    「テールコード 既設と同仕様で交換したい(機種・設置年あり)」
  • 長さ: かごの走行範囲+端末処理分で算定。迷ったら昇降行程(階数・ストローク)を伝えれば一緒に算定できます
  • 型番不明でもOK: エレベーターのメーカー・機種名・設置年・銘板や現場の写真から適合品を照合します
  • 複合仕様: 同軸・光ファイバ・LAN入りは仕様(本数・種類)を添えてください
  • 納期: 芯数・仕様により受注生産となる場合があるため、交換計画が決まった時点での早めの引き合いが安全です

8. エレベーターケーブルの購入・見積りについて

エレベーターケーブルは、電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)でお見積り・お取り寄せいただけます。古河電工メタルケーブル(FEMC)製を中心に、他メーカーのエレベーター用ケーブル・テールコードのご相談も可能です。

発注時にお伝えいただきたい情報:

  • 形状(丸形EVV/平形EVVF)と低層用・高層用の別(わかる範囲で)

  • 芯数・導体サイズ(例: 0.75mm²)・必要長さ

  • 複合仕様の要否(同軸・光ファイバ・LAN)

  • リニューアルの場合は既設の型番(不明なら機種・設置年)

  • Web: 見積フォーム(24時間受付)

  • 対象: 法人・施工業者様向け

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参考文献・出典

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