「CVケーブルの見積りが欲しい」という依頼を受けたとき、それが低圧幹線用なのか、キュービクルへの高圧引込用なのかを取り違えると、まったく別の規格・構造の製品を提案してしまうことになる。低圧CV(JIS C 3605)と高圧CV(JIS C 3606)は、どちらも「CV」という同じ略称で呼ばれるが、規定する電圧クラスも、ケーブルの内部構造も別物だ。本記事は、高圧CVケーブルを規定するJIS C 3606そのものを正面から解説し、低圧CV(JIS C 3605)との規格上の違いを整理する。
低圧CV・CVTの選定基準(VVFとの使い分け、断面積の選び方)はCVケーブル完全ガイド(JIS C 3605)、電線・ケーブル全種類の体系的な一覧は電線・ケーブル完全体系的総合ガイドにまとめている。本記事はその2記事では扱っていない「JIS C 3606という規格そのもの」に焦点を当てる。
この記事でわかること
- JIS C 3606(高圧架橋ポリエチレンケーブル)の正式名称と適用範囲
- JIS C 3605(低圧CV)との規格上の違い(電圧クラス・構造・記号)
- 遮蔽層・半導電層がなぜ必要か——低圧品との構造上の分岐点
- キュービクル引込等での取り扱いにおける実務上の注意点
- よくある質問
JIS C 3606とは何か
JIS C 3606は、正式名称を「高圧架橋ポリエチレンケーブル」といい、現行版はJIS C 3606:2022(2022年8月22日発行)である(日本規格協会 JSA Group Webdeskによる)。原案作成団体は日本規格協会・日本電線工業会で、対応国際規格はIEC 60502-2:2014(MOD、修正対応)とされている。
規定範囲は、6,600V以下の電力用回路に使用する電力ケーブルで、導体を架橋ポリエチレン(XLPE)で絶縁し、ビニル化合物・ポリエチレン・耐燃性ポリエチレンを主体としたコンパウンドでシースを施したケーブルが対象である(kikakurui.com掲載情報による)。旧版のJIS C 3606:2003はIEC 60502-2:1997を基礎としたMOD規格で、国内の配電事情に応じた変更が加えられていた。
対象となる種類記号は次のとおりで、いずれも「絶縁体→シース→形状」の順に材料と形の頭文字を綴る、低圧CVと同じ命名規則に従っている(kikakurui.com、jis.eomec.com掲載情報による)。
| 記号 | 構成 | 形状 |
|---|---|---|
| 6600V CV | 架橋ポリエチレン絶縁・ビニルシース | 単心/多心一括シース |
| 6600V CVT | 架橋ポリエチレン絶縁・ビニルシース | 単心3本より合わせ(トリプレックス) |
| 6600V CE | 架橋ポリエチレン絶縁・ポリエチレンシース | 多心一括シース |
| 6600V CET | 架橋ポリエチレン絶縁・ポリエチレンシース | 単心3本より合わせ |
| 6600V CE/F・CET/F | 架橋ポリエチレン絶縁・耐燃性ポリエチレンシース | 一括/トリプレックス(ノンハロゲン仕様) |
導体サイズは8〜1,000mm²の範囲で規定されており、円形より線・円形圧縮より線・分割圧縮より線が用いられる(kikakurui.com掲載情報による)。
JIS C 3605(低圧CV)との違い
低圧CVケーブルの選定基準はCVケーブル完全ガイドで解説したとおり、JIS C 3605が600V以下の電力用回路を対象とする規格だ。JIS C 3606(高圧)との違いを整理すると次のようになる。
| 項目 | JIS C 3605(低圧CV) | JIS C 3606(高圧CV) |
|---|---|---|
| 適用電圧 | 600V以下 | 6,600V以下 |
| 代表記号 | CV・CVT・CE/F等 | 6600V CV・6600V CVT・CE/CET等 |
| 遮蔽層 | 規定なし | 半導電層+軟銅テープ等の遮蔽層あり |
| 主な用途 | 屋内幹線・受電設備の低圧側配線 | キュービクル一次側引込、構内高圧配電 |
| 関わる資格 | 電気工事士 | 電気主任技術者の関与が必要 |
見た目の記号は「CV」「CVT」で共通していても、高圧品には低圧品にない遮蔽層・半導電層という構造上の追加要素があるという点が、両規格を分ける最大のポイントだ。次の章でその理由を掘り下げる。
なぜ高圧CVケーブルには遮蔽層・半導電層が必要なのか
電界を均一に保つための構造
600V以下の低圧回路では、絶縁体にかかる電圧が比較的小さいため、絶縁体そのものの厚みと材質でおおむね安全に電気を絶縁できる。しかし6,600Vという高い電圧になると、導体の凹凸や絶縁体との境界面のわずかな隙間でも、電界(電圧によって生じる電気的な力)が局所的に集中しやすくなる。この集中箇所でコロナ放電(絶縁体内部での微小な放電)が起きると、絶縁体が徐々に劣化し、最終的には絶縁破壊につながる(電気管理事務所等の一般的な技術解説による)。
これを防ぐために、JIS C 3606が規定する高圧CVケーブルには次の2つの層が絶縁体の内外に設けられている(kikakurui.com、jis.eomec.com掲載情報による)。
- 半導電層:導体と絶縁体の境界面、および絶縁体と遮蔽層の境界面をなめらかにし、電界の乱れを抑える層
- 遮蔽層(軟銅テープ等、約0.1mm):絶縁体の外側に施され、施工時に接地することでケーブル表面の電位を大地電位に保つ層
半導電層で境界面の電界の乱れを抑え、遮蔽層で絶縁体の外側の電位を大地電位に固定する——この2段構えの構造によって、絶縁体には設計どおりの均一な電界だけがかかるようになっている。低圧CV(JIS C 3605)にこの構造がないのは、そもそも電界の絶対値が小さく、局所的な集中があっても実用上のリスクが小さいためだ。
端末処理でストレスコーンが必要になる理由
遮蔽層を接地して電位をそろえるという構造は、ケーブルの端末(切断面)で新たな課題を生む。遮蔽層がある区間では電界が均一でも、遮蔽層が途切れる端末部分では電界が急激に乱れ、そこに集中してしまう。この端末部の電界集中を緩和するために取り付けるのが、高圧ケーブルの端末処理で使われるストレスコーンだ。低圧CVケーブルの端末処理が被覆を剥いて圧着するだけで済むのに対し、高圧CVケーブルの端末処理はこのストレスコーンの取り付けと遮蔽層の確実な接地処理が必須になる。
実務での取り扱い——低圧CVと同じ感覚で扱ってはいけない
高圧CVケーブルは電気事業法上の高圧(交流600Vを超え7,000V以下)の電気工作物にあたるため、選定・施工・維持管理には電気主任技術者の関与が求められる。キュービクル(高圧受電設備)への引込線として使う場合、断面積の選定は低圧CVと同様に許容電流・電圧降下の計算を行うが、それに加えて絶縁耐力試験(規定の試験電圧に一定時間耐えることを確認する試験)への適合確認が必要になる。
加工不良——被覆に付いた小さな傷、遮蔽層の接地忘れ、ストレスコーンの取り付け不良——は、低圧品であれば軽微な絶縁劣化で済むところが、高圧品では絶縁破壊による発火・波及事故に直結しかねない。見積り・調達の段階でも、低圧CVと高圧CVを同じ「CV」という略称でひとくくりにせず、電圧クラスと構造を明確に区別して発注することが実務上の基本になる。
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よくある質問
JIS C 3606は何を規定した規格ですか?
正式名称は「高圧架橋ポリエチレンケーブル」で、6,600V以下の電力用回路に使う電力ケーブルの構造・材料・試験方法を規定しています(日本規格協会 JSA Group Webdesk、kikakurui.com掲載情報による)。導体を架橋ポリエチレン(XLPE)で絶縁し、ビニル・ポリエチレン・耐燃性ポリエチレンでシースした高圧ケーブルが対象で、CV・CVT・CE・CET・CE/Fなどの種類記号が規定されています。現行版はJIS C 3606:2022(2022年8月22日発行)です。
JIS C 3606とJIS C 3605はどう違いますか?
適用する電圧クラスが違います。JIS C 3605は600V以下の低圧CVケーブルを対象とし、JIS C 3606は6,600V以下の高圧CVケーブルを対象とします(kikakurui.com掲載情報による)。構造面では、高圧のJIS C 3606は絶縁体の外側に半導電層と遮蔽層(軟銅テープ等)を備える点が低圧品と異なります。低圧では電界が小さいため遮蔽層は不要ですが、高圧では絶縁体にかかる電界を均一にしコロナ放電を防ぐために遮蔽層が必須の構造要素になります。
高圧CVケーブルの遮蔽層・半導電層はなぜ必要なのですか?
6,600Vという高い電圧が絶縁体にかかると、電界が絶縁体の内部で不均一になりやすく、局所的に集中するとコロナ放電や絶縁劣化の起点になります。半導電層は導体表面や遮蔽層との境界面をなめらかにして電界の乱れを抑え、遮蔽層(軟銅テープ)は接地されることでケーブル外周の電位を大地電位に保ち、電界を絶縁体の内部だけに閉じ込める役割を持ちます(電気管理事務所・イー・エス製作所等の技術解説による一般的な説明)。低圧のJIS C 3605品にこの構造がないのは、電圧が低く電界の不均一による絶縁破壊リスクが実用上小さいためです。
高圧CVケーブルは誰でも選定・施工してよいのですか?
高圧(600Vを超え7,000V以下)の電気工作物にあたるため、選定・施工・維持管理には電気主任技術者の関与が必要です。端末処理ではストレスコーンの取り付けや遮蔽層の確実な接地処理が求められ、加工不良は絶縁破壊による重大事故に直結します。低圧CVケーブルの感覚で扱える製品ではないため、キュービクル引込などの高圧案件では設計段階から電気主任技術者・専門施工業者と連携して選定することが前提になります。
高圧CVケーブルの購入・見積りについて
高圧CVケーブル・付属の接続材は、電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)でお見積り・ご購入いただけます。品種・断面積・心数・長さ(切断可)をお伝えいただければ、迅速に見積りを回答します。高圧案件は電気主任技術者・施工業者との仕様確認が前提になるため、案件の詳細(引込電圧・敷設方法等)を添えてご相談いただくと選定がスムーズです。
- Web: 見積フォーム(24時間受付)
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