よくある失敗の例:扉の開閉部に一般配線用の電線を使う
制御盤の増設で、扉に取り付けた操作パネル(押しボタン・表示灯)への配線に、手元にあった一般配線用の電線を流用したとする。扉を開け閉めするたびに、ヒンジ部分の配線は繰り返し曲げられる。しなやかさの足りない電線をこうした場所に使うと、屈曲部の断線や接触不良を招きやすい(説明のための想定例)。
違いは導体の素線の細さと本数にある。同じ2sqでも、IVのより線は直径0.6mmの素線7本(7/0.6)、KIVは直径0.26mmの素線37本(37/0.26)でできている(住電HSTケーブル・タツタ電線の構造表)。JIS C 3316はKIVの導体を「可とうより」と定めている。盤内配線・扉の開閉部・振動のある機器周りなど「動く配線」にはKIVを使う——これが本記事の核心である。
KIV・IV・HIVとは
制御盤のフタを開けると走っている色とりどりの単心電線——その正体がこの3種です。いずれも600V以下の配線に使うビニル絶縁電線で、JIS規格でそれぞれ規定されています。
- IV(JIS C 3307): 600Vビニル絶縁電線。一般電気工作物・機器の配線用の基本形
- KIV(JIS C 3316): 電気機器用ビニル絶縁電線。細い素線を撚った柔軟タイプで、盤内配線の主役
- HIV(JIS C 3317): 600V二種ビニル絶縁電線。耐熱性可塑剤を使った耐熱タイプ
【選定マップ】どれを使うかを最短で決める
| 配線先 | 選ぶ電線 |
|---|---|
| 制御盤・機器の内部(曲げ回しが多い) | KIV(柔軟・盤内の主役) |
| 建物の一般配線(電線管収容)、耐熱不要 | IV(一般配線の基本形) |
| 建物の一般配線、耐熱が必要(発熱機器・消防設備等) | HIV(耐熱タイプ) |
| 外装(シース)も必要(ケーブルとして敷設) | VVF・CV等のケーブルを検討 |
これらは絶縁電線(シースなし)なので、建物の配線では電線管やダクトに収めて使うのが基本です。外装(シース)が必要な場所はVVFやCVなどのケーブルの担当です。
3種の比較一覧
| 種類 | 規格 | 2sqの導体構成 | 最高許容温度 | 主な使いどころ |
|---|---|---|---|---|
| KIV | JIS C 3316 | 37/0.26(可とうより) | 60℃ | 制御盤・配電盤の盤内配線、機器内部配線 |
| IV | JIS C 3307 | 7/0.6(単線もあり) | 60℃ | 電線管内の一般屋内配線、接地線 |
| HIV | JIS C 3317 | 7/0.6(単線もあり) | 75℃ | 発熱機器まわり、消防設備の非常電源回路・操作回路 |
同じ公称断面積で導体構成を比べると、柔軟性の差がはっきりする(IVは住電HSTケーブルのIV LF、KIV欄はタツタ電線のJIS C 3316準拠品『ネツタフ115 (S)HKIV』の構造表。単位は本/mm)。
| 公称断面積 | IV(より線) | KIV | 仕上り外径の目安(IV/JIS C 3316準拠品) |
|---|---|---|---|
| 1.25sq | 7/0.45 | 50/0.18 | 3.0mm/3.1mm |
| 2sq | 7/0.6 | 37/0.26 | 3.4mm/3.4mm |
| 3.5sq | 7/0.8 | 45/0.32 | 4.0mm/4.1mm |
| 5.5sq | 7/1.0 | 70/0.32 | 5.0mm/5.1mm |
仕上り外径はほぼ同じで、違うのは導体の中身である。外径はメーカー・製品で異なるため、端子や配線ダクトの選定ではそのメーカーの構造表で確認する。
一段深い理解:なぜKIVは曲げに強く、耐熱グレードとは別の話なのか
3種の違いを整理すると、実は2つの独立した軸が混ざっていることに気づく。
- 柔軟性の軸:導体を構成する素線が細く多いほど、繰り返しの曲げに強い(=疲労寿命が長い)。KIVはこの軸で最も柔軟な構造を持つ。
- 耐熱性の軸:絶縁体の最高許容温度で決まる。IV・KIVは60℃、耐熱性可塑剤を使ったHIVは75℃として扱われる。電気設備の技術基準の解釈の146-3表は、許容電流補正係数の計算式を「ビニル混合物(耐熱性を有するものを除く)」は60℃、「ビニル混合物(耐熱性を有するものに限る)」は75℃を上限として分けている(パナソニックの許容電流表もIVを最高許容温度60℃の電線とし、住電HSTケーブルの仕様書は高温側の絶縁抵抗をIVで60℃、HIVで75℃で規定している)。
つまり「柔軟かどうか」と「耐熱かどうか」は別次元の話で、KIVと同じ可とうより導体に耐熱ビニルを組み合わせたH-KIVのような製品もある(タツタ電線の資料はKIVを60℃、HKIVを75℃として許容電流を分けて示している)。盤内配線で耐熱品を選ぶ理由は「柔らかいから」ではなく「発熱源の近くで許容温度を稼ぎたいから」であり、単に柔軟性だけが目的ならKIVで十分なケースが多い。発注時に「なぜHIVが必要なのか(温度条件があるのか、曲げに強いものが欲しいだけなのか)」を整理しておくと、過剰スペックでのコスト増や、逆に温度条件を見落として絶縁劣化を招くミスの両方を避けられる。
KIVが盤内配線の主役になっているのも、この柔軟性の軸に由来する。制御盤の扉の開閉部・可動する端子台まわり・振動源に近い配線など、電線が物理的に動かされる場所では、素線の細さがそのまま疲労寿命の差になって現れる。逆に、電線管の中に固定して収める一般屋内配線では曲げ疲労のリスクが小さいため、IVで十分機能する。
どこでどう使われているか——現場別の使いどころ
| 現場 | 使う電線 | ポイント |
|---|---|---|
| 制御盤の主回路・操作回路 | KIV | 電流値からsqを選定。曲げ回しに強い |
| 分電盤・配電盤の盤内渡り | KIV/IV | 配電盤ソリューション参照 |
| 電線管(PF管・金属管)内の屋内配線 | IV | ケーブルではなく絶縁電線を管に収める工法 |
| 接地(アース)線 | IV/KIV 緑 | 接地線は緑(緑/黄)で識別するのが一般的 |
| 発熱する機器・熱源近く | HIV(盤内はH-KIV等) | 温度条件を確認して耐熱タイプへ |
| 屋内消火栓設備などの非常電源回路・操作回路 | HIV又は同等以上の耐熱電線 | 消防法施行規則第12条の指定。施設方法(金属管工事等)も条文で決まる |
盤内でKIVと組み合わせる圧着端子・スイッチ・電源などの部材一式は制御盤ソリューションにまとめています。
どう注文するか——失敗しない発注のしかた
注文は「種類+サイズ(sq)+色+長さ」で伝われば間違いがありません。
例: 「KIV 1.25sq 黄 を 200m巻で 1巻」
「IV 5.5sq 緑 を 30m 切断で」
- 荷姿: 巻(定尺)か切断(必要なm数)かを指定します。標準条長はメーカー・サイズで異なります
- 色: IV・HIVはメーカー仕様で黒・白・赤・緑・黄・青の6色が基本(住電HSTケーブル)。KIV系には茶・橙・紫・灰・緑/黄などまで揃える製品もあります。色別の数量を明記してください
- サイズ: 0.75/1.25/2/3.5/5.5sq…が汎用。電流値と照らして選定に迷う場合はご相談ください
- 価格: 銅建値(銅の月次相場)に連動するため、見積りは発注直前に取り直すのが鉄則です
KIV・IV・HIVの購入・見積りについて
KIV・IV・HIVの見積りは、電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)の見積フォームから依頼できます。種類・sq・色・数量を添えてください。
- Web: 見積フォーム(24時間受付)
あわせて読みたい
関連するKIV・IV・違い・電線・盤内配線の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。