「コストを抑えたいから、この移動機器の電源も余っていたVVFケーブルで配線しよう」——ある工場で、仮設のポンプに電源をつなぐ際、担当者がそう判断した。固定配線用のVVFは芯線が1本の太い銅線(単線)でできており、一見頑丈そうに見える。しかし、ポンプを日常的に移動させるたびにケーブルが同じ箇所で曲げ伸ばしされ続け、数ヶ月後には芯線の被覆の中で銅線そのものが金属疲労でポキンと折れてしまった。固定用の電線と、動かして使うための電線は、同じ銅の電線でも中身の構造が根本的に違う——このことを知らずに代用すると、思わぬ形で断線トラブルを招く。
VCT・VCTFとは——「動かして使う」ための電線
固定して壁に埋めるVVFとは正反対に、動かして使うことを前提に作られたのがキャブタイヤ系のケーブル・コードです。柔軟なビニルシースで覆われ、引き回し・巻き取り・持ち運びに耐えます。
- VCT(JIS C 3312): 600Vビニル絶縁ビニルキャブタイヤケーブル。移動用電気機器の電源回路が本来の用途
- VCTF(JIS C 3306): ビニルキャブタイヤ丸形コード。交流300V以下の小形電気器具用
JIS C 3306には、VCTFの兄弟としてVSF(単心)・VFF(平形)・VCTFK(長円形)などのコード類も規定されており、記号にHが付くと二種絶縁体(例: HVCTF)を表します。
【選定マップ】VCTかVCTFかを最短で決める
graph TD
Start([動かして使う機器に給電したい]) --> Q1{電圧・負荷は?}
Q1 -->|三相200V・大きめの負荷<br>工場の移動機器| VCT[VCT<br>600V・JIS C 3312]
Q1 -->|100V/200Vの小形機器<br>屋内・300V以下| VCTF[VCTF<br>300V・JIS C 3306]
Start --> Q2{常時繰り返し屈曲する?<br>ケーブルベア・ロボット}
Q2 -->|はい| ROBO[可動専用ケーブルを検討<br>耐屈曲設計品]
Start --> Q3{固定配線?}
Q3 -->|はい| FIX[VVF・CV等の<br>固定用を検討]
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class ROBO,FIX alt
class Q1,Q2,Q3 branch
固定配線はVVF・CV、油や薬品にさらされる機械まわりの固定配線は太陽ケーブルテックSUNLIGHTシリーズも参照してください。
VCTとVCTFの比較一覧
| 項目 | VCT | VCTF |
|---|---|---|
| 規格 | JIS C 3312 | JIS C 3306 |
| 定格 | 600V | 交流300V以下 |
| 位置づけ | キャブタイヤケーブル | キャブタイヤコード |
| 主用途 | 移動用電気機器の電源(工場・現場) | 屋内の小形電気器具の電源 |
| 汎用サイズ | 2sq〜大サイズまで | 0.75/1.25/2sq中心 |
どこでどう使われているか——現場別の使いどころ
| 現場・用途 | 使う品種 | ポイント |
|---|---|---|
| 工場の移動機械・仮設機器への給電 | VCT | 三相200Vの動力はこちら |
| 溶接機・ポンプ等の電源引き回し | VCT | サイズは負荷電流から選定 |
| 小型機器・治具・検査装置の電源 | VCTF | 屋内300V以下 |
| 機器内の電源引込・自作延長 | VCTF | 器具内配線・コード加工に |
| ケーブルベア・ロボット可動部 | 可動専用ケーブル | 耐屈曲設計品を選ぶ(相談推奨) |
一段深い理解:なぜ「動かす電線」は細い素線を束ねた構造でなければならないのか
冒頭のトラブルの原因を、もう一段掘り下げてみる。VVFのような固定配線用の電線は、太い1本の銅線(単線)を使うのが一般的だ。単線は同じ断面積のより線に比べて構造がシンプルで導体抵抗も安定しており、一度配線したら動かさない固定配線には向いている。
しかし、単線を繰り返し曲げ伸ばしすると、金属疲労という現象が起こる。金属は曲げられるたびに、外側は引き伸ばされ(引張ひずみ)、内側は押し縮められる(圧縮ひずみ)。このひずみの繰り返しが金属内部に微小な傷(き裂)を生じさせ、そのき裂が繰り返しの屈曲のたびに少しずつ進展し、最終的に断線に至る。金属疲労の一般則として、1回あたりのひずみが大きいほど、断線に至るまでの繰り返し回数(寿命)は短くなることが知られている。
VCT・VCTFのようなキャブタイヤ系の電線が、太い1本の銅線ではなく、髪の毛ほどの細い銅線(素線)を何十本も撚り合わせた「より線」構造を採用しているのは、この物理法則を踏まえた設計だ。同じ断面積であっても、素線1本あたりの直径が細いほど、同じ曲げ半径で生じるひずみの量は小さくなる。ひずみが小さければ、断線までに耐えられる屈曲の繰り返し回数は大幅に伸びる。つまり、より線の柔らかさは単なる「取り回しやすさ」のための工夫ではなく、日常的な曲げ伸ばしに対する疲労寿命を確保するための、材料力学に基づいた必然的な構造だということになる。冒頭の事例のように、固定配線用の単線構造の電線を可動部に流用すると、この疲労破壊のメカニズムがそのまま作用し、想定より早く断線してしまうリスクがある。
どう注文するか——失敗しない発注のしかた
注文は「品種+サイズ(sq)−芯数+長さ」で伝われば間違いがありません。
例: 「VCT 2sq-4C を 50m」
「VCTF 0.75sq-3C を 100m巻で 1巻」
- 荷姿: 標準は100m巻。切断販売にも対応しており、必要なm数で注文できます
- 芯数: 2C〜4Cが汎用。接地込みの回路構成に合わせて選びます
- 価格: 銅建値(銅の月次相場)に連動するため、見積りは発注直前に取り直すのが鉄則です
- 可動部用途: ケーブルベア等に使う場合はその旨を添えてください。耐屈曲の専用品をご提案します
VCT・VCTFの購入・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)でお見積り・ご購入いただけます。品種・sq・芯数・数量をお伝えいただければ、法人・施工業者様向けに迅速に回答します。
- Web: 見積フォーム(24時間受付)
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