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電力 ・ 5 / 16

変電所の役割と変圧器の結線

読み終えると、こうなる

キュービクルや変電所の単線結線図を見て、Y結線・Δ結線がどこに使われ、それぞれ何のために選ばれているかを読み取れるようになる

  • Y結線とΔ結線それぞれの相電圧・線間電圧の関係と、結線方式が中性点接地の可否・第3高調波の挙動にどう影響するかを説明できる
  • V結線で運転しているときの出力低下の程度(Δ結線比で約57.7%)を計算できる。また、複数台の変圧器のうち1台が故障したとき、残りの変圧器の過負荷運転(定格容量の120%運転など)でどこまで負荷を賄えるか、不足分を他の変電所へ何%切り換える必要があるかを計算できる
  • SF6ガス絶縁開閉装置(GIS)が変電所を小形化できる理由、SF6ガスの基本的な性質(消弧能力・絶縁破壊電圧・地球温暖化への影響)、アモルファス鉄心材料を使った柱上変圧器がけい素鋼帯を使った変圧器と比べて鉄損・加工性・コスト・磁束密度の面でどう違うかを説明できる。あわせて鉄心材料を薄板にして積層する目的(渦電流損の低減)と、けい素鋼材が鉄にけい素を加えて透磁率・抵抗率を高めた材料であることを、鉄損の内訳(ヒステリシス損・渦電流損)と結びつけて説明できる
  • 変電所の用途面での分類(送電用変電所・配電用変電所に加え、周波数の異なる系統を連系する周波数変換所、直流を介して系統を連系する交直変換所)を説明でき、進相コンデンサ・分路リアクトルなどの調相設備や負荷時電圧調整器、開閉装置による系統切り換えが、電圧調整・電力潮流調整のどの役割を担っているかを整理して説明できる
考えてみよう

キュービクル式高圧受電設備を選ぶとき、変圧器の仕様書に「Δ-Y結線」といった表記を見かける。 一方で、送電系統の変電所の単線結線図には、Y-Y結線や、YとΔを組み合わせた三巻線変圧器も 登場する。

なぜ変電所や受変電設備の変圧器は、Y結線だけ、Δ結線だけで統一せず、わざわざ結線方式を 使い分けているのか。中性点を接地できる・できないという違いだけの話なのか、それとも もっと別の理由があるのか。

このトピックを読み終えるころには、変電所や単線結線図に出てくる変圧器の結線方式を見て、 何のためにその組み合わせが選ばれているかを言い当てられるようになっている。

種明かしは、変圧器の結線が電圧の取り方波形のきれいさという、2つの別々の 性質を同時に決めているという点にある。

変電所の役割 — 電圧を変えるだけではないノード

変電所は、発電所から届く高い電圧を、送電・配電に適した電圧へ段階的に変換する送電系統の ノードだ。ただし役割は電圧変換だけにとどまらない。遮断器・断路器による系統の切替や事故時の 遮断、タップ切替器や調相設備による電圧調整も、変電所が担っている重要な機能だ。電圧を変える 「箱」というより、系統全体を制御する「関所」に近い。

変圧器の結線の基本 — Y結線とΔ結線

三相変圧器の一次側・二次側は、それぞれY(スター)結線かΔ(デルタ)結線のどちらかで構成 される。この組み合わせによって、Y-Y、Δ-Δ、Y-Δ、Δ-Yといった結線方式が生まれる。

Y結線は3つの相巻線が1点(中性点)に集まる形をしており、相電圧の√3倍が線間電圧になる。 Δ結線は3つの巻線がそのまま三角形に閉じた形で線間に接続されるため、相電圧と線間電圧が 等しくなる。

Y結線とΔ結線、どちらが「線間電圧=相電圧×√3」でどちらが「線間電圧=相電圧」かは、丸暗記 せず結線の形から思い出すとよい。Y結線は中性点を挟んで2つの相巻線が直列になっている分だけ、 線間電圧が相電圧より大きくなる。Δ結線は巻線が直接線間に入っているので、両者は等しい。

なぜ結線を使い分けるのか — 中性点接地と第3高調波

結線の選び方には、大きく2つの狙いがある。

1つ目は中性点接地の可否だ。Y結線は中性点を持つため接地でき、地絡事故時の保護や、 配電線に中性線を持たせる目的で使われる。Δ結線には中性点がなく、直接の中性点接地はできない。

2つ目は第3高調波の扱いだ。変圧器の励磁電流には、基本波以外にひずみ成分(高調波)が 含まれ、その中でも第3次の高調波(第3高調波)は各相で同位相になるという性質を持つ。 Δ結線は巻線が三角形に閉じているため、この第3高調波が巻線内をぐるぐる回って(環流して) 外部の線間電圧には現れない。一方Y結線は中性点で回路が開いているため、この環流ができず、 第3高調波がそのまま線間電圧に現れて波形を歪ませてしまう。

第3高調波の環流先を迷ったら、「閉じているか、開いているか」で考える。Δ結線は三角形に 閉じているので中で打ち消し合える。Y結線は中性点で開いているので打ち消せず、外に漏れる。 Y-Y結線だけの変圧器が敬遠されがちなのは、この波形の歪みが理由だ。

Y結線とΔ結線を組み合わせた結線(Y-Δ、Δ-Y)では、一次側と二次側の間に30度の位相差が 生じる。これはY結線とΔ結線とで、線間電圧の基準になる相の取り方がずれるために起きる現象で、 複数の変圧器を並列運転する際には、この位相差をそろえる必要がある。

主変圧器の実務配置 — 発電機側はΔ、系統側はY

Y結線・Δ結線それぞれの性質(中性点接地の可否、第3高調波の環流)を踏まえたうえで、実際の 発電所の主変圧器(発電機の出力を系統電圧まで昇圧する変圧器)ではどちらの配置が選ばれて いるだろうか。

発電所の主変圧器は、発電機側をΔ結線、系統側をY結線にすることが多い(Δ-Y結線)。この 配置は、Y結線・Δ結線それぞれの得意分野を、実際にどちら側で必要としているかから決まる。

  • 系統側がY結線である理由:系統側は、地絡事故が起きたときの保護(地絡電流を検出しやすく する)や、配電線に中性線を持たせる目的で、中性点接地が必要になる。中性点接地ができるのは 中性点を持つY結線だけなので、系統側は必然的にY結線になる。
  • 発電機側がΔ結線である理由:発電機側には中性点接地の必要がなく、代わりに発電機の励磁 電流に含まれる第3高調波をどう処理するかが問題になる。Δ結線であれば、この第3高調波を 巻線内で環流させて打ち消せるため、発電機側の波形を歪ませずに済む。
Y結線・Δ結線の一般的な性質(接地の可否・第3高調波の扱い)を覚えていても、それを主変圧器の どちら側に当てはめるかを問われると迷いやすい。系統側から考えるとよい——系統側は中性点接地が 必須だからY結線、発電機側は接地が不要な代わりに第3高調波を閉じ込めたいからΔ結線、という 順序で導けば、Δ-Y結線という配置を丸暗記せずに再現できる。

V結線 — 2台で三相を賄う簡易結線

単相変圧器2台を使い、Δ結線の1辺を省略した形で三相電力を供給する結線をV結線と呼ぶ。単相 変圧器3台のうち1台が故障したときの応急運転や、比較的小容量の三相負荷向けに使われる。

ただしV結線には出力上の制約がある。各変圧器の利用率は√3/2(約86.6%)にとどまり、Δ結線 3台構成と比較した出力比はさらに1/√3(約57.7%)まで下がる。「2台だから3台の2/3(約67%)」 でも「そのまま100%」でもなく、位相関係によってこの数値まで落ち込む点が試験でも問われやすい。

変圧器の過負荷運転 — 1台が止まっても、供給を止めないための備え

配電用変電所には、複数台の変圧器を並べて負荷を分担させる構成が多い。ここで、そのうちの 1台が故障したらどうなるだろうか。健全な変圧器だけで元と同じ負荷を支えようとすると、 定格容量を超えてしまうことがある。

変圧器は、短時間であれば定格容量を超えて運転できる場合がある(過負荷運転)。1台が 故障したときに、残りの変圧器を過負荷運転させることで、他の変電所への切り換えなどの対応が 完了するまでの間、供給力の不足をできるだけ小さく抑えることができる。それでも賄いきれない 分は、他の変電所へ負荷を切り換えて供給を続ける。

このとき注意したいのが単位の違いだ。変圧器の容量は皮相電力[MV·A]で示されるのに対し、 負荷は多くの場合、有効電力[MW]で示される。過負荷運転で賄える有効電力を求めるには、 過負荷後の容量に力率を掛けて単位をそろえる必要がある。

過負荷運転で賄える有効電力=過負荷後の容量[MV⋅A]×力率\text{過負荷運転で賄える有効電力} = \text{過負荷後の容量[MV·A]} \times \text{力率}

この値と総負荷(有効電力)との差が、他の変電所へ切り換えるべき電力になる。

例題

1台の定格容量15MV·Aの三相変圧器を2台有する配電用変電所があり、総負荷は22MW(力率は常に 90%・遅れで変化しないものとする)とする。変圧器1台が故障したとき、残りの変圧器を定格容量の 130%まで過負荷運転させ、不足分を他の変電所に切り換えて、故障発生前と同じ電力を供給したい。

健全な変圧器1台が過負荷運転で賄える皮相電力は、

15MV⋅A×1.3=19.5MV⋅A15\text{MV·A} \times 1.3 = 19.5\text{MV·A}

力率90%を掛けて、賄える有効電力に換算すると、

19.5×0.9=17.55MW19.5 \times 0.9 = 17.55\text{MW}

総負荷22MWとの差が、他の変電所へ直ちに切り換える必要がある電力だ。

2217.55=4.45MW22 - 17.55 = 4.45\text{MW}

総負荷に対する割合は、

4.4522×10020.2%\frac{4.45}{22} \times 100 \approx 20.2\%
この計算の急所は「容量[MV·A]と負荷[MW]の単位をそろえてから引き算する」という1点に尽きる。 過負荷後の容量をそのまま総負荷から引いてしまうと、皮相電力と有効電力を混同したまま計算する ことになり、答えが大きくずれる。「容量に力率を掛けて有効電力にそろえる→総負荷から引く→ 総負荷に対する割合を出す」という3段階の手順を、毎回同じ順序で踏むとよい。

ガス絶縁開閉装置(GIS)とSF6ガス — 変電所を小形化する技術

変電所の遮断器・断路器・母線などを、絶縁性能の高いSF6(六ふっ化硫黄)ガスを封入した金属容器の中に収める方式をガス絶縁開閉装置(GIS: Gas Insulated Switchgear)と呼ぶ。空気中の絶縁だけに頼る気中絶縁の変電所と比べて装置を大幅に小形化でき、変電所全体の体積・面積を大きく縮小できる。都市部など敷地に制約がある変電所で広く採用されている。

SF6ガスは、アーク放電を消し止める消弧能力が空気より優れ、絶縁破壊電圧も同じ圧力の空気より高い。この2つの性質を活かすため、GIS内部のSF6ガスは大気圧のまま使うのではなく、大気圧より高い圧力に加圧して封入するのが基本だ。比重は空気より大きく、化学的に安定した不燃性のガスで、特有の臭いを持つ。

オゾン層そのものへの影響はほとんど無視できるが、地球温暖化係数(GWP)が非常に大きいガスでもあるため、我が国では保守や廃棄の際にSF6ガスの大部分を回収することが求められている。

GISの金属容器内部に金属の異物が混入すると絶縁性能が大きく低下することがあるため、製造時・据え付け時には異物混入を防ぐ細心の管理が行われる。充電部を支持するスペーサには、エポキシ樹脂などの絶縁性の高い樹脂が用いられる。

SF6ガスを覚えるときは「空気より優れている面」と「地球環境への負荷が大きい面」をセットで押さえるとよい。消弧能力・絶縁破壊電圧は空気より高性能だが、温室効果ガスとしての影響は非常に大きいため、密閉・加圧して使い、点検・廃棄時は回収するという運用になっている。

アモルファス鉄心材料 — 鉄損は減るが、代償もある

ここまで見てきたY結線・Δ結線やGISは、変電所や受変電設備の「機器の組み方」に関わる話 だったが、変圧器そのものの鉄心の材料にも、省エネルギーを目的とした改良が進んでいる。 その代表がアモルファス鉄心材料を使った柱上変圧器だ。

一般的な変圧器の鉄心には、規則正しい結晶構造を持つけい素鋼帯が使われてきた。これに 対してアモルファス鉄心材料は、原子配列が結晶構造を持たない非晶質(アモルファス)な 材料でできている。この「結晶構造を持たない」という性質が、鉄損の少なさと加工性の悪さの 両方を生んでいる。

  • 鉄損が大幅に少ない:変圧器は負荷の有無にかかわらず、鉄心を磁化する過程で ヒステリシス損・渦電流損という無負荷損(鉄損)が常に発生している。アモルファス 鉄心材料は、磁区(磁化の向きがそろった領域)の反転がスムーズに起きるため、けい素鋼帯を 使った同容量の変圧器に比べて鉄損を大幅に減らせる。多数の柱上変圧器が常時系統に つながっている配電系統全体で見ると、この無負荷損の低減効果は大きい。
  • 高硬度で加工性に劣る:結晶構造を持たない非晶質材料は、けい素鋼帯より硬く、 打ち抜き・切断などの加工がしにくい。
  • 比較的高価:加工の難しさや製造工程の違いから、けい素鋼帯を使った変圧器より コストは高くなりやすい。
  • 磁束密度が低く、大形になりやすい:アモルファス鉄心材料は飽和磁束密度がけい素鋼帯 より低いため、同じ容量を確保するには鉄心の断面積を大きくとる必要があり、同容量の 変圧器同士で比べると、けい素鋼帯を使った変圧器よりむしろ大形になりやすい。
アモルファス鉄心材料は「良いことずくめの新素材」ではない。鉄損の少なさという長所と、 加工性・コスト・大きさという3つの短所は、すべて「結晶構造を持たない」という同じ1つの 性質から生まれている表と裏の関係だ。長所だけを覚えると比較問題で選択肢を誤りやすいので、 セットで押さえておく。

鉄損の内訳 — ヒステリシス損と渦電流損は、それぞれ別の対策で減らす

前節ではアモルファス鉄心材料とけい素鋼帯を「鉄損の大小」で比較したが、鉄損はさらに ヒステリシス損渦電流損という2つの成分に分けられる。この2つは発生する仕組みが 違うため、減らすための対策も別々に考える必要がある。

ヒステリシス損は、鉄心が交流磁束によって繰り返し磁化・減磁されるときに、磁化曲線 (B-Hループ)が描く面積に比例して失われるエネルギーだ。ループの面積は、磁化を0に戻すのに 必要な逆方向の磁界の強さ(保磁力)が小さい材料ほど小さくなる。つまりヒステリシス損を 減らしたいなら、保磁力の小さい材料(アモルファス材やけい素鋼材のような軟磁性材料)を 選ぶ、という材料選択が対策になる。

渦電流損は、交番磁束が鉄心内に誘導する渦状の電流(渦電流)が、鉄心の電気抵抗を通じて ジュール熱として失われる損失だ。渦電流は鉄心の断面積が大きいほど大きく流れやすい。そこで、 鉄心を薄い鋼板に分割し、板と板の間を絶縁して積み重ねる積層という構造上の工夫で、渦電流が 流れる経路・断面積を制限し、渦電流損を抑える。

「積層すればヒステリシス損も渦電流損も両方減る」と考えると誤る。積層で減らせるのは **渦電流損だけ**で、ヒステリシス損は鉄心の**材料そのものの磁化特性**(保磁力の大小)で 決まり、積層してもほとんど変わらない。ヒステリシス損には材料選択、渦電流損には積層という 構造上の工夫——対策の対象が違う、と区別して覚える。

けい素鋼材は、鉄にけい素(シリコン)を数%添加することで、透磁率を高めると同時に電気抵抗率 も高めた材料だ。電気抵抗率が高いほど渦電流が流れにくくなるため、この抵抗率の上昇が渦電流損 の抑制に効いている。純鉄をそのまま使うより、けい素を添加した鋼材の方が鉄損の少ない鉄心に なるのはこのためだ。

鉄心材料を選ぶときには、もう1つ注意したい対比がある。ヒステリシス損を減らすには保磁力が 小さい材料が求められる一方、飽和磁束密度(磁束をどこまで蓄えられるかの上限)は逆に 大きい方が、同じ磁束を得るのに必要な鉄心の断面積を小さくでき、変圧器の小形化に有利に なる。保磁力と飽和磁束密度は、どちらも小さければ小さいほど良いという同じ向きの性質では ない——前節で見た「アモルファス鉄心材料は鉄損が少ない一方、飽和磁束密度が低く大形になり やすい」というトレードオフも、この2つの性質が別の向きに効くことの一例だ。

鉄心材料の比較問題でつまずくとしたら、ほぼ確実に「損失を減らす性質は、すべて小さい方が 良い」という一括りの思い込みだ。保磁力は小さい方が(ヒステリシス損が減る)、飽和磁束密度は 大きい方が(小形化できる)望ましい、というように、性質ごとに「大きい方が良いか、小さい方が 良いか」を個別に確認する。

変圧器の保全・診断 — 何を測れば、何が分かるのか

ここまで見てきたアモルファス鉄心は「鉄心材料そのものの改良」の話だったが、変圧器を長く安全に 使い続けるには、運転を続けながら異常の兆候をつかむ保全・診断の技術も欠かせない。変圧器の 予防保全は、運転の維持と事故の未然防止を目的として行われ、測定する対象によって複数の 手法が使い分けられている。

  • 油中ガス分析:油入変圧器の絶縁油を採取し、油に溶け込んだ微量のガス成分を分析する 手法。変圧器内部で過熱や部分放電といった異常が起きると、絶縁油や絶縁紙が分解して特有の ガスが発生するため、ガスの種類・量から内部の異常を診断できる。
  • 部分放電測定:絶縁体内部の微小な空隙(ボイド)などで起きる部分放電を検出する手法。 部分放電は絶縁破壊が生じる前ぶれである場合が多いため、異常診断技術として活用される。
  • 絶縁抵抗測定・誘電正接測定:変圧器巻線の絶縁抵抗や誘電正接(tanδ)を測定する 手法。どちらも、絶縁物を通してどれだけ電流が漏れるか・エネルギーが失われるかを見る 測定であり、対象は絶縁そのものの経年劣化であって、鉄心材料の劣化ではない。
  • 目視点検・油面計:ガスケットの経年劣化に伴う漏油は、目視点検に加えて油面計で油量の 減少を確認することで検出できる。
「絶縁抵抗測定・誘電正接測定=絶縁の診断」「油中ガス分析・部分放電測定=内部異常(過熱・ 部分放電)の診断」「油面計=漏油の診断」というように、それぞれの手法が**何を測って何を 知りたいのか**を対応づけて覚えておくと、比較問題で対象を取り違えない。特に絶縁抵抗測定・ 誘電正接測定を「鉄心の状態を知るための測定」だと誤解しやすいので注意したい。

変電所の用途別分類 — 周波数変換所・交直変換所という特殊な変電所

ここまで見てきたのは変電所内部の変圧器の話だったが、変電所自体も用途によっていくつかに 分類される。需要地への電圧供給を担う送電用変電所配電用変電所のほかに、系統同士を つなぐための特殊な変電所として、周波数変換所交直変換所がある。

周波数変換所は、周波数そのものが異なる系統(東日本の50Hzと西日本の60Hzなど)を 連系するための設備で、一方の系統の交流をいったん直流に変換し、もう一方の系統の周波数に 合わせて再び交流に変換する。

交直変換所は、周波数は同じでも交流のまま直接連系すると安定度上の制約が大きい系統同士や、 海を隔てた系統同士を、直流(HVDC)を介してつなぐための設備で、北海道と本州の間の連系に 用いられる設備がその代表例になる。直流を挟むことで、系統同士を非同期のまま連系できる点が 交流の直接連系にはない利点だ。

周波数変換所と交直変換所は、どちらも「交流のまま直接つなげない系統同士を、直流を経由して つなぐ」という共通の仕組みを使っているが、目的が違う。周波数変換所は「周波数そのものが 異なる」ことへの対策、交直変換所は「周波数は同じでも直接連系が難しい」ことへの対策、と 区別しておくと取り違えない。

調相設備と開閉装置 — 電圧調整と電力潮流調整の役割分担

変電所が担う電圧調整・系統運用の役割は、Y結線・Δ結線の選び方だけでなく、変電所に設置される 調相設備開閉装置の使い分けにも表れている。

進相コンデンサ・分路リアクトルといった調相設備や、負荷時タップ切換装置付変圧器(LRT)・ 負荷時電圧調整器(LRA)は、いずれも無効電力の授受やタップ位置の調整を通じて、需要地における 負荷の変化に応じた電圧調整を担う。一方、遮断器・断路器などの開閉装置による系統切り換えは、 送変電設備の一部に負荷が集中して局所的な過負荷運転になるのを避けるなどの目的で、系統内の 電力潮流(どの経路にどれだけの電力を流すか)を調整する役割を担う。

「電圧を整える」調相設備と、「電力の流れる経路を整える」開閉装置は、どちらも変電所の 電圧調整・運用に関わる設備だが、調整している対象が違う。電圧の大きさの話には調相設備、 どの経路にどれだけ電力を流すかという話には開閉装置による系統切り換え、と対応させて 整理しておくとよい。

実務との接点 — キュービクルの結線表記が意味するもの

受変電設備の仕様書に出てくる結線表記は、単なる型式の違いではなく、中性点接地の可否・波形の きれいさ・並列運転時の位相合わせといった、上で見てきた性質をそのまま反映したものだ。結線を 見ただけで「この設備は中性点接地ができるか」「他の変圧器と位相を合わせる必要があるか」を 読み取れると、受変電設備の構成を理解する解像度が一段上がる。

冒頭の「なぜ変電所や受変電設備が結線方式を使い分けているのか」——答え合わせは、理解度 チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. Y結線とΔ結線のどちらが「線間電圧=相電圧」で、どちらが「線間電圧=√3倍」かを取り違える

    なぜ引っかかるYとΔという記号の見た目から連想せず、公式だけを丸暗記していると、どちらの結線がどちらの関係になるか逆転して覚えやすい。

    見破り方Y結線は中性点を挟んで2つの相巻線が直列につながる形なので、相電圧×√3=線間電圧になる。Δ結線は巻線がそのまま線間に接続されているので、相電圧=線間電圧になる。結線の形そのものから、電圧の関係を導き直す。

  2. 第3高調波の環流先を、Y結線とΔ結線で逆に覚える

    なぜ引っかかる「閉じたループ=環流できる」というイメージが浮かびにくく、Y結線側に環流路があると誤解しやすい。

    見破り方Δ結線は巻線が三角形に閉じているため、各相で同位相になる第3高調波成分が巻線内をぐるぐる回って外部(線間)に出てこない。Y結線は中性点で回路が開いているため、この環流ができず、第3高調波が線間電圧に現れてしまう。「閉じているか、開いているか」という結線の形から考える。

  3. 発電所の主変圧器のY/Δ配置を、発電機側Y結線・系統側Δ結線のように逆に覚えてしまう

    なぜ引っかかるY結線・Δ結線それぞれの一般的な性質(接地の可否・第3高調波の扱い)は覚えていても、それを実際の主変圧器のどちら側に当てはめるかという実務上の配置までは結びつけて覚えていないことが多い。

    見破り方系統側から考える。系統側は地絡保護や中性線確保のために中性点接地が必須なので、中性点を持つY結線でなければならない。発電機側には中性点接地の必要がなく、むしろ第3高調波を巻線内で打ち消せるΔ結線の利点の方が活きる。『系統側=Y(接地が要る側)、発電機側=Δ(接地不要・高調波を閉じ込める側)』という対応で覚え直す。

  4. V結線の出力を、単相変圧器2台分の定格容量の単純合計(100%)と考えてしまう

    なぜ引っかかる「2台使っているのだから、2台分そのまま使えるはず」という直感的な発想に流されやすい。

    見破り方V結線では各変圧器にかかる電圧・電流の位相関係により、単体の利用率は√3/2(約86.6%)にとどまり、Δ結線3台構成と比較した出力比はさらに1/√3(約57.7%)まで下がる。「2台だから2/3」でも「そのまま100%」でもない、という数値を思い出す。

  5. 変圧器の過負荷運転で賄える電力を、過負荷後の容量[MV·A]の数値そのまま(力率を掛けずに)有効電力[MW]として扱ってしまう

    なぜ引っかかる定格容量120%といった過負荷後の数値がMV·A(皮相電力)で示されるため、これをそのまま総負荷の単位(MW、有効電力)と比べてしまいやすい。

    見破り方変圧器の容量は皮相電力[MV·A]、負荷は多くの場合有効電力[MW]で示されるという単位の違いを先に確認する。過負荷後の容量に力率を掛けて有効電力に換算してから、初めて総負荷(有効電力)と比較・差し引きできる、という順序を踏む。

  6. GIS内のSF6ガスを「大気圧以下」で封入して使っていると誤解する

    なぜ引っかかる気体を密閉容器に閉じ込めて絶縁するというイメージから、圧力を上げずにそのまま使っていると思い込みやすい。

    見破り方SF6ガスの消弧能力・絶縁破壊電圧が空気より高いという性質を最大限に活かすため、GISでは大気圧より高く加圧して封入するのが基本、と覚え直す。「大気圧以下」という記述を見たら誤りを疑う。

  7. 「アモルファス」という名前から、規則正しい結晶構造を持つ特殊な金属材料だと誤解する

    なぜ引っかかる「アモルファス」という語の意味(非晶質=結晶構造を持たない)を知らないと、鉄心材料という文脈から連想して、むしろ結晶構造が優れた特殊な金属だと逆の意味で覚えてしまいやすい。

    見破り方アモルファスの語源(amorphous=無定形の)に立ち返り、原子配列が規則正しい結晶構造を持たない非晶質材料だと確認する。この結晶構造を持たない性質が、鉄損(ヒステリシス損)を大幅に減らせる理由であると同時に、材料が硬く加工しにくい理由にもなっている、と原因を1つにまとめて理解する。

  8. 変圧器巻線の絶縁抵抗測定・誘電正接測定の目的を、鉄心材料の経年劣化を把握するためだと誤解する

    なぜ引っかかる変圧器の保全・診断というくくりの中で、鉄心の話(アモルファス鉄心の鉄損など)と絶縁の話(絶縁抵抗・誘電正接)が並べて語られやすく、どちらの測定がどちらの部位を対象にしているかが曖昧になりやすい。

    見破り方測定している量から考え直す。絶縁抵抗測定・誘電正接測定はいずれも『絶縁物を通してどれだけ電流が漏れるか・エネルギーが失われるか』を測る手法であり、対象は絶縁そのものの経年劣化であって鉄心材料ではない。鉄心の状態(鉄損の大小など)を把握したい場合は、別途励磁電流測定や損失測定といった手法が使われる、と対象を区別する。

  9. 周波数変換所と交直変換所を同じ「特殊な変電所」としてひとまとめにし、それぞれが何のために存在するかを取り違える

    なぜ引っかかるどちらも『通常の電圧変換とは違う特殊な役割を持つ変電所』という共通点でまとめて紹介されるため、周波数の違いを扱うのか、系統の非同期連系を扱うのかという目的の違いが曖昧になりやすい。

    見破り方周波数変換所は「50Hzと60Hzという異なる周波数の系統をつなぐ」ための設備、交直変換所は「交流系統同士を、いったん直流に変換してから非同期でつなぐ」ための設備、と目的語(周波数か、系統の同期状態か)で区別する。北海道・本州間や東日本・西日本間の連系設備の名称を思い浮かべながら対応させると覚えやすい。

  10. 鉄心材料を薄い鋼板に積層する対策が、ヒステリシス損・渦電流損の両方を減らすと思い込む

    なぜ引っかかる積層は『鉄損を減らすための工夫』という共通点だけで、渦電流損とヒステリシス損を区別せずまとめて効果があると考えてしまいやすい。

    見破り方積層で減らせるのは、鉄心内を周回する誘導電流によって生じる渦電流損だけだと確認する。薄い板に分割し絶縁することで渦電流が流れる経路・断面積を制限するのが積層の狙いであり、材料自体の磁化特性で決まるヒステリシス損は積層してもほとんど変わらない。ヒステリシス損を減らしたい場合は、積層ではなく保磁力の小さい材料(けい素鋼材やアモルファス材)を選ぶ、という対策の使い分けを意識する。

参考文献・出典

理解度チェック(20問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、20問で確認しよう。 内訳は基本10問・応用4問・ひっかけ6問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 20 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 変電所は電圧階級を段階的に変換するだけでなく、遮断器・断路器による系統切替、電圧調整も担う送電系統のノード
  2. 三相変圧器の結線はY(スター)とΔ(デルタ)の組み合わせで決まり、Y-Y、Δ-Δ、Y-Δ、Δ-Yなどがある
  3. Y結線は中性点接地ができる一方、第3高調波の環流路がなく波形が歪みやすい。Δ結線は第3高調波を巻線内で打ち消せるが中性点が取れない
  4. 発電所の主変圧器は、発電機側をΔ結線・系統側をY結線にすることが多い(Δ-Y結線)。系統側は地絡事故時の保護や中性線の確保のために中性点接地が必要になるためY結線にし、発電機側は中性点接地の必要がない一方、発電機の励磁電流に含まれる第3高調波を巻線内で環流させて打ち消せるΔ結線にする、という役割分担
  5. Y結線とΔ結線を組み合わせた変圧器(Y-Δ、Δ-Yなど)では、一次二次間に30度の位相差が生じる
  6. V結線は単相変圧器2台で三相を賄える簡易結線だが、出力はΔ結線3台構成の約57.7%にとどまる
  7. 変圧器は短時間であれば定格容量を超えて運転できる場合があり(過負荷運転)、複数台の変圧器のうち1台が故障したときに、残りの変圧器を過負荷運転させつつ、それでも賄いきれない不足分を他の変電所へ切り換える、という運用が行われることがある。過負荷運転で賄える皮相電力は「過負荷後の容量×力率」で求まり、これと総負荷(有効電力)との差が、他の変電所へ切り換えるべき電力にあたる
  8. GIS(ガス絶縁開閉装置)はSF6ガスの高い絶縁性能・消弧能力を利用して変電所を小形化する技術で、ガスは大気圧より高く加圧して使う。オゾン層への影響は小さいが地球温暖化への影響が大きいため、保守・廃棄時にはガスの回収が求められる
  9. 変電所は用途の面から送電用変電所・配電用変電所などに分類されるが、系統連系のための特殊な変電所として、周波数の異なる系統(東日本50Hz・西日本60Hzなど)を連系する周波数変換所、交流系統同士を直流を介してつなぐ交直変換所(北海道・本州間の連系など)もある。系統運用では、進相コンデンサ・分路リアクトルなどの調相設備や負荷時電圧調整器が需要地の負荷変化に応じた電圧調整を担い、開閉装置による系統切り換えは送変電設備の局所的な過負荷運転を避けるための電力潮流の調整を担う、というように役割が分かれている
  10. アモルファス鉄心材料は結晶構造を持たない非晶質材料で、けい素鋼帯を使った変圧器に比べて鉄損(ヒステリシス損・渦電流損)が大幅に少なく、柱上変圧器の無負荷損低減に使われる。ただし高硬度で加工性に劣り、比較的高価で、飽和磁束密度もけい素鋼帯より低いため、同容量ならけい素鋼帯を使う変圧器より大形になりやすい
  11. 変圧器の予防保全は、運転の維持と事故の防止を目的として行われる。油入変圧器では絶縁油の油中ガス分析が内部異常(過熱・部分放電など)の診断に使われ、部分放電測定は絶縁破壊が生じる前ぶれを検知する異常診断技術として用いられることがある。変圧器巻線の絶縁抵抗測定と誘電正接測定は、鉄心材料の劣化ではなく、絶縁そのものの経年劣化を把握することを主な目的として実施される。ガスケットの経年劣化に伴う漏油の検出には、目視点検に加えて油面計が活用される
  12. 鉄心の鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損の2つに分けられる。ヒステリシス損は磁化曲線(B-Hループ)の面積に比例し、保磁力(磁化を0に戻すのに必要な逆方向磁界の強さ)が小さい材料ほど小さくなる。渦電流損は交番磁束によって鉄心内に誘導される渦状の電流がジュール熱として失われる損失で、鉄心を薄い鋼板に分割し板同士を絶縁して積層することで低減できる——積層はヒステリシス損にはほとんど効果がなく、渦電流損だけを減らす対策である点に注意する。けい素鋼材は、鉄にけい素を添加して透磁率と電気抵抗率をともに高めた材料で、抵抗率が高いほど渦電流が流れにくくなり渦電流損も小さくなる。なお鉄心材料には、ヒステリシス損を減らすために保磁力が小さい材料が求められる一方、飽和磁束密度は逆に大きい方が、同じ磁束を得るのに必要な鉄心断面積を小さくでき小形化に有利になる——保磁力と飽和磁束密度は、どちらも小さいほど良いという同じ向きの性質ではない
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