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法規 ・ 1 / 12

電気事業法と事業用電気工作物の定義

読み終えると、こうなる

高圧受電のキュービクルを新設する現場を見たとき、なぜ主任技術者の選任が必要になるのか、あるいは不要なケースがあるのかを、法令の構造から説明できるようになる

  • ある電気工作物が一般用電気工作物か事業用電気工作物かを、受電電圧と発電設備の有無から仕分けられ、小規模事業用電気工作物など設備の種類に応じた保安規程の届出・主任技術者選任の要否を判断できる
  • 電気工事士法が定める第一種・第二種電気工事士、認定電気工事従事者、特種電気工事資格者それぞれが従事できる電気工事の範囲を区別でき、電気用品安全法が定める特定電気用品・特定電気用品以外の電気用品の区分とマーク(<PS>E・(PS)E)の違い、電気工事士がその電気工事に使用してよい電気用品の要件を説明できる
  • 事業用電気工作物を設置する者が負う技術基準への継続的な維持義務(39条)と不適合時に主務大臣が命じうる是正措置(修理・改造・移転・使用の一時停止・制限、40条)、電気の需給がひっ迫した場面でOCCTOが会員へ指示できる措置、経済産業大臣が電気事業者に命じうる安定供給確保の措置、及び経済産業大臣が需要家側に直接電気の使用制限を命じることができる制度(電気の使用制限等、27条)の三者の違いを説明できる
  • 一般用電気工作物と直接接続する電線路維持運用者が負う調査義務(57条)の対象・立入り承諾が得られない場合の扱いと、技術基準不適合を認めたときに所有者・使用者へ通知すべき内容を説明できる
考えてみよう

制御盤や受変電設備を扱う電材商社に、ある工場から問い合わせが来た。「高圧のキュービクルを新設するのだけれど、主任技術者は誰にすればいいのか」。

隣の工場では、屋根に太陽光パネルを増設しただけなのに、主任技術者の選任は不要だと言われたという。同じ「電気工作物を新設する」という話なのに、片方は主任技術者が要り、もう片方は要らない。この違いは何が分けているのか。

このトピックを読み終えるころには、その工場がどんな義務を背負うのかを、法令の条文構造から自分で言い当てられるようになっている。

種明かしは、電気工作物が電気事業法によって「一般用」か「事業用」かの二分法でまず仕分けられ、事業用電気工作物の中がさらに細かく分かれている、という構造にある。電験三種の主任技術者が守備範囲とするのは、まさにこの事業用電気工作物だ。

一般用電気工作物と、事業用電気工作物 — 裏返しの定義

電気事業法38条は、電気工作物をまず「一般用電気工作物」と「事業用電気工作物」に分ける。一般用電気工作物は、低圧(600V以下)で受電し、かつ小規模な発電設備以外の発電設備と同一構内に設置されていないもの。一般家庭や小規模な店舗の屋内配線は、ほぼここに含まれる。

事業用電気工作物は、この一般用「以外」のすべてを指す裏返しの定義になっている(38条2項)。発電所や変電所はもちろん、高圧で受電するビルや工場の需要設備も、この事業用電気工作物に入る。「事業用」という名前から電力会社の設備だけを思い浮かべやすいが、自社工場の高圧受電設備も同じ枠の中にある。

一般用電気工作物の要件にある「小規模な発電設備」には、太陽光発電設備なら出力50kW未満、風力発電設備なら出力20kW未満といった上限が定められている。ここで見落としやすいのが、同一構内にこの小規模な発電設備に該当する太陽光発電設備等が複数設置されている場合、あるいは既存の発電設備に新たな発電設備を電気的に接続する場合の扱いだ。この場合は、個々の設備の出力をそれぞれ個別に判定するのではなく、合算した出力で小規模な発電設備に該当するかどうかを判定する。合算した出力が50kW以上になれば、その時点で小規模な発電設備の範囲を超え、一般用電気工作物の要件を満たさなくなる(事業用電気工作物として扱われることになる)。

一般用電気工作物の判定でよくある見落としは、「1つ1つの発電設備の出力が50kW未満だから大丈夫」と、設備ごとに個別判定してしまうことだ。同一構内で複数の太陽光発電設備等を電気的に接続して設置する場合は、合計出力で50kW未満かどうかを判定する。10kW台のパネルを複数箇所に増設していった結果、合計が50kWを超えた時点で、その工作物全体が一般用電気工作物ではなくなる、という変化が起こりうる点に注意する。

事業用電気工作物の内側 — 電気事業用と、自家用

事業用電気工作物は、さらに2つに分かれる。1つは電気事業(一般送配電事業・送電事業・配電事業・発電事業等)の用に供する電気工作物。もう1つは、それ以外の「自家用電気工作物」だ(38条4項)。高圧6,600Vで受電するビルや工場の需要設備は、実務上ほぼこの自家用電気工作物に入る。電材商社が扱うキュービクル式受電設備は、たいていこの自家用電気工作物として設置されている。

「一般用」「事業用」「自家用」という3つの言葉は、包含関係で整理すると混乱しない。まず「一般用」か「事業用」かで二分され、「事業用」の中に「電気事業用」と「自家用」の2つがある。自家用電気工作物は事業用電気工作物の一部分であって、別枠の区分ではない。

事業用電気工作物の中には、もう1段階、「小規模事業用電気工作物」という区分がある。太陽光発電設備なら出力10kW以上50kW未満、風力発電設備なら出力20kW未満がこれにあたる(風力発電設備は出力20kW以上であれば、小規模事業用電気工作物ではなく通常の事業用電気工作物として扱われる)。小規模事業用電気工作物は法律上は自家用電気工作物の一部だが、次に見る保安規程の届出と主任技術者の選任という2つの義務からは除外されている。

電気工事士法 — 「誰が保安を監督するか」とは別に、「誰が工事の作業をしてよいか」を決める法律

ここまでの話は、事業用電気工作物を持つ者が負う義務(保安規程・主任技術者選任)が中心だった。だが、実際に電気工事の作業を行う人にも、別の法律が資格の網をかけている。それが電気工事士法だ。

電気工事士法は、電気工事の作業を、対象の電気工作物と作業内容に応じて資格ごとに区分する。

資格従事できる工事の範囲
第二種電気工事士一般用電気工作物等の工事に限られる
第一種電気工事士自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)と一般用電気工作物等の両方
認定電気工事従事者自家用電気工作物のうち600V以下で使用する部分(簡易電気工事)に限る
特種電気工事資格者ネオン工事、非常用予備発電装置工事など、それぞれの特殊分野に限る
第二種電気工事士は「一般用電気工作物等」の工事に限られ、自家用電気工作物の工事には原則従事できない。高圧受電のキュービクルを持つ工場・ビルの構内工事に従事するには、第一種電気工事士(または対象範囲に応じた認定電気工事従事者)の資格が必要になる。「電気工事士だから何でもできる」ではなく、対象の電気工作物によって必要な資格が変わる、という区分が土台になる。

見落としやすいのが、第一種電気工事士でも従事できない工事がある点だ。ネオン工事と非常用予備発電装置工事は、特殊な技術を要するため、それぞれ特種電気工事資格者の認定を受けた者でなければ従事できない。自家用電気工作物の工事全般に従事できるはずの第一種電気工事士でも、この2分野だけは別枠の認定が必要になる。

主任技術者(電気事業法)が「保安の監督」を担うのに対し、電気工事士(電気工事士法)が担うのは「工事の作業そのもの」だ。同じキュービクルの新設工事でも、主任技術者は工事が技術基準どおりに施工されているかを監督する立場、電気工事士は実際に配線・機器の設置作業を行う立場——この役割の違いを押さえておくと、現場での資格確認の場面で迷わない。

電気工事業法 — 「誰が作業してよいか」とは別に、「業として営む会社」を規律する法律

電気工事士法が「個人が電気工事の作業をしてよいか」を資格ごとに区分する法律だったのに対し、もう1つ別の法律が、電気工事を「業として営む会社・個人事業主」を規律している。それが電気工事業の業務の適正化に関する法律(電気工事業法)だ。

電気工事業法は、電気工事業を営もうとする者に、次のいずれかの手続きを求めている。

  • 登録電気工事業者 — 経済産業大臣又は都道府県知事の登録を受けて、電気工事業を営む者
  • 通知電気工事業者 — 自家用電気工作物のみに係る電気工事業を営む旨を、経済産業大臣又は都道府県知事に通知して営む者

窓口は、営業所が2以上の都道府県にまたがる場合は経済産業大臣、1つの都道府県内にとどまる場合は都道府県知事になる(具体的な要件は最新の電気工事業法及び関連規則で確認すること)。

似たような名前の3つの法律を、規律する対象で切り分けると混同しにくい。**電気工事士法**は「誰が工事の作業をしてよいか」という個人の資格を、**電気工事業法**は「電気工事業を営む会社・個人事業主が満たすべき手続き(登録・通知)」を、**電気事業法**は「電気工作物を持つ設置者が負う保安体制の義務(保安規程・主任技術者)」を、それぞれ別の角度から規律している。電材商社が付き合う協力業者・電気工事店を見るときも、この3つの法律のどれに基づいて仕事をしているかを意識すると、資格確認の場面で迷いにくい。

電気用品安全法 — 「誰が」ではなく「製品そのもの」を規律する法律

電気工事士法・電気工事業法・電気事業法が、いずれも「人」や「事業者」を規律する法律だったのに対し、もう1つ別の切り口から電気の安全を支えている法律がある。電気用品安全法だ。この法律が規律するのは人ではなく、コンセント・スイッチ・電線・コード・家電製品といった「電気用品」そのものである。

電気用品安全法は、電気用品を2つに区分する。

  • 特定電気用品 — 構造又は使用方法その他の使用状況からみて、特に危険又は障害が発生するおそれが多い電気用品であって、具体的な品目は政令で個別に指定される
  • 特定電気用品以外の電気用品 — 特定電気用品ほどの危険性はないものの、なお電気用品安全法の規制対象となる電気用品
「特定電気用品」という名前だけを見ると、どんな電気用品でも一括りにされそうに感じるが、実際には政令で対象品目が個別に定められている。危険性の高さで2段階に分け、より危険性の高いものに、より厳しい規制(第三者機関による適合性検査等)を課す、という構造になっている。

電気用品の製造・輸入を行う事業者は、経済産業省への届出、電気用品が満たすべき技術基準への適合の確認、そして技術基準に適合したことを示す表示(マーク)の付与という手続きを経なければ、その電気用品を販売してはならない。表示されるマークは、電気用品の区分によって形が違う。

  • 特定電気用品 → 菱形の E マーク
  • 特定電気用品以外の電気用品 → 丸形の (PS)E マーク
危険性がより高い特定電気用品のほうが、より目立つ菱形のマークになると覚えると、形状を逆に覚える誤りを防ぎやすい。同じ「PSE」という文字列を含むため、丸形と菱形のどちらがどちらかを問う設問では紛らわしく感じやすい。

電気工事士にとって、このマークは単なる製品ラベルではない。電気工事士は、電気工作物の設置又は変更の工事に電気用品を使用する場合、経済産業省令で定める方式による記号(このPSEマーク等)が表示されたものでなければ使用してはならない。無表示・無認証の電線やコードをキュービクルの改修工事に持ち込むことは、電気工事士法・電気用品安全法の両方に抵触するおそれがある。

電材商社の実務でも、扱う電線・ケーブル・配線器具がこの表示を適切に備えているかどうかは、単なる仕入れの確認事項ではなく、顧客先の電気工事士が安心して使用できるかどうかに直結する。仕入れ先・メーカーが電気用品安全法の届出事業者として適切に手続きを経ているかどうかは、取扱商品を選定するうえでの基本的な確認ポイントになる。

事業用電気工作物を持つ者に課される2つの義務

事業用電気工作物を設置する者には、電気事業法42条・43条により、原則として次の2つの義務が課される。

  • 保安規程の届出(42条) — 自主的な保安体制のルールを文書化し、経済産業大臣(実務上は産業保安監督部)に届け出る
  • 主任技術者の選任(43条) — 電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の監督を行わせるため、有資格者を選任する

電験三種(第三種電気主任技術者)は、この主任技術者になるために必要な国家資格の1つだ。「法規」科目でこの2つの条文が土台になるのは、電験三種という資格そのものが、この43条の主任技術者制度の中に位置づけられているからにほかならない。

小規模事業用電気工作物は、42条・43条の条文上「事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)」というかっこ書きによって、この2つの義務から外れている。だが、これは「規制が緩い区分」という意味ではない。免除されているのは保安規程の届出と主任技術者の選任という「体制」の義務だけで、電気設備技術基準に適合させる義務そのものはなくならない。免除される義務と、残る義務を分けて読むことが、この科目全体の理解の土台になる。

使用を始めた後もずっと続く義務 — 技術基準適合の維持と是正命令(39条・40条)

ここまで見てきた48条(工事計画届出)や51条(使用前自主検査)は、いずれも「設置・変更工事をするとき」に一度だけ通過する手続きだった。だが事業用電気工作物を設置する者の義務は、使用を開始した瞬間に終わるわけではない。

電気事業法39条1項は、事業用電気工作物を設置する者に対し、その事業用電気工作物を主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならないと定めている。技術基準が求める内容には、人体への危害・物件への損傷を与えないこと、他の電気的設備に電気的又は磁気的な障害を与えないこと、一般送配電事業者・配電事業者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないことなどが含まれる。「設置したときに一度適合していればよい」のではなく、経年劣化や周囲の環境変化があっても、使用している限りずっと適合し続けていなければならない、という継続的な義務がここにある。

48条の工事計画届出や51条の使用前自主検査は「設置・変更工事の入口」で一度だけ確認する手続きだ。これに対し39条の維持義務は「使用している間ずっと」続く、性質の異なる義務になる。両方とも「技術基準に適合させる」という同じ言葉が出てくるため混同しやすいが、一回限りの確認義務と、継続する維持義務は別物だと区別しておく。

もし主務大臣が、ある事業用電気工作物が技術基準に適合していないと認めたときは、どうなるか。電気事業法40条は、主務大臣が設置者に対し、その技術基準に適合するように事業用電気工作物を修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができると定めている。「廃止」のような不可逆の措置ではなく、あくまで是正のための一時的な措置である点が特徴だ。

電材商社の実務でも、老朽化した高圧受電設備の相談を受けたとき、「設置したときは基準を満たしていたはずだから今も問題ない」という発想は危うい。39条の維持義務は現在進行形の義務であり、経年劣化した機器を放置すれば、技術基準への不適合と判断される可能性がある。更新提案の根拠として、この継続的な義務の存在を説明できると、顧客への説得力が増す。

主任技術者は、必ず社員でなければならないのか

冒頭の工場の例に戻る。高圧のキュービクルを新設すれば、その工場は自家用電気工作物を持つことになり、43条の主任技術者選任義務を負う。ここで実務上よく誤解されるのが、「主任技術者=有資格者を正社員として雇わなければならない」という思い込みだ。

実際には、一定の要件を満たせば、外部の電気管理技術者等に委託する形(外部委託承認)で、専任の主任技術者を社内に置かずに運用することが認められている。中小規模の工場や店舗のキュービクルで、専任の主任技術者を1人雇うのは負担が大きい。外部委託承認の制度は、そうした現場の実情に合わせて設けられている。どこまでの規模・電圧なら外部委託が認められるかという具体的な要件は細かく定められているため、詳細は経済産業省が示す最新の運用基準を確認する必要がある。

太陽光30kWの工場が主任技術者の選任を必要としなかったのは、その設備が小規模事業用電気工作物にあたり、43条の除外規定に入っていたからだ。一方、高圧のキュービクルを新設する工場は、この除外規定に入らない自家用電気工作物として、主任技術者の選任義務を負うことになる。

V2H(Vehicle to Home)— EVからの給電設備は、なぜ「一般用」のままでいられるのか

ここまでの話は、いずれも「発電設備が同一構内にあるかどうか」で一般用電気工作物と事業用電気工作物を分ける前提に立っている。ところが近年、電気自動車(EV)に蓄えた電気を、専用のパワーコンディショナ(V2H機器)を介して住宅側へ供給するV2H(Vehicle to Home)というシステムが広がり始めている。

素朴に考えると、蓄電池から電気を「発生」させて供給する設備は発電設備に近い性格を持つ。一般用電気工作物の定義は「小規模な発電設備以外の発電設備と同一構内に設置されていないこと」を条件の一つとしているため、EVからの給電もこの条件に抵触し、無条件で事業用電気工作物として扱われてもおかしくないように見える。

しかし実際には、一定の技術的な条件を満たせば、V2H設備は例外的に一般用電気工作物の範囲内で扱われる仕組みが整えられている(電気設備技術基準の解釈第199条の2)。整理すると、次のような条件が組み合わさることで、感電・火災のリスクを抑える構造になっている。

  • 電気自動車等の出力を10kW未満に制限し、かつ低圧幹線の許容電流以下とする
  • EVと供給設備をつなぐ電路の対地電圧を、原則150V以下に制限する
  • 直流側の電路を非接地とする
  • 交流側に絶縁変圧器を施設する
  • 地絡が起きたとき、あるいは電線が切断されたときに、自動的に電路を遮断する装置を設ける
V2Hのような給電設備が「一般用のまま」でいられるのは、規制が甘いからではない。対地電圧の制限・非接地・絶縁変圧器・自動遮断装置という複数の条件をすべて満たすことで、事業用電気工作物として保安規程・主任技術者による体制を組まなくても、同等の安全性を確保できると位置づけられているからだ。この「体制の重さ」と「技術基準への適合」を切り分けて考える視点は、小規模事業用電気工作物のところで見た構造と同じである。数値基準の細部(対地電圧の例外条件など)は改正が入りやすい分野でもあるため、実務で扱う際は電気設備技術基準の解釈の最新版を確認する必要がある。

電材商社の立場から見ても、EV充電・給電設備は今後伸びていく分野だ。V2H用のパワーコンディショナや専用分電盤、絶縁変圧器といった機器の取り扱いは、住宅設備の脱炭素化・レジリエンス強化のニーズと結びついて需要が増えていくと見込まれる。制御盤・受変電設備を扱ってきた知見は、こうした新しい給電設備の技術基準を理解するうえでも土台になる。

電気設備技術基準の解釈が定める場所の定義 — 需要場所・電気使用場所・引込線・工作物・造営物

ここまでは電気事業法が定める「電気工作物」の区分(一般用・事業用・自家用)を見てきた。これとは別に、電気設備技術基準の解釈という条文には、電気工作物がどこに施設されているかを表す、もう1系統の基本用語がある。「需要場所」「電気使用場所」「引込線」といった言葉は、避雷器の施設義務や低圧幹線の施設基準など、他のトピックの条文にも繰り返し登場するため、先にここで定義を押さえておく。

  • 工作物 — 人により加工された全ての物体。もっとも広い言葉で、建物はもちろん電柱・電線路・看板なども含まれる
  • 造営物 — 工作物のうち、土地に定着するものであって、屋根及び柱又は壁を有するもの。住宅・工場・倉庫のような「建物」がこれにあたる
  • 電気使用場所 — 電気を使用するための電気設備を施設した、1の建物又は1の単位をなす場所
  • 需要場所 — 電気使用場所を含む1の構内又はこれに準ずる区域であって、発電所、変電所及び開閉所以外のもの
  • 引込線 — 架空引込線及び需要場所の造営物の側面等に施設する電線であって、当該需要場所の引込口に至るもの
5つの言葉は、広い概念から狭い概念へと入れ子になっている。「工作物」というもっとも広い枠の中に、土地に定着し屋根・柱(壁)を持つ「造営物」がある。その造営物に電気設備を施設した1棟・1単位が「電気使用場所」で、その電気使用場所を含む構内全体(発電所・変電所・開閉所を除く)が「需要場所」だ。「引込線」は、この需要場所の外から中へ電気を引き込む電線を指す。工場の敷地を思い浮かべると、工場の建物1棟が「電気使用場所」、複数の建物を含む敷地全体が「需要場所」、電柱から敷地に引き込まれる電線が「引込線」、という対応関係になる。

需要場所の定義に「発電所、変電所及び開閉所以外のもの」という除外がついているのは、避雷器の施設義務のところで見た「発電所・変電所側」と「需要場所側」という2つの区分と対応している。発電所・変電所自体は、電気を使う場所ではなく電気をつくる・送る場所なので、需要場所には含まれない、と整理すると覚えやすい。

一般用電気工作物の調査義務 — 電線路維持運用者が定期的に見に来る仕組み

ここまでは事業用電気工作物側の義務(保安規程・主任技術者・技術基準適合維持)を見てきた。では、一般家庭や小規模店舗の一般用電気工作物には、誰も安全を確認する仕組みがないのかというと、そうではない。

一般用電気工作物と直接電気的に接続する電線路を維持し、運用する者(電線路維持運用者。実務上は一般送配電事業者等が典型)は、その一般用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合しているかどうかを調査しなければならない(電気事業法57条)。ただし、その一般用電気工作物の設置場所に立ち入ることにつき、その所有者又は使用者の承諾を得ることができないときは、この限りでない。

電線路維持運用者は、この調査を自ら行うほか、委託を受けた登録調査機関に行わせることもできる。調査の結果、電気工作物が技術基準に適合していないと認めるときは、遅滞なく、その技術基準に適合するようにするためとるべき措置及びその措置をとらなかった場合に生ずべき結果を、その所有者又は使用者に通知しなければならない。

57条の調査は「事業用電気工作物の維持義務(39条)」の一般用電気工作物版だと捉えると位置づけやすい。ただし主体が逆になる。39条は設置者自身が技術基準適合を維持する義務であるのに対し、57条は電線路維持運用者(電力会社側)が、電気を供給している相手の一般用電気工作物を定期的にチェックしに来る義務だ。調査の対象範囲・頻度の具体的な運用は、経済産業省令・実務上の運用基準の最新版で確認すること。

電材商社の立場では、一般家庭向けの分電盤・漏電遮断器の更新提案の場面で、この調査の存在を知っていると説明の説得力が増す。「電力会社側が定期的にチェックしている設備だからこそ、老朽化した機器は指摘を受ける前に更新しておいたほうがよい」という提案は、この57条の仕組みを根拠にできる。

電気の需給がひっ迫したとき — OCCTOと経済産業大臣、それぞれの出番

ここまでは、個々の設置者が負う保安体制の義務(保安規程・主任技術者)を見てきた。視点を変えて、電力システム全体で電気の需給バランスが崩れそうになったとき、電気事業法はどのような仕組みを用意しているのか。

電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、電気事業法に基づいて設立された認可法人で、一般送配電事業者・送電事業者・配電事業者・特定送配電事業者・小売電気事業者等が会員として加入している。電力の広域的な運用を調整する、いわば電気事業者の連合組織にあたる。

会員である事業者の電気の需給状況が悪化し、又は悪化するおそれがある場合において、OCCTOが必要と認めるときは、OCCTOの業務規程で定めるところにより、会員に対し、相互に電気の供給をすることや電気工作物を共有することなど、需給状況を改善するための措置をとるよう指示できる。猛暑・厳寒による需要の急増や、特定エリアの発電設備の計画外停止といった場面で、エリアをまたいだ電気の融通を促す役割を担っている。

OCCTOの指示は、あくまで会員である電気事業者間の調整だ。会員以外の一般消費者に対して直接何かを命じる仕組みではないし、事業許可の取消しのような行政処分でもない。「需給がひっ迫したら、まず事業者同士の融通で乗り切る」という、比較的平時に近い場面での調整役だと位置づけると理解しやすい。

一方、経済産業大臣にも別の権限が用意されている。災害等により電気の安定供給の確保に支障が生じ、又は生じるおそれがある場合において、公共の利益を確保するために特に必要かつ適切であると認めるときは、経済産業大臣は電気事業者に対し、電気の供給を他のエリアに行うことなど、電気の安定供給の確保を図るために必要な措置をとることを命じることができる。

OCCTOによる会員間の調整と、経済産業大臣による命令は、混同しやすいが別の制度だ。OCCTOの指示は「需給状況が悪化し、又は悪化するおそれがある」という、比較的平時に近い場面で、事業者の連合組織が会員同士の融通を促す仕組み。経済産業大臣の命令は「災害等により安定供給の確保に支障が生じる」という、より重い非常時に、国が電気事業者へ直接措置を命じる最終的な担保措置にあたる。どちらも「電気を融通させる」という結果は似ていても、動く主体と場面の緊急度が異なると区別しておく。

台風や大規模地震で発電・送電設備が損壊し、特定のエリアで電気が不足する——というニュースを見たとき、その裏側でOCCTOの会員間調整や、場合によっては経済産業大臣の命令という仕組みが動いている、という理解を持っておくと、電力インフラ全体の保安体制を立体的に捉えられるようになる。

電気の使用制限等(電気事業法27条)— 需要家側に直接命じる、第3の柱

ここまで見てきたOCCTOの会員間調整と、経済産業大臣による電気事業者への安定供給確保命令は、いずれも電気事業者(供給側)を名宛人にする制度だった。ところが電気事業法には、需給ひっ迫時の対応としてもう1つ、需要家側(電気を使う側)を直接の名宛人にする制度がある。それが27条「電気の使用制限等」だ。

経済産業大臣は、電気の需給の調整を行わなければ電気の供給不足が国民経済及び国民生活に悪影響を及ぼし、公共の利益を阻害するおそれがあると認めるときは、使用電力量の限度、使用最大電力の限度、用途若しくは使用を停止すべき日時を定めて、電気事業者から電気の供給を受ける者(需要家)に対し、直接その電気の使用を制限すべきことを命ずることができる。

OCCTOの指示(会員である電気事業者への調整)、経済産業大臣の安定供給確保命令(電気事業者への命令)、そして27条の使用制限(需要家への命令)——この3つを並べると、名宛人が「電気事業者・電気事業者・需要家」という順で最後だけ変わっていることに気づく。需給ひっ迫時の制度を考えるときは、まず「誰に対して命じる制度か」を確認する癖をつけると、27条を供給側の制度と取り違えにくい。

27条が実際に発動された代表例が、2011年(平成23年)の東日本大震災後の対応だ。東北地方太平洋沖地震で多くの発電所が運転を停止し、東京電力・東北電力管内で電力供給力が大幅に低下したことを受け、同年5月、両社の受持区域における契約電力500kW以上の大口需要家を対象に、電力使用制限令が発動された。使用最大電力を前年同期比で一定割合削減することが義務づけられ、違反した場合には罰則(罰金)も定められている。1973年の石油危機以来、実に38年ぶりの発動だった。

27条の使用制限は、小規模事業用電気工作物の届出免除や外部委託承認のような「平時の体制」の話とは性格が違う。あくまで電気の需給が国民経済・国民生活に悪影響を及ぼしかねないという、非常時に近い場面で発動される制度だ。契約電力500kW以上という対象範囲や、削減率・期間といった発動の具体的な条件は、そのときどきの需給状況に応じて経済産業省が個別に定めるため、詳細は電気事業法及び関連省令の最新の内容で確認する必要がある。

制御盤や受変電設備を扱う電材商社の立場でも、需要家側が使用制限の直接の名宛人になりうるという理解を持っておくと、非常時のデマンド監視装置や自家発電設備の提案が、単なる省エネ商材ではなく、法令上の使用制限に備えるための実務的な備えでもある、という説明ができるようになる。

冒頭の「なぜ片方は主任技術者が必要で、もう片方は不要だったのか」——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 小規模事業用電気工作物を「保安規程も主任技術者も不要=規制の緩い区分」と誤解させる

    なぜ引っかかる免除されているのが42条・43条という「体制」の義務だけであることを見落とし、規制そのものが軽いと錯覚しやすい

    見破り方免除されるのは保安規程の届出と主任技術者の選任の2つだけで、技術基準(電気設備技術基準)に適合させる義務そのものはなくならない、と条文の役割で切り分けて覚える

  2. 「事業用電気工作物」という名前から、電力会社が電気を売るための設備だけを指すと誤解させる

    なぜ引っかかる「事業用」という語感から、電力会社の発電所・変電所のような設備だけをイメージしやすく、自社工場の受電設備が含まれることを見落とす

    見破り方事業用電気工作物は「一般用電気工作物以外の全部」という裏返しの定義であることを思い出す。高圧受電の工場・ビルの自家用設備も、この事業用電気工作物に含まれる

  3. 主任技術者は必ず有資格者を正社員として雇わなければならないと思わせ、外部委託の制度を見落とさせる

    なぜ引っかかる「主任技術者を選任する=有資格者を社員として抱える」という思い込みが実務未経験者には強い

    見破り方一定の要件を満たせば、外部委託承認(電気管理技術者等への委託)により、専任の主任技術者を社内に置かずに運用できる制度があることを覚えておく。委託の可否を分ける詳細な要件は、経済産業省が定める運用上の内規で細かく決められているため、数値の細部は最新の内規で確認する

  4. 蓄電池(EV)から電気を供給する設備を見て、「発電設備が同一構内にある=一般用電気工作物ではありえない」と即断させる

    なぜ引っかかる一般用電気工作物の定義が「小規模な発電設備以外の発電設備と同一構内に設置されていないこと」を条件にしているため、EVからの給電も発電設備の一種のように見え、無条件で事業用になると錯覚しやすい

    見破り方V2H設備は、対地電圧の制限・非接地・絶縁変圧器・自動遮断装置といった感電・火災防止の条件を満たすことを前提に、例外的に一般用電気工作物の範囲内で扱われる仕組みがあることを思い出す。条件付きの例外であって、EVからの給電がすべて事業用になるわけではない

  5. 第二種電気工事士の免状があれば、自家用電気工作物の工事にも従事できると誤解する

    なぜ引っかかる「電気工事士」という同じ名称でくくられるため、第一種・第二種の違いが単なる上位互換だという直感で片付けられ、自家用電気工作物という対象の違いを見落としやすい

    見破り方第二種電気工事士が従事できるのは一般用電気工作物等の工事に限られ、自家用電気工作物の工事には原則従事できないと確認する。自家用電気工作物の工事に従事するには第一種電気工事士(または対象範囲に応じた認定電気工事従事者)の資格が必要になる

  6. 48条の工事計画届出時の技術基準適合(『設置』の場面)と、39条の維持義務(『使用中ずっと』の場面)を混同する

    なぜ引っかかるどちらも『技術基準に適合させる』という共通の言葉が出てくるため、設置時点だけの一回限りの義務だと誤解しやすい

    見破り方39条の主語は『維持しなければならない』であり、使用開始後も継続的に技術基準適合状態を保つ義務だと確認する。設置時の適合確認は使用前自主検査等が別途担い、39条はその後もずっと続く維持義務だと役割を分ける

  7. 電気工事業法の『登録』を、電気工事士法の免状交付や電気事業法の保安規程届出と混同する

    なぜ引っかかる『電気』『工事』『業』という似た言葉が並ぶ法律が複数あるため、個人が持つ資格の話と、会社が電気工事業を営むための手続きの話を同じ枠で覚えてしまいやすい

    見破り方電気工事士法=『誰が工事の作業をしてよいか(個人の資格)』、電気工事業法=『電気工事業を営む会社が満たすべき手続き(登録・通知)』、電気事業法=『電気工作物を持つ者が負う保安体制の義務(保安規程・主任技術者)』という3つの法律の役割を並べて区別する

  8. 電気用品安全法を、電気工事士法や電気事業法と同じ『誰が工事をしてよいか・誰が保安を監督するか』という『人』を規律する法律だと混同する

    なぜ引っかかる『電気』『安全』という似た言葉の並びから、他の電気関連法と同じく人・資格を規律する法律だと錯覚しやすい

    見破り方電気用品安全法が規律する対象は『人』ではなく『電気用品(製品)』そのものだと確認する。電気工事士法は誰が工事してよいか、電気事業法は電気工作物の設置者の保安体制、電気用品安全法は電気用品自体の安全基準、というように規律の対象がそれぞれ異なると整理する

  9. 特定電気用品と特定電気用品以外の電気用品のマークの形状(菱形の<PS>Eと丸形の(PS)E)を逆に覚える、あるいは両者が同じマークだと思い込む

    なぜ引っかかるどちらも『PSE』という同じ文字列を含むマークのため、形状の違いに注意が向きにくい

    見破り方危険性がより高い特定電気用品には、より目立つ菱形の<PS>Eマーク、それ以外の電気用品には丸形の(PS)Eマークが使われると、危険度の高さとマークの形状をセットで覚える

  10. 電力需給がひっ迫した場面での対応を、常に経済産業大臣が直接命令する制度だけだと思い込む

    なぜ引っかかる『需給ひっ迫=国が命じて解決する』という単純なイメージが先に立つと、電気事業者の会員組織であるOCCTOが平時から調整役を担っていることを見落としやすい

    見破り方電気の需給状況が悪化し、又は悪化するおそれがある場合には、まずOCCTOが会員(小売電気事業者・一般送配電事業者等)に対し、相互融通や電気工作物の共有といった措置をとるよう指示する仕組みがある。経済産業大臣による命令は、災害等により安定供給の確保に支障が生じる場合の、より重い場面で登場すると場面を区別する

  11. 需給ひっ迫時の対応を、OCCTOによる会員間調整と経済産業大臣による電気事業者への命令の2種類だけだと思い込み、経済産業大臣が需要家に直接使用制限を命じる27条の制度を見落とす

    なぜ引っかかるOCCTOの指示も経済産業大臣の安定供給確保命令(40条系統)も、いずれも電気事業者(供給側)を名宛人にしているため、『需給ひっ迫時の対応=供給側への働きかけ』という枠組みで理解が完結しやすく、需要家側(電気を使う側)に直接命じる制度があることに気づきにくい

    見破り方需給ひっ迫時の制度を『誰に対して命じるか(名宛人)』で整理する。OCCTOの指示・経済産業大臣の安定供給確保命令はいずれも電気事業者側が名宛人であるのに対し、電気事業法27条『電気の使用制限等』は、電気事業者から電気の供給を受ける需要家側を直接の名宛人とする、数少ない制度だと区別する

  12. 57条の一般用電気工作物の調査義務を、39条の事業用電気工作物の維持義務と同じ主体(設置者自身)が負うものだと誤解する

    なぜ引っかかる『技術基準に適合しているかどうか』という共通の言葉が出てくるため、事業用・一般用のどちらも設置者自身が確認するものだと思い込みやすい

    見破り方主語を確認する。39条は事業用電気工作物の『設置者』自身が負う継続的な維持義務であるのに対し、57条は一般用電気工作物と接続する電線路を維持・運用する者(電力会社側)が、電気を供給している相手の設備を定期的に調査しに来る義務であり、義務を負う主体が逆になっている

  13. 「需要場所」と「電気使用場所」を同じ意味の言葉として扱う

    なぜ引っかかるどちらも『電気を使う場所』を指す言葉に見えるため、範囲の違い(1棟・1単位の話か、構内全体の話か)を意識せずに読み流しやすい

    見破り方電気使用場所は『電気を使用するための電気設備を施設した、1の建物又は1の単位をなす場所』という1棟・1単位の狭い概念、需要場所は『電気使用場所を含む1の構内又はこれに準ずる区域(発電所・変電所・開閉所を除く)』というそれより広い概念だと、包含関係で区別する

参考文献・出典

理解度チェック(24問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、24問で確認しよう。 内訳は基本12問・応用6問・ひっかけ6問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 24 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 電気工作物は電気事業法38条で「一般用電気工作物」と、それ「以外」の「事業用電気工作物」に大別される(裏返しの定義)
  2. 事業用電気工作物は、電気事業(一般送配電事業等)の用に供する電気工作物と、それ以外の「自家用電気工作物」に分かれる(38条4項)。高圧受電の工場・ビルの需要設備は、実務上ほぼ自家用電気工作物にあたる
  3. 小規模事業用電気工作物(太陽光10kW以上50kW未満、風力20kW未満)は事業用電気工作物の一種だが、保安規程の届出(42条)と主任技術者の選任(43条)は除外される。ただし技術基準に適合させる義務そのものは残る
  4. 一般用電気工作物の要件となる『小規模な発電設備』の出力上限(太陽光50kW未満、風力20kW未満等)は、同一構内に複数の該当設備が電気的に接続されている場合、個々の設備ごとではなく合算した出力で判定する。合算出力が50kW以上になれば、その時点で小規模な発電設備の範囲を超え、一般用電気工作物ではなくなる(事業用電気工作物として扱われる)
  5. 事業用電気工作物を設置する者には、原則として保安規程の届出(42条)と主任技術者の選任(43条)の2つの義務が課される。電験三種はこの主任技術者になるための国家資格
  6. 主任技術者は原則として自社選任だが、一定の要件を満たせば外部委託承認(電気管理技術者等への委託)による運用が認められている(43条2項ほか)
  7. 電気工事士法は「誰が電気工事の作業をしてよいか」を、対象の電気工作物と作業内容に応じて資格ごとに区分する。第二種電気工事士は一般用電気工作物等の工事に限られ、自家用電気工作物の工事には原則従事できない。第一種電気工事士は自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)と一般用電気工作物等の両方に従事できる。認定電気工事従事者は自家用電気工作物のうち600V以下で使用する部分(簡易電気工事)に限り従事でき、ネオン工事・非常用予備発電装置工事はそれぞれ特種電気工事資格者の認定を受けた者でなければ従事できない
  8. EV(電気自動車)を蓄電池として住宅等に給電するV2H(Vehicle to Home)設備は、素朴に考えると発電設備に近く事業用電気工作物になりそうだが、電気自動車等の出力を10kW未満(かつ低圧幹線の許容電流以下)に制限する・対地電圧を原則150V以下に抑える・直流側を非接地とする・交流側に絶縁変圧器を施設する・地絡や電線切断時に自動遮断する装置を設けるなど、感電・火災を防ぐ条件を満たせば一般用電気工作物の範囲内で扱われる(電気設備技術基準の解釈第199条の2)
  9. 事業用電気工作物を設置する者は、その事業用電気工作物を主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない(電気事業法39条1項)。これは設置時に一度満たせば足りる義務ではなく、使用している間ずっと継続する義務。主務大臣が技術基準に適合していないと認めるときは、設置者に対しその技術基準に適合するよう修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる(技術基準適合命令、40条)
  10. 電気工事業の業務の適正化に関する法律(電気工事業法)は、電気工事士法や電気事業法とは別に、電気工事業を「営む者」に登録・通知の手続きを義務づける法律。登録を受けて電気工事業を営む者を「登録電気工事業者」、自家用電気工作物のみに係る電気工事業を営む旨を通知して営む者を「通知電気工事業者」と呼ぶ。登録・通知いずれも、営業所が2以上の都道府県にわたる場合は経済産業大臣、1つの都道府県内にとどまる場合は都道府県知事が窓口になる(具体的な要件は最新の電気工事業法及び関連規則で確認すること)
  11. 電気用品安全法は、電気工事士法・電気工事業法・電気事業法とは異なり「人」や「事業者」ではなく「電気用品」そのものを規律する法律。電気用品は、構造又は使用方法その他の使用状況からみて特に危険又は障害が発生するおそれが多く政令で個別に指定される「特定電気用品」と、それ以外の「特定電気用品以外の電気用品」に区分される。特定電気用品には菱形の<PS>Eマーク、特定電気用品以外の電気用品には丸形の(PS)Eマークが、技術基準適合の証として表示される。電気工事士は、電気工作物の設置又は変更の工事に電気用品を使用する場合、経済産業省令で定める方式による記号(これらのマーク等)が表示されたものでなければ使用してはならない
  12. 電力広域的運営推進機関(OCCTO:電力広域的運営推進機関、Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators)は、電気事業法に基づき設立された認可法人で、一般送配電事業者・送電事業者・配電事業者・特定送配電事業者・小売電気事業者等が会員として加入している。会員の電気の需給状況が悪化し、又は悪化するおそれがある場合において、必要と認めるときは、OCCTOの業務規程で定めるところにより、会員に対し、相互に電気の供給をすることや電気工作物を共有することなどの措置をとるよう指示できる
  13. 経済産業大臣は、災害等により電気の安定供給の確保に支障が生じ、又は生じるおそれがある場合において、公共の利益を確保するために特に必要かつ適切であると認めるときは、電気事業者に対し、電気の供給を他のエリアに行うことなど、電気の安定供給の確保を図るために必要な措置をとることを命じることができる。OCCTOによる会員間の調整(平時に近い需給ひっ迫への対応)と、経済産業大臣による命令(災害等の非常時における最終的な担保措置)は、対応する場面の緊急度と主体が異なる、別の制度である
  14. 電気事業法27条「電気の使用制限等」は、OCCTOによる会員間調整・経済産業大臣による電気事業者への安定供給確保命令とは異なる、第3の需給ひっ迫対応の制度。経済産業大臣は、電気の需給の調整を行わなければ電気の供給不足が国民経済及び国民生活に悪影響を及ぼし公共の利益を阻害するおそれがあると認めるときは、使用電力量の限度、使用最大電力の限度、用途若しくは使用を停止すべき日時を定めて、電気事業者から電気の供給を受ける者(需要家)に対し、直接その電気の使用を制限すべきことを命ずることができる。OCCTOの指示や40条・経済産業大臣による安定供給確保命令がいずれも供給側(電気事業者)を名宛人にしているのに対し、27条は需要家側を直接の名宛人とする点が異なる。2011年の東日本大震災後には、東京電力・東北電力管内の大口需要家(契約電力500kW以上)を対象に実際に発動された実績がある
  15. 一般用電気工作物と直接電気的に接続する電線路を維持し、運用する者(電線路維持運用者。実務上は一般送配電事業者等が典型)は、その一般用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合しているかどうかを調査する義務を負う(電気事業法57条)。ただし、その設置場所に立ち入ることにつき所有者又は使用者の承諾を得ることができないときは、この限りでない。調査は電線路維持運用者自身が行うほか、委託を受けた登録調査機関に行わせることもでき、技術基準に適合していないと認めるときは、その適合のためにとるべき措置及びその措置をとらなかった場合に生ずべき結果を、遅滞なく所有者又は使用者に通知しなければならない
  16. 電気設備技術基準の解釈は、電気工作物が施設される場所について、広い概念から狭い概念へ入れ子になった用語を定義している。「工作物」は人により加工された全ての物体。「造営物」は工作物のうち土地に定着するものであって屋根及び柱又は壁を有するもの。「電気使用場所」は電気を使用するための電気設備を施設した1の建物又は1の単位をなす場所。「需要場所」は電気使用場所を含む1の構内又はこれに準ずる区域であって、発電所、変電所及び開閉所以外のもの。「引込線」は架空引込線及び需要場所の造営物の側面等に施設する電線であって、当該需要場所の引込口に至るもの
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