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法規 ・ 2 / 12

電気設備技術基準の全体構造

読み終えると、こうなる

「電技第◯条は…と定める」という条文の言い回しを見たとき、それが目的を述べているのか、具体的な数値を定めているのかを見分けられるようになる

  • 電気設備技術基準(省令)と電気設備の技術基準の解釈(解釈)のどちらが具体的な数値基準を定めているかを言い当てて電技の制定根拠が電気事業法であることを電気工事士法や電気用品安全法と混同せずに指させ、解釈に定められた工法以外の方法でも同等以上の性能があれば技術基準に適合しうるという性能規定の考え方を説明できる
  • 屋内に施設する電動機の過負荷保護、電路の必要箇所に施設する過電流遮断器の目的、電気使用場所の配線に関する基準(裸電線の使用制限・屋内電路の対地電圧の制限・低圧用配線器具の施設基準・金属ダクト工事の施設基準)を、それぞれの原則と例外条件から判定できる
  • サイバーセキュリティの確保が電技(省令)自体に明文の義務として定められていること、発電用風力設備には電技とは別の専用省令が、風車本体の構造安全性等に加えて風車を支持する工作物(タワー等)の強度要件・小規模設備における昇塔防止措置も定めていること、変圧器・開閉器等の電磁誘導作用による人の健康影響の防止(磁束密度に関する規制の考え方)、粉じん・可燃性ガス・危険物といった特殊場所における施設制限を、それぞれどのような性能規定として電技に定められているか説明でき、可燃性ガス等が存在する場所の屋内配線に電技解釈が求める具体的な工事方法(金属管工事・ケーブル工事の使用条件)も区別できる
  • 電技第5条が定める『電路は大地から絶縁しなければならない』という原則と、構造上やむを得ない場合や落雷等の異常発生時に限って接地その他の措置で足りるとする例外を区別でき、電技第10条・第11条が定める『電気設備の接地』という保安原則(なぜ接地をするのか)を、A種〜D種の接地工事の各論とは別のレイヤーの規定として説明できる
考えてみよう

実務では「D種接地工事の接地抵抗値は100Ω以下」というように、具体的な数値を基準に判断する場面が多い。ところが「電気設備に関する技術基準を定める省令」(電技)そのものを読んでみると、こうした具体的な数値がほとんど出てこない。

100Ωという数字は、いったいどこで決められているのか。そして、なぜ電技には数値がほとんど書かれていないのか。

このトピックを読み終えるころには、電技という法令の全体像——どこまでを省令が決め、どこからを別の文書が引き受けているのか——を、自分の言葉で説明できるようになっている。

種明かしは、電技が「性能規定」と呼ばれる書き方をしている、という点にある。電技は「何を達成すべきか」という目的だけを定め、「どうやって達成するか」という具体的な数値・仕様は、別の文書に委ねている。

電技は「目的」を定める省令 — 数値は書かれていない

電技(電気設備に関する技術基準を定める省令)は、電気事業法第39条・第56条の規定に基づいて定められた省令だ。第4条は電技全体の基本原則にあたる条文で、次のように定めている。

電気設備は感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがないように施設しなければならない。

読めば分かるとおり、この条文には「何Ω以下」「何mm以上」といった数値が一切出てこない。電技のほとんどの条文は、この第4条と同じ書き方をしている——達成すべき状態(性能)だけを定め、その手段は指定しない。 これを性能規定と呼ぶ。

電技の条文を読んで「具体的にどうすればいいのか分からない」と感じたら、それは読み方として正しい。電技(省令)は目的を示すだけで、手段までは書いていない。手段を知りたければ、次に見る「解釈」を読む必要がある。

電技解釈 — 目的を実現する「具体的な仕様書」

電技が定めた目的を、実際の数値・工法にまで落とし込んだものが「電気設備の技術基準の解釈」(電技解釈)だ。D種接地工事の接地抵抗値100Ω以下、金属管工事の接地省略条件(長さ4m以下など)といった、現場で参照する具体的な数値の大半は、この解釈に書かれている。

電技解釈は法律や省令そのものではなく、経済産業省が示す通達に近い位置づけの文書だ。とはいえ、電技解釈どおりに施設すれば、電技が求める目的(感電・火災等のおそれがないこと)を満たしているとみなされるため、実務ではこちらが最も頻繁に参照される。

省令(電技)と解釈(電技解釈)の関係は、**目的地と、そこへ行く道順**の関係に近い。省令は「安全な場所に着け」という目的地だけを示し、解釈は「この道を通れば確実に着ける」という代表的な道順を示している。道順どおりに歩けば目的地に着くが、目的地に着けるなら別の道でもよい——次の見出しで扱う「同等以上の効力」の考え方は、ここから来ている。

解釈は「唯一の道」ではない — 性能規定という考え方

ここが試験で誤解されやすい点だ。電技解釈に定められた工法どおりに施工しなければ、必ず技術基準違反になる——というわけではない。電技解釈の冒頭には、解釈が定める規定と同等以上の効力があると認められる方法により電気設備を施設する場合は、その規定によらなくてもよい、という趣旨の定めがある。

つまり解釈は「これに従っていれば安全だと認められる、代表的な1つの方法」であって、絶対に守らなければならない唯一の手段ではない。目的地(電技第4条が求める安全な状態)に別の道でも到達できることを示せれば、解釈と異なる工法でも技術基準には適合する。

この仕組みが効いてくるのは、新しい材料や工法が登場したときだ。法律や省令そのものを改正するには時間がかかるが、解釈は経済産業省の判断で改正できる。新工法が電技の目的を満たすと確認されれば、解釈側に条文を追加するだけで対応が済む。省令=目的、解釈=具体的な仕様、という役割分担があるからこそ、電気の世界は技術の進歩に法令が追いつける形になっている。

電圧区分という「土台」— 第2条

電技のもう1つの重要な条文が、第2条の電圧区分だ。電技は電圧を低圧・高圧・特別高圧の3つに区分しており、この区分は交流と直流で境界の数値が異なる。

区分交流(AC)直流(DC)
低圧600V以下750V以下
高圧600V超 7,000V以下750V超 7,000V以下
特別高圧7,000V超7,000V超

この区分自体は数値を伴う定義であり、性能規定の例外にあたる。電技以降のほぼすべての条文——接地工事の種類、絶縁耐力試験、離隔距離——は、この電圧区分のどこに当たるかによって、適用される基準が変わる。法規科目の各トピックを読むときは、まず対象の設備がどの電圧区分にあるかを確認する癖をつけると、条文のつながりが見えやすくなる。

制御盤や受変電設備を扱う実務では、メーカーのカタログや工事仕様書に「電技解釈第◯条準拠」という表記を見かけることがある。この表記の意味も、省令と解釈の二階建て構造が分かれば読み解ける。カタログが根拠にしているのは、たいてい具体的な数値基準を持つ解釈側の条文だ。

電路の絶縁の原則 — 第5条

電圧区分(第2条)と並んで、電技の前段に置かれたもう1つの基本条文が、第5条の電路の絶縁の原則だ。

電路は、大地から絶縁しなければならない。

これだけを読むと、「電気の通り道は、大地とは常に切り離しておくべきもの」という単純な原則に見える。実際、感電・漏電による火災のリスクを抑えるうえで、電路をむやみに大地と電気的につなげないというのは、まっとうな出発点だ。

だが第5条には、次のようなただし書きの例外がある。

  • 構造上やむを得ない場合であって、通常予見される使用形態を考慮し危険のおそれがないとき
  • 混触による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するため、接地その他の必要な措置を講ずるとき
この例外を知らずに「電路は絶対に大地から絶縁されていなければならない」とだけ覚えると、これまで見てきたA種〜D種の接地工事——とりわけ、変圧器の低圧側中性点をあえて大地と結び付けるB種接地工事——が、絶縁の原則と矛盾しているように感じてしまう。実際にはB種接地工事は、まさにこの第5条のただし書きが想定する「危険を回避するために接地その他の必要な措置を講ずる」場面にあたる。原則(絶縁)と、その原則を破ってでも安全を確保する例外(接地)が、同じ第5条という1つの条文の中に、セットで書かれていると理解しておく。

「電路は絶縁が原則、接地は例外的な安全策」という向きを押さえておくと、なぜ接地工事という制度がわざわざ用意されているのか、その存在理由そのものが腑に落ちやすくなる。接地は電路の欠陥ではなく、原則の裏にある、計算された例外なのだ。

接地の保安原則 — 第10条・第11条

電技第5条が「電路は絶縁するのが原則」という電路側のルールだったのに対し、電技にはもう1つ、「接地」そのものについての保安原則を定める条文がある。第10条(電気設備の接地)と第11条(電気設備の接地の方法)だ。

(第10条)電気設備の必要な箇所には、異常時の電位上昇、高電圧の侵入等による感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがないよう、接地その他の適切な措置を講じなければならない。ただし、電路に係る部分にあっては、第五条第一項の規定によるところによらなければならない。

(第11条)電気設備に接地を施す場合は、電流が安全かつ確実に大地に通ずることができるようにしなければならない。

この後の各トピックで扱うA種〜D種の接地工事(電気設備技術基準の解釈第17条系統)は、対象設備の電圧区分に応じて接地抵抗値や接地線の太さを具体的に定める各論だ。第10条・第11条は、その各論の一段上にある、「そもそもなぜ接地をするのか」という土台の原則にあたる。

第10条・第11条をこう読み解くと、A〜D種の接地工事がなぜそのように設計されているかが腑に落ちやすい。第10条は「異常時の電位上昇や高電圧の侵入から、感電・火災等を防ぐために接地その他の措置を講じる」という**目的**を、第11条は「接地を施すなら、電流が安全かつ確実に大地に流れるようにする」という**実効性**を、それぞれ定めている。B種接地工事の抵抗値が1線地絡電流Igから逆算する式で決まっていたのも、A種接地工事の接地線が一定以上の太さ・強度を求められるのも、突き詰めれば「電流を安全かつ確実に大地に通ずる」という第11条の原則を、対象ごとの条件に応じて数値化したものだと位置づけられる。

第10条にはただし書きがあり、電路に係る部分(電路そのものに接地を施す場合)は第5条第1項の規定によるとされている。B種接地工事のように電路(変圧器の低圧側中性点)に接地を施す措置は第5条のただし書きの例外にあたり、機械器具の金属製外箱のように電路そのものではない部分への接地は第10条が直接の根拠になる——第5条と第10条は、対象(電路そのものか、それ以外の電気設備の部分か)によって役割を分担している、と整理すると条文の重なりを混乱せずに読める。

接地の話をA〜D種の抵抗値の暗記だけで済ませてしまうと、この土台の原則を見落としやすい。制御盤・キュービクルの接地線を見たとき、「なぜここに接地が必要なのか」を、対象設備の電圧区分(A〜D種のどれか)という各論だけでなく、「感電・火災等を防ぐため」「電流を安全かつ確実に大地に通ずるため」という第10条・第11条の原則にまでさかのぼって説明できると、単なる暗記を超えた理解になる。

電技解釈が定める安全対策の具体例 — 燃料電池発電設備と非常用予備電源

性能規定という考え方を踏まえたうえで、電技解釈が実際にどのような安全対策を定めているか、 身近な例を2つ見ておこう。どちらも「装置を付けろ」「分離しろ」という設置・構造上の要求で、 数値基準とは違う形で性能規定を実現している例になる。

燃料電池発電設備(家庭用・業務用の燃料電池コージェネレーションなど)は、発電の仕組み上、 水素を扱う設備であるため、運転状態を常時把握できることが安全上重要になる。電技解釈は、 燃料電池発電設備等の施設に運転状態を表示する装置の設置を求めている——異常が起きたときに、 現場や監視室で状態を把握できるようにするための規定だ。対象になるのは燃料電池及び これに附属する改質系統設備を持つ燃料電池発電設備であり、家庭用の小規模なものだから 一律に除外されるわけではない。設備の出力規模や施設場所に応じた適用除外の有無など、 対象範囲の細部は電気設備技術基準の解釈の最新版で確認する必要がある。

「燃料電池発電設備=家庭用のエネファーム程度の小規模な設備」という印象だけで捉えると、 運転状態を表示する装置のような保安上の義務が及ばないと思い込みやすい。だが電技解釈が 求めているのは、水素という可燃性のガスを扱う設備である以上、規模の大小にかかわらず 運転状態を把握できるようにするという、性能規定としての要求だ。対象設備の具体的な出力・ 圧力による区分(適用除外の有無を含む)は改正が入りやすい分野でもあるため、実務では 必ず最新の解釈を確認する。

非常用予備電源(自家発電設備など、停電時に切り替えて使う電源)についても、電技解釈は 独自の安全対策を定めている。常用電源(通常使う電力会社からの電源)側の電路と、 非常用予備電源側の電路とを、電気的に接続しないよう分離することを求める規定がその代表例だ。 もし両者が接続されたままだと、停電復旧時に非常用電源からの電気が電力会社側の配電線へ 逆流し、復旧作業をしている作業者を感電させるおそれがある——このような事故を防ぐための 分離義務、と理解すると腑に落ちる。

この分離義務は、非常用予備電源が施設される場所を問わず一律にかかる、という単純な話ではない。 需要場所(工場・ビル等の構内)に施設する非常用予備電源のように、常用電源と系統連系(並列運転) させる構成をとる場合には、逆充電や再送電による事故を防ぐための保護装置を別途講じることを 条件に、電気的な分離をそのままの形では求めない扱いが認められる場合がある。どのような 施設場所・接続構成であれば、どのような保護措置とセットで分離義務の例外が認められるのかという 具体的な条件は、電気設備技術基準の解釈の該当条文(非常用予備電源の施設に関する規定)の 最新版で必ず確認すること。

非常用予備電源の分離義務を「常に無条件で常用電源側の電路から切り離す」という一律の規定だと 覚えると、需要場所での系統連系構成のような例外的な扱いを見落とす。分離が求められるのは あくまで、非常用予備電源からの電気が意図せず常用電源側(電力会社側の配電線を含む)へ 逆流し、復旧作業者等を感電させるリスクを防ぐためであり、そのリスクを別の保護装置で 確実に防げる構成であれば、施設場所や接続方式に応じた取り扱いの違いが生まれうる、という 視点を持っておくと、「分離=一律禁止」という単純化した理解にとどまらずに済む。

もう1つ、性能規定が「設置義務」という形で現れる代表例が、電動機の過負荷保護装置だ。 屋内に施設する電動機には、電動機が焼損するおそれがある過電流を生じた場合に、自動的に これを阻止し、又はこれを警報する装置を設けることが原則求められる。巻線が過電流で 発熱・焼損する事故を防ぐための規定で、これも電技第4条の「感電・火災等のおそれがない ように施設する」という目的を、具体的な装置の設置義務に落とし込んだ形といえる。

ただし、次のいずれかに該当する場合は、この保護装置の設置を省略できる。

  • 電動機を運転中、常時、取扱者が監視できる位置に施設する場合
  • 電動機の構造上又は負荷の性質上、その電動機の巻線を焼損する過電流を生じるおそれがない場合
  • 電動機が単相のものであって、その電源側電路に施設する過電流遮断器の定格電流が15A(配線用遮断器にあっては20A)以下の場合
  • 電動機の出力が0.2kW以下の場合
「原則すべての屋内電動機に保護装置が要る」という一文だけを覚えると、この4つの除外条件を見落とす。特に3つ目の条件は、電動機の出力の大小にかかわらず、電源側電路の遮断器の定格電流という別の基準だけで判定される点に注意する。配線用遮断器かそれ以外の遮断器かで、15Aと20Aという2つの数値が使い分けられていることもあわせて覚えておくと、出題の細部で足をすくわれにくい。
どちらも、電技第4条が求める「感電・火災等のおそれがないように施設する」という目的(性能)を、 解釈が具体的な設置義務・分離義務という形に落とし込んだ例といえる。細かい適用条件は、 電気設備技術基準の解釈の該当条文で必ず確認すること。

もう1つ、性能規定が「自動的に電路を遮断する装置」という形で現れる例が、蓄電池の保護装置だ。発電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所に施設する蓄電池(常用電源が停電したとき、又は電圧が低下したときの非常用予備電源として用いるものを除く)には、次のいずれかの異常が生じた場合に、自動的にこれを電路から遮断する装置を施設することが求められる。

  • 蓄電池に過電圧が生じた場合
  • 蓄電池に過電流が生じた場合
  • 制御装置に異常が生じた場合
  • 内部温度が高温になるものにあっては、断熱容器の内部温度が著しく上昇した場合
この4つの異常は、いずれも蓄電池そのものが熱暴走・破損に至る前段階の兆候だと捉えると整理しやすい。過電圧・過電流は電気的な異常、制御装置の異常はそれらを検知・制御する頭脳側の異常、断熱容器内部温度の著しい上昇は熱的な異常——切り口の違う3種類の異常を、どれか1つでも検知したら自動的に電路を遮断するという設計になっている。燃料電池発電設備の「運転状態表示装置」が異常を人に知らせる仕組みだったのに対し、蓄電池の保護装置は人の判断を待たずに自動で電路を遮断する仕組みである点が異なる。なお、停電時・電圧低下時の非常用予備電源として使う蓄電池がこの規定の対象から除かれているのは、非常時にこそ電気を供給し続けてほしいという蓄電池本来の役割と、異常時に自動遮断してしまう保護動作とが、目的として相反するためだと理解しておくとよい。

配線工事の工法にも「使ってよい条件」がある — 高圧屋内配線の例

性能規定の考え方は、工事の「やり方」そのものを制限する場面にも表れる。高圧屋内配線(需要家構内で高圧のまま配線する工事)を例にとると、電技解釈は使用できる工事方法をがいし引き工事とケーブル工事の2通りに限定している。

さらに、がいし引き工事については無条件に使えるわけではない。乾燥した場所であって、展開した場所(点検できる開放された場所)に限る、という条件が付いている。がいし引き工事は電線がむき出しのまま絶縁体(がいし)で支持される工法のため、湿気の多い場所や、天井裏のような隠ぺいされた場所で使うと、絶縁性能の低下や接触事故のリスクが高まる。だからこそ、乾燥・展開という2つの条件をともに満たす場所に限定されている。

低圧配線でも、がいし引き工事・金属管工事・ケーブル工事など複数の工法から選べる場面は多い。だが高圧屋内配線になると、選べる工法そのものが絞られ、その中の1つ(がいし引き工事)にはさらに設置場所の条件が付く。「電圧が上がるほど、認められる工法の幅が狭くなる」という向きは、離隔距離や接地抵抗値の基準が電圧区分によって厳しくなるのと同じ設計思想の表れだ。

また、低圧配線がケーブル工事で施設され、弱電流電線や水管・ガス管等(以下、水管等)と接近・交差する場合には、低圧配線を弱電流電線・水管等と接触しないように施設することが求められる。がいし引き工事のように電線がむき出しの工法では、弱電流電線・水管等との間に一定の離隔距離(センチメートル単位の数値)を確保することが求められる場面があるのに対し、ケーブル工事はケーブル自体の被覆が絶縁・保護の役割を担うため、「接触さえしなければよい」という、比較的緩やかな基準になっている。

「工法によって要求される基準の厳しさが変わる」という点は、離隔距離の考え方(電線の絶縁性能が高いほど、必要な物理的距離を圧縮できる)と共通している。ケーブル工事は電線自体の被覆で絶縁を確保しているぶん、周囲との関係では「接触しない」という比較的シンプルな基準で足りる——工法を変えることは、基準の厳しさそのものを変える手段にもなる、と捉えると理解しやすい。

ライティングダクト工事 — 「支持するダクト」自体が電源供給路になる工法

低圧屋内配線の工法には、がいし引き工事・金属管工事・ケーブル工事のほかに、ダクト自体を電線の役割も兼ねた通路として使う工法がいくつかある。その1つがライティングダクト工事だ。天井や壁に細長いダクトを取り付け、その内部(または表面のレール状の溝)に電気を通し、照明器具などを好きな位置に差し込んで使う工法で、オフィスや店舗の照明配線でよく見かける。

電気設備技術基準の解釈は、ライティングダクト工事による低圧屋内配線に、次のような施設基準を定めている。

  • ダクトの支持点間の距離を一定以下とする
  • ダクト相互及び電線相互は、堅ろうに、かつ電気的に完全に接続する
  • ダクトの開口部は、原則としてに向けて施設する(人が容易に触れるおそれがない場合等を除く)
  • ダクトの終端部は閉そくする
  • ダクトは造営材を貫通しないように施設する
このうち特に見落としやすいのが、開口部の向きと、造営材の貫通に関する2つの制限だ。ダクトの開口部を上に向けると、天井裏や上方からの塵埃・異物が内部に侵入しやすくなり、内部の充電部分に触れるリスクも高まる。だから原則として下向きに施設する。また、ライティングダクトは電線管のように壁や天井を貫通させる使い方を想定していない工法であり、造営材を貫通して施設することは認められていない。金属管工事や合成樹脂管工事のように「管の中に電線を通し、造営材を自由に貫通できる」工法と、ライティングダクト工事を同じ感覚で扱うと、この制限を見落としやすい。
高圧屋内配線工事が「がいし引き工事・ケーブル工事の2つに絞られる」構造だったのに対し、低圧屋内配線工事は、がいし引き・金属管・合成樹脂管・ケーブル・ライティングダクトなど、選べる工法の幅そのものが広い。ただし工法の選択肢が広いぶん、それぞれの工法に固有の制限(ライティングダクトなら開口部の向きと貫通禁止)が個別に定められている、という点は変わらない。「低圧だから自由度が高い」で思考を止めず、選んだ工法ごとの個別基準まで確認する必要がある。

金属ダクト工事 — ダクトの中身は「20%以下」が原則

ライティングダクトと名前が似ているために混同されやすいが、低圧屋内配線にはもう1つ、金属製のダクト内に多数の電線をまとめて収める「金属ダクト工事」という工法がある。制御盤の背後や、動力・制御回路の配線が集中する場所で、複数系統の電線を一括して敷設する用途によく使われる。

電気設備技術基準の解釈は、金属ダクト工事に次のような施設基準を定めている。

  • ダクト内に収める電線(絶縁被覆を含む)の断面積の総和は、原則としてダクトの内断面積の20%以下とする
  • ただし、電光サイン装置・出退表示灯その他これらに類する装置の配線又は制御回路等の配線のみを収める場合は、断面積の総和をダクトの内断面積の50%以下にできる
  • ダクト相互及びダクトとボックスその他の附属品とは、電気的・機械的に堅ろうに接続する
  • ダクトには接地工事を施す(使用電圧300V以下はD種接地工事、300Vを超える場合はC種接地工事が原則)
金属ダクト工事で見落としやすいのは、断面積の基準が「20%以下」と「50%以下」の2段階になっている点だ。一般の電力配線・制御配線が混在する場合は20%以下が原則だが、電光サイン装置や制御回路等の配線だけを収める場合に限り、50%以下まで緩和される。「ダクトの中身は半分まで詰めてよい」と一律に覚えると、一般の配線を収める場合の20%という、より厳しい原則を見落とすことになる。また、接地工事の種別が使用電圧300Vを境にD種・C種で切り替わる点は、金属管工事など他の金属製工法の接地の考え方と共通している。

電路そのものを守る一般原則 — 過電流遮断器の施設(電技14条)

電動機の過負荷保護装置は、電動機という特定の機器を焼損から守るための個別規定だった。これとは別に、電技第14条は、電路そのものに対するもっと広い一般原則を定めている。

電路の必要な箇所には、過電流による過熱焼損から電線及び電気機械器具を保護し、かつ、火災の発生を防止できるよう、過電流遮断器を施設しなければならない。

14条と、電動機の過負荷保護装置の規定は、どちらも「過電流から機器を守る」という発想は共通しているが、対象の広さが違う。14条は電路の必要な箇所全般に対する一般原則であり、電動機の過負荷保護装置は、その一般原則を電動機という特定の機器に対して具体化した、いわば個別規定にあたる。ブレーカー(配線用遮断器)がキュービクルや分電盤の各回路に必ず入っているのは、この14条の一般原則が、実務上あらゆる分岐回路に及んでいることの表れだ。

配線の使用電線 — 裸電線は原則禁止、特別高圧には接触電線も禁止

過電流遮断器が「電路を過電流から守る」規定だったのに対し、配線の使用電線に関する基準は「配線そのものが感電・火災の原因にならないようにする」規定だ。

配線の使用電線(裸電線及び特別高圧で使用する接触電線を除く)には、感電又は火災のおそれがないよう、施設場所の状況及び電圧に応じ、使用上十分な強度及び絶縁性能を有するものでなければならない。そのうえで、配線には裸電線を使用してはならないという原則が置かれている。

「裸電線は禁止」で覚えを止めると、この原則には例外があることを見落とす。施設場所の状況及び電圧に応じ使用上十分な強度を有し、かつ絶縁性がないことを考慮して、配線が感電又は火災のおそれがないように施設する場合は、裸電線でも例外的に認められることがある。電気さくの規定(絶縁性がないことを前提に、感電・火災のリスクを別の手段で抑え込む構造)と同じ発想が、ここにも顔を出している。

もう1つ、この原則とは別に、特別高圧の配線には接触電線を使用してはならないという禁止がある。接触電線とは、クレーンの給電用トロリー線のように、移動する電気機械器具に電気を供給するために使用する電線のことだ。特別高圧という高い電圧区分では、接触電線のような露出した給電方式そのものが、裸電線の例外規定にかかわらず認められていない。

屋内配線とは別に、架空電線にも絶縁被覆の使用義務がある

ここまでの「裸電線は原則禁止」という話は、屋内配線を念頭に置いたものだった。電柱に張られる架空電線にも、これとよく似た絶縁被覆の使用義務が電気設備技術基準の解釈に定められている。低圧架空電線は、屋内配線と同じくケーブルを使用する場合を除き、絶縁電線を使用しなければならない。高圧架空電線は、これよりさらに一段階絶縁性能の高い高圧絶縁電線・特別高圧絶縁電線又はケーブルのいずれかを使用しなければならない。屋内配線・架空電線のいずれも、電圧区分が上がるほど求められる絶縁の水準が引き上げられる、という共通の向きを持っている。

屋内配線の裸電線禁止に例外があったのと同じく、架空電線の絶縁被覆義務にも例外がある。低圧架空電線がB種接地工事を施した中性線・接地側電線である場合や、高圧架空電線を市街地外(人が容易に立ち入らないような場所)に施設する場合など、限られたケースでは裸電線の使用が認められることがある。特別高圧架空電線については、この絶縁被覆使用義務そのものが低高圧架空電線と同じ形では定められておらず、裸電線を用いた構成が広く見られる——「電圧が上がるほど絶縁が厳しくなる」という単純な直感だけでは説明しきれない、電圧区分ごとの制度設計の違いがここにある。具体的な適用条件・例外の範囲は、電気設備技術基準の解釈の最新版で確認すること。

屋内電路の対地電圧の制限 — 住宅は150V、太陽電池・蓄電池には条件付きの緩和

配線の使用電線の話に続けて、電気設備技術基準の解釈は、屋内電路にどれだけの対地電圧までを許すかという基準も定めている。住宅の屋内電路の対地電圧は、原則として150V以下に制限される。

なぜ住宅で対地電圧を抑えるのか。対地電圧が高いほど、感電したときに人体に流れる電流も大きくなり、被害が重くなる。住宅は電気の専門知識を持たない人が日常的に触れる場所であるため、他の電圧区分よりも踏み込んだ制限が置かれている。

ただし、この150V以下という原則は、あらゆる屋内配線に無条件で適用されるわけではない。近年増えている太陽電池モジュールや、常用電源として用いる蓄電池に接続する屋内配線には、次のような条件を満たすことを前提に、対地電圧を直流450V以下まで認める緩和規定がある。

  • 電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設する
  • ケーブル工事等により施設し、電線に接触防護措置を施す
「住宅=一律150V以下」という理解で止めると、太陽電池モジュールや蓄電池に接続する配線の緩和規定を見落とす。緩和が認められているのは、地絡時の自動遮断装置やケーブル工事といった「対地電圧が高くても感電・火災のリスクを技術的に抑え込む対策」がセットになっているからだ。電気さくの例外、裸電線の例外と同じく、「条件を満たせば緩和される」という構造がこの科目全体で繰り返し現れる。数値・条件の細部は電気設備技術基準の解釈の最新版で確認すること。

制御盤・分電盤を扱う実務では、住宅用の太陽光発電システムの屋内配線が高めの直流電圧で施設されている図面を見ることがある。そのとき「なぜ150Vの原則から外れているのか」を、地絡時の自動遮断装置やケーブル工事という条件とセットで説明できると、顧客への技術的な信頼にもつながる。

電磁誘導作用による人の健康影響の防止 — 変圧器・電線路の「磁束密度」規制

ここまでは配線・配管の話が中心だったが、電技には「機械器具そのものが発する電磁誘導作用」に着目した条文もある。変圧器・開閉器その他これらに類するもの、又は電線路を、発電所・変電所・開閉所及び需要場所以外の場所に施設する場合は、通常の使用状態において、当該電気機械器具等からの電磁誘導作用により人の健康に影響を及ぼすおそれがないよう施設しなければならない。具体的には、当該電気機械器具等のそれぞれの付近において、人によって占められる空間に相当する空間の磁束密度(商用周波数)の平均値を、200μT(マイクロテスラ)以下に抑えることが求められる。

この規定の対象は「発電所・変電所・開閉所・需要場所**以外**の場所」に施設する機械器具等だという点に注意する。発電所・変電所のように、そもそも人が日常的に立ち入らない管理された場所に施設する場合や、需要場所(工場・ビルの構内)に施設する場合は、この条文が直接想定している対象ではない。むしろ規制の重心は、住宅地の近くの配電用変圧器や、道路沿いの電線路のように、一般の人が日常的にその空間の近くで生活・往来する場所に置かれている。

ただし書きもある。田畑、山林その他人の往来が少ない場所において、人体に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合は、この限りでない。磁束密度そのものがなくなるわけではないが、人がその空間に長時間とどまる可能性が低いため、規制の対象から外れる。

200μTという基準値は2011年(平成23年)の電技改正で導入された。ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)が2010年に改定した国際ガイドラインで、低周波磁界の参考レベルが50Hz・60Hzともに200μTとされたことを踏まえて設定された数値だ(改定前の参考レベルは50Hzで100μT・60Hzで83μTだった)。磁束密度の基準値は、電技解釈が定める性能規定の中でも比較的近年に整備された分野であり、今後も改正の対象になりやすい。制御盤・受変電設備を扱う実務で、住宅地に近い柱上変圧器や地中配電設備の計画に関わる場面があれば、この200μTという数値を押さえたうえで、最新の基準値は電気設備技術基準及び同解釈の最新版で確認する必要がある。

特殊場所における施設制限 — 粉じん・可燃性ガス・危険物のある場所

電技には、設備の種類ではなく「どんな環境に施設するか」という切り口で安全対策を求める条文もある。粉じんの多い場所に施設する電気設備は、粉じんによる当該電気設備の絶縁性能又は導電性能が劣化することに伴う感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。

さらに踏み込んだ規制が置かれているのが、爆発・火災のリスクが特に高い場所だ。次のいずれかに該当する場所に施設する電気設備は、通常の使用状態において、当該電気設備が点火源となる爆発又は火災のおそれがないように施設しなければならない。

  • 可燃性ガス又は引火性物質の蒸気が存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
  • 粉じんが存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
  • 火薬類が存在する場所
  • セルロイド、マッチ、石油類その他燃えやすい危険な物質を製造し、又は貯蔵する場所
この4つの場所に共通するキーワードは「点火源」だ。電気設備そのものが火種になって爆発・火災を引き起こすことがないように、というのがこの規定の狙いになる。離隔距離や接地抵抗値のような具体的な数値基準(何cm以上、何Ω以下)は、この条文には出てこない。「点火源とならないように施設する」という性能規定であり、実務では防爆構造の電気機械器具を選ぶ、可燃性ガスの滞留を避ける換気を確保するなど、場所ごとのリスクに応じた個別の対策で目的を実現することになる。

塗装ブース、木粉・穀物の集じん設備、化学薬品を扱う工場など、電材商社が扱う制御盤・分電盤の納入先には、こうした特殊場所に該当する現場が少なくない。標準品の制御盤をそのまま持ち込めるかどうかを判断する場面では、「この現場は特殊場所に該当するか」という視点を最初に立てておくと、防爆仕様の要否を見誤りにくい。

「点火源とならないように」を、具体的な工法に落とし込む

電技(省令)が「点火源とならないように」という目的だけを定めているのに対し、電気設備技術基準の解釈は、可燃性ガス等が存在し爆発のおそれがある場所における屋内配線の工事方法を、より具体的に定めている。

  • 工事の方法は、原則として金属管工事又はケーブル工事(電線に、可とう性はあるが外傷を受けやすいキャブタイヤケーブルを使用するものを除く)に限られる
  • 金属管工事による場合は、薄鋼電線管又はこれと同等以上の強度のあるものを使用し、管相互及び管とボックスその他の附属品とは、5山以上ねじ合わせて接続する方法その他これと同等以上の効力のある方法により、堅ろうに接続する
  • 電線を電気機械器具に引き込むときは、引込口で電線が損傷するおそれがないように施設する
「ケーブル工事なら何でもよい」わけではない点に注意する。可燃性ガス等が滞留するおそれがある場所では、外傷を受けやすいキャブタイヤケーブルの使用は認められず、より機械的強度の高いケーブルを使うことが前提になる。金属管工事の場合も、単に電線を管に収めるだけでなく、5山以上のねじ合わせという具体的な接続強度の基準が示されている——ガスが管の接続部のすき間から侵入・滞留しないよう、堅ろうな接続そのものが防爆対策の一部になっている。

「点火源とならないように」という性能規定(電技)と、「金属管工事又はケーブル工事に限り、5山以上ねじ合わせて接続する」という具体的な仕様(電技解釈)——この特殊場所の規定にも、電技と電技解釈の二階建ての構造が現れている。目的だけを覚えて満足せず、実際にどの工法が認められ、どの工法(キャブタイヤケーブルを使うケーブル工事など)が認められないのかという、解釈側の具体的な基準もあわせて押さえておく必要がある。

電技が定める分野別の安全対策 — サイバーセキュリティの確保と発電用風力設備の技術基準

ここまで見てきた「省令=目的、解釈=具体的な仕様」という二階建て構造には、実は例外がある。近年、電技(省令)自体に、性能規定の枠を超えて、特定の対象に絞った明文の義務が直接書き込まれる例が増えている。代表的な2つを見ておこう。

1つ目はサイバーセキュリティの確保だ。電技は、事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)の運転を管理する電子計算機について、サイバーセキュリティを確保しなければならないと定めている。この規定は2022年(令和4年)10月1日施行の改正で対象が拡大され、一般送配電事業・送電事業・配電事業等の用に供する大規模設備だけでなく、工場・ビル等が保有する自家用電気工作物(需要設備)の制御用電子計算機も対象に含まれるようになった。変電所の監視制御システムや配電自動化システムのように、コンピュータ・通信ネットワークで電気工作物を遠隔管理する仕組みが広がるほど、外部からの不正アクセスや攻撃によって電気工作物が誤動作するリスクも大きくなる。人体への危害・物件への損傷はもちろん、電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれもあるため、電技はこのリスクを、絶縁や強度と同じ「感電・火災等のおそれがないように施設する」という目的の延長線上に位置づけ、明文の義務として組み込んでいる。

「省令には目的しか書かれていない」という理解を一歩進めると、サイバーセキュリティの確保のように、対象(電気工作物の運転を管理する電子計算機)と目的(人体への危害・物件への損傷・電気の供給への著しい支障の防止)の両方が省令の条文自体に直接書き込まれている例外があることが分かる。この規定は自家用電気工作物(工場・ビル等の需要設備)も対象に含むため、制御盤・キュービクルの遠隔監視化が進む電材商社の実務でも、監視システムのセキュリティ対策が技術基準上の要求事項になりうる、という視点は今後さらに重要になっていく。

2つ目は、発電用風力設備に関する技術基準を定める省令だ。これは電技とは別に制定された、風車専用の省令である。名称が電技(電気設備に関する技術基準を定める省令)とよく似ているため、電技の一部条文だと誤解しやすいが、まったく別の省令として存在する。この省令は、風車について次のような施設基準を求めている。

  • 負荷を遮断したときの最大速度に対し、構造上安全であること
  • 風圧に対して構造上安全であること
  • 運転中に風車に損傷を与えるような有害な振動がないように施設すること
  • 通常想定される最大風速においても、取扱者の意図に反して風車が起動することのないように施設すること
  • 運転中に他の工作物、植物等に接触しないように施設すること
これらの要求は、風車という設備固有の物理的なリスクに対応している。負荷が急に遮断される(系統から切り離される)と、風車はブレーキの効きが弱まり回転速度が急上昇(暴走)しうる——だから「負荷遮断時の最大速度」という、風車特有の想定荷重が基準に組み込まれている。また、意図しない起動を防ぐ規定は、点検・保守で作業者が風車に接近しているときに突然回転を始める事故を防ぐ趣旨だと理解すると覚えやすい。電技が電気設備全般に共通する性能規定であるのに対し、この省令は「回転する大型構造物」という風車固有のリスクに絞った専用の基準である点が、他の電気設備の基準とは一線を画す。

風車を「支える」構造物にも、別枠の強度要件がある

ここまでの5要件は、いずれも「風車本体(ブレード・ナセルなど回転する側)」が対象だった。同省令はこれとは別に、風車を支持する工作物(タワー等の支持物)自体の構造安全性についても定めている。支持物は、自重・積載荷重・積雪荷重・風圧荷重、地震動その他の振動及び衝撃を考慮して、安全な構造でなければならない。

「風力発電設備の技術基準=風車が暴走・振動しないための基準」という理解だけで止まると、風車を支えるタワーそのものの強度要件を見落とす。風車本体の5要件が「回転する機械が暴走・損傷しないこと」を対象にしているのに対し、支持物の強度要件は「その機械を支える構造物自体が、荷重に耐えて倒壊・損傷しないこと」を対象にしている。台風時の風圧荷重や、積雪地域での積雪荷重、地震動による振動・衝撃など、タワーが受ける多様な荷重をあわせて考慮する必要がある点は、鉄塔や支持物の強度計算に共通する発想だ。

小規模な発電用風力設備には「昇塔防止」という部外者対策もある

もう1つ、風車本体の安全設計とは異なる観点の対策として、小規模な発電用風力設備には、容易に昇塔できないような措置を講じることが求められる。無関係な第三者がタワーによじ登り、感電したり、運転中の風車に接触したりする事故を防ぐための規定だ。

昇塔防止措置は、風車が正常に動作しているかどうかとは無関係に必要になる、部外者の物理的な接近を防ぐための対策である点が特徴だ。「風力発電設備の安全対策=風車自体が暴走・損傷しないための構造要件」という理解だけにとどまると、この部外者対策としての昇塔防止措置を見落としやすい。制御盤・保護継電器の設計が「設備そのものの安全」を担うのに対し、昇塔防止措置は「設備に近づく人の安全」を担う、視点の異なる対策だと整理しておくとよい。

太陽光発電設備に続き、風力発電設備も再生可能エネルギーの導入拡大とともに設置が増えていく分野だ。電材商社が制御盤・保護継電器・監視システムを提案する場面でも、対象が風力発電設備であれば電技だけでなくこの専用省令の存在(風車本体・支持物・昇塔防止という3層の要求)を意識しておくと、顧客への説明に厚みが出る。

配線器具の施設 — 「見えなくする」だけでなく「緩ませない」

ここまで見てきた条文は、電路や電気機械器具そのものの安全性に関する規定だった。スイッチやコンセントのような、日常的に手で触れる「配線器具」にも、電気設備技術基準の解釈は独自の施設基準を定めている。

低圧用の配線器具は、次のような要件で施設する。

  • 充電部分の露出防止:充電部分が露出しないように施設する。ただし、取扱者以外の者が出入りできないように措置した場所に施設する場合は、この限りでない
  • 防湿装置:湿気の多い場所又は水気のある場所に施設する場合は、防湿装置を施す
  • 接続点の保護:配線器具に電線を接続する場合は、ねじ止めその他これと同等以上の効力のある方法により、堅ろうに、かつ、電気的に完全に接続するとともに、接続点に張力が加わらないようにする
  • 屋外器具の防護:屋外において電気機械器具に施設する開閉器、接続器、点滅器その他の器具は、損傷を受けるおそれがある場合には、これに堅ろうな防護装置を施す
4つの要件は、それぞれ守ろうとしているリスクが異なる。充電部分の露出防止は「感電」、防湿装置は「湿気による絶縁劣化」、接続点への張力防止は「緩み・断線」、屋外器具の防護装置は「物理的な損傷」に対応している。「配線器具の基準=充電部分を隠せばよい」という理解で止まると、残り3つの要件(防湿・張力・防護)を見落とす。特に接続点への張力防止は見落としやすい。電線を接続する作業では「堅ろうに接続すること」にばかり意識が向きがちだが、接続した後の電線がぴんと張った状態のままだと、振動や温度変化による伸縮の力が接続点に繰り返しかかり続け、時間をかけて緩み・断線につながる。接続時に電線へ多少のゆとり(たるみ)を持たせておくことが、この要件の実務上の対応になる。

制御盤・分電盤の配線を扱う電材商社の現場では、スイッチやコンセントの接続不良による発熱・断線トラブルは珍しくない。「しっかり締めたはずなのに、あとから緩んで発熱した」という現象の背景には、この「接続点に張力を加えない」という基準を見落とし、電線を張った状態のまま固定してしまっていることが少なくない。

冒頭の「D種接地工事の100Ωという数字は、どこで決められているのか」——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 電技(省令)に、接地抵抗値や絶縁耐力の具体的な数値が書かれていると思わせる

    なぜ引っかかる実務で使う数値基準(100Ω、1.5倍など)は電技解釈側の数値であり、省令本体には出てこない。省令と解釈を1つの文書のように扱うと混同する

    見破り方条文に具体的な数値(Ω、mm、倍率、秒数など)が並んでいたら、それは電技解釈側の話だと切り分ける。省令の条文は「〜のおそれがないように施設しなければならない」という目的の言い回しで終わることが多い

  2. 電技解釈に定められた工法どおりに施工しなければ、技術基準違反になると誤解させる

    なぜ引っかかる解釈は現場で最もよく参照される具体的な基準集であるため、これに従わなければ即座に違反だと思い込みやすい

    見破り方解釈の冒頭には「これらの規定と同等以上の効力があると認められる方法により電気設備を施設する場合は、この限りでない」という趣旨の規定がある。解釈は適合を示す代表的な一つの方法であって、絶対唯一の基準ではないと意識する

  3. 電技の根拠法を電気工事士法や電気用品安全法にすり替える

    なぜ引っかかるどちらも電気の安全に関わる法律のため、名前だけでは違和感が出にくい

    見破り方電技は電気事業法(第39条・第56条)に基づく省令だと条番号ごと固定して覚える。電気工事士法は「誰が工事をしてよいか」、電気用品安全法は「製品・材料の安全」を受け持つ別の法律

  4. 電動機の過負荷保護装置の設置義務を「例外なく必ず設置」と思い込み、除外条件を見落とす

    なぜ引っかかる省令・解釈が原則を義務として定めているため、その先に複数の除外条件が付いていることを見落としやすい

    見破り方常時監視・構造上の安全性・電源側遮断器の定格電流(単相15A、配線用遮断器は20A以下)・電動機の小出力(0.2kW以下)という4種類の除外条件を、原則とセットで確認する

  5. がいし引き工事を、高圧屋内配線でもどこにでも使える工法だと誤解する、あるいは低圧のケーブル工事にも『何cm以上離す』という数値基準が必要だと思い込む

    なぜ引っかかる低圧配線の工法選定に慣れていると、高圧屋内配線でも工法の選択肢が同じように広いと錯覚しやすい。また、離隔距離の基準を学んだ直後だと、工法を問わずすべて『何cm以上』という数値基準で統一されていると思い込みやすい

    見破り方高圧屋内配線の工法は、がいし引き工事(乾燥した展開場所限定)とケーブル工事の2つに絞られると確認する。またケーブル工事の場合は数値基準ではなく『接触しないように』という基準になる点を、工法ごとに区別して覚える

  6. ライティングダクトの開口部の向きを『上向きでも下向きでもどちらでもよい』と誤解する、あるいはダクトが造営材を貫通してよいと思い込む

    なぜ引っかかる電線管工事など他の工法で貫通が認められる場面に慣れていると、ライティングダクトも同様に扱えると錯覚しやすい

    見破り方ライティングダクトは開口部を下に向けて施設するのが原則(人が容易に触れるおそれがない場合等の例外を除く)で、上に向けると塵埃や異物が入り込みやすく危険だと確認する。また、ライティングダクトは造営材を貫通して施設してはならないという工法特有の制限があると区別する

  7. 金属ダクト内に収める電線の断面積の割合を、常に一律の基準(例えば50%以下)だと思い込み、電光サイン装置・制御回路等のみを収める場合の緩和条件を見落とす

    なぜ引っかかる『断面積の割合に上限がある』という点だけが記憶に残ると、原則の20%と、制御回路等のみの場合の50%という2つの基準が混同されやすい

    見破り方原則は電線断面積の総和がダクト内断面積の20%以下、電光サイン装置・出退表示灯等の配線又は制御回路等の配線のみを収める場合に限り50%以下まで緩和される、という『原則と限定的な例外』の構造で覚える

  8. 金属ダクトの接地工事の種別を、使用電圧にかかわらず一律(例えば常にD種)だと思い込む

    なぜ引っかかる低圧配線の接地といえばD種接地工事というイメージが強く残っていると、電圧による区分を見落としやすい

    見破り方使用電圧が300V以下ならD種接地工事、300Vを超える場合はC種接地工事が原則になると確認する。他の金属製部分(金属管工事の管等)の接地工事の電圧区分と同じ考え方が金属ダクトにも当てはまる

  9. 過電流遮断器の施設義務(電技14条)を、電動機の過負荷保護装置の設置義務と同じ条文の話だと混同する

    なぜ引っかかるどちらも『過電流から機器を守る』という共通点があるため、1つの条文がまとめて定めていると思い込みやすい

    見破り方14条は『電路の必要な箇所』全般に対する一般原則(過熱焼損からの保護と火災防止)であり、電動機の過負荷保護装置は電技第4条を根拠にした電動機という特定の機器向けの個別規定だと区別する。対象の広さが違う、別の規定だと整理する

  10. 配線には裸電線を使ってはならないという原則を、例外なく一律の禁止だと思い込む

    なぜ引っかかる『裸電線=危険だから禁止』という単純化した理解をすると、条件付きで認められる例外規定の存在ごと見落としやすい

    見破り方裸電線の使用は原則禁止だが、施設場所の状況・電圧に応じた強度を有し、絶縁性がないことを考慮して感電・火災のおそれがないように施設する場合には、例外的に認められることがあると確認する。また特別高圧の配線には、この例外にかかわらず接触電線を使用できない、という別枠の禁止がある点も区別する

  11. 屋内電路の対地電圧の制限を『住宅も住宅以外もすべて150V以下で統一されている』と一律に思い込む

    なぜ引っかかる『対地電圧の制限=150V』という数字が印象に残りやすく、住宅以外の場所や太陽電池モジュール・蓄電池のような設備ごとの緩和規定を見落としやすい

    見破り方対地電圧の制限は、対象(住宅か住宅以外か)や接続する設備の種類(太陽電池モジュール、常用電源としての蓄電池など)によって、地絡時の自動遮断装置の設置やケーブル工事等の条件とセットで緩和される場合があると確認する。150Vという数字だけを覚えず、『どの設備の、どの配線の話か』を先に確認する

  12. サイバーセキュリティの確保を、電気設備技術基準の解釈(現場向けの数値基準)が定める内容だと思い込む

    なぜ引っかかる『具体的な仕様は解釈が担う』という二階建て構造の理解が先に定着していると、サイバーセキュリティのような比較的新しいテーマも同じく解釈側の話だと早合点しやすい

    見破り方サイバーセキュリティ確保の義務は、電技(省令)自体に明文で定められている点を区別する。省令=目的だけを定めるものと決めつけず、電気工作物の運転を管理する電子計算機という対象と、確保すべき安全性という目的の両方が省令の条文に直接書き込まれている例があると押さえる

  13. 発電用風力設備に関する技術基準を定める省令の内容を、電技(電気設備に関する技術基準を定める省令)の一部条文だと誤解する

    なぜ引っかかるどちらも『電気設備の技術基準を定める省令』という似た名称のため、風車の基準も電技の中の一条文にすぎないと錯覚しやすい

    見破り方発電用風力設備に関する技術基準を定める省令は、電技とは別に制定された専用の省令であり、風車特有のリスク(負荷遮断時の最大速度、振動、意図しない起動)に絞って構造上の安全性を定めていると区別する

  14. 発電用風力設備に関する技術基準を定める省令が求める強度要件を、風車本体(ブレード・ナセル等)の話だけだと思い込み、風車を支持する工作物(タワー等)自体の強度要件を見落とす

    なぜ引っかかる『風力発電設備の技術基準=風車の暴走・振動を防ぐ基準』という理解が先に定着すると、風車を支える構造物側の強度要件が別枠であることに気づきにくい

    見破り方風車本体の5要件(最大速度・風圧・振動・意図しない起動・接触防止)とは別に、支持物(タワー等)自体が自重・積載荷重・積雪荷重・風圧荷重、地震動その他の振動及び衝撃を考慮した安全な構造でなければならないという要件があると確認する。対象が『風車という機械』か『それを支える構造物』かで、要件が分かれている

  15. 小規模な発電用風力設備における昇塔防止措置を、風車本体の安全対策(意図しない起動の防止等)と同じ話だと混同する、あるいはそのような措置自体が不要だと思い込む

    なぜ引っかかる『風力発電設備の安全対策=風車が暴走・損傷しないための対策』という理解に偏ると、部外者がタワーによじ登ることを防ぐという、まったく別の観点の対策が漏れやすい

    見破り方小規模な発電用風力設備には、容易に昇塔できないような措置を講じることが求められると確認する。これは風車自体の構造安全性ではなく、無関係な第三者がタワーに接近・昇塔して感電や接触事故に遭うことを防ぐための、部外者対策としての規定だと区別する

  16. 電磁誘導作用による健康影響の防止を、変圧器や電線路のすべてに一律で適用される規定だと思い込む

    なぜ引っかかる『健康影響の防止』という言葉から、あらゆる電気機械器具・電線路に等しく適用される基準だと錯覚しやすく、発電所・変電所・開閉所・需要場所という除外先や、人の往来が少ない場所の例外を見落としやすい

    見破り方対象を確認する。この規定は、変圧器・開閉器等やこれらに類するもの又は電線路を『発電所、変電所、開閉所及び需要場所以外の場所』に施設する場合の規定であり、これらの場所に施設する場合や、田畑・山林その他人の往来が少ない場所で人体に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合は対象外になると区別する

  17. 特殊場所の施設制限を、離隔距離や接地抵抗値と同じような具体的な数値基準だと思い込む

    なぜ引っかかるこの科目のここまでの条文の多くが具体的な数値(Ω、m、倍率など)で判定できたため、粉じん・可燃性ガス等の場所の基準も同じように数値で線引きされていると錯覚しやすい

    見破り方粉じんの多い場所や可燃性ガス等が存在する場所の規定は、『感電又は火災のおそれがないように』『点火源とならないように』という性能規定であり、具体的な数値基準(何cm以上、何Ω以下など)を示していない点を確認する。防爆構造の機器を使うかどうかなど、施設方法の妥当性は個別に判断する必要がある

  18. 可燃性ガス等が存在する場所の屋内配線を、電技(省令)の『点火源とならないように』という目的規定だけで理解が完結すると思い込み、電技解釈が定める具体的な工事方法(金属管工事・ケーブル工事の使用条件)を見落とす

    なぜ引っかかる『特殊場所の規定=数値基準のない性能規定』という理解が先に定着すると、それとは別に、電技解釈側では『どの工法が認められ、どの工法が認められないか』という具体的な仕様が定められていることに気づきにくい

    見破り方『点火源とならないように』という目的(電技)と、『金属管工事又はケーブル工事(キャブタイヤケーブルを除く)に限る、5山以上ねじ合わせる』という具体的な仕様(電技解釈)の、二階建ての構造がこの特殊場所の規定にもあると確認する。可とう性はあるが外傷に弱いキャブタイヤケーブルが、この場所のケーブル工事には使えないという点が特に見落としやすい

  19. 低圧用配線器具の施設基準を『充電部分を露出させない』という1点だけで理解し、接続点への張力防止や屋外器具の防護装置など、他の要件を見落とす

    なぜ引っかかる『配線器具の施設=感電しないよう充電部分を隠す』という理解で満足すると、感電とは別の種類のリスク(接続点の緩み・断線、屋外での物理的損傷)に対応した要件が別途あることに気づきにくい

    見破り方配線器具の施設基準は、(1)充電部分の露出防止(感電対策)、(2)湿気・水気のある場所での防湿装置(絶縁劣化対策)、(3)接続点への張力防止(緩み・断線対策)、(4)屋外の開閉器等への防護装置(損傷対策)という、性格の異なる複数の要件が並んでいると整理する。1つの要件だけで『配線器具の基準は満たした』と早合点しない

  20. 低圧・高圧架空電線への絶縁被覆使用義務を、『電圧が上がるほど絶縁が厳しくなる』という単純な比例関係の延長で捉え、特別高圧架空電線には低高圧架空電線と同じ形の絶縁被覆使用義務が定められておらず、裸電線を用いた構成が広く見られることを見落とす

    なぜ引っかかる『電圧が高いほど絶縁が厳しい』という、この科目で繰り返し出てくる一般則を機械的に延長すると、特別高圧こそ最も厳格な絶縁被覆義務があるはずだと思い込みやすい

    見破り方低圧架空電線(絶縁電線又はケーブル)・高圧架空電線(高圧絶縁電線・特別高圧絶縁電線又はケーブル)への絶縁被覆使用義務を確認したら、特別高圧架空電線にも同じ枠組みの規定があるかどうかを個別に確認する癖をつける。電圧区分が上がるほど一律に規制が厳しくなるとは限らず、対象・場面ごとに制度設計そのものが違う場合があると理解しておく

  21. 電技第5条の『電路は大地から絶縁しなければならない』という原則を『例外なく常に絶縁されていなければならない』と読み、B種接地工事のように意図的に大地と結び付ける接地工事の存在と矛盾すると錯覚する

    なぜ引っかかる『絶縁の原則』という言葉だけを見ると、大地と電気的に結び付ける接地という行為そのものが技術基準違反であるかのように感じやすい

    見破り方電技第5条には、構造上やむを得ない場合であって危険のおそれがないとき、又は混触による高電圧の侵入等の異常発生時の危険を回避するために接地その他の必要な措置を講ずるときは、この限りでないという、ただし書きの例外があると確認する。B種接地工事のように変圧器の低圧側中性点を意図的に接地するのは、まさにこの例外規定に位置づけられる措置であり、絶縁の原則と矛盾するものではない

  22. 電技第10条・第11条という『接地の保安原則』を定める条文の存在を知らず、接地の話はA種〜D種の接地工事(電気設備技術基準の解釈第17条系統)の各論だけで完結すると思い込む

    なぜ引っかかる実務・受験で頻繁に触れるのはA〜D種の抵抗値・対象設備という各論のほうであり、『そもそもなぜ接地をするのか』という省令レベルの原則を意識する機会が少ない

    見破り方電技第5条(電路は大地から絶縁するのが原則)と対で、第10条・第11条という接地の保安原則があると確認する。第10条は『異常時の電位上昇・高電圧の侵入等による感電、火災等を防ぐため、必要な箇所に接地その他の適切な措置を講じる』という目的、第11条は『接地を施す場合は、電流が安全かつ確実に大地に通ずるようにする』という接地の実効性、をそれぞれ定める。A〜D種の接地工事は、この2つの原則を具体化した各論(解釈側の規定)にあたると、省令と解釈の二階建て構造の枠組みで位置づける

  23. 発電所・変電所等に施設する蓄電池の保護装置が対象とする異常を、過電圧・過電流のような電気的な異常だけだと思い込み、制御装置の異常や断熱容器の内部温度上昇のような、電気量以外の異常が含まれることを見落とす

    なぜ引っかかる『蓄電池の保護=電圧・電流を監視する』という直感が強く、電気的な量として測れない異常(制御系統の故障、容器内部の温度上昇)まで自動遮断の対象になっていることに気づきにくい

    見破り方蓄電池の保護装置が検知する異常を、電気的な異常(過電圧・過電流)、制御系統の異常(制御装置の異常)、熱的な異常(断熱容器の内部温度の著しい上昇)という3つの切り口に分けて整理する。どれか1種類だけを覚えて満足しない。また、常用電源の停電時・電圧低下時に用いる非常用予備電源としての蓄電池は、この保護装置の対象から除かれている点も区別する

参考文献・出典

理解度チェック(39問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、39問で確認しよう。 内訳は基本20問・応用4問・ひっかけ15問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 39 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 電技(電気設備に関する技術基準を定める省令)は電気事業法39条・56条に基づく省令で、「感電・火災等のおそれがないように施設する」という目的(性能)だけを定める性能規定
  2. 接地抵抗値・絶縁耐力試験電圧・離隔距離といった具体的な数値基準は、「電気設備の技術基準の解釈」という別文書が担う。解釈は法律そのものではなく、経済産業省が示す通達的な位置づけの文書
  3. 解釈どおりに施工すれば技術基準に適合しているとみなされるが、解釈は唯一の方法ではない。解釈と同等以上の効力があると認められる方法であれば、解釈と異なる工法でも技術基準に適合しうる
  4. この二階建て構造(省令=目的、解釈=具体的な仕様)により、新しい技術・工法が登場しても解釈の一部改正だけで対応でき、法律・省令そのものを毎回改正する必要がない
  5. 電技第2条の電圧区分(低圧・高圧・特別高圧)は交流と直流で境界の数値が異なり、以降のほぼすべての条文の土台になる
  6. 電技第5条は『電路は、大地から絶縁しなければならない』という原則を定める。ただし、構造上やむを得ない場合であって通常予見される使用形態を考慮し危険のおそれがないとき、又は混触による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するために接地その他の必要な措置を講ずるときは、この限りでない。『絶縁が原則、非接地が例外』という向きを、B種接地工事のように意図的に大地と結び付ける接地工事の存在と対比しながら理解しておく必要がある
  7. 電技第10条・第11条は、A種〜D種の接地工事という各論とは別に、『なぜ接地をするのか』という保安上の原則を定める条文。第10条(電気設備の接地)は、電気設備の必要な箇所には、異常時の電位上昇、高電圧の侵入等による感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがないよう、接地その他の適切な措置を講じなければならないと定める(ただし電路に係る部分は第5条第1項の規定によるべきものとされ、電路そのものの絶縁の原則とは条文上切り分けられている)。第11条(電気設備の接地の方法)は、電気設備に接地を施す場合は、電流が安全かつ確実に大地に通ずることができるようにしなければならないと定める。第5条が『電路は絶縁するのが原則』という電路側の原則であるのに対し、第10条・第11条は『接地を施す必要がある箇所には、感電・火災等を防ぐために適切な接地その他の措置を講じ、電流が安全かつ確実に大地に流れるようにする』という接地そのものの保安原則であり、この後の各トピックで見るA種〜D種の接地工事(電気設備技術基準の解釈第17条系統)は、この第10条・第11条という原則を具体化した各論にあたる
  8. 屋内に施設する電動機には、焼損するおそれがある過電流を生じた場合に自動的にこれを阻止し、又はこれを警報する装置の設置が原則求められる。ただし、常時取扱者が監視できる位置に施設する場合、電動機の構造上・負荷の性質上焼損するおそれがない場合、電源側電路に施設する過電流遮断器の定格電流が単相15A(配線用遮断器の場合は20A)以下の場合、電動機の出力が0.2kW以下の場合のいずれかに該当すれば、この保護装置は不要になる
  9. 発電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所に施設する蓄電池(常用電源の停電時又は電圧低下発生時の非常用予備電源として用いるものを除く)には、蓄電池に過電圧が生じた場合、蓄電池に過電流が生じた場合、制御装置に異常が生じた場合、内部温度が高温になるものにあっては断熱容器の内部温度が著しく上昇した場合、のいずれかに該当するときに自動的に電路から遮断する装置を施設することが求められる。電気的な異常(過電圧・過電流)、制御系統の異常、熱的な異常という性格の異なる異常を、それぞれ別の切り口で検知する設計になっている
  10. 高圧屋内配線工事は、がいし引き工事(乾燥した場所であって展開した場所に限る)またはケーブル工事に限られる。低圧配線がケーブル工事により施設され弱電流電線・水管等と接近・交差する場合は、接触しないように施設することが求められる——電線自体の絶縁性能(被覆)が高い工法ほど、周囲との関係で求められる基準は緩やかになる
  11. ライティングダクト工事による低圧屋内配線は、ダクトの支持点間の距離を一定以下とする、ダクト相互及び電線相互を堅ろうかつ電気的に完全に接続する、ダクトの開口部を原則として下に向けて施設する(人が容易に触れるおそれのない場合等を除く)、ダクトの終端部を閉そくする、造営材を貫通して施設しない、といった施設基準が定められている。開口部を上に向けると塵埃等が侵入しやすくなるため、下向きが原則になる
  12. 金属ダクト工事による低圧屋内配線は、ダクト内に収める電線(絶縁被覆を含む)の断面積の総和を、ダクトの内断面積の20%以下に抑えることが原則になる。ただし電光サイン装置・出退表示灯その他これらに類する装置の配線又は制御回路等の配線のみを収める場合は、断面積の総和をダクトの内断面積の50%以下にできる。また、ダクト相互及びダクトとボックス等の附属品とは、電気的・機械的に堅ろうに接続することが求められる
  13. 金属ダクトには接地工事を施す必要がある。使用電圧が300V以下の場合はD種接地工事、300Vを超える場合はC種接地工事が原則になる(接触防護措置を施す場合はC種をD種に緩和できる場合がある)。ライティングダクトの接地・開口部の向きの基準とあわせて、ダクト系の工法ごとに要求される基準の細部が異なる点を区別しておく必要がある
  14. 電技第14条は、電路の必要な箇所には、過電流による過熱焼損から電線及び電気機械器具を保護し、かつ火災の発生を防止できるよう、過電流遮断器を施設しなければならないと定める。電動機の過負荷保護装置(第4条を根拠とする個別の設置義務)とは別に、電路そのものに対する一般原則としてこの過電流遮断器の施設義務がある
  15. 配線の使用電線(裸電線及び特別高圧で使用する接触電線を除く)には、感電又は火災のおそれがないよう、施設場所の状況及び電圧に応じた強度・絶縁性能が求められる。配線には原則として裸電線を使用してはならないが、施設場所の状況・電圧に応じ使用上十分な強度を有し、感電・火災のおそれがないように施設する場合は例外的に認められることがある。また特別高圧の配線には接触電線(クレーンの給電用トロリー線等、移動する電気機械器具に電気を供給するために使用する電線)を使用してはならない。具体的な適用条件は電気設備技術基準の解釈の最新版で確認すること
  16. 感電・火災防止のため、電技解釈は複数の対象に個別の対策を求めている。(1)低圧架空電線はケーブルを使用する場合を除き絶縁電線を、高圧架空電線は高圧絶縁電線・特別高圧絶縁電線又はケーブルを使用しなければならず、裸電線は原則禁止(B種接地工事を施した中性線・接地側電線等、限られた例外あり)。特別高圧架空電線には同じ形の絶縁被覆使用義務が定められておらず、裸電線を用いた構成が広く見られる点は例外的。(2)燃料電池発電設備等の施設には運転状態を表示する装置の設置が求められ、対象は燃料電池及びこれに付属する改質系統設備を持つ燃料電池発電設備であり、規模が小さいことだけを理由に一律に除外されるわけではない(適用除外の有無・細部は最新版で確認)。(3)非常用予備電源を常用電源側の電路と電気的に接続しないよう分離する義務は、施設場所を問わず無条件にかかるわけではなく、需要場所での系統連系(並列運転)のような構成では、逆充電・再送電事故を防ぐ保護装置とセットで扱いが変わりうる。3つとも電技第4条の『感電・火災等のおそれがないように施設する』という目的を、対象ごとに具体化した規定である
  17. 住宅の屋内電路の対地電圧は原則150V以下に制限される。住宅以外の場所でも、対地電圧の制限は原則として維持しつつ、地絡時に自動的に電路を遮断する装置の設置やケーブル工事等の施設方法を条件に、太陽電池モジュールや常用電源として用いる蓄電池に接続する屋内配線を直流450V以下まで認めるなど、設備の種類ごとに個別の緩和規定が置かれている(具体的な数値・条件は電気設備技術基準の解釈の最新版で確認すること)
  18. 電技(省令)は、事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)の運転を管理する電子計算機(制御用のコンピュータやその通信系統)について、サイバーセキュリティ(外部からの不正アクセス・攻撃に対する安全性)を確保しなければならないと定めている。2022年(令和4年)10月1日施行の改正で対象が拡大され、一般送配電事業・送電事業・配電事業等の大規模設備だけでなく、工場・ビル等が保有する自家用電気工作物(需要設備)も対象に含まれるようになった。IoT化・遠隔監視が広がるほど、外部からの攻撃で電気工作物が誤動作すれば人体・物件への危害や電力供給への著しい支障につながりかねないため、性能規定の対象がハード(設備そのものの絶縁・強度)だけでなくソフト・通信の安全性にも及んでいる、と捉えると位置づけが分かりやすい
  19. 風力発電設備には、電技とは別に「発電用風力設備に関する技術基準を定める省令」という専用の省令があり、風車について(1)負荷を遮断したときの最大速度に対する構造上の安全性、(2)風圧に対する構造上の安全性、(3)運転中に風車へ損傷を与えるような有害な振動がないこと、(4)通常想定される最大風速でも取扱者の意図に反して風車が起動しないこと、(5)運転中に他の工作物・植物等に接触しないこと、を求めている。電技が電気設備全般に共通する性能規定であるのに対し、この省令は風車という設備固有のリスク(暴走・振動・意図しない起動)に絞った専用の基準という位置づけになる
  20. 同省令は、風車本体だけでなく、風車を支持する工作物(タワー等の支持物)自体の構造安全性についても定めている。支持物は、自重・積載荷重・積雪荷重・風圧荷重、地震動その他の振動及び衝撃を考慮した安全な構造でなければならない。風車本体の5要件(最大速度・風圧・振動・意図しない起動・接触防止)が『風車が暴走・損傷しないこと』を対象にしているのに対し、支持物の強度要件は『風車を支えるタワーそのものが倒壊・損傷しないこと』を対象にしており、対象が異なる別の要件である
  21. 小規模な発電用風力設備については、容易に昇塔できないような措置を講じることが求められる。無関係な第三者が支持物(タワー)によじ登り、感電したり、運転中の風車に接触したりする事故を防ぐための規定であり、風車本体の安全設計とは別に、部外者の接近そのものを物理的に防ぐという発想の対策になる
  22. 変圧器・開閉器その他これらに類するもの又は電線路を、発電所・変電所・開閉所及び需要場所以外の場所に施設する場合は、通常の使用状態において、当該電気機械器具等からの電磁誘導作用により人の健康に影響を及ぼすおそれがないよう、その付近で人が占める空間の磁束密度(商用周波数)の平均値を200μT(マイクロテスラ)以下に抑えて施設しなければならない。ただし、田畑・山林その他人の往来が少ない場所で、人体に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合は、この限りでない。200μTという基準値は2011年の電技改正で導入されたもので、ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)が2010年に改定した国際ガイドラインの参考レベル(50Hz・60Hzともに200μT)を踏まえて設定された。改正の可能性があるため、実務では電気設備技術基準及び同解釈の最新版で確認すること
  23. 粉じんの多い場所に施設する電気設備は、粉じんによる絶縁性能又は導電性能の劣化に伴う感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。また、可燃性ガス・引火性物質の蒸気が存在し爆発するおそれがある場所、粉じんが存在し爆発するおそれがある場所、火薬類が存在する場所、セルロイド・マッチ・石油類その他燃えやすい危険な物質を製造又は貯蔵する場所に施設する電気設備は、通常の使用状態において、当該電気設備が点火源となる爆発又は火災のおそれがないように施設しなければならない。数値基準ではなく『点火源にならないこと』という性能規定である点が、離隔距離や接地抵抗値のような数値基準を持つ他の条文と異なる
  24. 可燃性ガス等が存在し爆発のおそれがある場所の屋内配線は、電気設備技術基準の解釈により、工事の方法が原則として金属管工事又はケーブル工事(電線に可とう性はあるが損傷を受けやすいキャブタイヤケーブルを使用するものを除く)に限られる。金属管工事の場合は薄鋼電線管又はこれと同等以上の強度のあるものを使用し、管相互及び管とボックスその他の附属品とは5山以上ねじ合わせて接続する方法その他これと同等以上の効力のある方法により堅ろうに接続する。電気機械器具に電線を引き込むときは、引込口で電線が損傷するおそれがないように施設する。『点火源とならないように』という電技(省令)の性能規定に対し、この工事方法は電技解釈が定める具体的な仕様にあたる
  25. 低圧用の配線器具(スイッチ・コンセント等)は、電気設備技術基準の解釈により次の要件で施設する。(1)充電部分が露出しないように施設する。ただし取扱者以外の者が出入りできないように措置した場所ではこの限りでない、(2)湿気の多い場所又は水気のある場所に施設する場合は防湿装置を施す、(3)配線器具に電線を接続する場合は、ねじ止めその他これと同等以上の効力のある方法により、堅ろうに、かつ、電気的に完全に接続するとともに、接続点に張力が加わらないようにする、(4)屋外において電気機械器具に施設する開閉器・接続器・点滅器その他の器具は、損傷を受けるおそれがある場合には、これに堅ろうな防護装置を施す。(1)は『充電部分に触れさせない』、(3)は『接続点を物理的に守る』というように、それぞれ異なる種類のリスク(感電、緩み・断線)に対応した要件になっている
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