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理論 ・ 1 / 16

直流回路の分圧・分流

読み終えると、こうなる

制御盤の中にある「なぜこの抵抗が2本、直列(または並列)に並んでいるのか」を見たとき、その場で狙いを言い当てられるようになる

  • 電源電圧と2つの抵抗値から、それぞれの抵抗にかかる電圧・流れる電流を暗算に近い速さで出せる。また抵抗器の許容電力(ワット数)と抵抗値から許容電流Imax=√(P/R)・許容電圧Vmax=√(P×R)を計算でき、定格の異なる抵抗器を直列・並列に組み合わせたとき、回路全体の許容電流・許容電圧を決めるのがどちらの抵抗器かを見極められる
  • 分圧回路を見て「どちらの抵抗を大きくすれば、取り出せる電圧が上がるか」を式を書かずに判断できる
  • 電流計・電圧計の内部にある抵抗(分流器・倍率器)が何をしているかを、この2つの式の応用として説明でき、抵抗の温度係数から温度が変化したときの抵抗値を計算し、一定電圧の電源につないだ回路で温度上昇時に電流がどう変化するかをオームの法則から説明できる。起電力E・内部抵抗rが等しい電池をn個並列に接続すると、合成起電力はEのまま変わらず合成内部抵抗はr/nになることを説明し、そこに負荷抵抗をつないだときの電流・消費電力を計算できる
  • 電線の直流抵抗R=ρL/A(ρは抵抗率、Lは長さ、Aは断面積)を計算でき、材質(抵抗率)・長さ・断面積が異なる複数の電線について、どれが最も抵抗が大きい(小さい)かを実際に計算して比較・判定できる
考えてみよう

制御盤を開けると、センサーの手前に小さな抵抗が2本、直列に並んでいる基板をよく見かける。 片方はセンサー本体、もう片方はただの抵抗器だ。

24Vの電源から、なぜこの2本の抵抗だけで「センサーが正常なら3V、断線したら24V近く」という 都合のいい信号を作り出せるのか。抵抗を1本追加しただけで、電圧をこちらの思い通りに 切り分けられる仕組みは何なのか。

このトピックを読み終えるころには、制御盤の中のその2本の抵抗を見て、 何のために置かれているかをその場で言い当てられるようになっている。

種明かしは、直列につながった抵抗が電圧を、並列につながった抵抗が電流を、 それぞれ抵抗値の比率で分け合うという2つの法則にある。

分圧の法則 — 直列抵抗は、電圧を「自分の抵抗値の比」で受け持つ

2つの抵抗 R1R_1R2R_2 を直列につなぎ、電源電圧 VV を加えたとき、 それぞれの抵抗にかかる電圧 V1V_1V2V_2 は次の式で求まる。

V1=V×R1R1+R2,V2=V×R2R1+R2V_1 = V \times \frac{R_1}{R_1+R_2}, \quad V_2 = V \times \frac{R_2}{R_1+R_2}

分子には「電圧を求めたい、その抵抗自身」が来る。抵抗値が大きいほど、自分が受け持つ電圧の 割合も大きくなる——というのは、オームの法則 V=IRV=IR を思い出せば当然のことだ。 直列回路には同じ大きさの電流 II が流れているから、抵抗が大きい方が V=IRV=IR の右辺も大きくなる。 分圧の法則は、オームの法則をただ2つの抵抗に同時に当てはめただけのものだ。

例題

100Vの電源に、20Ωと30Ωの抵抗を直列に接続した。30Ωの抵抗にかかる電圧は何Vか。

V30=100×3020+30=100×0.6=60VV_{30} = 100 \times \frac{30}{20+30} = 100 \times 0.6 = 60\text{V}
分圧の式は、極端な値を入れて検算すると身体になじむ。もしR1が限りなく大きく、R2がほぼ0なら、 電源電圧はほとんど全部R1にかかり、R2にはほとんど電圧がかからないはずだ。式に $R_1 \to \infty$、$R_2 \to 0$ を入れると、$V_1 \to V$、$V_2 \to 0$ になり、直感と一致する。 迷ったときはこの極端値チェックで、分子に置いた抵抗が正しいかを確かめられる。

分流の法則 — 並列抵抗は、電流を「相手の抵抗値の比」で受け持つ

並列につないだ2つの抵抗には、今度は電流が分かれて流れる。ここが分圧と紛らわしいところで、 分流だけは分子と分母の抵抗が入れ替わる。

I1=I×R2R1+R2,I2=I×R1R1+R2I_1 = I \times \frac{R_2}{R_1+R_2}, \quad I_2 = I \times \frac{R_1}{R_1+R_2}

I1I_1(R1に流れる電流)を求める式の分子に、R1ではなくR2が来ている。 なぜか。並列回路では、2つの抵抗に同じ電圧がかかっている。抵抗が小さい方が I=V/RI=V/R の分母が小さくなるので、電流はたくさん流れる。つまり抵抗が小さいほど、 自分が受け持つ電流の割合が大きくなる——分圧とは逆向きの関係だ。この「逆向き」を 式の形(分子と分母が入れ替わる)が表している。

例題

10Aの電流が流れる回路に、6Ωと4Ωの抵抗を並列に接続した。6Ωの抵抗に流れる電流は何Aか。

I6=10×46+4=10×0.4=4AI_6 = 10 \times \frac{4}{6+4} = 10 \times 0.4 = 4\text{A}

抵抗値の大きい6Ω側には、相対的に少ない電流(4A)しか流れない。抵抗の小さい4Ω側に、 残りの6Aが流れることになる。

分流の式も、極端な値で検算できる。R1が限りなく大きければ、電流はほとんどR2側(抵抗の小さい方) に流れ、R1にはほとんど電流が流れないはずだ。式に $R_1 \to \infty$ を入れると $I_1 = I \times R_2/(R_1+R_2) \to 0$ になり、直感と一致する。

電池の起電力と内部抵抗 — 見えない抵抗を連立方程式で暴く

ここまでは「値のわかっている2つの抵抗」を分け合う話だった。ここで少し視点を変えて、 電池そのものの中にも抵抗が隠れているという話をする。

実際の電池は、理想的な起電力 EE[V]と、電池内部の内部抵抗 rr[Ω]が直列につながった ものとしてモデル化できる。この電池に外部抵抗 RR[Ω]をつなぐと、回路全体は 「起電力EE、直列抵抗が(r+R)(r+R)」の単純な直列回路になる。オームの法則をそのまま当てはめると、

E=I(r+R)E = I(r+R)

という関係が成り立つ。これは、この章の冒頭で見た分圧の考え方——直列につながった抵抗に オームの法則を当てはめる——を、目に見えない内部抵抗にまで広げただけのものだ。

厄介なのは、EErrが両方とも未知数だという点だ。式1本には未知数が2つ含まれているため、 外部抵抗RRを1つの値に固定した測定を1回しただけでは、EErrを別々に決定できない。 そこで、可変抵抗Rの値を2通りに変えて、それぞれの電流を測定する

E=I1(r+R1),E=I2(r+R2)E = I_1(r+R_1), \quad E = I_2(r+R_2)

未知数が2つ(EErr)、式も2本そろったので、連立方程式として解ける。

例題

ある電池に可変抵抗Rをつなぎ、R=2Ωのとき電流3A、R=4Ωのとき電流2Aが流れた。 この電池の起電力Eと内部抵抗rを求めよ。

E=3(r+2)=3r+6,E=2(r+4)=2r+8E = 3(r+2) = 3r+6, \quad E = 2(r+4) = 2r+8

2つの式の右辺が等しいので、

3r+6=2r+8r=2Ω3r+6 = 2r+8 \quad \Rightarrow \quad r = 2\text{Ω}

r=2r=2Ωを最初の式に代入して、

E=3(2+2)=12VE = 3(2+2) = 12\text{V}

検算として2つ目の式にも代入すると 2(2+4)=122(2+4)=12V となり、一致する。

「未知数の数」と「式の本数」を先に数える癖をつけると、内部抵抗の問題で迷わなくなる。 求めたいものがE・rの2つなら、測定条件(Rの値)も2通り必要だと、式を立てる前に 見当をつけておく。3つ以上の測定値が与えられている場合も、考え方は同じで、 どの2組を選んでも同じE・rが出てくるはずだ、という検算にも使える。

電池を並列に接続すると、内部抵抗はどうなるか

ここまでは電池1個(起電力EE、内部抵抗rr)を単独で扱ってきた。制御盤の予備電源やバッテリーバックアップでは、 同じ規格の電池を複数個並列に接続して使うことがある。ここで並列接続の分流の考え方がそのまま生きてくる。

起電力EE・内部抵抗rrが等しい電池をnn個並列に接続すると、

E合成=E,r合成=rnE_{\text{合成}} = E, \qquad r_{\text{合成}} = \frac{r}{n}

起電力はそのまま(電池を並列につないでも電圧は稼げない)だが、内部抵抗は、抵抗の並列合成と同じ考え方で r/nr/nに小さくなるnn個の内部抵抗rrが並列につながった状態そのものだと考えれば、これは新しい公式ではなく、 この章の冒頭で見た分流の法則(並列抵抗の合成)をそのまま電池の内部抵抗に当てはめただけだと分かる。

例題

内部抵抗0.2Ω、起電力10Vの電池4個を並列に接続した電源に、抵抗R=0.45Ωの負荷を接続した。負荷Rで消費される 電力を求める。

r合成=0.24=0.05Ω,I=Er合成+R=100.05+0.45=20Ar_{\text{合成}} = \frac{0.2}{4} = 0.05\Omega, \qquad I = \frac{E}{r_{\text{合成}}+R} = \frac{10}{0.05+0.45} = 20\text{A} PR=I2R=202×0.45=180WP_R = I^2R = 20^2\times0.45 = 180\text{W}
並列接続にした電池の合成起電力・合成内部抵抗を求める式を迷ったら、極端な値で検算する。もし電池の個数$n$を 限りなく大きくしていくと、内部抵抗$r/n$は0に近づき、ほとんど理想的な電源(内部抵抗0)に近づいていくはずだ—— これは「電池を並列に増やすほど、大きな電流を無理なく取り出せるようになる」という実感とも一致する。逆に 起電力の方は、電池を何個並列につないでも1個分の$E$のまま変わらない。電圧を上げたいときは並列ではなく **直列**に電池をつなぐ、という基本の使い分けとあわせて押さえておきたい。

抵抗の温度係数 — 金属の抵抗は、温めると大きくなる

ここまでは抵抗値を「一定の値」として扱ってきたが、実際の金属導体の抵抗値は温度によって 変化する。多くの金属は、温度が上がると抵抗値も大きくなる。基準温度 t0t_0 での抵抗値を R0R_0、温度係数を α\alpha とすると、温度が tt になったときの抵抗値 RtR_t は次の式で求まる。

Rt=R0(1+α(tt0))R_t = R_0\bigl(1+\alpha(t-t_0)\bigr)

この式は「基準温度からの温度差」に比例して抵抗が増えていく、という単純な1次式だ。 一定電圧の電源につないだ回路でこの抵抗が発熱して温度が上がると、抵抗値が大きくなる分だけ、 オームの法則 I=V/RI=V/R より電流はその逆数倍に減っていく

例題

基準温度20℃で抵抗値100Ω、温度係数 α=0.004/C\alpha=0.004/{}^\circ\text{C} の抵抗器がある。 温度が70℃まで上昇したとき、抵抗値はいくらになるか。

R70=100×(1+0.004×(7020))=100×1.2=120ΩR_{70} = 100\times\bigl(1+0.004\times(70-20)\bigr) = 100\times1.2 = 120\Omega

この抵抗器を一定電圧の電源につないだままにしておくと、抵抗値が1.2倍になった分だけ、 電流は 1/1.20.831/1.2 \fallingdotseq 0.83 倍(約17%減)に落ち着く。

「温度が上がれば電流も増えるはず」という直感で答えると、金属導体では逆になる。抵抗値が $R_t=R_0(1+\alpha(t-t_0))$ の式で大きくなる一方、電源電圧が一定であればオームの法則 $I=V/R$ の分母が大きくなるだけなので、電流はむしろ**減る**。「発熱→抵抗増加→電流減少」 という順序を、分圧・分流と同じくオームの法則から毎回導き直す癖をつけておきたい。

電線の直流抵抗 — 材質・長さ・断面積の3つで決まる

ここまでは「抵抗値がすでに分かっている」前提で分圧・分流を計算してきた。ここで少し土台に 戻り、その抵抗値そのものが何によって決まるかを見ておく。電線1本の直流抵抗RRは、 次の式で求まる。

R=ρLAR = \rho \frac{L}{A}

ρ\rho(ロー)は材質ごとに決まった抵抗率[Ω・m]、LLは電線の長さ[m]、AAは電線の 断面積[m²]だ。長さが長いほど(電子が通る道のりが長いほど)抵抗は大きくなり、断面積が 広いほど(電子が通れる道幅が広いほど)抵抗は小さくなる——水道管の長さと太さのイメージに 近い。

例題

銅(抵抗率ρ=1.68×108\rho=1.68\times10^{-8}Ω・m)でできた、長さ200m、断面積2×1062\times10^{-6}m² (2mm²)の電線がある。この電線の直流抵抗RRを求める。

R=ρLA=1.68×108×2002×106=1.68ΩR = \rho\frac{L}{A} = \frac{1.68\times10^{-8}\times200}{2\times10^{-6}} = 1.68\text{Ω}
複数の電線を比較する問題で気をつけたいのは、「抵抗率が小さい材質だから、抵抗も小さいはずだ」 と早合点しないことだ。抵抗率$\rho$・長さ$L$・断面積$A$の3つすべてが抵抗値を決めており、 抵抗率が小さくても断面積がそれ以上に細ければ、抵抗はかえって大きくなることがある。比較問題では 必ずR=ρL/Aの式にそれぞれの数値を代入し、実際に計算してから大小を判断する。

例題(材質が違う2本の電線を比較する)

次の2種類の電線を比較する。A:銅(ρ=1.68×108\rho=1.68\times10^{-8}Ω・m)、長さ500m、断面積 3×1063\times10^{-6}m²(3mm²)。B:アルミニウム(ρ=2.75×108\rho=2.75\times10^{-8}Ω・m)、長さ500m、 断面積5×1065\times10^{-6}m²(5mm²)。

RA=1.68×108×5003×1062.8Ω,RB=2.75×108×5005×106=2.75ΩR_A = \frac{1.68\times10^{-8}\times500}{3\times10^{-6}} \fallingdotseq 2.8\text{Ω}, \qquad R_B = \frac{2.75\times10^{-8}\times500}{5\times10^{-6}} = 2.75\text{Ω}

銅(A)の方が抵抗率は小さいのに、断面積もAの方が小さい(3mm²<5mm²)ため、2つの効果が 打ち消し合い、結果はほぼ同じ(むしろわずかにAの方が大きい)という結果になる。

「抵抗率が小さい銅の方が、電線としても必ず有利(低抵抗)」とは限らない、というのがこの例の 核心だ。実際のケーブル選定でも、電線の太さ(断面積、いわゆる「サイズ」「sq」の表記)と材質の 両方を見て初めて、実際の抵抗値・電圧降下を評価できる。抵抗率だけを見て判断すると、断面積の 違いを見落として順位を誤る。

抵抗器の許容電力・許容電流 — 組み合わせると、ボトルネックが入れ替わることがある

ここまでは「抵抗値」だけを見て分圧・分流を計算してきたが、実際の抵抗器には 許容電力(定格ワット数)PP[W] という、もう1つの制約がある。これを超えて電流を 流し続けると、抵抗器は発熱して破損する。

許容電力と抵抗値RRから、その抵抗器に流せる電流の上限(許容電流)ImaxI_{max}、 かけられる電圧の上限(許容電圧)VmaxV_{max}は、電力の式P=I2R=V2/RP=I^2R=V^2/Rを逆算して 次のように求まる。

Imax=PR,Vmax=P×RI_{max} = \sqrt{\frac{P}{R}}, \qquad V_{max} = \sqrt{P \times R}

定格の異なる2つの抵抗器を直列につなぐと、回路のどこでも同じ電流が流れる。 したがって、ImaxI_{max}小さい方の抵抗器が、回路全体で流せる電流の上限を決める ——鎖の強度がいちばん弱い輪で決まるのと同じ理屈だ。一方、並列につなぐと、 それぞれの抵抗器には同じ電圧がかかる。したがって、VmaxV_{max}小さい方の抵抗器が、 回路全体にかけられる電圧の上限を決める。

ここで見落としやすいのが、$I_{max}=\sqrt{P/R}$では抵抗値$R$が分母、$V_{max}=\sqrt{P\times R}$ では抵抗値$R$が分子にある、という違いだ。そのため、直列でボトルネックになる(許容電流が 小さい)抵抗器と、並列でボトルネックになる(許容電圧が小さい)抵抗器は、**必ずしも同じ 抵抗器とは限らない**。ワット数の大小だけで「こちらが弱いはず」と決めつけず、直列なら $I_{max}$、並列なら$V_{max}$を、それぞれ実際に計算してから比べる習慣をつけたい。

例題

許容電力0.25W・抵抗値10ΩのAと、許容電力1W・抵抗値625ΩのBがある。

直列に接続したときの許容電流は、

Imax,A=0.25100.158A,Imax,B=1625=0.04AI_{max,A} = \sqrt{\frac{0.25}{10}} \fallingdotseq 0.158\text{A}, \qquad I_{max,B} = \sqrt{\frac{1}{625}} = 0.04\text{A}

小さい方のB(40mA)が直列回路全体の許容電流になる。ワット数はBの方が4倍大きいのに、 抵抗値がそれ以上(62.5倍)に大きいため、許容電流はBの方が小さくなる。

一方、並列に接続したときの許容電圧は、

Vmax,A=0.25×101.58V,Vmax,B=1×625=25VV_{max,A} = \sqrt{0.25\times10} \fallingdotseq 1.58\text{V}, \qquad V_{max,B} = \sqrt{1\times625} = 25\text{V}

今度は小さい方のA(約1.58V)が並列回路全体の許容電圧になる。直列ではBがボトルネック だったのに、並列ではAがボトルネックに入れ替わっている——これがImaxI_{max}VmaxV_{max}の式で 抵抗値RRの位置(分母か分子か)が逆転することの帰結だ。

なぜ制御盤の中で、この2つが使われているのか

分圧回路の使い道は幅広い。制御盤のセンサー回路で基準電圧を作るのはもちろん、 テスタや電圧計の中にある「倍率器」も、大きな電圧を小さな範囲に収めて測るための分圧回路だ。 一方、電流計の中の「分流器」は分流の法則を使って、大きな電流の一部だけを計器に取り込んでいる。

制御盤の断線検知回路が分圧を使う理由も、この式から読み解ける。センサーが正常なら センサー側の抵抗(R2R_2)は小さく、出力電圧は低い値で安定する。センサーが断線すると R2R_2 が限りなく大きくなり、出力電圧は電源電圧に張り付く。「断線したら電圧が上がる」 という一見直感に反する挙動は、分圧の式がそのまま説明してくれる。

冒頭の制御盤の基板で何が起きていたか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 分圧の式で、求めたい抵抗と関係ない側の抵抗を分子に置いてしまう

    なぜ引っかかるV1 = V × R1/(R1+R2) を丸暗記していると、どちらの抵抗が分子に来るべきかを取り違えやすい。分圧は「自分の抵抗が大きいほど、自分にかかる電圧も大きい」という直感と、式の形を結びつけずに覚えると起きる。

    見破り方分子には必ず「電圧を求めたい、その抵抗自身」を置く。迷ったら極端な値で検算する。R1が限りなく大きく、R2が0に近ければ、電源電圧はほぼ全部R1にかかるはずだ(V1≒V)。式に極端な値を入れて、直感と一致するか確かめればよい。

  2. 分流の式を、分圧の式と同じ比率の向きで立ててしまう

    なぜ引っかかる分圧と分流は「仲間の抵抗が大きいほど自分の取り分が増える」という点で対称的だが、分流だけは分子と分母の抵抗が入れ替わる。分圧のイメージのまま分流の式を立てると、大小関係が逆になる。

    見破り方分流も極端な値で検算する。R1が限りなく大きく、R2が0に近ければ、電流はほとんど抵抗の小さいR2側に流れるはずだ(I2≒I、I1≒0)。式のI1 = I × R2/(R1+R2) にR1→∞を入れるとI1→0になり、直感と一致することを確認できる。

  3. 3つ以上の抵抗が混ざった回路で、分圧と分流を機械的に混同する

    なぜ引っかかる直列部分と並列部分が混在する回路では、どこまでが「電圧を分け合う直列区間」で、どこからが「電流を分け合う並列区間」かの見極めが必要になる。図の見た目だけで判断すると、区間を誤って公式を当てはめてしまう。

    見破り方回路を端から辿り、電流が1本道の区間(直列=分圧が効く)と、枝分かれして再び合流する区間(並列=分流が効く)を先に色分けしてから式を立てる。

  4. 電池の内部抵抗を求める問題で、1組の(R,I)の測定値だけからrを求めようとしてしまう

    なぜ引っかかるE=I(r+R)という式1本には未知数がE・rの2つ含まれるため、測定が1組だけでは式が1本しか立たず、E・rを別々に決定できない。分圧・分流のように既知の抵抗だけで完結する問題に慣れていると、この『未知数が2つある』という感覚が抜け落ちやすい

    見破り方式を立てる前に、求めたい未知数の数(E, rの2つ)と、使える独立した式の本数を数える。未知数が2つなら、Rを変えて測定した(R,I)の組も2組必要になる、と条件を数え上げてから計算に入る

  5. 起電力E・内部抵抗rが等しい電池をn個並列に接続したとき、合成起電力もn倍になる、あるいは合成内部抵抗がそのままrのままだと思い込んでしまう

    なぜ引っかかる『電池を並列につなぐ=電圧を稼ぐ』という直流回路の直感(実際には電池を並列につないでも電圧は増えない)や、『並列=抵抗が小さくなるはずだが、電池自体の性質は変わらないはず』という思い込みから、起電力・内部抵抗のどちらか一方の変化を見落としやすい。

    見破り方並列接続は『同じ電圧源をn個束ねて、電流を供給する余力を増やす』接続だと捉え直す。起電力Eは変わらず(電池1個の電圧のまま)、内部抵抗だけが抵抗の並列合成と同じ考え方でr/nに下がる、と2つの量を別々に確認する。極端な値で検算すると分かりやすい——nを非常に大きくすると、合成内部抵抗はほぼ0Ω(理想電源に近づく)になるはずで、式r/nはn→∞でこの直感と一致する。

  6. 抵抗器の温度が上昇すると、一定電圧の電源につないだ回路の電流も比例して増えると考えてしまう

    なぜ引っかかる『温度が上がる=エネルギーが増える=電流も増える』という漠然とした直感で考えると、抵抗値そのものが温度とともに大きくなり、電流はむしろ減るという関係を見落としやすい。

    見破り方まず温度係数の式Rt=R0(1+α(t-t0))で抵抗値がどう変化するかを求め、その次にオームの法則I=V/R(Vは一定)に当てはめて電流を計算する、と2段階に分けて考える。抵抗が大きくなれば、電流は必ず逆方向(減る側)に動く。

  7. 抵抗率ρだけを見て、複数の電線のうちどれが最も抵抗が大きいかを判断してしまう(断面積・長さの違いを見落とす)

    なぜ引っかかる『抵抗率が小さい金属ほど電気を通しやすい』という知識だけが強く残っていると、実際の抵抗値R=ρL/Aを決めるもう2つの要素(長さ・断面積)を見落とし、抵抗率の大小だけで順位をつけてしまう。

    見破り方電線どうしを比較する問題が出たら、必ずR=ρL/Aの式にそれぞれの値を代入して実際にRを計算する。抵抗率が小さくても断面積がそれ以上に小さければ、Rはかえって大きくなることがある、と式を計算せずに感覚だけで順位をつけない。

  8. 定格ワット数(許容電力)が大きい抵抗器の方が、直列につないだときの許容電流も大きいはずだと思い込んでしまう

    なぜ引っかかる『ワット数が大きい=タフな部品』という漠然としたイメージで比較すると、許容電流Imax=√(P/R)が抵抗値Rにも左右されることを見落とす。ワット数が大きくても抵抗値がそれ以上に大きければ、許容電流はむしろ小さくなる。

    見破り方比較したい抵抗器ごとにImax=√(P/R)を実際に計算してから大小を比べる。ワット数だけを見て順位をつけない。直列回路ではImaxが小さい方の抵抗器が、回路全体の許容電流という『鎖の一番弱い輪』になる。

参考文献・出典

理解度チェック(15問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、15問で確認しよう。 内訳は基本5問・応用6問・ひっかけ4問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 15 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 直列抵抗は電圧を、自分の抵抗値の比率で分け合う(分圧の法則):V1 = V × R1/(R1+R2)
  2. 並列抵抗は電流を、自分の抵抗値の逆比率で分け合う(分流の法則):I1 = I × R2/(R1+R2)(分子と分母の抵抗が入れ替わる点に注意)
  3. 分圧は「大きい抵抗ほど多くの電圧を受け持つ」、分流は「小さい抵抗ほど多くの電流を受け持つ」——効き方が逆向きになる
  4. 内部抵抗rを持つ電池は、起電力Eと抵抗rを直列につないだものとみなせる。外部抵抗Rをつないだときの電流Iとの関係はE=I(r+R)。未知数E・rの2つを求めるには、Rを変えて2組の(R,I)を測定し、連立方程式を解けばよい
  5. 起電力E・内部抵抗rが等しい電池をn個並列に接続すると、合成起電力はEのまま変わらないが、合成内部抵抗はr/nに小さくなる(内部抵抗どうしがn個並列につながるため)。負荷抵抗Rをつないだときの電流はI=E/(r/n+R)で求まる
  6. 金属導体の抵抗値は温度が上がると大きくなる。基準温度t0での抵抗R0、温度係数αを使うとRt=R0(1+α(t-t0))。電源電圧が一定なら、抵抗が大きくなった分だけ電流はその逆数倍に減る(I=V/Rより)
  7. 電線の直流抵抗はR=ρL/A(ρ:抵抗率[Ω・m]、L:長さ[m]、A:断面積[m²])で決まる。抵抗率が小さい材質でも、断面積がそれ以上に細ければ抵抗はかえって大きくなることがあるため、複数の電線の抵抗を比較するときは抵抗率だけでなく長さ・断面積も必ず式に入れて計算する
  8. 抵抗器には許容電力(定格ワット数)P[W]があり、そこから逆算した許容電流Imax=√(P/R)を超えて電流を流すと発熱で破損する。定格の異なる抵抗器を直列につなぐと同じ電流が流れるため、Imaxが小さい方(抵抗値が大きく、許容電力に対して電流の余裕が少ない方)が回路全体の許容電流を決める。並列につなぐと同じ電圧がかかるため、許容電圧Vmax=√(P×R)が小さい方が回路全体の許容電圧を決める——直列で足を引っ張る抵抗器と、並列で足を引っ張る抵抗器は、必ずしも同じ抵抗器とは限らない
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