テスタ(回路計)の電流測定レンジには「50mA」「500mA」のように複数の目盛がある。 だが計器の心臓部である可動コイルは、そのままでは数mA程度しか流せない繊細な部品だ。 壊すことなく、切ることもなく、レンジを切り替えるだけで500mAまで測れてしまうのはなぜか。
同じテスタで電圧レンジを1V、10V、100Vと切り替えられるのも、実は仕組みは同じだ。
このトピックを読み終えるころには、テスタやクランプメータの中で何が起きているかを、 計器の内部抵抗という1つの数字から言い当てられるようになっている。
種明かしは、計器本体に小さな抵抗をもう1本、並列か直列で足すだけという単純な仕組みにある。 並列に足せば分流器、直列に足せば倍率器と呼ぶ。
分流器 — 電流計の測定範囲を広げる並列抵抗
可動コイル形電流計のコイルには、内部抵抗 と、安全に流せる上限の電流(定格電流) がある。 このコイルより大きな電流 を測りたいとき、コイルと並列に抵抗 (分流器)を追加し、 超過分の電流をそちらへ迂回させる。
コイルと分流器は並列だから、両端にかかる電圧は等しい。コイルに定格の だけを流し、 残り を分流器に流すとすると、
これを整理すると、測定倍率 と分流器の抵抗の関係が求まる。
例題
内部抵抗9Ω、定格電流1mAの電流計を使い、最大10mAまで測定できるようにしたい。 必要な分流器の抵抗はいくらか。
倍率器 — 電圧計の測定範囲を広げる直列抵抗
電圧計も仕組みは同じだが、接続の向きが逆になる。可動コイル形電圧計は、内部抵抗 のコイルで 定格電圧 まで測れるようにできている。これより大きな電圧 を測りたいとき、コイルと 直列に抵抗 (倍率器)を追加し、超過分の電圧をそちらに肩代わりさせる。
直列だから流れる電流は共通で、
これを整理すると、
分流器の式が割り算( を で割る)だったのに対し、倍率器の式は掛け算 ( に を掛ける)になる点が、分圧・分流の関係と同じく対になっている。
例題
内部抵抗1kΩ、定格電圧1Vの電圧計を使い、最大5Vまで測定できるようにしたい。 必要な倍率器の抵抗はいくらか。
複数レンジの電圧計 — 倍率器を鎖でつなぎ、差分で各段の抵抗を求める
ここまでの倍率器は、1つの計器に対して1つの測定範囲だけを作る話だった。だが実際の テスタやパネルメータは、1台で複数のレンジ(例:5V・10V・50V)を切り替えられる。
このとき、レンジごとに独立した倍率器を1本ずつ用意して都度スイッチで抜き差しする方式は 避けたい。切り替えの瞬間にコイルが一時的にどの抵抗ともつながらない(無防備な)状態が 生じ、そこに電圧がかかるとコイルを壊してしまう危険があるからだ。実務では、複数の抵抗 、、…を直列につないだ抵抗の鎖を用意し、切り替えスイッチで 「端子をこの鎖のどの位置につなぐか」だけを変える方式がとられる。この方式なら、 切り替えの前後どちらでもコイルは必ずどれかの抵抗を通じて保護された状態を保てる。
各段の抵抗値を求める考え方は、単一レンジの倍率器の式をそのまま応用できる。あるレンジの 測定倍率を とすると、そのレンジまでの倍率器部分の合計抵抗(コイル自身を 除いた、直列につながる抵抗すべての合計)は になる。ここで注意したいのは、 2段目以降のレンジでは、この合計値の中に手前のレンジですでに求めた抵抗が含まれている という点だ。新しく求めたい抵抗は、合計値から手前の分を差し引いた差分になる。
例題
内部抵抗100Ω、定格電圧1Vの可動コイル形電圧計に、倍率器として・・を 直列にした抵抗の鎖を接続し、測定範囲を5V・10V・50Vの3段階に切り替えられるようにしたい (5Vレンジは端子をの先に、10Vレンジは端子を・の先に、50Vレンジは 端子を・・すべての先につなぐ)。
まず5Vレンジ()は、単一レンジの倍率器の式そのままでよい。
次に10Vレンジ()は、の合計が倍率器部分にあたる。
最後に50Vレンジ()も同様に、の合計から、すでに求めた を差し引く。
計器の種類 — 何を利用して、直流・交流のどちらを測れるか
計器は内部で使っている物理現象によって、直流専用か交流・直流両用かが決まる。
- 可動コイル形:永久磁石の磁界中で可動コイルに働く力(フレミング左手の法則)を利用する。 力の向きが電流の向きで決まるため直流専用。交流を測るには整流器を組み合わせる。
- 可動鉄片形:固定コイルが作る磁界の中で、鉄片同士が反発・吸引する力を利用する。 電流の向きが変わっても鉄片の動く向きは変わらないため、交流・直流の両方に使える (実用上は商用周波数の電流計・電圧計に多く使われる)。
- 電流力計形:2つのコイル間に働く力(電流の積に比例)を利用する。電力計に使われることが多く、 交流・直流の両方に対応する。
- 熱電形:電流による発熱を利用し、その熱を熱電対で電気信号に変える。実効値を指示し、 直流から高周波の交流まで使える。
- 静電形:帯電した金属板の間に働く静電気力を利用する。主に高電圧の測定に使われる。
- 整流形:ダイオードによる整流回路と可動コイル形計器を組み合わせたもの。可動コイル自体は 直流(整流した波形の平均値)しか指示できないため、交流専用として扱われる。平均値整流形 は、正弦波を前提に、平均値を波形率(約1.11)倍した「実効値相当」で目盛が付けられている (実効値・平均値・波形率のトピックで見た『平均値応答実効値表示』の中身がまさにこれだ)。 整流形には平均値整流形のほかに近似実効値整流形という種類もあり、横河のカタログには両方が 記載されている(後者の仕組みの詳細はここでは扱わない)。
- 誘導形:交流の磁束が時間とともに変化することで、導体(アルミ円板など)の中に渦電流を 誘導し、その渦電流と磁束との間に働く力で駆動する仕組み。磁束が時間変化しない直流では 渦電流そのものが発生しないため、交流専用になる。電力量計(積算電力計)に使われる 円板がゆっくり回転する仕組みは、この誘導形の動作原理そのものだ。
電流計・電圧計を回路に入れるときの心得
計器は測定対象の回路にどう接続されるかによって、内部抵抗の理想の向きが正反対になる。
電流計は回路に直列に割り込む。計器自身の抵抗が回路の合計抵抗に上乗せされてしまうため、 内部抵抗はできるだけ小さい方が、測定によって元の電流を変えてしまう影響が小さい。
電圧計は測定したい2点間に並列に接続する。計器に流れ込む電流は、測定対象の回路から 奪われた電流であり、内部抵抗が小さいほど多くの電流を奪って本来の電圧を変えてしまう。 だから電圧計の内部抵抗はできるだけ大きい方がよい。
これは分圧・分流の考え方の応用でもある。制御盤の中でセンサー回路の電圧をテスタで測ろうとして、 そのテスタの内部抵抗がセンサー側の抵抗と同程度に低いと、テスタをつないだ瞬間に回路の電圧配分が 変わってしまい、正しい値が読めない――という現象は、まさにこの負荷効果そのものだ。
なお計器の精度は「階級指数」(例:0.5級)として表され、これは最大目盛に対する許容誤差の パーセンテージを意味する。0.5級の計器なら、最大目盛の±0.5%以内の誤差に収まることが保証される。
ゼーベック効果 — 熱電形計器の中で起きている現象
熱電形計器の項目で「熱電対」という言葉が出てきたが、この熱電対の中で実際に起きている 現象を見ておこう。
種類の異なる2本の金属線A・Bをつなぎ合わせて1つの閉回路を作り、その2つの接合点を 互いに異なる温度に保つと、回路に起電力が生じて電流が流れる。 この現象を ゼーベック効果という。温度差だけで電気が生まれるこの性質を利用した温度センサーが 熱電対であり、電力測定用の熱電形計器の検出素子としても使われている。
なお、ゼーベック効果とは逆に、閉回路に外部から電流を流すことで、2つの接合点に 吸熱・発熱という形の温度差を生じさせる現象もある。これをペルチェ効果と呼ぶ。 「温度差→電気」がゼーベック効果、「電気→温度差」がペルチェ効果と、原理が逆向きの 対になっている。
現場でよく使う計器 — クランプメータ・絶縁抵抗計・接地抵抗計・電子電圧計
ここまで見た可動コイル形・可動鉄片形などは、計器の「内部構造」による分類だった。ここからは、 現場で実際に手に取る計器を、何を測るための道具かという観点で整理する。
- クランプメータ:電線を切ることなく、電線の周りにできる磁界を検知して電流を測る計器。 1本の電線だけをクランプ(挟み込む)して測定する。往復2本の電線をまとめてクランプすると、 行きと帰りの電流が作る磁界が互いに打ち消し合ってしまい、正しく測定できない点に注意したい。
- 電子電圧計:増幅器と可動コイル形計器を組み合わせた計器で、増幅器を挟むことで内部抵抗を 非常に大きくできる。内部抵抗が大きいほど負荷効果(測定対象から電流を奪ってしまう影響)が 小さくなるため、微小な電圧から高い電圧まで、より正確に測定できる。
- 絶縁抵抗計(メガー):電線と大地の間、あるいは機器内部の導体と外装(大地)の間の絶縁が どれだけ保たれているかを測る計器。屋内配線や機器の絶縁劣化を点検する目的で使う。
- 接地抵抗計:接地電極そのものと大地との間の抵抗(接地抵抗)を測る計器。絶縁抵抗計とは 測る対象がまったく異なる(絶縁抵抗計は「絶縁がどれだけ保たれているか」、接地抵抗計は 「接地がどれだけ確実に大地とつながっているか」)ため、名前が似ていても混同しないようにしたい。
ホイートストンブリッジ — 検流計の指示が0になる一点から、未知抵抗を割り出す
分流器・倍率器は「すでに分かっている抵抗値」を使って測定範囲を広げる仕組みだった。逆に、 分かっていない抵抗の値そのものを精密に求めたいときに使われるのが、ホイートストン ブリッジという回路だ。
4つの抵抗をひし形に配置する。上側2辺を(左)・(右)、下側2辺を既知の可変抵抗 (左)・測定したい未知抵抗(右)とし、上側と下側の中間点どうしを検流計でつなぎ、 左右の両端に電源をつなぐ。
の値を少しずつ調整していくと、ある値でちょうど検流計の指示が0になる瞬間が訪れる。 これをブリッジが平衡した状態と呼ぶ。検流計に電流が流れないということは、上側の -と下側の-が、それぞれ独立した分圧回路としてまったく同じ比率で 電圧を分けていることを意味する。この条件を整理すると、次の関係が得られる。
例題
上側2辺の抵抗をP=40Ω・Q=60Ω、下側2辺を既知の可変抵抗S=120Ω・未知抵抗とし、 Sをちょうど120Ωに調整したところ検流計の指示が0になった。を求めよ。
このホイートストンブリッジの原理は、抵抗の一部を目盛り付きの滑り抵抗器に置き換えた 「メーターブリッジ」など、実務で使う精密抵抗測定器の基本構成にもなっている。テスタの 簡易的な抵抗レンジでは得られない高い精度で未知抵抗を測定できるのは、平衡という 「電流が正確に0になる一点」を基準にしているためだ。
交流ブリッジ — 複素数のインピーダンスで未知の抵抗・リアクタンスを求める
ホイートストンブリッジは直流回路で未知の抵抗を求める仕組みだったが、同じ「対辺の積が 等しくなる」平衡の考え方を、交流回路の未知のインピーダンス(抵抗分+リアクタンス分)に 拡張したものが交流ブリッジだ。4つのアームの抵抗・・・を、複素数の インピーダンス・・・に置き換えるだけで、平衡条件は DCブリッジとまったく同じ対辺の積が等しいという形で書ける。
ここで注意したいのは、インピーダンスが複素数だという点だ。この1つの式は、見た目こそ DCブリッジと同じでも、中身は実部どうし・虚部どうしという2つの実数の条件を同時に 表している。未知インピーダンスには、抵抗分とリアクタンス分 という2つの未知数があるため、これを決めるには可変にできる素子も2つ(例えば可変抵抗と 可変コンデンサ)用意し、両方を調整して初めて検流計(交流用のため、実際には交流用の検出器) の指示がちょうど0になる平衡点にたどり着ける。
例題
交流ブリッジの4つのアームのインピーダンスを・・・とし、 平衡条件が成り立っているとする。 (純抵抗)、(純抵抗)、のとき、未知インピーダンス を求める。
実部(抵抗分)が、虚部(リアクタンス分)が(正の符号=誘導性、 つまりコイル的な性質)と求まる。
交流ブリッジの計算で迷ったら、まず対辺の積が等しいという式の形はDCブリッジと同じだと 確認してから、右辺・左辺を複素数のまま掛け算・割り算する。虚部の符号(+ならコイル的、 −ならコンデンサ的な性質)を最後まで残しておくことが、未知インピーダンスの正体(抵抗と コイルの直列か、抵抗とコンデンサの直列か)を判断する手がかりになる。
偏位法と零位法 — 「指針を読む」測定と「つり合わせる」測定
ここまで見てきた計器を、測定のやり方という切り口で見直すと、大きく2つに分類できる。
- 偏位法:指示計器の指針が振れる大きさを、そのまま測定量として読み取る方法。 分流器・倍率器を組み合わせた電流計・電圧計は、この偏位法にあたる。
- 零位法:既知量(可変抵抗や基準電圧など)を調整して測定量とつり合わせ(平衡させ)、 そのときの既知量の大きさから測定量を求める方法。ホイートストンブリッジは、この 零位法の代表例だ。
零位法は、検流計の指示がちょうど0になる一点だけを基準にするため、指針の目盛の 精度(読み取り誤差)に左右されにくく、偏位法よりも高精度な測定ができる。
電位差計 — 未知の直流電圧を、電流を流さずに測る零位法の計器
ホイートストンブリッジが零位法で未知の抵抗を測る計器だったのに対し、同じ零位法の 考え方で未知の直流電圧を測る計器が電位差計(ポテンショメータ)だ。
すべり抵抗器(全体の抵抗)に、安定した既知の電圧の電池を接続すると、 すべり抵抗器の上には一様な電圧勾配ができる。一端から接触子までの抵抗をとすると、 その位置での電圧はになる。ここへ未知の直流電圧を、 検流計を介して接続し、接触子の位置()を調整していく。検流計の指示がちょうど 0になった(平衡した)瞬間、その位置の電圧とが等しくなっているので、
という式で未知電圧を求められる。
例題
すべり抵抗器(全体の抵抗)に電池を接続し、 一様な電圧勾配を作った。すべり抵抗器の一端から接触子までの抵抗がの とき、未知の直流電圧をつないだ検流計の指示がちょうど0になった。を求めよ。
電位差計の最大の利点は、平衡した瞬間には検流計に電流が流れていない、という点にある。 電圧計を直接つないで測定する方式は、電圧計自身にも電流が流れ込む(負荷効果)ため、 測定対象の電圧をわずかに変えてしまう。電位差計は平衡点では電流が0なので、この負荷効果が 理論上まったく生じない——ホイートストンブリッジが精密な抵抗測定器であるのと同じ理由で、 電位差計は精密な電圧測定器として使われる。電位差計とホイートストンブリッジは、どちらも 「すべり抵抗器+検流計で平衡点を探す」という見た目は似ているが、前者は未知電圧を、 後者は未知抵抗を求めるという点で、測定対象がまったく違う点を区別しておきたい。
電位差計で起電力が分かれば、内部抵抗は電流1回の測定で求まる
分圧・分流の単元では、電池の起電力と内部抵抗がどちらも未知のとき、外部抵抗を 2通りに変えて2組のを測定し、連立方程式、を解く 方法を見た。未知数が2つ(、)だから、式も2本必要だった。
ここで電位差計を使うと、この手間を1回分減らせる。電位差計の平衡点で求まる電圧は、 電流が流れていない状態の値、すなわち電池の起電力そのもの(端子電圧ではない) だったことを思い出そう。このが電位差計によって先に正確に分かっていれば、残る未知数は 内部抵抗の1つだけになる。既知抵抗を接続して電流を1回だけ測定すれば、
という式1本だけでを求められる。未知数の数と、必要な測定(式)の本数を一致させる、 という分圧・分流の単元と同じ考え方だが、電位差計によってという未知数を先に1つ 消しておける分、必要な測定回数が2回から1回に減る。
例題
すべり抵抗器(全体の抵抗)に電池を接続し、未知の電池 を検流計を介して接続した。接触子までの抵抗がのとき検流計の指示が ちょうど0になった。
続いて、この電池に既知抵抗を接続してアンメータで電流を測定したところ であった。内部抵抗を求める。
電流計を使って電力を測ると、なぜ誤差が生じるのか
電流計・電圧計はそれぞれ単体で電流・電圧を測る道具だが、両方の指示値を掛け合わせれば 「電力(V×I)」も測定できる。ただし、この方法には計器自身が回路に割り込むことによる 誤差が必ず紛れ込む。
電流計を負荷に直列に入れ、電圧計で「電流計+負荷」の両端電圧を測る配線 (電流計内接法と呼ばれる)を考える。このとき電圧計は、負荷だけでなく電流計の 内部抵抗の分の電圧降下まで含めて測ってしまう。
測定した電力 を計算すると、
真の負荷電力は (電流計を通っているのは負荷と同じ電流 そのものなので、 ここには誤差がない)。測定値には、そこに電流計自身の電力損失 が 上乗せされている。
誤差率を計算すると、
分子・分母に共通する が約分されて消えるため、誤差率は電流の大きさによらず、 電流計と負荷の抵抗の比だけで決まる。
例題
負荷抵抗R=250Ω、電流計の内部抵抗Ra=2Ωの回路を、電流計内接法で配線し、電力を測定した。 誤差率を求める。
絶対誤差と相対誤差(誤差率)— 測定値と真の値の「ズレ」を数字にする
先ほどの電流計内接法の誤差率は、電流計の内部抵抗が原因で生じる誤差の特殊な例だった。 ここでは、測定にまつわる誤差そのものを表す、より一般的な2つの物差しを整理しておく。
測定機器や測定方法にはどうしても限界があり、測定値は、真の値と完全には一致しない。 このズレの大きさを表すのが絶対誤差だ。
絶対誤差はズレの量そのものであり、単位は測定量と同じ(電圧ならV、抵抗ならΩ)になる。 しかし絶対誤差の大きさだけでは、そのズレが測定全体から見て大きいのか小さいのか判断しにくい。 たとえば1Ωのズレは、10Ωの抵抗を測っているなら重大だが、10000Ωの抵抗を測っているなら ごくわずかだ。そこで、絶対誤差を真の値に対する比率(百分率)で表したものが 相対誤差(誤差率)だ。
例題
電圧降下法によって抵抗Rの値を測定したところ、測定値は24.80Ωであった。この抵抗の 真の値が24.60Ωであるとき、絶対誤差と相対誤差を求める。
ディジタル計器 — A-D変換・量子化・オートレンジ
ここまで見てきた可動コイル形・可動鉄片形などの計器は、指針の振れというアナログ量で 測定値を表示する仕組みだった。現在の現場で広く使われているディジタルテスタやディジタル オシロスコープは、この振れをいったん数値に変換してから表示・記録する。
- A-D変換器(アナログ-ディジタル変換器):入力された連続的な電圧・電流を、ディジタルの 数値データに変換する回路。方式にはいくつかの種類があり、精度を確保しやすい二重積分形 などが用いられることがある。
- 量子化:連続的に変化するアナログ量を、何段階かの離散的な値で近似する操作。A-D変換の 核心はこの量子化にある。
- 読み取り誤差:ディジタル計器は測定値が数字でそのまま表示されるため、アナログ計器の ように指針の位置を目分量で読み取る必要がなく、読み取りの間違いが少ない。
- オートレンジ:測定可能な範囲(レンジ)を手動で切り換える必要がない機能。測定値の およその大きさが分からない場合(未知の回路を初めて当たるときなど)に特に便利な機能だ。
- ディジタルオシロスコープ:入力波形をA-D変換していったんメモリに取り込んでから画面に 描画する仕組みのため、周期的な繰り返しトリガに頼るアナログ(ブラウン管)オシロスコープと 異なり、サージ電圧のような周期性のない単発の信号波形も記録・測定できる。
SI組立単位の関係 — 固有の名称を持つ単位を、他の単位で書き換える
電気の量には、ボルトやアンペアのような基本的な単位のほかに、ファラド[F]・ワット[W]・ ジーメンス[S]・テスラ[T]・ウェーバ[Wb]のように固有の名称を持つSI組立単位がある。 これらはすべて、量の定義式に立ち返れば、他の単位の組み合わせで書き換えられる。
- F(ファラド、静電容量): より 。電荷の単位はクーロン[C]なので、
- W(ワット、電力):電力は仕事率、つまり単位時間あたりのエネルギーなので、
- S(ジーメンス、コンダクタンス):抵抗の逆数(電流の通しやすさ)なので、 オームの法則を変形して
- T(テスラ、磁束密度):磁束を面積で割った量なので、
- Wb(ウェーバ、磁束):電磁誘導の法則を時間で積分すると となるため、
例題
電力の単位ワット[W]を、他のSI単位の組み合わせで表すとどうなるか。
冒頭のテスタのレンジ切り替えで何が起きていたか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題で してみよう。