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理論 ・ 14 / 16

半導体とダイオード・トランジスタ

読み終えると、こうなる

制御盤の基板に並ぶ小さな部品(ダイオード・トランジスタ)を見たとき、それが電流の向きや大きさをどう制御しているかを、内部の仕組みから説明できるようになる

  • p型・n型半導体それぞれの多数キャリアが正孔か電子かを区別でき、ダイオードの順方向・逆方向特性から整流回路が交流を脈流(直流的な波形)に変える仕組みを説明できる(順方向で電流が流れているとき、電流の向きと実際の電子の移動する向きが逆になる点も含む)。サイリスタがp形・n形の4層構造でありながら端子はアノード・カソード・ゲートの3本しかないこと、ゲート信号で一度オンにすると信号を止めても導通し続け、オフに戻すにはアノード電流を保持電流以下に減らす必要があることも説明できる。真性半導体は温度が上昇するとキャリア(電子・正孔対)の数が増えるため抵抗率がむしろ減少する(温度上昇で抵抗値が増加する金属導体とは逆の性質を持つ)ことも説明できる
  • トランジスタの電流増幅率hFEからベース電流とコレクタ電流の関係を計算でき、小さな電流で大きな電流をオン・オフする『スイッチ』としても使われる理由を説明できる
  • FET(電界効果トランジスタ)がゲート電圧でチャネルを制御する仕組みと、接合形・MOS形(デプレッション形・エンハンスメント形)の違いを説明でき、BJT(バイポーラトランジスタ)とFETを消費電力・静電気への強さ・電流を運ぶキャリアの種類(単極・両極)の観点で比較できる。ホール効果の仕組みも理解し、p形・n形半導体では同じ向きの電流・磁界を加えても発生するホール電圧の極性が反対になる理由を説明でき、シリコン・ゲルマニウムのような単元素半導体と、ガリウムヒ素・インジウムリンのような化合物半導体を区別し、半導体内でキャリヤ濃度が一様でない場合に生じる拡散電流が濃度勾配にほぼ比例することも説明できる。光電効果(金属や半導体の表面に光を当てると電子(光電子)が飛び出す現象)についても、ある振動数以上の光でなければ光電子が放出されない(しきい値振動数)という光の粒子性を、熱電子放出とは異なる現象として区別できる
  • NANDゲートの真理値表から出力を求められ、CMOS(相補型MOS)がpチャネル・nチャネルのMOSFETを相補的に組み合わせて低消費電力でH/Lの2値を出力する仕組みを説明でき、マルチバイブレータを非安定(発振)・単安定・双安定の3種類に分類してそれぞれの動作の違いを説明できる
考えてみよう

制御盤の電源基板を開けると、黒い小さな部品が何個も並んでいる。ダイオードとトランジスタだ。 どちらも見た目は地味だが、電源回路や信号回路の心臓部を担っている。

なぜダイオードは、電流を「一方向にしか」流さないのか。そしてトランジスタは、 指先で触れるかどうかというごく小さな電流で、モーターやランプを動かすほどの 大きな電流をコントロールできるのか。

このトピックを読み終えるころには、制御盤の基板にあるこれらの部品を見て、 それぞれが何のためにそこに置かれているかを説明できるようになっている。

種明かしは、半導体という材料が持つ、ちょっと変わった性質にある。銅のように 電気を常によく通す「導体」でも、ゴムのように常に通さない「絶縁体」でもない。 条件次第で、電気を通したり通さなかったりする——その中間的な性質を利用して、 ダイオードやトランジスタという部品が作られている。

p型半導体とn型半導体 — 電気を運ぶ担い手が違う

半導体の代表格であるシリコンに、ごくわずかな不純物を混ぜる(ドーピングする)ことで、 性質の異なる2種類の半導体が作られる。

  • p型半導体:電子が1個足りない「正孔(ホール)」が多数できる。正孔はプラスの電荷を 運ぶ担い手のようにふるまい、多数キャリアは正孔になる。
  • n型半導体:逆に電子が余った状態になり、多数キャリアは電子になる。

「p」はpositive(正孔)、「n」はnegative(電子)の頭文字と対応させて覚えると、 取り違えにくい。

半導体の抵抗率と温度 — 金属とは逆に、温めるほど電気を通しやすくなる

電線や抵抗器のトピックで、金属導体は温度が上がると抵抗値が増加する(温度係数 α\alphaがプラス)ことを見た。ところが半導体、特に不純物をほとんど含まない 真性半導体では、温度と抵抗率の関係が金属とは逆向きになる。

金属導体の抵抗が温度とともに増える理由は、温度が上がるほど結晶格子の振動が激しくなり、 自由電子の移動がその振動に妨げられやすくなるためだった。半導体では、これとは別の効果が 支配的に働く。真性半導体では、熱エネルギーによって新たに自由電子・正孔の対(キャリア) が次々に生成される。温度が上がるほどこのキャリアの数が急激に増えるため、格子振動による 妨げの効果よりもキャリア数の増加による効果の方がはるかに大きく、抵抗率はむしろ減少する。

「温度が上がると抵抗が増える」という金属導体の知識をそのまま半導体に持ち込むと、この 逆転を見落とす。金属は「通り道を妨げるものが増える」ことで抵抗が増えるのに対し、 半導体は「電気を運ぶ担い手(キャリア)そのものが増える」ことで抵抗が減る——両者は そもそも温度変化が効いている対象(妨げの強さか、担い手の数か)が違う、と原因から 区別しておくと取り違えない。

この性質は、実務ではサーミスタ(温度センサの一種)として利用されている。温度が上がると 抵抗値が下がるNTC(Negative Temperature Coefficient)型サーミスタは、まさにこの半導体の 性質をそのまま応用した部品で、制御盤の温度監視回路や、モーター巻線の温度保護回路などに 組み込まれている。

ダイオード — 電流を一方向にしか通さない

p型半導体とn型半導体を接合すると、境目(PN接合)に特殊な性質が生まれる。これがダイオードの 基本構造だ。

  • 順方向(p型側=アノードの電位が、n型側=カソードより高い):低い抵抗で電流を通す
  • 逆方向(カソード側の電位がアノードより高い):ほぼ電流を通さない
ダイオードの記号は矢印の形をしていて、矢印の向き(アノードからカソードへ)が 「電流を通せる向き」と一致している。逆方向には矢印の先に壁があるイメージを持つと、 順方向・逆方向を図から即座に読み取れるようになる。

ここで、ふと見落としやすい点がある。順方向電圧を加えて電流が流れているとき、電流の向きは 「アノードからカソードへ」だが、素子の中を実際に移動している電子は、これと逆向き (カソードからアノードへ)に動いている。電流の向きは「正の電荷が動く向き」と決められた 約束にすぎず、負の電荷を運ぶ電子の実際の移動方向とは常に逆になる——これはダイオードに 限らず、電気を流すすべての場面に共通する電流の基本規約だ。

この「一方向にしか電流を通さない」性質を利用して、交流を直流的な波形に変換する回路が 整流回路だ。ダイオード1本を使う半波整流では、交流の片側の半周期だけが取り出され、 出力は0Vと正の値のあいだを行き来する脈流(波打つ直流)になる。ここで注意したいのは、 「整流=交流が直流に変わる」という説明だけを覚えていると、電池のような完全に平らな 直流電圧が得られると誤解しやすい点だ。実際には脈を打った波形にすぎず、平滑な直流にするには、 コンデンサ等による平滑化という別の工程が必要になる。制御盤の中でACをDCに変換して 基板やリレーの電源を作る回路には、整流と平滑化がセットで使われている。

特殊なダイオード — あえて逆方向を使う部品たち

ここまでのダイオードは、順方向に電流を通す性質を整流に使うものだった。だが実務で 使われるダイオードには、逆方向電圧をかけたときに起きる特殊な現象を積極的に 利用するものもある。「順方向で使うか、逆方向で使うか」で整理すると分かりやすい。

  • 可変容量ダイオード(バリキャップ)逆方向に電圧を加えて使う。逆方向電圧を 大きくするほどPN接合部の空乏層が広がり、コンデンサの極板の間隔が広がるのと同じ 理屈で静電容量が小さくなる。この「電圧で容量を変えられる」性質を利用して、 ラジオやテレビの同調回路(受信するチャンネル・周波数を選ぶ回路)に使われる。
  • 定電圧ダイオード(ツェナーダイオード):こちらも逆方向に電圧を加えて使う。 逆方向電圧をある値(ツェナー電圧)まで大きくすると降伏(ツェナー降伏)という 現象が起き、それ以降は流れる電流が変化しても両端の電圧がほぼ一定に保たれる。 この性質を利用して、基準電圧源や簡易的な定電圧回路に使われる。
  • 発光ダイオード(LED)順方向に電流を流して使う。おなじみの表示灯・ 照明用途で、電流を流すと発光する。
  • レーザダイオード:LEDと同じく順方向に電流を流して使うが、大きな電流を 流すことでPN接合部に誘導放出という現象を起こし、位相のそろったレーザー光を 発生させる。光ファイバ通信や光ディスクの光源に使われる。
逆方向で使うのはバリキャップ(容量を変える)とツェナーダイオード(電圧を一定に保つ)。 順方向で使うのはLEDとレーザダイオード(どちらも電流を流して光らせる)。「逆方向組= 電圧を利用する2種」「順方向組=電流を流して光らせる2種」という2グループに分けて 覚えると、どちらの向きで使う部品かを取り違えにくくなる。

サイリスタ — ゲートで点火する、大電力用のスイッチ

ダイオードがp形・n形の2層、トランジスタが3層なのに対し、サイリスタ(SCR)は p形・n形を4層(p-n-p-n)に重ねた構造をもつ半導体素子だ。層が4つあるからといって、 端子も4本になるわけではない。実際に外部へ引き出されている端子は、電流の入口・出口に あたるアノードカソードと、点火役のゲート3端子にすぎない。

サイリスタの動作には、独特のクセがある。

  1. アノード-カソード間に順方向電圧をかけただけでは、ゲートに何もしなければ電流は ほぼ流れない(オフ状態を保つ)。
  2. ゲートに短いオン信号(トリガ電流)を加えると、アノード-カソード間が導通(オン)する。
  3. 一度オンになると、ゲート信号を止めても導通し続ける(ラッチングと呼ばれる)。
  4. オフに戻すには、ゲートではなく、アノード電流そのものを保持電流(ラッチング電流) 以下まで減らすか、逆方向電圧を加える必要がある。
サイリスタのゲートは、トランジスタのベースやFETのゲートのような「加え続けることで 電流・電圧を保つ制御端子」ではなく、あくまで「点火するためのきっかけ」を与えるだけの 端子だ。オンにする役割とオフにする役割が、それぞれ別の場所(ゲートとアノード電流)に 分かれている、という非対称な構造を押さえておきたい。交流電源の位相を区切って電力を 制御する位相制御回路や、モータのソフトスタート回路など、大電力のオン・オフを扱う 場面で使われる。

トランジスタ — 小さな電流で大きな電流を制御する

トランジスタは、p型とn型を「サンドイッチ」のように3層に組み合わせた部品で、 3本の端子(ベース・コレクタ・エミッタ)を持つ。基本の働きは、ベースに流す小さな電流で、 コレクタ〜エミッタ間に流れる大きな電流をコントロールすることだ。

この比率を表すのが電流増幅率 hFEh_{FE} で、次の式で表される。

hFE=ICIBh_{FE} = \frac{I_C}{I_B}

ICI_C(コレクタ電流)は IBI_B(ベース電流)よりずっと大きくなるので、hFEh_{FE} は 1よりずっと大きな値(数十〜数百程度)になる。

例題

電流増幅率hFEh_{FE}が100のトランジスタで、ベース電流IBI_Bが20µA流れている。 コレクタ電流ICI_Cはいくらか。

IC=hFE×IB=100×20µA=2000µA=2mAI_C = h_{FE} \times I_B = 100 \times 20\text{µA} = 2000\text{µA} = 2\text{mA}
計算結果のIc/Ibが1を下回ったら、式を逆に立てている合図だ。トランジスタは 「小さな入力で大きな出力をコントロールする」部品なので、常にIc>Ibになる (=hFEは1より大きい)という前提を検算に使える。

このベース電流による制御は、電流を大きくする「増幅」としてだけでなく、 ベース電流をオン・オフして、コレクタ〜エミッタ間の大きな電流を丸ごと オン・オフする「スイッチ」としても使える。信号レベルの小さな電流で、 ランプやリレー、モーターといった大きな負荷を間接的にオン・オフする回路の 基本原理が、まさにこのトランジスタのスイッチ動作だ。

FET(電界効果トランジスタ) — 電流ではなく「電圧」でチャネルを制御する

ここまで見てきたトランジスタ(バイポーラトランジスタ、BJT)は、ベースに流す電流の 大小でコレクタ電流を制御する素子だった。もう1つの代表的なトランジスタが電界効果 トランジスタ(FET)で、こちらはゲートに加える電圧でドレイン-ソース間の電流の 通路(チャネル)の広さを制御する。

FETは大きく2つに分類できる。

  • 接合形FET(JFET):PN接合の逆方向電圧を利用してチャネルの幅を制御する
  • MOS形FET:ゲートを絶縁層で分離した構造を持ち、さらに2種類に分かれる
    • デプレッション形:ゲート電圧が0Vのときからチャネルが存在し、ゲート電圧を 加えるとチャネルが狭まって(空乏化して)電流が減っていく
    • エンハンスメント形:ゲート電圧が0Vのときはチャネルがほとんどなく電流が 流れない。ゲート電圧を加えることで初めてチャネルが作られ、電流が流れ始める
デプレッション形とエンハンスメント形の違いは、「ゲート電圧0Vのとき、すでに電流が 流れているかどうか」で見分けられる。デプレッション(空乏)形は0Vでも流れていて、 電圧を加えるほど減っていく。エンハンスメント(増強)形は0Vではほぼ流れず、電圧を 加えるほど増えていく——名前の意味(空乏=減る方向、増強=増える方向)と挙動が 対応している。

FETとBJTの決定的な違いは、ゲート(FET)とベース(BJT)への入力が「電圧」か「電流」かという点だ。 FETのゲートは絶縁されているか逆方向接合になっているため、動作中にゲートへ流れ込む電流は ごくわずかで、入力インピーダンス(信号源から見た入りにくさ)が非常に高い。センサーの 微小な信号を、信号源側の負荷を増やさずに受け取りたい回路の入力段にFETがよく使われるのは、 この「電圧だけで制御でき、電流をほとんど奪わない」という性質のためだ。

BJTとFET、実務での使い分けの決め手

ここまでBJT(バイポーラトランジスタ)とFETを、それぞれ「電流制御」「電圧制御」という 制御方式の違いで見てきた。実務でどちらを選ぶかを左右する、もう3つの視点を押さえておく。

  • 消費電力:BJTはベース電流を流し続ける必要があり、ゲートにほとんど電流が流れない FETに比べて消費電力が大きくなりやすい。低消費電力が求められる回路でFET(特にMOSFET)が 好まれる理由の一つはここにある。
  • 静電気への強さ:FETはゲートを極めて薄い絶縁層で分離しているため、静電気によって この絶縁層が破壊されやすい。BJTはこの種の絶縁層を持たないため、静電気に対しては FETより壊れにくい。MOSFETを扱う現場でリストストラップなどの静電気対策が徹底されて いるのは、この弱点が理由だ。
  • 電流を運ぶキャリアの種類:BJTのコレクタ電流は、自由電子と正孔の両方が動くことで 成り立っている(「バイポーラ=両極性」という名前の由来)。一方FETのドレイン電流は、 チャネルの種類(nチャネルかpチャネルか)に応じて自由電子か正孔のどちらか一方だけが 動く(「ユニポーラ=単極性」の素子とも呼ばれる)。
「バイポーラ」「ユニポーラ」という名前は伊達ではない。BJTは両方のキャリアが電流に関与 するから両極性(bi-polar)、FETは片方のキャリアだけが関与するから単極性(uni-polar)—— 名前の由来を知っておくと、この違いを丸暗記せずに導ける。

デジタル論理回路 — トランジスタのスイッチ動作を組み合わせて「0」と「1」を作る

これまで見てきたトランジスタやFETの「スイッチとしての性質」は、実務ではもう一段進んで、 電圧の高低だけで情報を表すデジタル回路の土台になっている。電圧が高い状態をH(High)、 低い状態をL(Low)とし、Hを論理値の「1」、Lを「0」に対応させる約束のもとで、入力の 組み合わせと出力の対応表(真理値表)にしたがって動作する回路を論理回路という。

NANDゲート — すべての基本論理回路の部品になれる万能ゲート

制御盤のシーケンス回路やPLC内部の演算は、AND(論理積)・OR(論理和)・NOT(否定)といった 基本的な論理演算の組み合わせで動いている。中でも実務・試験でよく登場するのがNAND (NOT-AND)ゲートだ。NANDは、2つの入力A・BがともにH(1)のときだけ出力がL(0)になり、 それ以外の組み合わせでは出力がH(1)になる。

入力A入力B出力Y(NAND)
001
011
101
110
NANDは「AND(両方1なら1)の出力を、さらにNOT(反転)したもの」と覚えると、真理値表を 暗記しなくてもその場で導ける。AND出力が1になるのはA=B=1のときだけなので、それを反転した NAND出力が0になるのもA=B=1のときだけ、と2段階に分けて考える。

NANDゲートが実務で重宝されるのは、NAND1種類だけを何個も組み合わせることで、NOT・AND・OR・ NORなど、他のすべての基本論理演算を作り出せるためだ(万能ゲート)。同じ規格の部品だけで 製造・在庫を統一できるという、生産上のメリットにもつながっている。

CMOS(相補型MOS) — pチャネルとnチャネルを組み合わせて低消費電力を実現

先に見たMOS形FETには、ゲート電圧でチャネルができるnチャネル形と、その逆の極性で動く pチャネル形がある。この2種類を1つの回路の中で組み合わせ、常にどちらか一方だけがオンに なるように配置した構造がCMOS(相補型MOS、Complementary MOS)だ。

入力電圧がH(1)のときはnチャネルMOSFETがオンでpチャネルMOSFETがオフ、入力電圧がL(0)の ときはその逆になり、出力の電圧はH・Lのどちらかにはっきりと定まる。動作中、電源とグランドの 間を貫通してつねに電流が流れ続ける経路が生まれない(オンになっている素子は常に片方だけ) ため、静止状態での消費電力が非常に小さいという特長がある。マイコンやPLCの内部回路にCMOSが 広く使われているのは、この低消費電力な性質のためだ。

CMOSの「C(相補)」は、pチャネルとnチャネルが互いに補い合って動く、という意味だ。「入力が HならnチャネルMOSFETがオン」「入力がLならpチャネルMOSFETがオン」と、入力レベルとオンに なる素子の対応を先に固定してから考えると、動作を追いやすい。

マルチバイブレータ — 波形を作り出す3つの基本形

トランジスタやFETをスイッチとして使い、出力の状態を時間とともに切り替える回路を マルチバイブレータという。動作のパターンによって、次の3種類に分類される。

  • 非安定(無安定)マルチバイブレータ:外部からトリガ(きっかけの信号)を与えなくても、 出力がH・Lを周期的に自動で繰り返す。発振回路として使われ、クロック信号やパルス列を 作り出す。
  • 単安定マルチバイブレータ:ふだんは安定した状態(例えばL)を保っているが、外部トリガを 1回加えると、回路定数で決まる一定時間だけ状態が反転(H)し、その後は自動的にもとの 安定状態(L)へ戻る。タイマー回路(一定時間だけ出力する)に使われる。
  • 双安定マルチバイブレータ:H・Lどちらの状態も安定していて、外部トリガが来るまでその 状態を保持し続ける。フリップフロップとも呼ばれ、1ビットの情報を記憶する 記憶素子として使われる。
3種類の見分け方は「トリガなしで自然に元へ戻るかどうか」で整理できる。非安定形はトリガなしで 永遠に反転し続け、単安定形はトリガ1回につき1回だけ反転してから自然に戻り、双安定形はトリガが 来るまで状態を保持し続けて自然には戻らない——「0回・1回・何度でも」トリガが要る、という 回数のイメージで区別すると取り違えにくい。

半導体材料の分類 — 単元素半導体と化合物半導体

半導体は、材料そのものの成り立ちによっても分類できる。1種類の元素だけでできている半導体を単元素半導体、2種類以上の元素を組み合わせた化合物でできている半導体を化合物半導体と呼ぶ。

  • 単元素半導体:シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)など。周期表のIV族元素そのものが半導体になる
  • 化合物半導体:ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)など。異なる元素を組み合わせて半導体の性質を作り出す。単元素半導体より電子の移動速度が速いものが多く、高周波デバイスや発光素子(LED・レーザダイオード)に使われることが多い
「シリコン(Si)・ゲルマニウム(Ge)=単元素」「ガリウムヒ素(GaAs)・インジウムリン(InP)=化合物」という組み合わせをセットで覚える。化合物半導体は名前に元素が2つ含まれている(ガリウム+ヒ素、インジウム+リン)ことからも判別できる。

拡散電流 — キャリヤ濃度のムラが、電界なしでも電流を生む

これまで見てきた電流は、電界によってキャリヤが押し流されるドリフト電流だった。半導体にはもう1種類、電界がなくても生じる電流がある。拡散電流だ。

半導体内でキャリヤ(正孔や電子)の濃度が場所によって偏っている(一様でない)と、キャリヤは自然に、濃度の高い場所から低い場所へ拡散していく——ちょうどインクを水に落とすと自然に広がっていくのと同じ現象だ。このキャリヤの移動が電流として現れたものが拡散電流で、その大きさはキャリヤの濃度勾配(場所による濃度の変化の急しゃさ)にほぼ比例する

ドリフト電流は「電界に押されて動く」電流、拡散電流は「濃度のムラを均そうとして自然に動く」電流——駆動力の種類が違うと整理する。PN接合ダイオードの内部では、この2種類の電流(ドリフト電流と拡散電流)がつり合うことで、外部から電圧を加えない状態での平衡が保たれている。

ホール効果とホール素子 — 磁界の中で電流を流すと、横方向に電圧が生まれる

半導体には、電流と磁界を組み合わせることで生まれる、もう1つ実務的に重要な現象がある。 ホール効果だ。

半導体の板に電流 II を流し、その電流の向きに対して垂直な方向に磁束密度 BB の 磁界を加えると、電流を運んでいるキャリア(p形なら正孔、n形なら電子)はローレンツ力を 受けて、板の片側へ寄っていく。キャリアが片側に偏ると、そちら側とその反対側との間に 電荷の偏り(=電位差)が生じる。これがホール電圧 VHV_Hで、電流・磁界の両方に 垂直な方向に現れる。

VH(比例定数)×I×BV_H \fallingdotseq (\text{比例定数}) \times I \times B

キャリアが飽和するまで偏り続けるわけではなく、偏った電荷が作る電界による力(クーロン力) が、キャリアを偏らせようとするローレンツ力とつり合ったところで落ち着く。この釣り合いの 結果として、ホール電圧は電流 II(磁界一定の条件下では)にほぼ比例する。

ホール効果でつまずきやすいのは、p形とn形で結果が同じになると思い込むことだ。ローレンツ力 そのものの向きは、電流と磁界の向きだけで決まるためp形・n形で共通している。しかし、 偏ったキャリアが運ぶ**電荷の符号**は、正孔(プラス)と電子(マイナス)で逆になる。 同じ側に偏っても、そこにたまる電荷の符号(=生じる電圧の極性)はp形とn形で反対になる、 という2段階に分けて考える必要がある。

このホール電圧が電流にほぼ比例して、しかも電流を流す回路と電気的に絶縁されたまま (磁界を介して間接的に)取り出せるという性質は、実務では非接触の電流センサとして 重宝される。大電流が流れる母線を切断・改造することなく、母線の周りに発生する磁界を ホール素子で検知するだけで電流値を測定できるからだ。同様の原理は、ブラシレスモータの 回転子位置検出や、近接スイッチなどの位置センサにも応用されている。

光電効果 — 光が電子をたたき出す現象

半導体・金属の話から少し視点を変えて、最後に光電効果を見ておく。金属や半導体の表面に 光(電磁波)を当てると、その表面から電子が飛び出してくることがある。この電子を 光電子、現象そのものを光電効果と呼ぶ。

光電効果には、直感に反する重要な性質がある。光の強さ(強度)をどれだけ強くしても、 光の振動数がある値(しきい値振動数)に達していなければ、光電子はまったく飛び出さない。 逆に振動数がしきい値以上であれば、わずかな光でも即座に光電子が飛び出し始める。

この振る舞いは、光が波として連続的にエネルギーを運ぶと考えると説明できない。光は 光子(フォトン)という粒の集まりで、光子1個が運ぶエネルギーは振動数ν\nuに比例する (E=hνE=h\nuhhはプランク定数)と考えることで、初めて筋道立てて説明できる。光電子が 飛び出すには、金属表面の電子を外へ引き出すのに必要な最小限のエネルギー(仕事関数)を、 光子1個が単独で上回っている必要がある。振動数が低い(光子1個のエネルギーが小さい)光は、 どれだけ本数(強度)を増やしても、電子を1個も外へ弾き出せない。

「光を強くする」ことと「光の振動数を上げる」ことは、光電効果ではまったく違う効果を持つ。 強度を上げると増えるのは光子の**個数**であり、飛んでくる光電子の**数**(光電流)が増える。 一方、光電子1個あたりの**最大運動エネルギー**を決めているのは、光子1個あたりのエネルギー、 つまり**振動数**の方だけだ。「強さ」と「振動数」のどちらが何を変えるのかを、常に分けて 考える必要がある。

光電効果は、身近な実験では箔検電器(帯電させた金属箔の開閉で電荷の有無を確認する装置)を 使って観察できる。負に帯電させた電極に、振動数の低い光(赤外線や可視光)をいくら当てても 箔は閉じないが、振動数の高い光(紫外線)を当てると、電極から光電子が飛び出して電荷が 中和され、箔が閉じる——という形で、光の粒子性を目に見える形で確認できる。

光電効果は、名前も見た目も似ている熱電子放出(真空管のフィラメントを加熱して電子を 飛び出させる現象)と混同しやすいが、電子を飛び出させるエネルギー源が「光」か「熱」かで 原理がまったく異なる。半導体の分野でも、光を当てると電流や起電力が発生する光起電力効果 (太陽電池の原理)や、光を検知するフォトダイオードなど、光電効果に近い性質を利用した 素子が数多く実用化されている。

冒頭で見た制御盤基板のダイオードとトランジスタ——それぞれが何のために 置かれていたか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 半導体の抵抗率も、金属導体と同じく温度が上がると増加すると思い込んでしまう

    なぜ引っかかる『温度が上がると抵抗が増える』という金属導体の温度係数の知識(電線・抵抗器のトピックで学んだRt=R0(1+α(t-t0)))が強く残っていると、半導体にもそのまま同じ向きの変化を当てはめてしまいやすい。

    見破り方金属は温度が上がると自由電子の動きが格子振動で妨げられて抵抗が増えるが、半導体(特に真性半導体)は温度が上がるとキャリア(電子・正孔対)の数そのものが熱エネルギーで増えるため、通り道を妨げる効果よりキャリアが増える効果の方が勝り、抵抗率はむしろ減少する。『金属=温度上昇で抵抗増加、半導体=温度上昇で抵抗減少』という正反対の対応を対で覚え、問題文が金属か半導体かをまず確認する。

  2. p型・n型のキャリアを取り違える(p型=電子、n型=正孔と逆に覚える)

    なぜ引っかかる『p型』の頭文字からpositive(正)を連想し、そのまま電子のように誤って結びつけたり、逆に『n型=negative=正孔が動きやすい』と誤解したりする。

    見破り方p型は『positive=正孔(プラスの電荷を運ぶ)』、n型は『negative=電子(マイナスの電荷を運ぶ)』と、頭文字と多数キャリアの電荷の符号を対応させて覚える。

  3. 半波整流の出力を『完全に一定な直流電圧』と誤解する

    なぜ引っかかる『整流=交流を直流に変える』という説明だけを覚えていると、整流した時点で電池のような平坦な直流電圧が得られると思い込みやすい。

    見破り方ダイオード1本による半波整流は、交流の半周期だけを切り出した脈流(波打つ直流)にすぎない。滑らかな直流にするには、コンデンサ等による平滑化という別の工程が必要になる点を切り分けて覚える。

  4. hFEの計算で、Ic=hFE×Ibの分子・分母、あるいはIcとIbを取り違える

    なぜ引っかかる『増幅率』という言葉のイメージだけで式を立てると、小さいベース電流Ibを大きいコレクタ電流Icで割ってしまうなど、逆の関係で計算してしまうことがある。

    見破り方トランジスタは『小さなベース電流で大きなコレクタ電流を制御する』ものなので、常にIc>Ib(hFEは1よりずっと大きい数十〜数百の値)になるはず。計算結果がhFE<1になったら、分子・分母が逆になっているサイン。

  5. 特殊なダイオードの『順方向で使うか、逆方向で使うか』を取り違える(ツェナーダイオードを順方向で使うと誤解する、レーザダイオードを逆方向で使うと誤解すると等)

    なぜ引っかかる『ダイオード=整流に使う=順方向』という基本パターンだけで覚えていると、逆方向を積極的に利用するバリキャップやツェナーダイオードも順方向で使うものと思い込みやすい。

    見破り方逆方向で使うのは『逆方向電圧をかけたときに起きる特殊な現象』を利用する2種(バリキャップ=空乏層の広がりで容量が変わる、ツェナーダイオード=降伏で電圧が一定になる)、順方向で使うのは『電流を流して光らせる』2種(LED、レーザダイオード)、という2グループに分けて覚える。

  6. FETのエンハンスメント形を、デプレッション形と取り違え、『ゲート電圧に関係なく常にチャネルができる』と誤解する

    なぜ引っかかる『MOS形FET』とひとくくりに覚えていると、ゲート電圧0のときすでにチャネルが存在するデプレッション形と、ゲート電圧を加えて初めてチャネルができるエンハンスメント形の違いがあいまいになる。

    見破り方名前の意味から思い出す。デプレッション(depletion=空乏)形はゲート電圧0でもチャネルがあり、ゲート電圧を加えるとチャネルが狭まって(空乏化して)電流が減っていく。エンハンスメント(enhancement=増強)形はゲート電圧0では電流がほぼ流れず、ゲート電圧を加えることでチャネルが作られて電流が増えていく。『0Vのときに電流が流れるかどうか』を先に確認すれば取り違えない。

  7. FETをトランジスタ(バイポーラ形、BJT)と同じ『電流制御』素子だと思い込み、ゲートにも電流が流れ込むと考える

    なぜ引っかかる『増幅する半導体素子』という点でFETとBJTを同じカテゴリにまとめて覚えると、BJTのベース電流のようにFETのゲートにも電流が必要だと誤解しやすい。

    見破り方FETは『電圧』でチャネルを制御する素子であり、ゲートは絶縁されているか逆方向接合になっているため、動作中にゲート電流はほとんど流れない(入力インピーダンスが非常に高い)。BJTのhFE=Ic/Ibのような電流の比の式は、FETには当てはめない。

  8. ホール効果で、p形半導体とn形半導体は同じ向きの電流・磁界を加えれば同じ極性のホール電圧が生じると思い込む

    なぜ引っかかる『同じローレンツ力の向きなら同じ結果になるはず』という直感で考えると、キャリアの電荷の符号(正孔=正、電子=負)が違うことを見落とし、p形とn形で発生するホール電圧の極性が逆になる点を取り違える。

    見破り方ローレンツ力の向きそのものは電流の向きと磁界の向きだけで決まり、p形・n形で共通している。しかし『偏ったキャリアが運ぶ電荷の符号』はp形(正孔=正電荷)とn形(電子=負電荷)で逆であるため、同じ側面に偏っても、そこにたまる電荷の符号(=発生する電圧の極性)は逆になる、と2段階に分けて考える。

  9. 単元素半導体・化合物半導体の分類を取り違え、ゲルマニウム(Ge)やインジウムリン(InP)を単元素半導体、シリコン(Si)やガリウムヒ素(GaAs)を化合物半導体のように逆に覚えてしまう

    なぜ引っかかる元素記号を見慣れていないと、名前の響きだけで『2文字の元素記号=化合物』のように誤った基準で判断してしまいやすい。

    見破り方『シリコン(Si)・ゲルマニウム(Ge)=単元素』『ガリウムヒ素(GaAs)・インジウムリン(InP)=化合物』とセットで覚える。化合物半導体は名前そのものに元素が2つ含まれている(ガリウム+ヒ素、インジウム+リン)ことからも判別できる。

  10. 拡散電流を、電界によって生じるドリフト電流と同じものだと誤解する

    なぜ引っかかる『半導体を流れる電流』という点でひとまとめに覚えていると、駆動力が『電界』なのか『濃度のムラ』なのかという違いを見落としやすい。

    見破り方ドリフト電流は『電界に押されて動く』電流、拡散電流は『濃度のムラを均そうとして自然に動く』電流——駆動力の種類が違うと整理する。問題文に『電界』という言葉があればドリフト電流、『濃度』『濃度勾配』という言葉があれば拡散電流、と手がかりの言葉で区別する。

  11. BJTとFETの『電圧制御・電流制御』の対応を逆に覚え、BJTを電圧制御素子、FETを電流制御素子と誤って記述してしまう

    なぜ引っかかる『トランジスタ』という言葉で両者をひとくくりにしていると、どちらが電圧で制御しどちらが電流で制御するかの対応があいまいになりやすい。特に選択肢の文章で『BJTは電圧制御素子、FETは電流制御素子といわれる』のように、対応がそっくり入れ替わった記述をされると見抜きにくい。

    見破り方BJTは『ベース電流』で制御する、FETは『ゲート電圧』で制御する、という制御する量の名前(電流か電圧か)を毎回言葉で確認する。FETのF(Field=電界効果)は電圧で電界を作って制御する、と名前の由来から思い出すと取り違えにくい。

  12. 光電効果を、金属を加熱したときに電子が飛び出す熱電子放出(真空管のフィラメントなど)と同じ現象だと混同する

    なぜ引っかかるどちらも『金属から電子が飛び出す』という結果は同じに見えるため、電子を飛び出させているエネルギー源が光か熱かという原因の違いを見落として同一視しやすい。

    見破り方光電効果は『光(電磁波)のエネルギーによって』電子が飛び出す現象、熱電子放出は『熱エネルギーによって』電子が飛び出す現象——電子を飛び出させるエネルギー源が光か熱かで、名前も原理も異なる別の現象だと区別する。

  13. 光電効果で、光を強くすれば振動数が足りなくても電子が飛び出すようになると考えてしまう

    なぜ引っかかる『強い光ほどエネルギーが大きいはず』という直感で考えると、光の強さ(強度)を上げれば、振動数が低い(しきい値未満の)光でもいずれ電子を弾き出せると誤解しやすい。

    見破り方光電効果では、光子1個あたりのエネルギーは振動数だけで決まる(E=hν)。強度を上げても増えるのは光子の『個数』であって、1個あたりのエネルギーは変わらない。しきい値未満の振動数では、光子1個のエネルギーが電子を飛び出させるのに必要な仕事に届かないため、光子の数をいくら増やしても電子は飛び出さない、と『個数』と『1個あたりのエネルギー』を分けて考える。

  14. ダイオードに順方向電流が流れているとき、電子も電流と同じ向き(アノードからカソード)に移動していると思い込む

    なぜ引っかかる『電流が流れる方向に、電気を運ぶ粒子も動いているはず』という素朴なイメージで考えると、電流の向きが『正の電荷が動く向き』という約束にすぎず、実際に移動している電子(負の電荷)の向きとは逆になるという電気の基本規約を見落としやすい。

    見破り方電流の向きは常に『正電荷が動く向きと定義されたもの』であり、電子そのものの移動方向ではない、とまず思い出す。負の電荷を運ぶ電子は、電流の向きとは逆(この場合はカソードからアノード)に移動している、と一呼吸置いて確認する。

  15. サイリスタの4層構造(p-n-p-n)を見て、層の数と同じ4端子の素子だと思い込む

    なぜ引っかかる『4層構造だから4端子のはず』という、構造の層数と端子数を同じに考えてしまう連想が起きやすい。トランジスタが3層3端子であることと対比させると、4層なら4端子と誤って一般化しやすい。

    見破り方サイリスタの端子は、電流の出入り口であるアノード・カソードに加え、オンにするための引き金であるゲートの3本だけ、と機能から数え直す。層の数(内部構造)と端子の数(外部への接続点)は必ずしも一致しないと確認する。

  16. サイリスタのゲートを、トランジスタのベースやFETのゲートのように『オン・オフを自由に切り替えられる制御端子』だと思い込む

    なぜ引っかかる『ゲート=制御端子』という共通の名前から、他の半導体素子と同じようにゲート信号を止めればオフに戻ると連想しやすい。

    見破り方サイリスタはゲート信号でオンの『きっかけ』を作るだけの素子であり、一度導通するとゲートの役目は終わる(ラッチング)。オフに戻すには、アノード電流そのものを保持電流以下まで減らす(あるいは逆方向電圧を加える)必要がある、とオンとオフで制御する場所が違うことを区別する。

  17. マルチバイブレータの非安定・単安定・双安定を取り違え、双安定形(フリップフロップ)を『トリガなしでも周期的に自動で反転し続けるもの』だと誤解する

    なぜ引っかかる3種類とも『状態が反転する回路』という共通点だけで覚えていると、どの回路がトリガなしで自動的に反転を繰り返すのか(非安定形だけ)があいまいになり、記憶素子である双安定形にまで発振のイメージを当てはめてしまう。

    見破り方『トリガが何回要るか』で3種類を区別し直す。非安定形はトリガ0回(何もしなくても永遠に反転し続ける)、単安定形はトリガ1回につき1回だけ反転して自然に戻る、双安定形はトリガが来るまで(何回でも)状態を保持し続けて自然には戻らない、と回数のイメージで整理する。

参考文献・出典

理解度チェック(22問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、22問で確認しよう。 内訳は基本10問・応用2問・ひっかけ10問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 22 問正解

覚えておきたいポイント

  1. p型半導体の多数キャリアは正孔(ホール)、n型半導体の多数キャリアは電子
  2. 真性半導体(不純物を含まない純粋な半導体)は、温度が上昇するとキャリア(自由電子・正孔の対)が熱エネルギーによって新たに多く発生するため、抵抗率はむしろ減少する。これは、温度が上がると格子振動が激しくなり電子の移動が妨げられて抵抗値が増加する金属導体とは逆の性質であり、サーミスタ(NTC型)などの温度センサに応用されている
  3. ダイオードは順方向(アノード側の電位が高い)だと電流を通し、逆方向だとほぼ電流を通さない(整流作用)
  4. 半波整流の出力は交流の片側の半周期だけを取り出した脈流であり、完全な直流ではない(平滑化には別途コンデンサ等が必要)
  5. ダイオードに順方向電圧を加えて電流を流しているとき、電流の向き(アノード→カソード)と、実際に移動している電子の向きは逆になる(電子はカソード→アノードへ移動する)。電流の向きは正の電荷が動く向きと約束されているため、負の電荷を運ぶ電子の移動方向とは常に逆向きになる、という電気の基本規約がダイオードでもそのまま当てはまる
  6. サイリスタ(SCR)はp形・n形半導体を4層(p-n-p-n)に重ねた構造だが、端子はアノード・カソード・ゲートの3端子。ゲートに短いオン信号を加えると導通(オン)状態になり、その後ゲート信号を止めても導通し続ける(ラッチング)。オフに戻すには、アノード電流を保持電流(ラッチング電流)以下まで減らすか、逆方向電圧を加える必要があり、ゲートで自由にオン・オフを切り替えられるわけではない
  7. トランジスタの電流増幅率 hFE = Ic / Ib。小さなベース電流で、大きなコレクタ電流を制御できる
  8. トランジスタは電流を増幅する『アンプ』としても、電流をオン・オフする『スイッチ』としても使われる
  9. 可変容量ダイオード(バリキャップ)とツェナーダイオードは逆方向電圧を積極的に利用する部品、LEDとレーザダイオードは順方向電流で発光させる部品——用途によって使う向きが逆になる
  10. FET(電界効果トランジスタ)は、ゲート電圧でチャネル(ドレイン-ソース間の電流通路)の広さを制御する電圧制御素子。接合形とMOS形に分類でき、MOS形はさらにデプレッション形(ゲート電圧0でもチャネルが存在)とエンハンスメント形(ゲート電圧を加えて初めてチャネルができる)に分かれる
  11. ホール効果:電流が流れる半導体に、電流と垂直な方向の磁界を加えると、キャリア(正孔または電子)がローレンツ力で側面に偏り、電流・磁界の両方に垂直な方向にホール電圧V_Hが生じる。V_Hは電流Iにほぼ比例し、キャリアの符号(正孔=正、電子=負)によって、同じ向きの電流・磁界でもp形とn形で生じる電圧の極性が反対になる——この性質を利用した非接触の電流センサ・位置センサがホール素子
  12. BJTはベース電流を流し続けるため消費電力がFETより大きくなりやすく、静電気に対してはFETより壊れにくい(FETはゲートを分離する薄い絶縁層が静電気で破壊されやすい)。またBJTのコレクタ電流は自由電子・正孔の両方が関与する『両極性(バイポーラ)』素子、FETのドレイン電流は片方のキャリアだけが関与する『単極性(ユニポーラ)』素子という違いもある
  13. 半導体は材料の成り立ちでも分類できる。シリコン(Si)・ゲルマニウム(Ge)のように1種類の元素だけでできている半導体を単元素半導体、ガリウムヒ素(GaAs)・インジウムリン(InP)のように2種類以上の元素を組み合わせた半導体を化合物半導体という
  14. NANDゲートは、2つの入力がともにH(1)のときだけ出力がL(0)になり、それ以外はH(1)になる論理回路。CMOS(相補型MOS)はpチャネル・nチャネルのMOSFETを組み合わせ、常にどちらか一方だけがオンになることで低消費電力にH/Lの2値出力を実現する。マルチバイブレータは、トリガなしで自動的に反転を繰り返す非安定(発振)形、トリガ1回で一定時間だけ反転してから自然に戻る単安定形、トリガが来るまで状態を保持し続ける双安定形(フリップフロップ)の3種類に分類される
  15. 電界によってキャリヤが押し流される電流をドリフト電流、キャリヤの濃度勾配(場所による濃度の変化の急しゃさ)によって自然に生じる電流を拡散電流という。拡散電流の大きさはキャリヤの濃度勾配にほぼ比例する
  16. 金属や半導体の表面に光を当てると電子(光電子)が飛び出す現象を光電効果という。光子1個のエネルギーは振動数に比例する(E=hν)ため、ある振動数(しきい値振動数)以上の光でなければ、どれだけ強い光を当てても光電子は放出されない。しきい値以上では、光の強さを強くするほど放出される光電子の数(光電流)は増えるが、光電子1個あたりの最大運動エネルギーは光の振動数だけで決まり、光の強さには影響されない
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