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電気工学等 ・ 4 / 8

送配電線路の基礎知識 — 架空と地中、単相と三相の使い分け

読み終えると、こうなる

電柱・鉄塔の電線と、地面に埋まったケーブルの違い、コンセントの100Vと200Vの違いを、『なんとなく』ではなく電気の運び方の違いとして説明できるようになる

  • 架空送電線の鉄塔・電線・がいしと、地中送電線のケーブル・管路・洞道が、それぞれ何を担っているかを対応づけて説明できる
  • 単相2線式・単相3線式・三相3線式・三相4線式の結線から、それぞれ何Vを取り出せるかを図なしでも言える
  • 一般住宅の引込みが単相3線式である理由と、工場の動力回路に三相3線式・三相4線式が使われる理由を、負荷の種類から説明できる
  • 送電(特別高圧・高圧)から配電(高圧・低圧)へと電圧が下がっていく大まかな流れを、電気設備技術基準の電圧区分の数値とセットで示せる
考えてみよう

車で郊外を走ると、鉄塔と電線がずっと続いている区間がある。ところが都心部に入ると、あれだけ空を横切っていた電線がふっと消えて、電気はどこを通っているのか分からなくなる。

もう一つ。自宅のコンセントはどれも100Vのはずなのに、エアコンやIHクッキングヒーター用のコンセントだけ200Vだったりする。同じ引込み線から来ているのに、なぜ2種類の電圧が取り出せるのか。

このトピックを読み終えるころには、鉄塔の電線と地中のケーブルの使い分け、そして100Vと200Vが同じ引込みから出てくる仕組みを、施工管理の現場目線で説明できるようになっている。

種明かしの前に整理しておくと、電気が発電所から使う場所まで届く経路は「送電」と「配電」に分かれる。送電は発電所から変電所まで大量の電力を高い電圧で運ぶ区間、配電は変電所から家庭や工場まで電圧を下げながら分配していく区間だ。この2つの区間それぞれに、施工管理技士が押さえておくべき基礎知識がある。

架空送電線と地中送電線 — 同じ「送る」でも仕組みが違う

送電線には、空中に電線を張る架空送電線と、地面の下にケーブルを埋める地中送電線の2種類がある。

架空送電線は、次の3要素で成り立っている。

  • 鉄塔:電線を地上から離れた高い位置で支える構造物。電圧や地形の条件に応じて形状が変わる。
  • 電線:実際に電気が流れる導体。送電容量が大きいほど、1相を複数本の電線で構成する(多導体化)こともある。
  • がいし:電線(高電圧)と鉄塔(接地電位)を絶縁するための部品。高い絶縁性能と機械的な強度の両方が求められる。
  • ダンパ:電線に取り付ける錘(おもり)付きの装置。弱い風が電線に当たり続けると発生する微風振動(電線の固有振動数と共振して起きる上下方向の小さな揺れ)のエネルギーを吸収し、電線の疲労・損傷を防止する。電線相互の接近・接触を防ぐスペーサーや、絶縁を補強するアークホーンとは目的が異なる部品。

一方、地中送電線は、電線を油や架橋ポリエチレンなどで絶縁した電力ケーブルを使う。このケーブルは、地下に埋設した管路や、人が点検のために立ち入れるトンネル状の洞道(内径おおむね3〜5m程度)に収容される。都市部など、新たに鉄塔を建てる用地の確保が難しい地域で採用されることが多い。

架空送電線と地中送電線は、単純にどちらが優れているという関係ではない。地中送電線は景観を損なわず、風雨・雪害といった自然現象の影響を受けにくいが、建設費が高く、いったん事故が起きると掘り返しを伴う復旧作業に時間がかかる。架空送電線はその逆の特性を持つ。都市部で地中化が進む一方、郊外や山間部では今も架空送電線が主力なのは、この特性の違いを踏まえた選択の結果だ。

配電方式 — 単相2線式・単相3線式・三相3線式・三相4線式

送電線・高圧配電線を通って変電所まで降圧された電気は、最終的に配電方式と呼ばれるいくつかの結線パターンで需要家(住宅・工場など)へ分配される。代表的な4方式を整理する。

単相3線式の結線イメージ L1 N L2 L1-N間 100V L2-N間 100V L1-L2間 200V L1・L2の2本の電圧線とN(中性線)の3本で構成する。取り出す2線の組み合わせによって100Vにも200Vにもなる
  • 単相2線式:電圧線1本と中性線(または接地側電線)1本、計2本で100V(または200V)を送る、もっとも単純な方式。取り出せる電圧は1種類だけ。
  • 単相3線式:電圧線2本(L1・L2)と中性線1本(N)、計3本で構成する。L1-N間・L2-N間からそれぞれ100V、L1-L2間からは200Vを同時に取り出せる。一般住宅の引込みは、この方式が主流になっている。
  • 三相3線式:3本の電線で三相交流を送る方式で、単相の100Vは取り出せず、200V(規模によっては400V)の三相電力のみを供給する。モーターなど動力負荷に使われる標準的な方式。
  • 三相4線式:三相3線式の3本に中性線を加えた方式。三相の動力用電力と、単相の電灯用電力を1つの系統からまとめて供給できる。工場や大規模ビルなど、動力負荷と電灯負荷が両方まとまって存在する施設で採用される(電灯動力共用方式)。
一般家庭は、照明・コンセント(100V)とエアコン・IH(200V)を同じ引込みから取り出せる単相3線式で足りる。これに対し工場は、200V級のモーターを多数抱える動力負荷が主体になるため、三相3線式(動力専用)や、電灯負荷も同じ系統でまかなう三相4線式が選ばれる。「単相か三相か」の分かれ目は、モーターのような回転する動力機器を大量に使うかどうかにある。

配電線路の系統構成 — 樹枝状方式とループ方式

配電方式が「何本の電線で何Vを取り出すか」の話だったのに対し、ここで扱うのは「変電所から需要家までの幹線を、どういう形につなぐか」という系統構成の話になる。代表的な2つの方式がある。

  • 樹枝状(放射状)方式:変電所を根元にして、1本の幹線が木の枝のように分岐しながら伸びていく、もっとも単純な構成。結合開閉器などの追加設備が要らないため建設費が安く、需要密度の低い地域で広く使われる。ただし幹線の途中で事故が起きると、それより先の区間すべてが停電してしまう。
  • ループ方式:2つの変電所や2本の幹線を、結合開閉器を介して環状(ループ状)につなぐ構成。ループ結合点の開閉器を常時閉路しておく方式と、常時開路しておく方式があり、いずれも事故が発生した区間の両側の区分開閉器を「開」にするだけで、その区間を切り離しながら健全な区間には電力を供給し続けられる。結合開閉器の分だけ樹枝状方式より建設費は高くなるが、高い信頼度が求められる負荷密度(需要密度)の高い地域(市街地など)で採用される。
「ループ(環状)にして万一に備える」という言葉の響きから、需要が少なくコストを抑えたい地域にこそ向いていそうだと直感的に考えてしまいやすいが、実際は逆。ループ方式は結合開閉器の分だけ建設費が高くつくため、コストより信頼度(停電の影響の大きさ)を優先できる、負荷密度の高い地域に限って採用される。需要密度の低い地域には、建設費の安い樹枝状(放射状)方式が使われる。

鉄塔から家庭のコンセントまで — 電圧はどう下がっていくか

ここまでの話を、電圧の変化という軸でつなげておく。発電所でつくられた電気は、送電線では特別高圧(交流・直流とも7,000V超)や高圧(交流600V超7,000V以下)といった非常に高い電圧で運ばれる。これは、同じ電力を送るなら電圧を高くするほど電流を小さくでき、送電ロスを抑えられるためだ。

変電所でいったん降圧された電気は、高圧配電線(代表的には6,600V)として街中まで運ばれ、電柱の上にある柱上変圧器でさらに降圧されて、家庭や小規模店舗に届く頃には低圧(交流600V以下・直流750V以下)、実際には100Vや200Vになっている。工場やビルなど大口の需要家は、この途中の高圧(6,600V)のまま受電し、自前の受変電設備(キュービクルなど)で低圧まで下げて構内に配る場合もある。

「送電=特別高圧・高圧」「配電=高圧・低圧」という大枠を押さえておくと、現場で見る数字(6,600V、100V、200Vなど)が、送配電のどの段階にあるものかを見失わずに済む。低圧・高圧・特別高圧の境目の数値(600V・7,000V)は、電気設備技術基準で定められた区分であり、感電・絶縁のリスクに応じて規制の厳しさが段階的に変わる根拠にもなっている。

単相2線式と三相3線式 — 同じ条件で比べると何が違うか

配電方式の使い分けを、もう一段具体的に比較しておく。線間電圧・力率・配電距離が同じで、同じ材質・太さの電線を使うという条件で、単相2線式と三相3線式を比べるとどうなるか。

単相2線式の送電電力はP1=VIcosφP_1=VI\cos\varphi(電圧線1本・中性線1本の計2本で分担)、三相3線式の送電電力はP3=3VIcosφP_3=\sqrt3\,VI\cos\varphi(3本で分担)という、それぞれの基本式で表せる。これを電線1本あたりに割り直すと、単相2線式はP1/2P_1/2、三相3線式はP3/3=VIcosφ/3P_3/3=VI\cos\varphi/\sqrt3になり、比を取るとP3/3P1/2=231.15\dfrac{P_3/3}{P_1/2}=\dfrac{2}{\sqrt3}\approx1.15。つまり同じ太さの電線を使っても、三相3線式の方が1本あたり約1.15倍多くの電力を送れる。

「電線の本数が多い方式=1本あたりの負担が軽い」というイメージから、三相3線式の方が電線1本あたりの送電電力は小さくなると錯覚しやすい。実際にはP1=VIcosφ、P3=√3VIcosφという基本式に立ち返って計算すると、三相3線式の方が電線1本あたりの送電電力は大きくなる(逆)。同じ電力を送る場合の送電損失も、三相3線式の方が小さくなる。

電圧降下の簡略式 — 単相2線式と三相3線式で係数が変わる

配電線路を計画するとき、送り出す電圧と実際に負荷へ届く電圧の差(電圧降下)が基準内に収まっているかを確認する場面がある。電線1本あたりの抵抗RR〔Ω〕・リアクタンスXX〔Ω〕、負荷電流II〔A〕、負荷の力率角θ(cosθ・sinθ)を使うと、電圧降下eeは次の簡略式で近似できる。

  • 単相2線式:e=2I(Rcosθ+Xsinθ) [V]e=2I(R\cos\theta+X\sin\theta)\ [\text{V}]
  • 三相3線式:e=3I(Rcosθ+Xsinθ) [V]e=\sqrt3\,I(R\cos\theta+X\sin\theta)\ [\text{V}]
両者の違いは、括弧の外に掛かる**係数だけ**だ。括弧の中身(電線1本あたりの電圧降下に相当する$IR\cos\theta+IX\sin\theta$)は共通で、それを線間の電圧降下に換算する係数が、単相2線式では往復2本分の「2」、三相3線式では3相の電流が120度ずつ位相のずれた状態で線間電圧としてベクトル合成されることによる「$\sqrt3$」になる。「電線が3本に増えたのだから係数も3倍」のような単純な本数比で考えると、$\sqrt3\approx1.73$という値とずれてしまう。三相3線式の送電電力の式が$P_3=\sqrt3\,VI\cos\varphi$だったのと同じ$\sqrt3$がここでも登場すると覚えておくと、単相・三相の式を対で押さえやすい。

配電系統を評価する指標 — 需要率・不等率・負荷率

配電計画では、実際にどれだけの電力を送る必要があるかを見積もるために、いくつかの指標が使われる。

  • 需要率:設備容量(接続されたすべての負荷を同時に使ったときの最大電力)に対して、実際の最大需要電力がどれだけかを表す。需要率=最大需要電力設備容量×100[%]需要率=\dfrac{最大需要電力}{設備容量}\times100\,[\%]。全部の機器を同時に使うことは通常ないため、100%を下回るのが一般的。
  • 負荷率:ある期間の平均需要電力が、その期間の最大需要電力に対してどれだけかを表す。負荷率=平均需要電力最大需要電力×100[%]負荷率=\dfrac{平均需要電力}{最大需要電力}\times100\,[\%]。値が高いほど、設備が平均的にむらなく使われていることを示す。
  • 不等率:個々の需要家の最大需要電力の合計を、それらを合成した(同時に発生する)最大需要電力で割った値。不等率=各需要家の最大需要電力の合計合成最大需要電力不等率=\dfrac{各需要家の最大需要電力の合計}{合成最大需要電力}。需要家ごとにピークが発生するタイミングがずれるほど値が大きくなり、常に1以上になる。
需要率・負荷率は「〜÷〜×100%」で100%以下になる指標だが、不等率だけは仲間はずれで常に1以上になる。分母が『同時に発生する合成最大電力』、分子が『個々のピークを単純に足し合わせた値』なので、ピークが同時刻に重ならない限り分子の方が大きくなる、という理屈で覚えておくと取り違えにくい。

送配電線路の保護と電圧調整

送配電線路には、事故から系統を守る保護の仕組みと、需要家に届く電圧を適正範囲に保つための調整の仕組みがある。

保護 の代表例が過電流継電器(OCR)だ。線路を流れる電流を常に監視し、整定値(あらかじめ決めたしきい値)を超える電流を検出すると遮断器に動作指令を出し、短絡・過負荷事故が起きた区間を系統から切り離す。系統が複雑になり、保護区間や機器の数が増えるほど、上位・下位の保護装置どうしの動作時間の差(協調時間差)を考慮した整定が必要になり、時限整定はかえって難しくなる。このほか、高圧架空配電線路や機器の保護には避雷器(雷サージの吸収)・高圧真空遮断器・高圧カットアウトなども使われる。

電圧調整 には複数の手段があり、送出側から順に対策が用意されている。

  • 変電所の送出電圧そのものを調整する
  • 柱上変圧器のタップ(巻数比)を切り替えて二次側電圧を調整する
  • 電圧降下が大きい配電線では、中間地点に線路電圧調整器(SVR)を設置する
  • 調相設備(電力用コンデンサ・分路リアクトル)で無効電力を調整し、電圧変動を抑える

このうち分路リアクトルは、進み無効電力を吸収(消費)することで、軽負荷時の長距離高電圧線路で起きやすい電圧上昇(フェランチ効果)を抑える設備だ。「力率を進ませるために接続する」という説明は逆で、実際には系統に遅れ無効電力を作用させて電圧上昇を抑制する側に働く。

損失軽減 も電圧調整と関連が深い対策で、配電電圧を高くする(同じ電力を送る電流を減らす)、給電点を負荷の中心にする(平均のこう長を短くする)、電灯負荷に単相3線式を採用する(単相2線式より損失が小さい)などが代表例になる。これに対して絶縁監視装置は、絶縁劣化や地絡の発生を検知するための保護・監視設備であり、損失そのものを減らす対策ではない点に注意する。

保護(OCR・避雷器など)と電圧調整(タップ切替・SVR・調相設備)、損失軽減策(電圧を上げる・給電点を中心にする等)は、それぞれ目的が異なる対策のグループだと整理しておく。『絶縁監視装置』のように、名前は電気設備っぽくても損失軽減策ではないものが選択肢に紛れ込む出題パターンに注意する。

配電線に使う電線の種類 — 記号は「どこで・どの電圧で」を表す

架空配電線路に使われる電線には、記号(アルファベット2〜3文字)で区別される複数の種類がある。記号は「どこで使うか(屋外の配電線か、需要家への引込みか)」と「どの電圧で使うか(低圧か高圧か)」の組合せで決まっている。

記号名称主な用途
DV引込用ビニル絶縁電線低圧架空引込用
DE引込用ポリエチレン絶縁電線低圧架空引込用
OW屋外用ビニル絶縁電線低圧架空配電用
OC屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線高圧架空配電用
「D」は引込用(Drop)、「O」は屋外用(Outdoor)を表す接頭字と考えると覚えやすい。電圧の高さは名前からは読み取れず、OW(屋外用ビニル絶縁電線)はあくまで低圧用で、高圧の架空配電線にはより絶縁性能に優れたOC(屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線)が使われる。「屋外用だから格上=高圧用」という思い込みに注意する。

高圧架空配電線の太さ選定 — 許容電流だけで決まるわけではない

架空配電線に使う電線の太さは、単に「たくさん電流を流せればよい」という発想だけでは選べない。実務では、複数の検討項目を組み合わせて総合的に決める。

  • 許容電流:電線の材質・太さによって、発熱による損傷を避けられる電流の上限が決まる。負荷電流がこれを超えないことが最低条件になる。
  • 電圧降下:電線を細くするほど抵抗・リアクタンスが大きくなり、電圧降下が過大になりやすい。配電距離が長い高圧配電線ほど、許容電流だけでなく電圧降下の抑制の観点からも太い電線が必要になることがある。
  • 機械的強度:架空電線は屋外の風雪・自重に長期間さらされるため、断線事故を防ぐ耐張強度(引張強さ)が求められる。電気設備技術基準の解釈では、市街地に施設する高圧架空電線について、引張強さ8.01kN以上のもの、または直径5mm以上の硬銅線であることなどが定められている(市街地外ではやや緩やかな基準になる)。
  • 経済性(送電損失):電線を太くするほど抵抗が下がり送電損失(抵抗損)は減るが、電線自体の材料費・工事費は増える。実務では、初期費用と長期的な損失コストのバランスをとって太さを決める考え方(経済的電流密度)も使われる。
電線の太さ選定を「許容電流さえ満たせばよい」と単純化すると、電圧降下・機械的強度・経済性という他の検討項目を見落とす。特に架空電線では、電気的な条件(許容電流・電圧降下)だけでなく、断線を防ぐための機械的強度(引張強さ)が独立した必須条件になる点を押さえておく。地中ケーブルの太さ選定では機械的強度より許容電流・電圧降下・布設条件(熱抵抗)が中心になり、検討項目の重みづけが架空電線とは異なる。

がいしの種類 — 電線をどう支えるかで形が変わる

架空送電線・配電線のがいしは、電線を鉄塔・電柱から絶縁して支持する部品だが、電線をどう支えるか(吊り下げる・上に乗せる・横から支える)によって形状が異なる。

  • 懸垂がいし:皿状の絶縁体を複数連結し、電線を鉄塔から吊り下げるように支持する。送電線で広く使われ、必要な絶縁強度に応じて連結する個数を増減できる。
  • 長幹がいし:棒状の一体成形で、懸垂がいしと同様に送電線の電線を吊り下げる用途に使われる。
  • 高圧ピンがいし:配電線路で、電線をがいしの上部に乗せるようにして支持する。
  • ラインポストがいし:配電線路で、電線をがいしの側面(横)から支持する。
がいしの種類は、電線を支持する向き(上から吊る/上に乗せる/横から支える)で区別すると覚えやすい。懸垂・長幹がいしは「吊り下げる」送電線用、ピン・ラインポストがいしは「上に乗せる・横から支える」配電線用、という大まかな傾向で整理しておく。

電線のたるみ(弛度) — 温度が上がるとなぜ緩むのか

架空電線は支持点(鉄塔・電柱)の間で水平に張られているわけではなく、自重によってわずかに垂れ下がっている。この垂れ下がりの量をたるみ(弛度)と呼び、次の近似式で表される。

D=wS28T [m]D=\frac{wS^2}{8T}\ [\text{m}]

DD:たるみ〔m〕、ww:電線1mあたりの重量〔N/m〕、SS:径間(支持点間の距離)〔m〕、TT:電線の水平張力〔N〕

この式から、たるみは電線の重量に比例し、径間の2乗に比例し、水平張力には反比例することが読み取れる。ここで実務上重要なのが、気温と張力の関係だ。金属でできた電線は気温が上がると熱膨張してわずかに伸び、その分たるみが増えて張力は下がる。逆に気温が下がると電線は収縮し、たるみが減って張力は上がる。式の分母である張力TTが気温の変化で増減するため、結果として夏場(高温時)はたるみが大きくなり、冬場(低温時)はたるみが小さく張力が高くなる。

「気温が上がる→電線が伸びる→たるみが増える→張力は下がる」という一連の因果関係をセットで覚えておく。式D=wS²/8Tの分母(張力T)が気温上昇によって小さくなるからこそ、たるみDが大きくなるという向きで理解しておくと、逆方向(気温低下時)の変化も自動的に導ける。たるみが小さすぎる(張力が高すぎる)と強風時などに電線が断線しやすくなり、たるみが大きすぎると電線が支持物や地表・他物に接近しすぎる危険がある。設計時にはこの両方のバランスをとる必要がある。

フェランチ現象 — 軽負荷なのに電圧が上がってしまう理由

送配電線路では、負荷が重くなるほど電圧が下がる(電圧降下)というのが基本的なイメージだが、実は逆に軽負荷のときほど電圧が上昇する現象がある。これがフェランチ現象(フェランチ効果)だ。

送電線・地中ケーブルには、電線どうしや電線と大地の間に必ず静電容量(コンデンサとしての性質)が存在する。この静電容量は、負荷が接続されているかどうかにかかわらず、常に進み無効電力を系統に送り出す働きをする。深夜など負荷が軽いときは、負荷側が消費する遅れ無効電力よりも、線路の静電容量が生み出す進み無効電力の影響が相対的に大きくなり、系統全体の力率が進み力率になる。この状態になると、受電端(需要家側)の電圧が送電端(発電所・変電所側)の電圧よりも高くなる、というのがフェランチ現象の正体だ。

フェランチ現象は、線路の静電容量が大きいほど発生しやすい。ここで見落としやすいのが、地中電線路の方が架空電線路よりも発生しやすいという点だ。地中に埋設するケーブルは、導体と大地(または金属シース)との距離が近く絶縁体も密になっているため、架空送電線と比べて対地静電容量がはるかに大きくなる。長距離の地中送電線路や、深夜の軽負荷時間帯には、このフェランチ現象による電圧上昇に特に注意が必要になる。

対策としては、前段で触れた分路リアクトルで進み無効電力を吸収し、電圧上昇を抑える方法が広く使われている。

「電線が長く伸びる架空送電線の方がフェランチ現象を起こしやすそうだ」という直感は逆になりやすい。フェランチ現象の主因は対地静電容量であり、導体と大地の距離が近い地中電線路の方が、架空電線路より静電容量が大きく発生しやすい、と原因(静電容量)から結果を導く。

架空送電線の異常振動 — 微風振動だけではない

架空送電線には、ダンパで対策する微風振動のほかにも、気象条件によって生じるいくつかの振動現象がある。いずれも電線の疲労断線や相間短絡につながりうる、送電線路の保守上重要な現象だ。

  • 微風振動:弱い風が電線に当たり続け、電線の固有振動数と共振して生じる、振幅は小さいが長時間続く上下振動。金属疲労による素線切れの原因になり、ダンパで振動エネルギーを吸収して対策する。
  • ギャロッピング:電線に氷雪が付着し、その断面が非対称(長円形や三角形に近い形)になった状態で強い風を受けると、揚力が発生して電線が上下に大きく振動する現象。振幅は数mから、大きい場合は10mを超えることもあり「電線が踊る現象」とも呼ばれる。
  • サブスパン振動:多導体(1相を複数本の電線で構成する方式)特有の振動で、電線相互を固定するスペーサとスペーサの間(サブスパン)で、比較的強い風(目安として風速10m/s以上)のときに発生する。
  • スリートジャンプ:電線に付着した氷雪が脱落した反動で、電線が跳ね上がる現象。一時的なものだが、隣接する相の電線と接近・接触し、相間短絡事故につながる恐れがある。
架空送電線の異常振動は「氷雪が絡むかどうか」で大きく仕分けられる。微風振動・サブスパン振動は氷雪と無関係に風だけで発生するのに対し、ギャロッピング・スリートジャンプは電線への着氷雪が前提になる現象だと区別しておくと、選択肢の入れ替えに気づきやすい。

ねん架 — 3本の電線を「入れ替える」理由

架空送電線を実際に見ると、3相分の電線が鉄塔上で同じ高さに一直線に並んでいるわけではなく、腕金の位置によって高さや配置が微妙に異なることが多い。この配置の違いにより、各相の電線は周囲の大地・他相の電線との位置関係が相ごとに変わり、インダクタンスや静電容量に相ごとの差(不平衡)が生じてしまう。

この不平衡を解消するために行うのがねん架だ。送電線路の途中(こう長を3等分する2か所など)で、3相の電線の配置を入れ替え、各相が路線全体を通じて平均的に同じ条件を経験するようにする。

ねん架の目的は「各相のインダクタンス・静電容量を平衡させること」であり、電線への着雪防止や風圧荷重の低減が目的ではない。3相の電線が路線上で位置を入れ替わることで、特定の相だけが不利な条件(電圧降下や誘導障害が大きくなるなど)を背負い続けることを防ぐ、という視点で押さえておく。

通信線への電磁誘導障害とその対策 — 遮へい線とねん架

送電線・配電線が電話線などの通信線と長い区間にわたって並行している場合、電力線を流れる電流によって通信線に誘導電圧が生じ、通信への雑音・誤作動を招くことがある。これを電磁誘導障害と呼ぶ(送電線の電圧によって生じる静電誘導障害とは発生原理が異なる別の現象)。

電磁誘導障害の主な対策には、次のようなものがある。

  • ねん架:送電線路の途中で3相の電線の配置を入れ替え、各相の電流による磁界を平衡させる。健全時は3相のベクトル和がゼロに近づくため、通信線に及ぼす誘導も抑えられる。
  • 遮へい線:送電線の近くに、導電率が大きく接地抵抗の小さい金属線(遮へい線)を張る。電力線の電流によって遮へい線に誘導電流が流れ、これが電力線の磁界を打ち消すように働くことで、通信線側に及ぶ誘導を軽減する。
  • 通信線側の対策:通信ケーブルをシールド付きのものに交換する、通信線路の途中に絶縁トランス(中継コイル)を挿入する、通信用避雷器を設置するなど、通信設備の側で対策をとる方法もある。
  • 離隔距離の確保:電力線と通信線の並行区間をできるだけ短くする、両者の離隔距離を大きくとるといった、そもそも誘導が生じにくい配置にする方法。
  • 中性点接地方式の選択:地絡事故時の電磁誘導障害は、地絡電流が大きいほど深刻になる。中性点に消弧リアクトル接地方式や高抵抗接地方式を採用し、地絡電流そのものを抑制することも、事故時の誘導障害対策になる。
電磁誘導障害の対策は「電力線側で発生源を抑える」「遮へい線・接地方式で誘導を打ち消す」「通信線側で耐性を高める」の3方向に整理できる。ねん架は電力線側の対策(各相の電流バランスを整える)、遮へい線は電力線と通信線の間に割り込む対策、シールドケーブル・絶縁トランスは通信線側の対策と、どの区間で対策しているかを意識すると選択肢を区別しやすい。

架空送電線路に生じる電力損失 — コロナ損とがいしの漏れ損

架空送電線路では、送電線そのものの導体抵抗による損失(抵抗損)のほかにも、いくつかの電力損失が発生する。

  • コロナ損:電線の表面付近で電界が非常に強くなると、空気の絶縁が部分的に破れて薄紫色の光やパチパチという音を伴う放電が生じる。これをコロナ放電といい、この放電にともなって失われる電力がコロナ損だ。電線表面の電位の傾き(電位の傾度)が大きいほど発生しやすく、電線を太くする、多導体化する(1相を複数本の電線に分けて実効的な直径を大きくする)などの対策で低減できる。
  • がいし漏れ損:がいし表面に汚損物質が付着し、そこを微弱な電流が流れることで生じる損失。塩害・汚損対策(洗浄・耐塩がいしの採用等)は、この損失の低減にもつながる。
  • 誘電損:ケーブルなど絶縁物を介して送電する場合に、絶縁物自体の中で交流電界によって発生する損失。地中送電線のケーブル絶縁体で特に問題になる。
架空送電線路の電力損失を並べる設問では「導体自体の抵抗損」「電線表面のコロナ損」「がいし表面のがいし漏れ損」の3つが代表格になる。誘電損は主にケーブル(絶縁物を介した送電)で問題になる損失であり、架空送電線の損失としては優先度が低い点も押さえておく。

地中ケーブルの損失 — 誘電損に加えて「シース損」も生じる

地中電線路の電力ケーブルには、架空送電線にはない構造上の特徴がある。導体の周りを絶縁体で覆い、さらにその外側を金属製のシース(遮へい層)で覆う構造だ。この構造のために、架空送電線では問題にならない2種類の損失が加わる。

  • 誘電損:ケーブルの絶縁体に交流電圧が加わることで、絶縁体自体の中で発生する損失。絶縁体の誘電率と誘電正接(tanδ)の積に比例するため、誘電率・誘電正接の小さい絶縁材料を使うことで低減できる。
  • シース損:ケーブルの導体に電流が流れることで、金属シースに電磁誘導(相互誘導)による電流が流れ、そこで発生する損失。1回線を構成する3本のケーブルのシースが互いに接続されていると、シース同士を還流するシース回路損(縦方向)と、シース内を周方向に流れる渦電流によるシース渦電流損に分かれる。

シース損を抑える代表的な対策がクロスボンド接地だ。1回線を構成する3本のケーブルのシースを、こう長を3等分する地点で相互に入れ替えて接続する(ちょうどねん架の考え方をシースに応用したような方式)ことで、各シースに誘導される電圧の総和をゼロに近づけ、シース回路損をほぼ打ち消すことができる。

架空送電線の代表的な損失が「抵抗損・コロナ損・がいし漏れ損」であるのに対し、地中ケーブルの損失は「抵抗損・誘電損・シース損」がセットになると整理しておく。シース損は、金属シースを持つケーブル構造特有の損失であり、シースを持たない架空送電線には発生しない。クロスボンド接地(3本のシースを入れ替えて接続する)がシース回路損の低減策であることもあわせて押さえておく。

電力ケーブルの絶縁劣化診断 — 電気を止めずに劣化を見つける

地中電線路の電力ケーブルは、経年劣化によって絶縁性能が徐々に低下していく。事故に至る前に劣化の兆候をとらえるため、いくつかの診断方法が使われる。

  • 部分放電測定:ケーブル絶縁体内部のごく小さな空隙(ボイド)などで発生する微小な放電(部分放電)を検出する方法。絶縁劣化のごく初期段階から検出できるとされる。
  • 誘電正接測定(tanδ測定):絶縁体に交流電圧を加えたときに生じる誘電損失の割合(誘電正接)を測定する方法。絶縁体全体の劣化傾向を評価するのに使われる。
  • 直流漏れ電流測定:ケーブルに直流の試験電圧を加え、絶縁体を通じて流れるわずかな漏れ電流を測定する方法。

これに対し接地抵抗測定は、接地極と大地の間の抵抗を測定する試験であり、ケーブル絶縁体そのものの劣化を診断する方法ではない。対象(接地システムか、ケーブルの絶縁体か)がそもそも異なる。

ケーブルの絶縁劣化診断法を選ぶ設問では「部分放電測定・誘電正接測定・直流漏れ電流測定」の3つが絶縁体そのものを診断する方法であり、接地抵抗測定は目的の異なる別の試験(接地システムの健全性を診断する試験)だと区別しておく。名前に『測定』が付くからといって、すべてが絶縁劣化の診断法とは限らない。

ケーブルの充電電流 — 電気を流していなくても電流が流れる

電力ケーブルは、導体と大地(または金属シース)の間、あるいは各相の導体どうしの間に、絶縁体を挟んで向かい合う構造になっている。これはコンデンサそのものの構造でもあり、ケーブルには必ず静電容量が存在する。負荷に電気を送っていない無負荷の状態でも、この静電容量を通じて常に充電電流が流れ続ける。

三相電力ケーブル1線あたりの充電電流IcI_c〔A〕は、線間電圧VV〔V〕・1線あたりの静電容量CC〔F〕・周波数ff〔Hz〕から次の式で求まる。

Ic=2πfC×V3 [A]I_c = 2\pi fC\times\frac{V}{\sqrt3}\ [\text{A}]

単相回路の充電電流の式Ic=2πfCVI_c=2\pi fCVと形が似ているが、三相の場合はY結線(星形)換算で考えるため、静電容量Cにかかる電圧は線間電圧Vそのものではなく、線間電圧を3\sqrt3で割った相電圧になる点が違う。

充電電流の式でつまずきやすいのは、単相の式Ic=2πfCVをそのまま三相にも当てはめて、√3で割ることを忘れてしまうことだ。「三相の充電電流を求めるときは、まず線間電圧を相電圧(÷√3)に直してから式に代入する」という手順を先に思い出しておく。長いこう長の高圧ケーブルほど充電電流が大きくなり、無負荷時でも遮断器の遮断容量やケーブルの許容電流に影響することがある。

地中電線路の施設基準 — 地中箱の強度と弱電流電線との離隔

需要場所(工場・ビルなど)の敷地内に地中電線路を施設する場合にも、電気設備技術基準の解釈でいくつかの基準が定められている。代表的なものが、地中箱の構造と、他の弱電流電線との離隔距離だ。

  • 地中箱の強度:地中電線路の点検・接続のために設ける地中箱(ハンドホール等)は、車両その他の重量物による圧力に耐える構造とし、取扱者以外の者が容易に立ち入ることができないような措置を講じなければならない。
  • 弱電流電線との離隔距離:高圧の地中電線と、電話線などの地中弱電流電線等との離隔距離は、原則として0.3m以上確保することとされている。この離隔距離を確保できない場合は、両者の間に耐火性の隔壁を設ける、地中電線を堅牢な不燃性・自消性のある管に収めて弱電流電線等と直接接触しないようにするといった代替措置が認められている。
  • 低圧地中電線と高圧地中電線との離隔距離:低圧地中電線と高圧地中電線が接近・交差する場合は、原則として0.15m以上の離隔距離を確保することとされている。これは弱電流電線等との離隔距離(0.3m以上)とは対象が異なる別の規定で、数値も半分になる点に注意する。0.15m以上を確保できない場合は、両者の間に堅ろうな耐火性の隔壁を設ける、いずれかの電線を不燃性・自消性のある被覆や管に収めるといった代替措置で対応する。
  • 埋設表示シートの電圧表示:高圧又は特別高圧の地中電線路を管路式・直接埋設式で施設する場合は、地中電線路の位置を示す埋設表示シートに、物件の名称・管理者名・電圧などを、おおむね2mの間隔で表示することが定められている。需要場所に施設する高圧地中電線路で、長さが15m以下のものはこの表示を省略できる。
地中電線路の離隔距離は、架空送電線の離隔距離(数m単位)と比べてけた違いに小さい、センチメートル単位の数値になる。しかも対象の組み合わせによって数値が変わる点に注意が必要だ。『高圧地中電線と地中弱電流電線等との離隔距離は0.3m以上』『低圧地中電線と高圧地中電線との離隔距離は0.15m以上』と、何と何の間の離隔距離かをセットで数値を覚えておく。どちらも、離隔距離そのものを確保できなくても、耐火性の隔壁や不燃性・自消性のある管への収容といった代替措置で施設が認められる点は共通している。埋設表示シートの電圧表示も、掘り返し工事の際に他業者が誤って高圧の地中電線に触れないようにするための、離隔距離とは別方向の安全対策だと位置づけておくとよい。

施工管理の現場で押さえておきたいこと

施工管理技士として現場に立つとき、送配電線路そのものを設計する場面は多くないが、次の判断には直結する。

  • 敷地内に高圧の引込み線がある場合、その電線が架空か地中かで、近接した場所での重機作業や掘削工事の可否・離隔距離の考え方が変わってくる。
  • 単相3線式の配線工事では、中性線の結線不良が思わぬ過電圧事故につながるため、電圧線以上に中性線の施工品質を意識する必要がある。
  • 動力設備を新設・増設する計画では、既存の受電方式が単相か三相か、三相なら3線式か4線式かを先に確認しないと、必要な引込み容量や配線本数の見積もりを誤る。

この資格を取ったあと、現場で何が変わるか

この資格を取ったあと、新築の工場や店舗の引込み計画を検討する打ち合わせで、あなたは「動力負荷がどれだけあるか」を聞いた瞬間に、単相3線式で足りるのか、三相3線式や三相4線式が必要なのかを自分で見当づけられるようになる。設計図が出てくる前の段階で「この規模の動力負荷なら三相4線式が要りますね」と発言できるかどうかが、後工程での引込み方式のやり直しを防ぐ。

単相3線式の住宅・店舗の配線工事では、中性線の結線品質を電圧線以上に気にする視点を持つ。L1側とL2側の負荷が偏った状態で中性線が欠相すると、負荷の軽い側の電圧が異常に上昇し機器を壊しかねないと知っているからこそ、検査記録の中で中性線の接続状態を重点的に確認する立場に変わる。

電材商社との関係でも、キュービクルやケーブルの提案時に「この現場は高圧受電ですか、それとも特別高圧からの直接受電を検討していますか」という、送配電の階層を踏まえた質問ができるようになる。受電方式の違いが工事費や保安体制にどう影響するかを理解した担当者として、取引先の技術者と対等に案件の規模感をすり合わせられるようになる。

冒頭の「鉄塔と地中ケーブルの使い分け」「100Vと200Vが同じ引込みから出てくる理由」の答え合わせは、理解度チェックの問題で確認してみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 地中送電線は災害に強いから、事故が起きても復旧が早いと錯覚する

    なぜ引っかかる架空送電線と比べて風雨・雪害の影響を受けにくいという長所だけを覚えていると、いざ事故が起きたときに掘り返しを伴う特殊な復旧作業が必要で、かえって時間がかかるという弱点を見落とす

    見破り方地中送電線の特徴は『事故が起きにくい』のであって『事故が起きても直しやすい』わけではないと切り分ける。長所と短所は別の軸で問われることを意識する

  2. 単相3線式は電圧線が2本あるから、中性線が多少不具合を起こしても問題ないと錯覚する

    なぜ引っかかる単相3線式は中性線を基準にL1-N・L2-Nそれぞれ100Vを取り出す方式。2つの回路の負荷(照明の個数など)が均等でない状態で中性線が断線(欠相)すると、負荷の小さい側の電圧が異常に上昇し、機器の焼損につながる

    見破り方単相3線式の安全性は『中性線が正常に接続されていること』が前提だと理解する。現場では中性線の結線・接続状態を電圧線以上に確認する

  3. 低圧と高圧の境目(600V)と、高圧と特別高圧の境目(7,000V)の数字を取り違える

    なぜ引っかかる『600』と『7,000』という2つの境界値を覚える際に、どちらがどちらの境目かを混同しやすい

    見破り方『家庭・オフィスの100V・200Vは低圧、工場が受電する6,600Vは高圧、送電線でよく聞く22,000V・66,000Vは特別高圧』という具体的な数字とセットで覚える

  4. 同じ太さ・同じ本数のイメージから、三相3線式は電線1本あたりの送電電力が単相2線式より小さくなると錯覚する

    なぜ引っかかる『三相は電線が3本もあるから、1本あたりの負担は軽くなるはず』という本数の多さだけからの直感的なイメージにとらわれ、実際の計算式(単相P1=VIcosθ、三相P3=√3VIcosθ)を確認しないまま判断してしまう

    見破り方単相の総送電電力(2本で分担)と、三相の総送電電力(3本で分担)を、それぞれの本数で割って比べる。P1/2とP3/3(=√3VIcosθ/3=VIcosθ/√3)を計算すると、三相の方が約1.15倍大きくなることが式から確認できる

  5. 『不等率』を、需要率や負荷率と同じように100%以下の割合の指標だと思い込む

    なぜ引っかかる需要率・負荷率がどちらも『〜÷〜×100%』で100%以下になる指標であるため、同じ並びで出てくる不等率も同様に100%以下だろうと誤解しやすい

    見破り方不等率は『個々の需要家の最大需要電力の合計』を『同時に発生する合成最大需要電力』で割る指標であり、各需要家のピークが同時刻に発生しない限り、分子の方が分母より必ず大きくなる。したがって不等率は常に1以上(100%を超える値)になると覚えておく

  6. 屋外用ビニル絶縁電線(OW)を、名前の『屋外用』という響きから高圧用の電線だと思い込む

    なぜ引っかかる『屋外』という言葉から、屋内配線用のIV線より格上の(高い電圧に耐える)電線だと連想しやすいが、実際には低圧の架空配電線路に使う電線であり、電圧の高さとは別の軸(屋内か屋外か)の区分になっている

    見破り方電線の記号は『どこで使うか(屋内/屋外/引込)』と『どの電圧で使うか(低圧/高圧)』の2つの軸で決まると意識する。OW(屋外用ビニル絶縁電線)・DV/DE(引込用)は低圧用、OC(屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線)は高圧用、と用途と電圧をセットで覚える

  7. がいしの種類を、設置される場所(送電線か配電線か)だけで見分けようとして混同する

    なぜ引っかかる懸垂がいし・長幹がいし・高圧ピンがいし・ラインポストがいしは、いずれも電線を支持する部品という共通点があるため、電線の支持のしかた(吊り下げるか、上に乗せるか、横から支えるか)の違いを意識しないと見分けがつかない

    見破り方『電線を上から吊り下げるのが懸垂がいし、電線を上に乗せて支えるのがピンがいし、電線を横から支持するのがラインポストがいし』というように、電線に対するがいしの向き・支持方向で区別する

  8. フェランチ現象は、静電容量が大きい地中電線路より、鉄塔で電線が長く伸びる架空電線路の方が起きやすいと直感で思い込む

    なぜ引っかかる『長い電線ほど電圧が乱れそう』という漠然としたイメージで架空送電線を連想しやすいが、フェランチ現象の主因は線路の対地静電容量であり、地中ケーブルは導体と大地の距離が近く絶縁体も密なため、架空電線路よりはるかに静電容量が大きくなる

    見破り方フェランチ現象は『線路の静電容量が大きいほど発生しやすい』という原因から考える。同じこう長なら、地中電線路の方が架空電線路より対地静電容量が大きいため、フェランチ現象は地中電線路の方が発生しやすい、と原因(静電容量)から結果(発生しやすさ)を導く

  9. 架空送電線の異常振動を『微風振動』1種類にまとめて覚えてしまい、ギャロッピングやスリートジャンプと混同する

    なぜ引っかかるいずれも『風や気象条件で電線が揺れる現象』という共通点があるため、発生原因(風だけか、着氷雪が絡むか)や振動の規模(小さく長く続くか、大きく激しいか)の違いを区別せずに覚えてしまいやすい

    見破り方微風振動は『氷雪なし・弱い風・小振幅で長く続く』、ギャロッピングは『着氷雪あり・強風・大振幅で上下に踊るように揺れる』、スリートジャンプは『着氷雪が脱落した反動で跳ね上がる一時的な現象』、サブスパン振動は『多導体特有・スペーサ間で発生』と、着氷雪の有無と振動の規模で切り分ける

  10. ねん架の目的を、電線への着雪防止や風圧荷重の低減だと誤解する

    なぜ引っかかる架空送電線に関する対策には着雪・風圧荷重に関わるものが多く登場するため、『線路の途中で何かを入れ替える対策』と聞くと、同じ気象対策の仲間だと連想しやすい

    見破り方ねん架は『3相の配置を入れ替えて、各相のインダクタンス・静電容量を平衡させる』ことが目的だと押さえる。気象条件(雪・風)への対策ではなく、3相のバランスを取るための電気的な対策だと区別する

  11. 架空送電線路の電力損失を並べる設問で、地中ケーブル特有の誘電損を架空送電線の代表的な損失に含めてしまう

    なぜ引っかかる『損失』という括りで抵抗損・コロナ損・がいし漏れ損・誘電損が並んで登場するため、それぞれがどの送電形態(架空か地中か)で主に問題になるかを区別せずに覚えてしまいやすい

    見破り方誘電損は『絶縁物を介した送電』で問題になる損失であり、絶縁体を介するのは主に地中ケーブル。架空送電線路の代表的な損失は『抵抗損・コロナ損・がいし漏れ損』の3つだとセットで覚える

  12. ケーブルの絶縁劣化診断法を選ぶ設問で、接地抵抗測定を絶縁劣化診断法の1つとして選んでしまう

    なぜ引っかかる接地抵抗測定も『電気設備の状態を測定する試験』という共通点があり、ケーブルの絶縁性能に関する試験と同列に扱ってしまいやすいが、接地抵抗測定が診断しているのは接地システムの健全性であり、ケーブル絶縁体そのものの劣化ではない

    見破り方『何を測っているか』を確認する。部分放電測定・誘電正接測定・直流漏れ電流測定は、いずれもケーブルの絶縁体そのものの状態を測る試験。接地抵抗測定は接地極と大地の間の抵抗を測る、対象が異なる試験だと切り分ける

  13. 静止形無効電力補償装置(SVC)を、架空配電線路の雷害・過電流保護に使う機器の1つだと思い込む

    なぜ引っかかる『架空配電線路に設置される装置』という共通点から、避雷器・放電クランプ・遮断器と同じグループ(保護機器)にSVCも含めてしまいやすいが、SVCは電圧変動・フリッカを抑える調相設備であり、目的が異なる

    見破り方『何から線路を守るか』を確認する。避雷器・放電クランプは雷サージから、高圧真空遮断器・高圧カットアウトは過電流事故から線路・機器を守る保護機器。SVCは無効電力を高速制御して電圧変動を抑える設備で、事故から守る保護機器のグループには含まれない

  14. 三相ケーブルの充電電流を求める式で、単相の式Ic=2πfCVをそのまま使い、√3で割ることを忘れる

    なぜ引っかかるケーブルの静電容量Cにかかる電圧が、線間電圧Vそのものだと思い込みやすいが、三相のY結線(星形)換算で考えると、1線あたりの静電容量Cにかかるのは線間電圧を√3で割った相電圧であり、単相の式をそのまま流用すると√3倍大きい値になってしまう

    見破り方『三相か単相か』をまず確認する。三相ケーブルの充電電流はIc=2πfCV/√3〔A〕、単相はIc=2πfCV〔A〕と、分母に√3が入るかどうかで式が変わると整理しておく

  15. 需要場所の地中電線路で、地中箱や弱電流電線との離隔距離の規定を、架空電線路の離隔距離の感覚(数m単位)で考えてしまう

    なぜ引っかかる架空送電線では鉄塔・電線と建造物の離隔距離が数m単位で定められているため、地中電線路の離隔距離も同程度の桁になると錯覚しやすいが、地中埋設では管路・暗きょという限られた空間の中の話になるため、離隔距離はセンチメートル単位(0.3m以上)とはるかに小さい

    見破り方地中電線路の離隔距離は『高圧地中電線と地中弱電流電線等との間は0.3m以上』とセンチメートル単位で覚えておく。0.3m確保できない場合は、耐火性の隔壁を設ける、不燃性・自消性のある管に収めるなどの代替措置で対応できる

  16. 配電系統のループ方式を、需要密度の低い地域(コスト重視)に適した方式だと誤解する

    なぜ引っかかる『ループ(環状)にして万一に備える』という慎重な印象から、需要が少なく予算の限られる地域にこそ向いていそうだと直感的に考えてしまいやすいが、実際には結合開閉器の追加設置により樹枝状方式より建設費が高くなるため、コストより信頼度を優先できる需要密度の高い地域で採用される

    見破り方ループ方式は『建設費は高いが信頼度が高い』方式だと整理する。需要密度が低くコストを抑えたい地域には建設費の安い樹枝状(放射状)方式が使われ、需要密度が高く停電の影響が大きい地域にループ方式が使われる、と『コストか信頼度か』の軸で使い分けを覚える

  17. 地中電線路の離隔距離を、対象(高圧地中電線と地中弱電流電線等か、低圧地中電線と高圧地中電線か)を区別せず、どちらも同じ0.3m以上だと一括りに覚えてしまう

    なぜ引っかかる『地中電線路の離隔距離』という括りでまとめて暗記すると、対象の組み合わせによって数値が異なる(0.3m以上と0.15m以上の2種類がある)ことを見落としやすい

    見破り方『何と何の間の離隔距離か』を先に確認する。高圧地中電線と地中弱電流電線等との間は0.3m以上、低圧地中電線と高圧地中電線との間は0.15m以上、と対象の組み合わせごとに数値をセットで覚えておく

  18. 単相2線式の電圧降下の式に使う係数2を、三相3線式にもそのまま使ってしまい、係数を√3に置き換えるのを忘れる

    なぜ引っかかる『電線の本数が2本から3本に増えたのだから、係数も何らかの形で大きくなるはず』という漠然としたイメージから、2を3や2×3のような数字に置き換えてしまいやすいが、正しい係数は√3(≈1.73)であり、単純な本数の比とは一致しない

    見破り方単相2線式はe=2I(Rcosθ+Xsinθ)、三相3線式はe=√3I(Rcosθ+Xsinθ)と、括弧の中身(1本あたりの電圧降下に相当する部分)は共通で、線間電圧に換算する係数だけが2から√3に変わると整理する。√3は3相の電流が120度ずつ位相のずれた状態で線間電圧としてベクトル合成される際に出てくる係数であり、単純な本数の比(3/2など)と混同しない

  19. 地中電線路の埋設表示に電圧を表示する義務を、低圧の地中電線路にも一律に当てはまると思い込む

    なぜ引っかかる『地中に埋めた電線の位置を示す表示』という説明だけを覚えると、対象になる電線の電圧区分(高圧・特別高圧限定)を見落とし、低圧の地中電線路にも同じ表示義務があると誤解しやすい

    見破り方埋設表示(物件の名称・管理者名・電圧など、おおむね2m間隔)が義務付けられるのは、高圧又は特別高圧の地中電線路を管路式・直接埋設式で施設する場合であり、低圧の地中電線路そのものには同じ表示義務はないと確認する。需要場所に施設する高圧地中電線路で長さ15m以下のものは、この表示を省略できる例外もあわせて押さえておく

  20. 高圧架空配電線の太さを選ぶとき、許容電流さえ満たせば十分だと思い込む

    なぜ引っかかる『電線の太さ=電流を流す能力』という発想に偏ると、電圧降下や機械的強度(断線防止)、経済性といった他の検討項目が独立した条件であることを見落としやすい

    見破り方架空配電線の太さは『許容電流・電圧降下・機械的強度・経済性』の4つを組み合わせて決めると整理する。特に機械的強度(引張強さ)は、屋外で風雪にさらされる架空電線に固有の必須条件であり、地中ケーブルの太さ選定にはあまり登場しない検討項目だと区別する

  21. 気温が上がると電線のたるみが小さくなる(ピンと張る)と直感で逆に考えてしまう

    なぜ引っかかる『気温が上がる→活発になる→張りが増す』という漠然としたイメージにとらわれ、金属が熱で膨張して電線がわずかに伸びるという物理現象を見落としやすい

    見破り方『気温が上がる→電線が熱膨張して伸びる→たるみDが増える→水平張力Tは下がる』という一連の流れを式D=wS²/8Tの分母(張力T)に結びつけて考える。張力が下がれば分母が小さくなり、Dは大きくなる、という順序で毎回導き出す

  22. 電磁誘導障害の対策を、ねん架1つだけで完結すると思い込み、遮へい線や通信線側の対策を見落とす

    なぜ引っかかる『送電線の対策=ねん架』という組み合わせが印象に残りやすく、電力線と通信線の間に割り込む遮へい線や、通信設備そのものを強化する対策(シールドケーブル・絶縁トランス)が別の選択肢として存在することを見落としやすい

    見破り方電磁誘導障害対策を『電力線側(ねん架・中性点接地方式)』『線間(遮へい線・離隔距離)』『通信線側(シールドケーブル・絶縁トランス・通信用避雷器)』の3つの区間に分けて整理し、それぞれの対策がどの区間に属するかを確認する

  23. 地中ケーブルの損失を、誘電損だけで完結すると思い込み、シース損の存在を見落とす

    なぜ引っかかる『ケーブルの損失=絶縁物を介した誘電損』という理解にとどまると、ケーブル特有の金属シース構造に起因する別の損失(シース損)が存在することに気づきにくい

    見破り方地中ケーブルは架空送電線にはない金属シースを持つ構造だと意識する。シースに電流が誘導されて生じる損失がシース損であり、架空送電線の代表的な損失(抵抗損・コロナ損・がいし漏れ損)には登場しない、ケーブル構造特有の損失だと区別する

参考文献・出典

理解度チェック(32問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、32問で確認しよう。 内訳は基本10問・応用6問・ひっかけ16問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 32 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 架空送電線は鉄塔(電線を支える)・電線(導体)・がいし(電線と鉄塔を絶縁する)の3要素で構成される
  2. 地中送電線は絶縁被覆したケーブルを管路や洞道(トンネル状の設備)に収めて送る。景観に優れ天候の影響を受けにくい一方、建設費が高く事故時の復旧に時間がかかる
  3. 単相2線式は100Vのみ。単相3線式はL1-N間・L2-N間でそれぞれ100V、L1-L2間で200Vを同時に取り出せ、一般住宅の引込みの主流方式になっている
  4. 三相3線式は200V(または400V)の三相電力のみを取り出し、モーターなど動力負荷に使われる。三相4線式は中性線を加え、三相の動力用と単相の電灯用を1系統でまかなえる
  5. 電気設備技術基準では交流600V以下・直流750V以下が低圧、そこから7,000V以下が高圧、7,000V超が特別高圧。送電は特別高圧・高圧、家庭への配電は低圧という大枠が、鉄塔から家庭まで電圧が段階的に下がっていく理由になっている
  6. 線間電圧・力率・配電距離・電線の材質と太さが同じという条件では、三相3線式は単相2線式より電線1本あたりの送電電力が大きくなり(約1.15倍)、同じ電力を送る場合の送電損失も小さくなる。三相3線式は単相交流を取り出すこともできる
  7. 単相2線式・単相3線式・三相3線式を送電損失(電力損失)の大小で比べると、単相2線式が最も大きい。単相3線式は、同じ負荷に同じ太さの電線で供給する場合、中性線を挟んだ2つの100V回路に電流を分散させられるぶん電線1本あたりの電流が単相2線式の半分程度まで下がるため、送電損失は単相2線式のおよそ1/4まで小さくなる。三相3線式も単相2線式より損失が小さい(前項)。対地電圧の数値だけでなく、この損失面の違いも単相2線式・単相3線式・三相3線式を比較するときの着眼点になる
  8. 電線1本あたりの抵抗R〔Ω〕・リアクタンスX〔Ω〕、負荷電流I〔A〕、力率角θ(cosθ・sinθ)を使うと、線路の電圧降下eの簡略式は配電方式によって係数が変わる。単相2線式はe=2I(Rcosθ+Xsinθ)〔V〕、三相3線式はe=√3I(Rcosθ+Xsinθ)〔V〕で、括弧の中身(電線1本あたりの電圧降下IRcosθ+IXsinθ相当)は共通だが、それを線間電圧に換算する係数が単相の2から三相の√3に変わる点が違う
  9. 配電系統を評価する指標には、需要率(最大需要電力÷設備容量×100%)、負荷率(平均需要電力÷最大需要電力×100%)、不等率(各需要家の最大需要電力の合計÷合成最大需要電力、常に1以上)があり、それぞれ見ている対象が異なる
  10. 送配電線路の保護には過電流継電器(OCR、短絡・過負荷電流を検出して遮断器を動作させる)や避雷器(雷サージから機器を保護)などが使われる。電圧調整には柱上変圧器のタップ切替・線路電圧調整器・進相/遅相用の調相設備(コンデンサ・分路リアクトル)が使われ、絶縁監視装置は保護・監視のための設備であり損失低減策そのものではない
  11. 配電線に使う電線には用途ごとの区分がある。DV(引込用ビニル絶縁電線)・DE(引込用ポリエチレン絶縁電線)は低圧の架空引込用、OW(屋外用ビニル絶縁電線)は低圧の架空配電用、OC(屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線)は高圧の架空配電用に使われる。OWは『屋外用』という名前から高圧用と誤解しやすいが低圧用の電線
  12. 架空送電線・配電線のがいしには、送電線で電線を吊り下げる懸垂がいし、棒状で送電線に使われる長幹がいし、配電線路の電線を上に乗せて支える高圧ピンがいし、電線を横から支持するラインポストがいしなど、形状・支持方法の異なる複数の種類がある
  13. フェランチ現象(フェランチ効果)は、線路の静電容量による進み無効電力の影響で、受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象。深夜など軽負荷時、線路の静電容量が大きいほど発生しやすく、地中電線路は架空電線路より対地静電容量がはるかに大きいため、架空電線路よりも地中電線路の方が発生しやすい。軽負荷時は負荷側の誘導性(遅れ)電流成分が減る一方、線路の静電容量による進み電流は負荷の大小に関係なくほぼ一定に残るため、系統全体で見ると進み電流が相対的に卓越し、これがフェランチ現象を助長する。対策の分路リアクトルは、この進み電流(進み無効電力)を吸収して遅れ側へ相殺することで、フェランチ現象による電圧上昇を抑制する
  14. 架空送電線の異常な振動には、微風振動(弱い風で電線が固有振動数と共振して起きる小さいが長く続く振動、ダンパで対策)、ギャロッピング(電線に付着した氷雪で断面が非対称になり、風による揚力で電線が上下に大きく振動する現象)、サブスパン振動(多導体で、スペーサとスペーサの間で強風時に生じる振動)、スリートジャンプ(電線に付着した氷雪が脱落した反動で電線が跳ね上がる現象)がある
  15. ねん架は、送電線路の途中で3相の電線の配置を入れ替え、各相のインダクタンス・静電容量を平衡させるために行う。電線の着雪防止や風圧荷重の低減が目的ではない
  16. 架空送電線路に生じる電力損失には、導体自体の抵抗損のほか、電線表面で放電が起きるコロナ損、がいし表面の汚損による漏れ損がある。誘電損は主に地中ケーブルなど絶縁物を介した送電で問題になる損失で、架空送電線の代表的な損失には数えにくい
  17. 地中電線路の電力ケーブルの絶縁劣化診断には、部分放電測定・誘電正接測定(tanδ測定)・直流漏れ電流測定などが使われる。接地抵抗測定は接地システムの健全性を診断する試験であり、ケーブル絶縁体の劣化診断法ではない
  18. 架空配電線路の保護には、避雷器(雷サージの吸収)・放電クランプ(引込線等から侵入した雷サージを電線と支持物の間で放電させ大地へ逃がす簡易的な避雷設備)・高圧真空遮断器・高圧カットアウトなどが使われる。一方、静止形無効電力補償装置(SVC)は無効電力を高速制御して電圧変動やフリッカを抑える調相設備で、雷や過電流から線路・機器を守る保護機器ではない。放電クランプは雷サージから機器を守るための保護機器であり、配電電圧を高くする・給電点を負荷の中心にするといった送電損失そのものを減らす損失軽減策とは目的が異なる点にも注意する
  19. 三相電力ケーブルの無負荷時の充電電流Ic〔A〕は、線間電圧V〔V〕・ケーブルの1線あたりの静電容量C〔F〕・周波数f〔Hz〕からIc=2πfCV/√3〔A〕で求まる。単相回路の充電電流の式Ic=2πfCVとは異なり、三相の場合は線間電圧を√3で割った相電圧を使う点に注意する
  20. 需要場所に施設する地中電線路には、電気設備技術基準の解釈により、地中箱は車両その他の重量物の圧力に耐える構造とすること、高圧の地中電線と地中弱電流電線等との離隔距離は原則0.3m以上確保すること(または耐火性の隔壁を設ける等の代替措置)などが定められている
  21. 電気設備技術基準の解釈第120条により、地中電線路は電線にケーブルを使用し、かつ管路式・暗きょ式・直接埋設式のいずれかにより施設しなければならない。HIV電線(屋内配線用の絶縁電線)のような、地中埋設を想定していない絶縁電線をそのまま地中電線路に使用することはできない
  22. 低圧地中電線と高圧地中電線が接近・交差する場合の離隔距離は、原則0.15m以上確保することと定められている。これは高圧地中電線と地中弱電流電線等との離隔距離(原則0.3m以上)とは対象・数値が異なる別の規定で、いずれも確保できない場合は耐火性の隔壁を設ける、不燃性・自消性のある被覆や管に収めるなどの代替措置で対応できる
  23. 高圧又は特別高圧の地中電線路を管路式・直接埋設式で施設する場合、地中電線路の位置を示す埋設表示(物件の名称・管理者名・電圧など)をおおむね2mの間隔で施すことが電気設備技術基準の解釈に定められている。需要場所に施設する高圧地中電線路で長さが15m以下のものは、この表示を省略できる例外がある
  24. 高圧配電線路の系統構成には、幹線を1本の木の枝のように伸ばす樹枝状(放射状)方式と、幹線を環状にして両端を結ぶループ方式がある。ループ方式はループ結合点の開閉器を常時閉路する方式と常時開路する方式があり、事故が起きた区間だけを切り離せば健全な区間への電力供給を継続できる。結合開閉器の分だけ樹枝状方式より建設費は高くなるが、信頼度が求められる負荷密度(需要密度)の高い地域で採用される
  25. 高圧架空配電線に使う電線の太さは、許容電流だけでなく、電圧降下(細いほど抵抗・リアクタンスが大きく電圧降下が過大になりやすい)、機械的強度(市街地の高圧架空電線は引張強さ8.01kN以上又は直径5mm以上の硬銅線などの基準がある)、経済性(送電損失と材料費のバランス)を総合的に検討して選定する
  26. 架空電線のたるみ(弛度)D〔m〕は、電線1mあたりの重量w、径間S、水平張力Tを用いてD=wS²/8T〔m〕で近似できる。気温が上がると電線が熱膨張してたるみが増え、その分だけ水平張力Tは下がる。逆に気温が下がると電線は収縮し、たるみは減って張力は上がる
  27. 送電線・配電線が通信線と長く並行すると、電力線の電流によって通信線に電磁誘導障害が生じることがある。対策には、送電線側で各相の電流バランスを整えるねん架、電力線と通信線の間に張る遮へい線(導電率が大きく接地抵抗が小さいもの)、通信線側のシールドケーブル化・絶縁トランスの挿入・通信用避雷器の設置、電力線と通信線の離隔距離の拡大、地絡電流を抑える中性点接地方式(消弧リアクトル接地・高抵抗接地)の採用などがある
  28. 地中ケーブルには、架空送電線にはない金属シース(遮へい層)があるため、誘電損に加えてシース損(シースに電磁誘導で流れる電流による損失)が生じる。1回線3本のケーブルのシースを、こう長を3等分する地点で相互に入れ替えて接続するクロスボンド接地は、シース回路損を打ち消す代表的な対策になる
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