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施工管理法(知識) ・ 7 / 8

工期とコストの関係 — 急いだ分だけ得をするとは限らない理由

読み終えると、こうなる

工事費と施工期間の関係を示すグラフを見たとき、どの工期が『安いか』ではなく『総費用が最小になるか』で判断できるようになる。

  • 直接工事費と間接工事費が、工期の長さに対してそれぞれどちらの方向に動くかを説明できる
  • 総工事費用のグラフがU字型になる理由を、直接費と間接費の合計として説明できる
  • ノーマルタイム・クラッシュタイム・最適工期(経済的工期)を、それぞれ何が最小・最短になる点かで区別できる
  • 工事費と施工期間の関係を表すグラフから、特定の工期における費用を読み取り、記述の正誤を判断できる
考えてみよう

工期を2か月短縮できれば、それだけ現場を早く終えられて、費用も安く済む——そう考えるのが自然に思える。

ところが実際の工事費と施工期間の関係を表すグラフを見ると、極端に短い工期のほうが、むしろ総費用が高くなっている場面がある。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、なぜ「急ぐほど得をする」とは限らないのかを、費用の内訳から説明できるようになっている。

工事にかかる総費用(総工事費用)は、大きく2種類の費用の合計でできている。直接工事費(材料費・労務費・機械費など、工事そのものに直接必要な費用)と、間接工事費(共通仮設費・現場管理費など、工事全体を進めるために間接的にかかる費用)だ。この2つは、施工期間の長さに対してまったく逆の動きをする。

直接費は「急ぐほど高くつく」、間接費は「長引くほど高くつく」

直接工事費は、工期を短縮しようとするほど増加する。短い工期で工事を終わらせるには、通常より多くの人員や機械を同時に投入し、残業や休日出勤で作業を進める必要があるからだ。逆に工期を延ばせば、無理のない人員配置で作業できるため直接工事費は下がっていくが、ある点(後述するノーマルタイム)を超えて工期を延ばしても、直接工事費はそれ以上ほとんど変わらなくなる。

一方、間接工事費は、現場事務所の維持費や管理者の人件費のように、現場を維持している期間そのものに比例してかかる費用だ。工期が長くなればなるほど、間接工事費は増加し続ける。

工期と費用の関係(自作の概念図) 施工期間(長い) 費用 直接工事費(短縮で増加) 間接工事費(延長で増加) 総費用(U字型) 最適工期(総費用最小) クラッシュ タイム(最短) ノーマル タイム 直接費・間接費・総費用の関係(自作の概念図、実際の試験問題のグラフではない)
直接費と間接費が逆方向に動くからこそ、両者を足した**総工事費用は、施工期間に対してU字型(下に凸)の曲線を描く**。工期を短くしすぎれば直接費の急増が響き、長くしすぎれば間接費の積み上がりが響く。「短縮すれば必ず安くなる」という単純な右肩下がりの発想では、このグラフは説明できない。

ノーマルタイム・クラッシュタイム・最適工期 — 3つの似た用語を区別する

工期とコストの関係を扱うとき、次の3つの用語が登場する。それぞれ「何が最小・最短になる点か」で区別すると混同しにくい。

用語何が最小・最短になる点か
ノーマルタイム直接工事費が最小となる工期(これより延ばしても直接費はほぼ変わらない)
クラッシュタイムこれ以上短縮できない、物理的な最短の工期
最適工期(経済的工期)総工事費用(直接費+間接費の合計)が最小となる工期
最適工期は、直接費だけを見たノーマルタイムとも、最短工期のクラッシュタイムとも一致しない。総費用という「合計」を最小にする工期であり、通常はクラッシュタイムより長く、ノーマルタイムより短い位置にある。「最適=一番急いだ工期」でも「最適=一番直接費が安い工期」でもない、という区別が能力問題でも問われる。

自作の数値例で確認する

制御盤更新工事を想定した、自作の数値例で総費用の動きを確認してみる。

施工期間直接工事費間接工事費総工事費用
10か月(ノーマルタイムに近い)900万円500万円1,400万円
7か月(最適工期に近い)1,000万円350万円1,350万円
4か月(クラッシュタイム)1,600万円200万円1,800万円

10か月から7か月に短縮すると、直接費は100万円増えるが間接費が150万円減るため、総費用はむしろ50万円安くなる。ところがそこからさらに4か月まで短縮すると、直接費が600万円も跳ね上がり、間接費の減少(150万円)ではまったく相殺できず、総費用は450万円も増加してしまう。「短縮すれば得をする局面」と「短縮するほど損をする局面」の両方が、同じ1本のグラフの中に存在する。

この曲線は、工程表の遅れ対応にもつながる

工期とコストの関係を理解しておくと、工程が遅れたときに「とにかく人員を増やして取り戻す」という判断が常に正しいとは限らないことが分かる。クリティカルパス上の遅れをどこまで直接費をかけて短縮すべきかは、総費用のグラフでいえばすでに最適工期の左側(直接費が急増する領域)に入っていないかを、まず確認する価値がある判断になる。

今日試せることとして、身近な工事の見積書や工程表を見る機会があれば、工期を1か月延ばした場合と縮めた場合とで、費用がどちらの方向に動きそうかを直接費・間接費に分けて考えてみるといい。

この資格を取ったあと、現場で何が変わるか

取引先から「工期を切り詰めたいので特急で納品してほしい」と頼まれたとき、これまでは特急料金を提示して応じるだけだったのが、合格後は「その短縮は、間接費の減少より直接費の増加のほうが大きくなっていませんか」と、費用面から一緒に考えられるようになる。急ぎの依頼をただ受けるのではなく、その急ぎ方が本当に得なのかを一緒に検証できる相手への変化だ。

このU字型のグラフの発想を知っていると、クリティカルパス上の遅れを取り戻すために人員や資材を追加投入すべきかどうかという相談を受けたときも、「もう最適工期を過ぎて、直接費が急増する領域に入っていないか」という視点を提供できる。単に在庫を融通する業者ではなく、工期とコストのバランスまで踏み込んで提案する業者としての立場になる。

こうした費用構造の理解は、見積書の金額の妥当性を自分の言葉で説明できることにもつながる。「なぜこの短縮にはこの追加費用がかかるのか」を筋道立てて話せる担当者は、価格だけを比較される競合から一歩抜け出し、工事全体の経済性を相談できる相手として選ばれるようになる。

冒頭の問い、極端に短い工期がむしろ総費用を高くしていたのはなぜか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 工期を短縮すればするほど総工事費用は下がり続けると思わせる

    なぜ引っかかる『早く終われば無駄な経費がかからない』という直感から、短縮=安上がりだと錯覚しやすい

    見破り方工期を短縮すると、直接工事費(人員・機械の集中投入コスト)が急増する。総工事費用は直接費と間接費の合計であるため、ある工期より短くすると、間接費の減少分より直接費の増加分の方が大きくなり、総費用はむしろ増加に転じる。『短縮=常に安い』という単純な右肩下がりのグラフでは表せない

  2. 最適工期を、直接工事費が最小になる工期(ノーマルタイム)や、最短工期(クラッシュタイム)と同じものだと思わせる

    なぜ引っかかる『最適』という言葉から、極端な工期(一番短い、あるいは一番費用の内訳が単純な工期)を連想しやすい

    見破り方最適工期(経済的工期)は、あくまで総工事費用(直接費+間接費の合計)が最小になる工期であって、直接費だけが最小のノーマルタイムとも、最短工期のクラッシュタイムとも一致しない。3つの用語が『何を最小・最短にした点か』で区別する

  3. 直接工事費と間接工事費、それぞれが工期の変化にどちら向きに動くかを逆に覚える

    なぜ引っかかる2つの費用が逆方向に動くという関係自体が直感的でなく、どちらがどちらか混同しやすい

    見破り方直接工事費は『急いで人・機械を投入する費用』なので工期短縮で増加、間接工事費は『現場を維持する期間そのものにかかる費用』なので工期延長で増加、という発生源の違いから向きを判断し直す

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本2問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 総工事費用は、直接工事費(材料費・労務費・機械費など、工事に直接必要な費用)と間接工事費(共通仮設費・現場管理費など、工期の長さに応じてかかる費用)の合計
  2. 直接工事費は、工期を短縮しようとして人員・機械を集中投入するほど増加する。逆に工期を延ばすほど直接工事費は減少していくが、ある点を超えるとそれ以上延ばしても直接工事費はほとんど変わらなくなる
  3. 間接工事費は、現場を維持する期間そのものに比例してかかる費用のため、工期が長くなるほど増加する
  4. 総工事費用(直接費+間接費)を縦軸に、施工期間を横軸にとると、直接費と間接費の増減が逆方向のため、グラフはU字型(下に凸)の曲線を描く
  5. ノーマルタイムは直接工事費が最小となる工期、クラッシュタイムはこれ以上短縮できない最短の工期、最適工期(経済的工期)は総工事費用が最小になる工期。この3つはそれぞれ別の点であり、最適工期はノーマルタイムとクラッシュタイムの間のどこかにある
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