電気設備の設計図に、コンセントを表す丸い記号がいくつも並んでいる。多くは何も書かれていない、ただの丸だ。ところがそのうちの1つにだけ、小さく「LK」という文字が添えられている。
この2文字だけの違いは、施工の現場では何を変えるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、丸に添えられた1〜2文字のアルファベットから、そのコンセントが置かれる現場の事情まで読み取れるようになっている。
コンセントのJIS配線用図記号は、基本形が丸(⚪︎)1つだ。これだけでは「コンセントがある」という情報しか伝わらない。そこで、種類を区別する必要があるときは、丸の右肩に小文字のアルファベット(傍記文字)を添える。この傍記文字こそが、そのコンセントに求められている構造や機能を表している。
抜け止め形(LK)— 捻ってロックする、抜けては困る場所のためのコンセント
抜け止め形コンセントの文字記号はLK(Lockingの略)だ。プラグを差し込んだ後、右回りに捻るとロック機構がかかり、簡単には抜けなくなる。抜くときは、逆に左回りに捻ってロックを外してから引き抜く。
「抜けにくい=優れている」という直感から、抜け止め形をあらゆる場所に使える上位互換のコンセントだと考えたくなるが、それは正確ではない。抜き差しのたびに捻る操作が必要になるため、プラグの抜き差しを頻繁に行う場所にはむしろ不向きだ。抜け止め形が向いているのは、振動を受けやすい場所や、OAタップのように差したまま長期間使い続け、不用意に抜けると困る場所。「抜けにくさが必要な場所」と「抜き差しのしやすさが必要な場所」は別の条件であり、抜け止め形はどちらにも使える万能選手ではない。
なお施工方法そのものは、通常の一般形コンセントと変わらない。特殊な構造を持つのはプラグとコンセントの勘合部分であって、取り付け工事の手順が変わるわけではない。
引掛形(T)— 抜け止め形とは別の固定方式
引掛形コンセントの文字記号はT(Twistの略)。プラグを差し込んだ後にひねって引っ掛けて固定する方式で、動作としては抜け止め形(LK)と同じく「差してからひねる」という手順を踏む。しかし固定の仕組みそのものは別物だ。
接地極付(E)と接地端子付(ET)— 同じ「接地」でも、取り方が違う
接地に関わる傍記文字にはEとETがあり、どちらも「感電を防ぐために接地線をつなぐ」という目的では共通している。しかし接地の取り方が違う。
| 文字記号 | 名称 | 接地の取り方 | よく使われる機器 |
|---|---|---|---|
| E | 接地極付コンセント | コンセント本体に接地極があり、3Pプラグを差し込むだけで接地が完了する | パソコン・サーバーなどの情報機器 |
| ET | 接地端子付コンセント | コンセント脇のねじ式端子に、機器側から別に引き出した接地線を固定する | 洗濯機・冷蔵庫・電子レンジなどの白物家電 |
EとETは、どちらも文字にEを含むため「接地に関わるコンセント」という大きなくくりでは同じに見える。しかし、Eは3Pプラグを差し込むだけで接地が完了するのに対し、ETは機器側から接地線を別に引き出し、コンセント脇のねじ端子に固定する一手間が必要になる。「差すだけで済むか、別配線してねじ留めする手間が要るか」という手順の違いで区別すると、混同しにくい。
漏電遮断器付(EL)と防雨形(WP)
ELは漏電遮断器付コンセントを表す文字記号だ。コンセント自体に漏電遮断器(漏れ電流を検知して自動的に電路を遮断する機構)を内蔵しており、分電盤側の漏電遮断器とは別に、コンセント単体でも漏電を検知できる。WPは防雨形(Weather Proof)を表し、屋外など雨がかかる場所で使うコンセントを示す。
図記号は「暗記」より「現場の状況」とセットで覚える
LK・T・E・ET・EL・WPと並べると、ただのアルファベットの羅列に見えて覚えにくい。しかし、それぞれの記号が生まれた背景には、「この場所ではプラグが抜けると困る」「この機器は水回りだから接地が要る」「ここは雨がかかる」という、具体的な施工上の判断がある。
今日試せることとして、身近な電気設備の図面や、コンセント本体の刻印を見る機会があれば、そこに傍記文字が入っていないかを確認してみるといい。何気なく使っているコンセントの多くが、実は一般形(無表記)であり、傍記文字が入っているコンセントには、それだけの理由があることに気づくはずだ。
通信・情報設備の図記号 — コンセントとは別の記号体系
JIS配線用図記号には、ここまで見てきたコンセントのような電力設備の記号とは別に、電話・インターホン・チャイムといった通信・情報設備の記号の一群がある。設計図の中では見た目が近い記号が並ぶことがあるが、それぞれが表す機器の役割はまったく異なる。
| 機器名 | 果たす役割 | 見分け方のポイント |
|---|---|---|
| 内線電話機 | 構内交換機(PBX)を介した内線同士の通話・外線への取り次ぎ | 公衆回線に直接つながる一般の電話機とは接続の仕組みが異なる |
| ドアホン | 玄関子機から室内の親機を呼び出しての通話 | 音声のみ。カメラで映像も確認できるテレビドアホンとは映像の有無で区別 |
| 電話機形インターホン子機 | 受話器を取り上げて話すインターホンの子機 | 壁付けマイク・スピーカでそのまま話せるスピーカ形子機とは、受話器を持ち上げる操作の有無で区別 |
| チャイム | 押しボタンと組み合わせて来客を知らせる音を鳴らす | 通話機能を持たない一方向の設備。双方向で会話できるドアホンとは役割が異なる |
この4つの機器は、いずれも「玄関まわり・建物内の呼び出し・通話に関わる設備」という共通のくくりで語られがちだが、「通話できるか、知らせるだけか」「受話器を持ち上げる操作が要るか」「構内交換機を介するか」という機能面の違いで見分けると、名前が似ていても混同しにくくなる。特にチャイムは、来客を知らせる音を鳴らすだけの一方向の設備であり、ドアホンのように室内から応答して会話することはできない。この一方向・双方向の違いは、機能を知らずに図記号だけを見比べても気づきにくい。
コンセントの傍記文字(LK・T・E・ET・EL・WP)と同じように、通信・情報設備の図記号も「記号の形を丸暗記する」より「その機器が現場で何をする設備か」から入ると、初めて見る図面でも記号と名称の対応を推測しやすくなる。
電灯設備まわりの図記号 — リモコンスイッチ・誘導灯・電力量計・二重床用コンセント
配線用図記号は、コンセントや通信設備だけでなく、照明の点滅方式や計量に関わる機器にも及ぶ。名前は聞いたことがあっても、それぞれの図記号や制度上の位置づけまで正しく区別できているとは限らない機器を、4つ整理しておく。
| 機器名 | 図記号・制度上のポイント | 見分け方のポイント |
|---|---|---|
| リモコンスイッチ | 傍記文字は「R」。AC100Vをリモコン用の低電圧(AC24V)に変換し、リモコンリレーを介して点滅を切り替える | 電路を直接開閉する一般のタンブラスイッチとは、開閉の仕組みそのものが異なる |
| 誘導灯 | 消防法にもとづき、人が集まる施設・建物への設置が義務づけられている照明器具 | 光源によって蛍光灯形(従来型)・LED形などに区分される。設置義務の有無を左右する区分ではない |
| 電力量計 | 証明用途(電気料金の算定)に使う場合は計量法にもとづく検定が必要。検定には概ね5〜10年の有効期間がある | 有効期間が切れたまま証明用途に使い続けると計量法違反になる |
| 二重床用コンセント | OA床・フリーアクセス床(二重床)に設置する | 床下の配線スペースを利用し、レイアウト変更に対応しやすいオフィス等で使われる |
リモコンスイッチの「R」は、単に一般のスイッチと見た目を区別するための記号ではない。AC100Vをそのまま開閉する一般のタンブラスイッチと違い、リモコンスイッチはAC24Vの低電圧回路でリモコンリレーを動かし、そのリレーが実際の照明回路を開閉する。傍記文字1文字の違いが、電路の開閉方式そのものの違いを表しているという点は、抜け止め形(LK)や引掛形(T)の考え方と同じ構造だ。
電力量計の検定有効期間は、コンセントや照明器具の図記号とは毛色の違う知識に見えるかもしれないが、「証明用途で使う計量器には、計量法にもとづく有効期間がある」という制度の存在自体を知らないと、期限切れの電力量計を『壊れていないから使い続けて問題ない』と誤って判断しかねない。図記号を覚えることと、その機器が置かれている制度上の位置づけを知ることは、どちらも設計図を正しく読むために必要な知識だ。
この資格を取ったあと、現場で何が変わるか
取引先から「洗濯機置場のコンセントを交換してほしい」という相談を受けたとき、これまでは形状だけを見て同等品を提案していたのが、合格後は「このコンセントはETですね。接地端子に別配線がつながっているはずなので、交換時にその接地線の接続も忘れずに」と、図記号の裏にある配線の実態まで踏まえて提案できるようになる。
設計図に描かれたLK・ET・ELといった傍記文字を見たときも、それが単なる型番の違いではなく、「なぜその場所にその機能が必要とされたのか」という施工上の判断の結果だと読み取れるようになる。これは、指定された型番をそのまま仕入れて納品するだけの立場から、その指定の意味を理解した上で代替品や在庫状況を相談できる立場への変化だ。取引先が図面の傍記文字を書き間違えていた場合にも、「この場所は振動があるのでLKの方が適切ではないでしょうか」と、施工の実態に即した提案ができるようになる。
冒頭の問い、丸に添えられた「LK」という2文字が現場で何を変えるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。