耐火ケーブル・耐熱ケーブルとは
火災のとき、避難と消火を支える設備——スプリンクラー・非常放送・火災報知器——への配線が真っ先に燃え落ちては意味がありません。そこで消防庁の告示基準に適合した専用の電線が使われます。
- 耐火電線(FP・FP-C): 消防庁告示第10号の基準に適合。30分で840℃に達する加熱曲線で加熱されても回路を維持。導体上にマイカ(雲母)テープの耐火層を持つ。非常電源の電源供給用
- 耐熱電線(HP): 消防庁告示第11号の基準(15分で380℃に達する加熱曲線)に適合。60V以下の弱電回路用(非常放送のスピーカー回路、非常ベルの起動装置など)
出典はいずれも電線の技術専門機関・電線総合技術センター(JECTEC)の解説です(ページ末尾参照)。
AE・HP・FP-Cの違いを断面図で比較
3種類は、似た細いケーブルに見えても要求性能が異なります。AEは一般警報用、HPは耐熱、FP・FP-Cは耐火です。価格や在庫だけで置き換えず、消防設備の設計図書、使用電圧、認定表示を先に確認します。
| 区分 | 代表的な呼称 | 主な要求性能 | 使用電圧の目安 | 代表用途 |
|---|---|---|---|---|
| 一般警報用 | AE、FA、AEV、AEE/F | 耐熱・耐火指定なし | 60V以下 | 自動火災報知設備の感知器の信号伝送回路など |
| 耐熱 | HP、HFA、EM-HFA | 380℃・15分の耐熱試験 | 60V以下 | 非常放送のスピーカー回路、非常ベルの起動装置などの耐熱指定回路 |
| 耐火 | FP、FP-C、EM-SH-C | 840℃・30分の耐火試験 | 60V・600Vの対応品あり | 非常電源、消火設備、防排煙設備など |
AE・FAは冨士電線の資料でJCS 4396の警報用ポリエチレン絶縁ケーブルとして整理されています。同社カタログの使用区分表では、FP-Cは低圧回路(600V)・弱電回路(60V)の耐火配線と耐熱配線に使え、HPは弱電回路(60V)の耐熱配線だけ、AEV・AEE/Fは耐火・耐熱配線には使えない区分です。HP・FPの試験条件や適用区分は、JECTECの耐火・耐熱電線解説と冨士電線の消防用ケーブルカタログを確認してください。
HFAは別規格ではありません。 HFAはメーカーの商品名で、統一記号はHPです。構造、認定、EM品・LAP品の違いはHFA(HP)ケーブル完全ガイドで詳しく解説しています。
【選定マップ】FPかFP-CかHPかを最短で決める
| 回路の種類 | 布設方法 | 選ぶ電線 |
|---|---|---|
| 非常電源の供給(ポンプ・非常放送電源等) | 露出配線のみ | FP(耐火電線・露出限定) |
| 非常電源の供給(ポンプ・非常放送電源等) | 電線管・ダクトに入れる | FP-C(耐火電線・管内OK) |
| 60V以下の弱電回路で耐熱配線の指定がある区間(非常放送のスピーカー回路など) | — | HP(耐熱電線) |
| 耐熱・耐火の指定がない警報回路(感知器の信号回路など) | — | AE(警報用ケーブル) |
| 一般の電源回路(消防指定なし) | — | CV・VVF等の一般品(各ガイドへ) |
一般回路はCVケーブルガイド・VVFガイドを参照してください。
一段深い理解:なぜマイカテープが「840℃30分」に耐えられるのか
有機材料では燃え尽きる温度で、無機材料は形を保つ
一般的な電線の絶縁体(ビニルやポリエチレンなど)は有機材料であり、高温にさらされると炭化・溶融して絶縁性能を失う。耐火電線(FP・FP-C)が高温下でも回路を維持できるのは、導体の上に耐火層を設けているからだ。JECTECの解説では、この耐火層に高温でも絶縁性に優れたマイカテープ(雲母とプラスチックまたはガラスクロスを貼り合わせたテープ)が使われている。外側の絶縁体・シースが熱で損なわれても、導体上の耐火層が導体間の絶縁を受け持つことで、加熱中も通電を続けられる構造になっている。
なぜ電源用(FP系)と信号用(HP)で基準温度が違うのか
JECTECによると、消防庁は昭和45年に弱電回路用の耐熱電線の基準、昭和46年に強電回路用の耐火電線の基準を定めた。現在は、耐火電線が消防庁告示第10号(30分で840℃に達する加熱温度曲線)、耐熱電線が告示第11号(15分で380℃に達する加熱温度曲線)に基づいて認定される。用途も分かれており、耐火電線は非常電源の回路等、耐熱電線は非常放送用スピーカや非常ベル起動装置等の弱電回路に使うと説明されている。同じ「火に強い電線」でも加熱の温度と時間が違うため、設計図書の「耐火配線」「耐熱配線」の指定を、そのまま電線の区分に対応させて選ぶ。なお冨士電線のカタログは、耐熱配線を低圧回路として使う場合には耐火ケーブルを勧めている。
現場で間違いやすい点:「認定品」でなければ意味がない
耐火・耐熱電線は、外観だけでは一般ケーブルと区別がつきにくい場合がある。しかし性能の根拠は構造の見た目ではなく、消防庁告示の基準に基づいて認定された製品であることだ。JECTECは消防庁の登録認定機関として耐火・耐熱電線の適合性検査を行い、認定された電線の表面には「トウロクニンテイキカン JCT FP-C」のような認定表示が印字される。認定を受けていない類似構造の電線を代用すると、加熱試験の基準を満たす保証がない。設計図書に「耐火電線」「FP-C」等の指定がある場合は、納品時にケーブル表面の認定表示と記号を確認しておく。
どこでどう使われているか——現場別の使いどころ
| 設備・回路 | 使う品種 | ポイント |
|---|---|---|
| スプリンクラー・消火栓ポンプの電源 | FP-C(露出配線のみならFPも可) | 非常電源の回路。電線管・ダクトに入れる区間はFP-C |
| 非常放送設備の電源回路 | FP-C | 増幅器への電源供給 |
| 自動火災報知設備の感知器回路 | AE(警報用) | JECTECは警報用ケーブルを感知器の信号伝送回路用と説明。耐熱・耐火の指定がある区間は図面に従う |
| 非常放送のスピーカー回路 | HP | JECTECの耐熱電線解説で、非常放送用スピーカの配線に使うとされる |
| 排煙機・防火シャッター制御の電源 | FP-C | 設計図書の指定記号を確認 |
| エレベーターの防災関連配線 | 耐火ケーブル | エレベーターケーブルガイド参照 |
大原則: 消防設備の配線仕様は設計図書(消防設備士の設計)と所轄消防の指導が最優先です。品種・サイズは図面の指定を確認したうえで手配してください。
どう注文するか——失敗しない発注のしかた
注文は「品種+サイズ−心数+長さ」で伝われば進められます。
例: 「FP-C 2sq-3C を 200m」
「HP 1.2mm-2C を 300m」
- 認定品であること: 耐火・耐熱電線は基準に適合した認定品を使います。ケーブル表面の認定表示と記号を確認します
- サイズ・心数: 設計図書の指定どおりに。見積依頼では図面の指定記号も添えます
- 納期: 品種・サイズ・心数によって納期が異なるため、工程が決まったら早めに問い合わせます
- 価格: 電線の価格は銅価格の変動を受けるため、見積の有効期限を確認します
耐火・耐熱ケーブルの購入・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)の見積フォームから見積を依頼できます。品種・サイズ・心数・数量と、設計図書の指定記号をお知らせください。
- Web: 見積フォーム(24時間受付)
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