「壁のスイッチなんて、押せばON/OFFするだけの単純な部品」——そう思われがちだが、住宅やオフィスの壁に付いているタンブラスイッチ・パイロットランプ付きスイッチ・センサスイッチなどは、実はすべて一つのJIS規格が種類・極数・定格・性能要件を定めている。それが「JIS C 8304」(屋内用小形スイッチ類)である(日本規格協会 JSA Group Webdeskによる)。「片切」「3路」「4路」といった呼び方も、この規格が定める極(接点)構成の分類名だ。この記事では、JIS C 8304が何を規定しているのか、スイッチの種類分類、極数の考え方、定格区分、関連規格との関係を、電材を選定・購入する立場から整理する。
なお、電磁開閉器・カバースイッチ・断路器といった産業用の「開閉器」は対象がまったく異なる別分野のため、この記事では扱わない(詳しくは開閉器完全ガイドを参照)。また、3路スイッチの配線方法・結線図については3路スイッチとは?動作原理から配線図・回路の仕組みまでで実務的に解説している。
この記事でわかること
- JIS C 8304の正式名称と規定範囲
- スイッチの種類分類(タンブラ・ロータリ・押しボタン・プル・パイロットランプ付き・遅延・センサ・タイマ・電子・ワイドハンドル形・防水形)
- 極数の区分(片切・3路・4路・両切)の規格上の定義
- 定格電圧・電流の考え方
- JIS C 8281-1など関連規格との関係、選定時に確認すべきポイント
JIS C 8304とは何か
JIS C 8304は、正式名称を「屋内用小形スイッチ類」(英題:Small switches for indoor use)といい、現行版はJIS C 8304:2009(2009年5月20日発行、2024年6月20日に確認)である(日本規格協会 JSA Group Webdesk、kikakurui.com掲載情報による)。1994年改正のJIS C 8304をさらに改正する形で2009年に発行された。原案作成団体は日本規格協会と日本配線システム工業会である。
規定範囲は、周波数50Hzまたは60Hzの交流300V以下・20A以下の電路で、周囲温度40℃以下で使用する、主に屋内・屋側に取り付けて電灯や小形電気機器を負荷とするスイッチとされている(kikakurui.com、jis.eomec.com掲載情報による)。壁付けのいわゆる「スイッチ」の大半がこの規格の対象範囲に含まれる。
一方、自動遮断機構付き、防爆形、電動機制御用開閉器、調光器などは対象外である。電動機(モータ)を制御する電磁開閉器・電磁接触器は、JIS C 8304ではなく別の規格・分類の話であり、開閉器完全ガイドで扱う産業用の開閉器とは適用対象が異なる点に注意したい。
スイッチの種類分類
JIS C 8304は、操作方式によっていくつかのスイッチ種類を用語として定義している(jis.eomec.com掲載の規格本文による)。
| 種類 | 規格上の定義(要約) |
|---|---|
| タンブラスイッチ | 操作部を相反する2方向に操作することによって接点を開閉するスイッチ |
| ロータリスイッチ | 操作部を回すことによって接点を開閉するスイッチ |
| 押しボタンスイッチ | 押し動作または引き動作によって、ボタンで接点を開閉するスイッチ |
| プルスイッチ | 引きひもを操作することによって接点を開閉するスイッチ |
| 遅延スイッチ | 操作部を操作した後、遅れて接点を開閉するスイッチ |
| タイマスイッチ | 設定時間後に接点を開閉するスイッチ |
| センサスイッチ | 温度・光などを検知して開閉するスイッチ |
このほか、パイロットランプ付きスイッチ、電子スイッチ、ワイドハンドル形スイッチ、屋内配線用合成樹脂線ぴ用スイッチ、防水形スイッチも対象に含まれる(kikakurui.com掲載情報による)。壁の一般的な壁スイッチはほぼ「タンブラスイッチ」に分類され、日常的に「タンブラスイッチ」という呼び方自体がJIS用語として規定されている。
極数の区分——片切・3路・4路・両切
「片切」「3路」「4路」「両切」という呼び方は、単なる商品名ではなく、規格が用語として定義する極(接点)構成の分類である(jis.eomec.com掲載の規格本文による)。
| 区分 | 規格上の定義(要約) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 片切スイッチ | 単極単投に用い、1か所の負荷を1か所で開閉操作する標準的なスイッチ | 一般的な壁スイッチ |
| 3路スイッチ | 単極切換えに用い、1か所の負荷を2か所で開閉操作するスイッチ | 階段・廊下の2箇所点滅 |
| 4路スイッチ | 単極切換えに用い、3路スイッチと組み合わせて複数箇所で1か所の負荷を開閉操作するスイッチ | 3箇所以上の点滅 |
| 両切スイッチ | 2極単投に用い、両極とも開路する場所で使用するスイッチ | 200V回路など両極遮断が必要な箇所 |
3路・4路スイッチの内部構造と実際の配線方法(端子番号の意味、結線図、施工上の注意点)は、3路スイッチとは?動作原理から配線図・回路の仕組みまでで詳しく解説している。この記事で押さえておきたいのは、「3路」「4路」という呼び方自体がJIS C 8304の用語定義に基づくもので、規格を離れた慣習的な呼称ではないという点だ。
定格電圧・電流の考え方
JIS C 8304が定める適用範囲は、交流300V以下・20A以下という上限であり、実際の製品はこの範囲内で品種ごとに定格電圧・電流が設定される(kikakurui.com、jis.eomec.com掲載情報による)。一般家庭用のタンブラスイッチは100V・15A程度のものが主流だが、動力回路や大容量負荷向けには200V・20A対応の製品もラインナップされている。
実際の製品が対応する定格は、必ずメーカーカタログの記載値で個別に確認する必要がある。パナソニックのコスモシリーズワイド21や明工社のME・MKシリーズなど、シリーズごとに定格・対応極数・プレートとの適合が整理されているため、選定時はシリーズ内でのラインナップ確認が実務的だ。
防水形スイッチの等級
屋外や水回りに設置するスイッチは、JIS C 8304の中で防水形として分類され、水の浸入に対する保護等級によって防滴II形(IPX2相当)から噴流形(IPX5相当)まで、JIS C 0920(電気機械器具の外郭による保護等級)に従って区分される(jis.eomec.com掲載情報による)。屋外設置のスイッチを選ぶ際は、設置場所で想定される水の当たり方(雨だれ程度なのか、洗浄用ホースの水流を直接受けるのかなど)に応じて、この等級を製品カタログで確認することが重要になる。
JIS C 8281-1など関連規格との関係
JIS C 8304は、屋内用小形スイッチという製品群に固有の規定(種類・極数・定格など)を持つ製品規格である一方、絶縁・耐電圧・機構といったスイッチ全般に共通する一般要求事項は、別の規格であるJIS C 8281-1(家庭用及びこれに類する用途の固定電気設備用スイッチ―第1部:一般要求事項)が担っている。kikakurui.com掲載の引用規格情報によれば、JIS C 8304はJIS C 8281-1のほか、JIS C 0920(外郭による保護等級)、JIS C 3307・JIS C 3612(電線・ケーブル関連)、JIS C 8303(配線用差込接続器)、JIS C 8306、JIS C 8340、JIS C 8375(配線器具の取付枠関連)などを引用規格として参照している。
つまり、屋内用小形スイッチという製品は、JIS C 8304が定める「製品固有の規定」と、JIS C 8281-1が定める「スイッチ全般の一般要求事項」の両方に関わってくる、という関係になる。これはコンセント・プラグにおけるJIS C 8303(形状・定格)とJIS C 8300(配線器具全般の安全性)の関係と同じ構図で、JIS C 8303の解説記事もあわせて参照すると理解が深まる。
実務でよくある誤解
「3路」「4路」は規格上の用語であり、商品グレードの違いではない
3路・4路スイッチは、片切スイッチより高機能・高級な製品というわけではなく、極(接点)構成が異なる別種のスイッチである。片切用のプレート・取付枠に3路スイッチを取り付けても機能上は問題ないが、回路として3路として結線するには2台のスイッチが必要になる。選定・発注時は「片切」「3路」「4路」を明確に伝えることが第一だ。
JIS C 8304の対象と、開閉器(産業用)は別分野
「スイッチ」という言葉は、住宅・オフィスの壁スイッチ(JIS C 8304の対象)と、工場のモータを入切する電磁開閉器・カバースイッチ・断路器(JIS C 8304の対象外)の両方に使われる。両者は規格も設計思想もまったく異なる製品群であり、混同すると選定を誤る。産業用の開閉器については開閉器完全ガイドを参照してほしい。
JIS適合は電気用品安全法(PSE)の代わりにはならない
住宅・オフィス用の配線器具の多くは、電気用品安全法上の届出対象品目にも該当する。JIS C 8304は製品の種類・極数・定格・性能を定める工業規格であり、電気用品安全法は市場に出す前に満たすべき法的な安全基準という、目的の異なる別々の枠組みである。実際に流通する製品を選定する際は、両方の要件を満たしたものを選ぶ必要がある。
どう注文するか——失敗しない発注のしかた
例: 「パナソニック コスモシリーズワイド21 片切スイッチ を 10個」
「明工社 MKシリーズ 3路スイッチ(既設の写真から選定して)を 5個」
- 「片切/3路/4路/両切」の極数と、シリーズ名(デザイン・色)の2点セットで伝われば確実です
- 既設スイッチの写真があれば、シリーズ・色・埋込穴寸法の照合に役立ちます。プレート・取付枠など周辺材も一式でどうぞ
- 屋内配線の施工には電気工事士の資格が必要です
屋内用小形スイッチの購入・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)でお見積り・ご購入いただけます。
- Web: 見積フォーム(24時間受付)
あわせて読みたい
- 3路スイッチとは?動作原理から配線図・回路の仕組みまで(実務的な配線方法はこちら)
- 開閉器完全ガイド(産業用の開閉器はこちら)
- JIS C 8303とは(コンセント・プラグの規格)
- 明工社完全ガイド(業務用配線器具)
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