【現場のあるある】カタログどおりの容量で選んだのに、半年で接点が焼けた
ある食品工場の搬送ラインで、位置決めのために1日に何百回もモータを細かく正逆転させる(インチング運転させる)設備があった。担当者はモータの定格電流からカタログの容量表どおりに電磁開閉器を選び、問題なく動くはずだと考えていた。ところが稼働開始から半年ほどで、接点の消耗による接触不良が頻発し、最終的には接点が溶着して停止できなくなるトラブルにまで発展した。
原因は「容量」ではなく「使い方」だった。カタログの標準的な容量表は、モータを通常の始動・停止で使う前提(AC-3級)で組まれている。ところがこの設備は、モータが回転している最中に逆方向の力を加えて急停止させるプラッギングやインチングという、接点にとってはるかに過酷な使い方(AC-4級)をしていた。同じ「モータ用の開閉器」でも、使い方によって必要な性能はまったく別物になる——これが本記事のもう一つのテーマだ。
開閉器とは——「入切のプロ」
開閉器とは、電気回路や機器を入切(オン・オフ)するための機器の総称です。ここで大事なのは、ブレーカとの役割の違いです。
- 開閉器=運転のための入切。毎日何百回・何千回の開閉に耐える
- ブレーカ=異常時の保護。過電流・短絡・漏電のときに確実に切る(ブレーカ選定ガイド参照)
盤の中では「ブレーカで守り、開閉器で運転する」——この分業が基本形です。
開閉器ファミリーの見取り図
| 種類 | 通称 | 何をするか | 主な使いどころ |
|---|---|---|---|
| 電磁接触器 | コンタクタ | 電磁石で自動入切(本体のみ) | モータ・ヒータの遠隔入切 |
| 電磁開閉器 | マグネットスイッチ | 接触器+サーマルリレー | モータの入切+焼損保護のセット |
| カバースイッチ | — | 手動レバーで入切 | 手元開閉・点検時の切り離し |
| 箱開閉器 | — | カバースイッチの屋外・防雨版 | 屋外機器の手元開閉 |
| 断路器 | — | 無負荷での切り離し専用 | 受電設備の保守切り離し |
最重要の関係式: 電磁接触器 + サーマルリレー = 電磁開閉器。富士電機なら「SC形+サーマル=SW形」、三菱電機なら「S-T形+サーマル=MSO形」。カタログでこの対応を知っているだけで、型番の海で迷わなくなります。
【選定マップ】開閉器を最短で決める
graph TD
Start([何を入切したい?]) --> Q1{自動制御?手動?}
Q1 -->|自動・遠隔<br>PLCやスイッチから| Q2{モータの保護は必要?}
Q2 -->|必要(単独モータ)| SW[電磁開閉器<br>SW形・MSO形]
Q2 -->|不要(保護は別にある)| SC[電磁接触器のみ<br>SC形・S-T形]
Q1 -->|手動・たまに切る| Q3{設置場所は?}
Q3 -->|屋内| CS[カバースイッチ]
Q3 -->|屋外| BS[箱開閉器(防雨)]
Start --> Q4{異常時の保護が目的?}
Q4 -->|はい| BRK[ブレーカへ<br>→ブレーカ選定ガイド]
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classDef alt fill:#dbeafe,stroke:#1d4ed8,stroke-width:2px,color:#1e3a8a
classDef branch fill:#f8fafc,stroke:#94a3b8,color:#334155
class SW,SC,CS,BS main
class BRK alt
class Q1,Q2,Q3,Q4 branch
選定チェックリスト——電磁開閉器はこの4つ
- 容量: モータの容量(kW)・定格電流から本体の枠を選ぶ
- コイル電圧: 操作回路に合わせる(AC100V/AC200V/DC24V。指定漏れが最多ミス)
- サーマルの設定範囲: モータ定格電流が調整範囲の中央付近に入るものを選ぶ
- 補助接点: 運転表示・インターロック用に何点必要か
リレーとの分業も整理しておくと、リレー=信号の入切、接触器・開閉器=動力の入切です(リレー完全ガイド参照)。
一段深い理解:カタログの「容量」は使い方によって別物になる
冒頭の失敗事例のように、電磁接触器・電磁開閉器の容量表には「使用カテゴリ(AC-3級・AC-4級)」という前提が隠れている。これはIEC 60947-4-1(国内はJIS C 8201-4-1)で定義される、開閉時にどれだけ過酷な電流を扱うかの区分だ。
- AC-3級:かご形誘導電動機の通常の始動・停止用。定格電流の6倍の電流を投入(閉路)できるが、遮断(開路)するのは定格電流の1倍程度という前提。モータが正常回転に達してから止める、一般的な運転がこれにあたる。
- AC-4級:プラッギング(逆転方向の力を加えて急停止させる)やインチング(細かい正逆転)など、より過酷な開閉責務用。定格電流の6倍の電流を、投入だけでなく遮断でも扱える性能が求められる。接点が受けるアーク(放電)のエネルギーがAC-3級よりはるかに大きいため、同じ型番でも「AC-4級として使える容量」はAC-3級よりワンランク下がる。
カタログに載っている「○○kW用」という表記は、多くの場合AC-3級を基準にしている。搬送ラインの位置決め、工作機械の主軸反転、クレーンの微速運転など、モータを頻繁に正逆転・急停止させる用途では、AC-3級の感覚でモータ容量だけを見て選定すると、接点寿命が想定より大幅に短くなる。発注時に「この設備は何回・どのくらいの頻度で入切するか」「逆転や急停止を伴うか」を伝えることが、見た目の容量選定以上に重要なポイントになる。
どう注文するか——失敗しない発注のしかた
例: 「富士 SW-03 コイルAC200V サーマル0.75kWモータ用 を 3台」
「三菱 MSO-T10 相当を(銘板写真から選定して)2台」
- 「本体容量+コイル電圧+サーマル範囲(モータkWまたは定格電流)」の3点セットで伝われば確実です
- 三菱⇄富士の相当品照合も可能です(メーカー比較記事参照)。取付寸法・補助接点構成の違いは確認のうえ回答します
- 型番がわかれば型番検索から見積リストへ追加できます
開閉器の購入・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)でお見積り・ご購入いただけます。
- Web: 見積フォーム(24時間受付)
あわせて読みたい
- ブレーカ選定ガイド(守る側の機器はこちら)
- リレー完全ガイド(信号の入切はこちら)
- 富士電機完全ガイド(SC・SW形)
- 三菱電機FA機器完全ガイド(MSO・S-T形)
- 電磁接触器・サーマルリレーの選定ガイド(詳しい容量選定はこちら)
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