【起こりがちな例】カタログどおりの容量で選んだのに、接点が早く傷む
たとえば、搬送ラインの位置決めのために、モータを細かく正逆転させる(インチング運転させる)設備を考えてみる。モータの定格電流からカタログの容量表どおりに電磁開閉器を選べば問題なく動く——と考えがちだが、使い方によっては接点の消耗が想定より早く進む。
ポイントは「容量」ではなく「使い方」だ。電磁接触器の定格は、モータを通常の始動・運転中の停止で使う前提(使用負荷種別AC-3)で示されることが多い。一方、モータを急激に逆転切り換えするプラッギングや、チョイ回しを頻繁に行うインチングは、別の使用負荷種別(AC-4)として区別されている。同じ「モータ用の開閉器」でも、使い方によって必要な性能はまったく別物になる——これが本記事のもう一つのテーマだ。
開閉器とは——「入切のプロ」
開閉器とは、電気回路や機器を入切(オン・オフ)するための機器の総称です。ここで大事なのは、ブレーカとの役割の違いです。
- 開閉器=運転のための入切。電磁接触器の定格使用電流は、開閉容量・開閉頻度・接点寿命を満足する最大負荷電流として決められている
- ブレーカ=異常時の保護。過電流・短絡・漏電のときに確実に切る(ブレーカ選定ガイド参照)
盤の中では「ブレーカで守り、開閉器で運転する」——この分業が基本形です。
開閉器ファミリーの見取り図
| 種類 | 通称 | 何をするか | 主な使いどころ |
|---|---|---|---|
| 電磁接触器 | コンタクタ | 電磁石で自動入切(本体のみ) | モータ・ヒータの遠隔入切 |
| 電磁開閉器 | マグネットスイッチ | 接触器+サーマルリレー | モータの入切+焼損保護のセット |
| カバースイッチ | カバー付ナイフスイッチ(CKS) | 手動で入切。ヒューズ内蔵で電路を保護 | 手元開閉・点検時の切り離し |
| 断路器 | — | 電路の切り離し(電流の開閉は負荷開閉器の仕事) | 受電設備の保守切り離し |
最重要の関係式: 電磁接触器 + サーマルリレー = 電磁開閉器(オムロンの用語解説)。富士電機なら電磁接触器「SC形」とサーマルリレー「TR形」の組合せが電磁開閉器「SW形」、三菱電機なら電磁接触器「S-T形」に対して電磁開閉器「MSO-T形」です。カタログでこの対応を知っているだけで、型番の海で迷わなくなります。
断路器は、三菱電機の説明では「充電された電路を開閉分離するために使用する開閉器」で、電流を開閉できるようにしたもの(断路器に消弧室を設けたもの)は負荷開閉器と呼ばれます。
【選定マップ】開閉器を最短で決める
| 条件 | 選ぶ機器 |
|---|---|
| 自動・遠隔(PLCやスイッチから)、単独モータの保護が必要 | 電磁開閉器(SW形・MSO形) |
| 自動・遠隔、保護は別系統にある | 電磁接触器のみ(SC形・S-T形) |
| 手動・たまに切る、屋内設置 | カバースイッチ |
| 異常時の保護が目的 | ブレーカを検討(ブレーカ選定ガイドへ) |
選定チェックリスト——電磁開閉器はこの4つ
- 容量: モータの容量(kW)・定格電流から本体の枠を選ぶ
- コイル電圧: 操作回路に合わせる(AC100V/AC200V/DC24Vなど。同じ形式でもコイル電圧違いがあるため必ず指定する)
- サーマルの設定範囲: モータ定格電流が整定(調整)範囲に入るものを選ぶ。整定電流は一般にモータの定格電流と同じ値に設定する
- 補助接点: 運転表示・インターロック用に何点必要か
リレーとの分業も整理しておくと、リレー=信号の入切、接触器・開閉器=動力の入切です(リレー完全ガイド参照)。
一段深い理解:カタログの「容量」は使い方によって別物になる
冒頭の例のように、電磁接触器・電磁開閉器の容量表には「使用負荷種別(AC-3・AC-4など)」という前提が隠れている。これはIEC 60947-4-1(国内では同規格を基にしたJIS C 8201-4-1)で定められる、どんな負荷・使い方で開閉するかの区分だ。オムロンの技術解説は、次のように整理している。
- AC-1:抵抗負荷(ヒータなど)の開閉。
- AC-3:かご形モータの始動、運転中の停止。モータが回っている状態で止める、一般的な運転がこれにあたる。
- AC-4:かご形モータの始動、プラッギング(モータを急激に逆転切り換えし、回転を抑える・逆転させる)、インチング(チョイ回しを頻繁に行う)。
三菱電機の電磁開閉器・電磁接触器の形式一覧も、AC-3級の定格使用電流で整理されている。搬送ラインの位置決めのように、モータを頻繁に正逆転・急停止させる用途は、AC-3とは別の使用負荷種別にあたるため、AC-3の感覚でモータ容量だけを見て選ばず、メーカー資料でその使い方に対する定格や開閉耐久性を確認する。発注時に「この設備は何回・どのくらいの頻度で入切するか」「逆転や急停止を伴うか」を伝えることが、見た目の容量選定以上に重要なポイントになる。
どう注文するか——失敗しない発注のしかた
例:「富士 SW-03 コイルAC200V サーマル0.75kWモータ用 を 3台」
- 「本体容量+コイル電圧+サーマル範囲(モータkWまたは定格電流)」の3点セットで伝われば確実です
- メーカーをまたいで置き換える場合は、取付寸法・補助接点構成の違いを両社の資料で確認します(メーカー比較記事参照)
- 型番がわかれば型番検索から見積リストへ追加できます
開閉器の購入・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)の見積フォームから、開閉器のお見積りをご依頼いただけます。
- Web: 見積フォーム(24時間受付)
あわせて読みたい
- ブレーカ選定ガイド(守る側の機器はこちら)
- リレー完全ガイド(信号の入切はこちら)
- 富士電機完全ガイド(SC・SW形)
- 三菱電機FA機器完全ガイド(MSO・S-T形)
- 電磁接触器・サーマルリレーの選定ガイド(詳しい容量選定はこちら)
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