キュービクル新設工事の現場。基礎のコンクリートを打ってから数日後、電気工事側は「もう固まっているし、そろそろ機器を据え付けたい」と思っている。ところが土木業者からは「型枠は外せますが、機器の据え付けはもう少し待ってください」と言われる。
コンクリートは、もう型枠を外せるくらい固まっているはずなのに、なぜ「まだ使えない」と言われるのか。固まることと、使えるようになることは、何が違うのか。
このトピックを読み終えるころには、この土木業者の一言が何を根拠にしているのか、そしてキュービクルや鉄塔の「下」を支える基礎の考え方を、自分の言葉で説明できるようになっている。
種明かしは、コンクリートには「型枠を外してよい強度」と「実際にその上で作業してよい強度」のあいだに段階があり、両者を混同してはいけないという事実にある。電気工事施工管理技士は土木の専門家になる必要はないが、現場で土木業者と工程の話をするために、この段階の考え方だけは知っておく必要がある。
コンクリート工事 — 「固まる」と「強度が出る」は別のこと
コンクリートは、セメント・水・骨材(砂・砂利)・混和材料を練り混ぜて作る。この配合の割合を決めるうえで基本になるのが、水とセメントの重量比である水セメント比だ。水セメント比が小さい(セメントに対して水が少ない)ほど、一般に硬化後の強度は高くなる傾向がある。あわせて、コンクリートの打ち込みやすさ(流動性・軟らかさ)を表す指標としてスランプが使われ、施工方法に応じた標準的な範囲が定められている。
ここで押さえておきたいのは、コンクリートは打設した瞬間に完成するわけではないという点だ。セメントと水が反応する水和反応によって、コンクリートは時間をかけて徐々に硬化し、強度を高めていく。この「打設からの経過時間」を材齢と呼び、強度は材齢とともに右肩上がりに発現していく。表面が固まって見えても、内部の強度発現はまだ途中ということが普通に起こる。
型枠工事 — 役割と「外してよい日」の考え方
型枠(せき板)は、打設したコンクリートが硬化するまでのあいだ、決められた形を保持し、支保工とあわせてコンクリートの自重や打設時の側圧を支える役割を持つ。型枠を外すタイミングを誤ると、コンクリートがまだ自立できる強度に達していないうちに支えを失い、変形や損傷につながりかねない。
そのため、型枠(せき板)をいつ外してよいかについては、JASS5(建築工事標準仕様書)などで基準が定められている。判断方法は大きく2通りある。
- 材齢(日数)による方法 — 打設からの経過日数で判断する。目安の日数は、セメントの種類と平均気温によって変わる。
- 圧縮強度による方法 — 実際にコンクリートの圧縮強度を試験で確認し、基準値(短期・標準の場合は5N/mm²以上、長期・超長期の場合は10N/mm²以上が目安)に達していれば外してよいとする。
材齢による方法の目安は、たとえば基礎・柱・壁など垂直部材で、計画供用期間が短期・標準の場合、次のような傾向になる。
| セメントの種類 | 平均気温20℃以上 | 平均気温10℃以上20℃未満 |
|---|---|---|
| 早強ポルトランドセメント | 2日 | 3日 |
| 普通ポルトランドセメント・高炉セメントA種等 | 4日 | 6日 |
| 高炉セメントB種等 | 5日 | 8日 |
早強セメントほど短く、高炉セメントなどの混合セメント系ほど長くなる傾向がある点、そして同じセメントでも気温が低いほど長くかかる点を押さえておきたい。数値はあくまで目安であり、実際の現場では気象条件や構造物の重要度に応じて土木側がより厳しい管理値を設定することもある。
地業工事 — 基礎の「下」を固める作業
地業工事とは、構造物の基礎を支える地盤そのものを固める作業の総称だ。根切り(掘削)をしたあと、砕石を敷き詰めてランマーなどで締め固め、その上に薄く捨てコンクリートを打って型枠や配筋の位置決めをしやすくする。この地業のあとに、配筋→型枠設置→コンクリート打設→養生という基礎工事の工程が続く。
基礎の形式には、大きく分けて2種類ある。
- 直接基礎 — 比較的浅い位置に十分固い支持地盤がある場合に、基礎スラブから地盤へ直接荷重を伝える方式。ベタ基礎・布基礎などが含まれる。
- 杭基礎 — 浅い位置に十分な支持地盤がない場合に、杭を深い支持層まで到達させ、その先端支持力や側面の摩擦力で荷重を伝える方式。杭先端を支持層に到達させて支える支持杭と、杭側面と地盤の摩擦力で支える摩擦杭があり、実務では支持杭が主流とされる。また作り方によって、工場で製造した杭を打ち込む・埋め込む既製杭と、現場で孔をあけて鉄筋かごを建て込みコンクリートを打設する場所打ち杭に分かれる。
どちらを選ぶかを決める最大の要因は、設置する設備の重さそのものよりも、その土地の支持地盤の深さ・強さである。同じ重さの設備でも、地盤条件が変われば必要な基礎形式は変わる。
キュービクル基礎・鉄塔基礎への当てはめ
この直接基礎・杭基礎の考え方は、電気設備の基礎にもそのまま当てはまる。
キュービクル(高圧受電設備)の基礎は、地震や強風による転倒防止、地面との絶縁距離の確保、雨水・浸水対策などの目的で設けられる。工事の流れは、砂利地業→捨てコンクリート打設→基礎本体の配筋(ケーブル用の配管立ち上げを含む)→型枠設置・コンクリート打設→養生→脱型、という順序になる。多くの現場では設備自体がそれほど重くなく、地盤も一定の強さを持つ敷地に設置されるため、直接基礎が中心になりやすい。
一方、送電鉄塔の基礎は、山間部や軟弱地盤など、キュービクルとは比較にならないほど多様な地盤条件の場所に建てられる。そのため、逆T字基礎・ベタ(マット)基礎・深礎基礎・杭基礎など、複数の基礎形式が地盤条件に応じて使い分けられる。浅い位置に十分な支持地盤があれば逆T字基礎のような直接基礎系で済むが、軟弱地盤や急峻な地形では、地下深くの硬い地盤まで掘り下げる深礎基礎や、杭を組み合わせた基礎が採用される。
なお、山間部の送電鉄塔は、基礎が完成したあとの鉄塔本体の組立工法も現場条件によって選ばれる。クレーン車が進入できる現場では移動式クレーン工法、高層鉄塔や狭い場所では鉄塔内部にクレーンを設置し高さに合わせて上昇させるクライミングクレーン工法、クレーンが使えない山間部では台棒・ウインチ・ワイヤロープを組み合わせた台棒工法(鉄塔用ワイヤーロープ工法)が使われるなど、基礎形式と同じく地形条件に応じた使い分けがある。
地盤改良工法 — 軟弱地盤を「固める」いくつかの方法
送電鉄塔や大規模な受変電設備を軟弱地盤に建てる場合、杭基礎や深礎基礎で支持層まで到達させる方法のほかに、地盤そのものを改良して強くするという選択肢もある。代表的な地盤改良工法には、次のようなものがある。
- サンドコンパクションパイル工法(SCP工法):振動する中空管を地盤に打ち込み、砂を注入しながら締め固めて、地中によく締まった砂の杭(砂杭)を多数造成する工法。ゆるい砂質地盤では液状化対策として、粘性土地盤では支持力の向上・沈下量の低減を目的として使われる。
- 薬液注入工法:地盤に注入管を挿入し、薬液を注入して地盤の土粒子間を固結させる工法。比較的小型の機械で施工でき、振動・騒音が少ないため、狭小地や既設構造物に近接した箇所での地盤補強に向く。
- 深層混合処理工法(柱状改良工法):地盤の土とセメント系固化材を現地で混合し、地中に柱状の改良体を築造する工法。地表からある程度の深さ(目安として2m以深)にある軟弱層の改良に使われる。
山留め(土留め)支保工 — 掘削した穴の壁を支える部材
キュービクルの基礎や地中送電線の管路など、地面を掘り下げて工事する場面では、周囲の土が崩れてこないように山留め(土留め)壁を設け、その壁を内側から支える山留め支保工を組む。支保工にはいくつかの部材があり、それぞれ役割が異なる。
- 腹起し:山留め壁の内側に沿って水平に取り付け、壁面全体からの土圧を受け止める部材
- 切梁:対面する山留め壁どうしを水平に突っ張り、腹起しが受けた土圧を支える部材
- 中間杭:切梁が長くなる場合に、その座屈(横方向へのたわみ)を防ぎ、切梁自身の自重を支える柱状の部材
- 火打ち梁:腹起しと切梁を、掘削範囲の隅角部(コーナー)で斜めに接合し、構造を補強する部材
建設作業と建設機械の組合せ
土木工事の各作業には、それぞれ適した建設機械がある。電気工事施工管理技士が自ら機械を操作することはなくても、土木業者との工程調整で「その作業にその機械は適切か」を見当づけられると役立つ。
| 建設作業 | 代表的な建設機械 | 備考 |
|---|---|---|
| 掘削 | クラムシェル | 垂直掘削や水中掘削など、狭く深い掘削に向く |
| 整地(敷均し・法面整形) | ブルドーザ、モータグレーダ | 地面の形を平らに・所定の勾配に整える |
| 削岩・破砕 | ブレーカ | 硬い岩盤やコンクリートを砕く |
| 締固め | ロードローラー、振動ローラー、タンピングローラー | 土を押し固めて密度を高める |
移動式クレーンの安全装置 — 過負荷と巻きすぎを機械で止める
重量物の吊り上げ作業に使う移動式クレーンには、クレーン等安全規則・移動式クレーン構造規格により、次のような安全装置の装備が義務付けられている。
- 過負荷防止装置(AML):吊り上げ荷重が定格を超えそうになると、警報を発するとともに、それ以上の巻き上げ・ジブの起伏など危険な方向への動作を自動的に停止させる装置。つり上げ荷重3トン未満の小型移動式クレーン等、一部の例外を除き装備が義務付けられている。
- 巻過防止装置:フックなどの吊具を巻き上げすぎて、ワイヤロープが巻胴やジブ先端の滑車に接触する(巻き過ぎる)事故を防ぐため、吊具が一定の高さに達すると自動的に巻き上げを停止させる装置。
- 外れ止め装置:フックに掛けたワイヤロープや玉掛用具が、作業中に振動などでフックから外れて落下するのを防ぐ装置。
盛土工事 — 締固めで何が変わるか
キュービクル基礎の周りや、送電鉄塔・地中送電線の敷地を造成するとき、土を盛って地盤の高さを整える盛土工事が行われる。盛土は積み上げただけでは使い物にならず、ロードローラーなどで締固めを行って初めて構造物の土台として機能する。締固めによって土に起きる変化は、次の3つに整理できる。
- 透水性の低下:土の粒子間のすき間が減ることで、水が浸透しにくくなる。
- 支持力の増加:土の密度が高まることで、上に載る構造物の荷重を支える力が増す。
- せん断強度の増加:土がずれ動こうとする力に対する抵抗力が増す。
これに対して圧縮性(荷重をかけたときにどれだけ沈み込みやすいかを表す性質)は、締固めによって低下(小さく)なる。支持力・せん断強度が「増加する」方向であるのに対し、圧縮性だけは「低下する」方向という、向きの違いに注意が必要だ。
水準測量 — 高さの基準をどう正確に測るか
キュービクルの基礎天端や、地中送電線の管路の勾配を検討するとき、土木業者は水準測量によって地盤や構造物の高さ(標高)を確認する。水準測量は、レベル(水準器を内蔵した測量機械)と標尺(目盛りの付いた棒)を使い、既知の高さの点(既知点)から測りたい点まで高低差を積み上げていく測量方法だ。日本の高さの基準そのものは、東京都千代田区にある水準原点によって定められている。
前視・後視・中間点 — 誰の高さを、どう読むか
水準測量では、標尺を立てる点の性格によって呼び方が変わる。
- 既知点:標高がすでに分かっている点。
- 未知点:これから標高を求めようとする点。
- 後視:既知点に立てた標尺の読み。「すでに知っている高さ」を確認する読み。
- 前視:未知点に立てた標尺の読み。「これから求めたい高さ」の読み。
- 中間点:必要な点の標高を求めるため、前視だけを読み取る点(通過点)。
- もりかえ点(移器点):前視・後視の両方を読み取り、レベルを次の位置へ移す基準にする点。
測量には必ず誤差が伴うため、実務では誤差を減らす工夫が積み重ねられている。代表的なものを整理しておく。
- 往復測量:同じ区間を往路・復路の両方で測定し、往復差が許容範囲を超えていないかを確認する。超えていれば再測定する。
- 標尺を鉛直に立てる:標尺が傾いていると実際より短い(高い)目盛りを読んでしまう誤差が生じるため、水準器で鉛直を確認してから読み取る。
- 前視と後視の視準距離をそろえる:レベルから前方(前視)と後方(後視)までの距離に差があると、レベル自体の器械誤差(視準線が完全に水平でない誤差)が打ち消されずに蓄積してしまう。前視・後視の距離をできるだけ等しくすることで、この器械誤差を相殺できる。
- 直射日光を避けて器械を設置する:レベル本体が直射日光で局所的に温まると、内部の気泡管や光学系にゆがみが生じ、読み取り誤差の原因になる。
なお、鉄道の軌道構造にはカント(曲線部での左右レールの高低差)のほかにも、地下鉄などで採用される第三軌条方式(サードレール方式)がある。走行用のレールとは別に、集電専用の第三のレール(サードレール)を線路脇に敷設し、車両の集電靴(コレクターシュー)を接触させて集電する方式で、架空電車線(トロリ線)が不要な分トンネル断面を小さくでき建設費を抑えられるが、人が容易に立ち入れない地下鉄・高架専用軌道など限られた区間でのみ採用される。電車の集電方式は、この第三軌条方式と、ちょう架線からトロリ線を吊って集電する架空単線式(直接ちょう架式・シンプルカテナリ式・コンパウンドカテナリ式など。発電・変電のトピックで扱う)の2系統に大別される。
現場で土木業者とやり取りするために
電気工事施工管理技士が土木の専門家になる必要はない。配合設計を自分で行ったり、地盤調査の数値を自分で判定したりする場面は基本的にない。ただし、現場で工程調整をするときに、次の視点だけは持っておきたい。
- 型枠が外れた直後でも、コンクリートの強度発現は完了していない。機器の据え付けなど荷重をかける作業のタイミングは、土木側の養生計画を確認してから決める。
- 「型枠を外せる日数」の目安は、気温やセメントの種類で変わる。冬場の工事で土木業者が「もう少し待ってほしい」と言うのは、多くの場合この温度依存の性質が理由になっている。
- 基礎形式(直接基礎か杭基礎か)が現場によって違うのは、設備の大小ではなく地盤条件の違いによるものだと理解しておけば、見積もりや工程が現場ごとに変わる理由にも納得しやすい。
この資格を取ったあと、現場で何が変わるか
この資格を取ったあと、キュービクル基礎の工事日程で土木業者と衝突しかけたとき、あなたは「早く据え付けたい」という電気工事側の都合と、「まだ養生期間が必要だ」という土木業者側の言い分の、どちらが正しいかを自分で判断できる立場になる。気温10℃台の冬場の現場で「もう4日経ったから外していいはずだ」と言われたとき、それが普通ポルトランドセメントの20℃以上の目安であって、この気温ではまだ足りないと即座に指摘できるかどうかが、手戻りを防げるかどうかを分ける。
送電鉄塔やキュービクルの新設案件で基礎形式を検討する場面でも、「この地盤なら直接基礎で済むのか、杭基礎が必要なのか」を、設備の大小ではなく地盤条件から考える視点を持てる。土木業者の提案をそのまま受け入れるのではなく、「なぜその基礎形式を選んだのか」を尋ね、答えの妥当性を判断できる立場に変わる。
電材商社との関係では、キュービクルの納期を決める際に、単なる搬入日の希望ではなく「基礎の養生期間を踏まえるとこの日程が現実的です」という根拠を持った調整ができるようになる。土木・電気の両方の工程を頭の中でつなげて話せる相手として、取引先からの信頼のされ方も変わってくる。
冒頭の「型枠は外せるが、機器の据え付けはまだ待ってほしい」という一言の答え合わせは、理解度チェックの問題でしてみよう。