在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 写真の添付もOK / 24時間受付
法規 ・ 5 / 8

労働安全衛生法の基礎 — 現場の安全管理体制はどう積み上がるか

読み終えると、こうなる

現場の労働者数を聞いた瞬間に、その現場でどんな安全管理者を選任すべきかを自分で判断できるようになる

  • 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・作業主任者、それぞれの選任要件(業種・規模)の違いを説明できる。安全管理者は選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、選任後は遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告しなければならない点もあわせて説明できる
  • 元請・下請が混在する建設現場に固有の統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者の役割を、単独の事業場の管理体制と区別して説明できる
  • 事業者に課される雇入れ時教育・特別教育の義務を、いつ・誰に対して必要かという観点で説明できる
  • 産業医の選任基準(常時50人以上)、健康診断個人票の保存義務(5年間)、明り掘削の作業における土止め支保工の点検頻度(7日をこえない期間ごと)を説明できる
考えてみよう

ある電気工事の現場で、元請の労働者と下請の労働者を合わせると常時60人になった。単独の事業場であれば、この規模で選任が必要なのは安全管理者と衛生管理者だけのはずだ。ところが現場の責任者から「この現場には、それとは別に選任すべき役職がある」と言われる。単独の事業場の管理体制だけでは足りないのは、なぜか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、労働者数と現場の構成(元請・下請の混在の有無)から、その現場に必要な安全管理体制を自分で組み立てられるようになっている。

労働安全衛生法は、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずることなどにより、職場における労働者の安全と健康を確保することを目的とする(1条)。事業者は、法律で定める最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、労働者の安全と健康を確保するよう努めなければならない(3条1項)。

単独の事業場に積み上がる安全管理体制 — 役職ごとに違う敷居

労働安全衛生法は、事業場の規模に応じて段階的に安全管理体制を積み上げる仕組みになっている。建設業を例にとると、次のような敷居が設定されている。

役職選任が必要になる規模(建設業の場合)根拠条文
総括安全衛生管理者常時100人以上10条
安全管理者常時50人以上11条
衛生管理者常時50人以上(業種を問わず)12条
作業主任者高圧室内作業その他政令で定める作業14条
建設業における安全管理体制の積み上がり方 常時50人未満 法定の選任義務なし(それに準ずる体制は望ましい) 常時50人以上 安全管理者・衛生管理者を選任(11条・12条) 常時100人以上 加えて総括安全衛生管理者を選任し、上記を指揮(10条) 元請・下請混在(常時50人以上) 別枠で統括安全衛生責任者が必要(15条) 建設業における安全管理体制の積み上がり方(自作の概念図。労働安全衛生法10条・11条・12条・15条にもとづく)
役職ごとに選任の敷居が違うのは、それぞれが管理する対象の重さが違うからだ。安全管理者・衛生管理者は「安全・衛生に係る技術的事項」という現場に近い管理を担う一方、総括安全衛生管理者はそれらの管理者を「指揮」する、より上位の統括役だ。だからこそ、より多くの労働者を抱える事業場でなければ必要とされない。数字を丸暗記するのではなく、「上位の役職ほど、必要になる規模が大きい」という向きで整理すると覚えやすい。

作業主任者の選任義務は「高圧室内作業その他政令で定める作業」(14条)と定められているが、この「政令で定める作業」は労働安全衛生法施行令6条に一覧として列挙されている。建設現場に関わるものだけでも、型枠支保工の組立て又は解体の作業(14号)、つり足場・張出し足場又は高さ5メートル以上の構造の足場の組立て・解体・変更の作業(15号)、コンクリート破砕器を用いて行う破砕の作業(8号の2)など、日常的に発生する作業が多く含まれる。

ここで注意したいのは、「危険そうに見える作業だから作業主任者が必要」という直感で判断しないことだ。判断基準はあくまで、その作業が労働安全衛生法施行令6条に列挙されているかどうかにある。たとえば停電作業は、感電のリスクを伴う作業ではあるが、施行令6条には列挙されておらず、作業主任者の選任義務の対象にはならない。列挙されている作業か否かを条文で確認する習慣が、この分野のひっかけ問題への一番の対策になる。

安全管理者の選任には、規模の基準(常時50人以上)だけでなく、手続き面の基準も定められている。労働安全衛生規則4条は、安全管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければならないこと(1号)、原則としてその事業場に専属の者を選任しなければならないこと(2号)を定め、さらに事業者は、安全管理者を選任したときは、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告しなければならないと定めている(同条3項)。

ここでの落とし穴は、報告先を都道府県知事だと思い込んでしまうことだ。建設業許可(都道府県知事又は国土交通大臣)や電気事業法の届出(主務大臣)など、他の法律には都道府県知事や大臣を名宛人とする手続きが多いため、つい同じ行政機関を当てはめたくなる。だが安全管理者の選任報告は、労働安全衛生法上の事故報告(96条、所轄労働基準監督署長)と同じく、**所轄労働基準監督署長**が窓口になる。「選任した事由発生日から14日以内に選任」「選任後は遅滞なく労働基準監督署長へ報告」という2段階の手続きをセットで押さえておく。

元請・下請が混在する現場 — 単独の事業場の枠組みでは足りない

建設業には、単独の事業場の管理体制だけでは対応できない事情がある。1つの現場に、元請と複数の下請の労働者が混在して作業するという構造だ。この場合、元請(特定元方事業者)は統括安全衛生責任者を選任し、協議組織の設置及び運営、作業間の連絡及び調整、作業場所の巡視、関係請負人が行う安全衛生教育への指導及び援助などの措置を統括管理させなければならない(15条、30条)。この義務が生じるのは、現場の労働者数が常時50人以上(ずい道等の建設・橋梁の建設・圧気工法による作業は常時30人以上)になる場合だ(施行令7条)。

冒頭の疑問に戻る。総括安全衛生管理者(10条)は、あくまで**単独の事業場**の安全衛生を統括する役職だ。これに対して統括安全衛生責任者(15条)は、**元請・下請が混在する1つの現場**を対象にした、建設業特有の役職になる。同じ現場でも、「1つの会社の中の管理体制」と「複数の会社にまたがる現場全体の管理体制」は別の階層の話であり、片方だけでは現場全体の安全は確保できない。だからこそ、現場の労働者数が基準に達すれば、単独事業場向けの体制とは別に、統括安全衛生責任者という枠組みが必要になる。

元方安全衛生管理者 — 統括安全衛生責任者の「技術的事項」を担う実務担当者

統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業その他政令で定める業種に属する事業を行うものは、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから元方安全衛生管理者を選任し、統括安全衛生責任者が統括管理すべき事項(30条1項各号:協議組織の設置・運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視など)のうち、技術的事項を管理させなければならない(15条の2)。

統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者は、名前も守備範囲も似ているため混同しやすいが、上下関係というより**役割分担**として捉えるとよい。統括安全衛生責任者は現場全体の安全衛生を統括する立場、元方安全衛生管理者はその統括事項のうち技術的事項を実務レベルで管理する立場だ。単独の事業場における「総括安全衛生管理者(指揮する側)」と「安全管理者(技術的事項を管理する側)」の関係が、建設現場という元請・下請混在の場でも同じ構図で再現されている、とイメージすると整理しやすい。

教育の義務 — 入社時だけでなく、作業内容が変わるたびに

事業者は、労働者を雇い入れたときは、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育(雇入れ時教育)を行わなければならない(59条1項)。この規定は、労働者の作業内容を変更したときにも準用される(2項)。さらに、危険又は有害な業務に労働者をつかせるときは、当該業務に関する特別の教育(特別教育)を行わなければならない(3項)。

安全衛生教育は「入社したときの一度きりの手続き」ではない。配置転換や担当業務の変更があれば、そのたびに教育が必要になる。電気工事の現場では、労働者が新しい種類の作業(高所作業、感電の危険がある作業など)を担当することになるたびに、その業務に応じた教育・特別教育の要否を確認する習慣が求められる。

59条の教育とは別に、60条は新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く)に対する教育を定めている。対象になるのは建設業、製造業(一部除く)、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業など政令で定める業種の事業場で(施行令19条)、作業方法の決定・労働者の配置や、労働者への指導監督の方法について教育を行う。59条が「労働者本人」への教育であるのに対し、60条は「労働者を指導・監督する立場につく者」への教育という違いがある。

現場では、「施工体制台帳を作成したから、必要な手続きは済んだはずだ」という誤解が起きやすい。だが施工体制台帳の作成は建設業法に基づく、下請関係を把握するための書類作成手続きにすぎない。労働安全衛生法上の教育義務(59条・60条)は、労働者本人の雇入れ・作業内容変更や、新たに就く職務といった事情を契機に生じる別の義務であり、施工体制台帳を作成したことは、これらの教育義務を満たしたことにはならない。**書類を整えること**と**人に教育を行うこと**は、根拠法令も目的も異なる別々の義務だと意識しておきたい。

産業医の選任基準と健康診断 — 教育とは別の系統の労働者保護

安全衛生教育(59条・60条)とは別に、労働安全衛生法は労働者の健康そのものを守るための仕組みも定めている。事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、医師のうちから産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならない(13条1項)。この規模の基準は、業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する事業場だ(施行令5条)。

産業医の選任基準(常時50人以上)は、安全管理者・衛生管理者の選任基準(建設業で常時50人以上)と同じ数字になるが、安全衛生推進者・衛生推進者という別の制度の基準(常時10人以上50人未満)と混同しやすい。「50人」という一つの敷居を境に、それより小規模な事業場には安全衛生推進者等を、それ以上の事業場には安全管理者・衛生管理者・産業医を、という向きで整理しておくと数字を取り違えにくい。

その常時10人以上50人未満の事業場に必要な安全衛生推進者(業種によっては衛生推進者)にも、安全管理者と同じような手続き面の基準がある(労働安全衛生法12条の2、労働安全衛生規則12条の2〜12条の4)。選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、原則としてその事業場に専属の者を選任する点は安全管理者と共通する。選任する者は、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者その他必要な能力を有すると認められる者のうちから選ばなければならず、選任したときはその氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させる義務もある。

ここで見落としやすいのが、講習の登録機関だ。安全管理者を選任したときの**報告先**が所轄労働基準監督署長であることから、安全衛生推進者等の講習も同じ労働基準監督署長が実施・登録していると思い込みやすい。だが安全衛生推進者等の講習を登録するのは**都道府県労働局長**であって、労働基準監督署長ではない。「安全管理者=選任後に労働基準監督署長へ報告」「安全衛生推進者等=都道府県労働局長登録の講習を修了した者から選任」と、登場する行政機関を条文ごとに区別しておく必要がある。

健康診断についても、労働安全衛生規則が具体的な義務を定めている。事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるとき、既往歴及び業務歴の調査、自覚症状及び他覚症状の有無の検査など所定の項目について、医師による健康診断(雇入時健康診断)を行わなければならない(43条)。また常時使用する労働者に対しては、1年以内ごとに1回、既往歴及び業務歴の調査等を含む定期健康診断を行う(44条)。既往歴及び業務歴の調査は、雇入時・定期のどちらの健康診断にも共通して含まれる項目だ。

そして、これらの健康診断の結果に基づき、事業者は健康診断個人票を作成し、これを5年間保存しなければならない(51条)。

教育義務(59条・60条)が「業務内容に応じた知識を身につけさせる」仕組みであるのに対し、産業医の選任・健康診断は「労働者の心身の状態そのものを継続的に把握する」仕組みだ。同じ労働安全衛生法の中でも目的が異なる別系統の義務だと意識しておくと、条文ごとの数字(50人、1年以内ごとに1回、5年間)を混同しにくくなる。

就業制限 — 免許・技能講習がなければ、そもそも従事できない業務

特別教育(59条3項)が「教育を受けさせれば従事させてよい」業務であるのに対し、労働安全衛生法61条が定める就業制限は、都道府県労働局長の免許を受けた者、又は登録を受けた機関が行う技能講習を修了した者でなければ、そもそも従事させてはならない業務を定めている。クレーンの運転がその代表例だ。

つり上げ荷重1トン以上の移動式クレーンの運転業務(道路上を走行させる運転を除く)は、原則として移動式クレーン運転士免許を受けた者でなければ従事できない(施行令20条7号)。ただし、つり上げ荷重1トン以上5トン未満の小型移動式クレーンについては、小型移動式クレーン運転技能講習の修了で足りる(クレーン等安全規則68条)。さらにつり上げ荷重1トン未満の運転は、就業制限の対象外で、特別教育を行えば従事させることができる(同規則67条)。

「教育を受ければ誰でも従事できる」特別教育と、「免許・技能講習という公的な資格がなければ従事させてはならない」就業制限は、重さの異なる別の規制だ。移動式クレーンの運転業務で言えば、1トン未満=特別教育、1トン以上5トン未満=技能講習、5トン以上=運転士免許という三段階の資格区分がある、と荷重を軸に整理すると覚えやすい。

事故が起きたときの報告義務 — 対象になる設備には規模の下限がある

59条・60条の教育義務、61条の就業制限とは別に、労働安全衛生規則96条は、事業者が一定の事故を発生させたときに所轄労働基準監督署長へ報告する義務を定めている。対象になるのは、火災・爆発の事故、遠心機械等高速回転体の破裂、そしてクレーン・移動式クレーン・デリック・エレベーター・建設用リフト・簡易リフト・ゴンドラの逸走・倒壊・転倒・ワイヤロープの切断等の事故だ。

ここで見落としやすいのが、クレーンや建設用リフトの事故報告には**規模の下限がある**という点だ。クレーン等安全規則2条は、つり上げ荷重0.5トン未満のクレーン・移動式クレーン・デリック、及び積載荷重0.25トン未満のエレベーター・建設用リフト・簡易リフトを、同規則の適用除外としている。96条各号もこの適用除外にあたる設備を対象から除いているため、たとえば積載荷重0.2トンの建設用リフトの事故は、96条の事故報告の対象にならない。一方、つり上げ荷重0.5トン**ちょうど**の移動式クレーンは、除外基準が「0.5トン未満」であるため適用除外に当たらず、報告の対象になる。「0.5トン」「0.25トン」という境界の数字ぴったりのケースをどちらに区分するか、条文の『未満』という文言を正確に読む必要がある。

労働者死傷病報告 — 「設備の事故」の報告と、「労働者本人の被災」の報告は別物

96条の事故報告は、火災・爆発やクレーンの倒壊のような設備側に生じた事故を対象にした報告義務だった。これとは別に、労働安全衛生規則97条は、労働者本人が労働災害等により死亡し、又は休業したときの報告義務(労働者死傷病報告)を定めている。97条1項は、事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告しなければならないと定める。

ここまでは96条の事故報告と同じく「遅滞なく」の原則に見えるが、97条2項には96条にはない例外がある。休業の日数が4日に満たないときは、97条1項の規定にかかわらず、1月から3月まで・4月から6月まで・7月から9月まで・10月から12月までの四半期ごとに、それぞれの期間における最後の月の翌月末日までにまとめて報告すればよい。

「労働災害が起きたら、いつでも遅滞なく報告しなければならない」という理解は、97条に関しては半分だけ正しい。**死亡又は休業4日以上**の場合は遅滞なく報告する必要があるが、**休業4日未満**の軽微な労働災害については、その都度ではなく四半期ごとにまとめて報告すればよい。96条の事故報告(設備の事故、規模の下限は荷重・積載荷重)と97条の労働者死傷病報告(労働者本人の被災、報告方法の分かれ目は休業日数)は、対象も、報告方法が分かれる基準も異なる別々の制度だと整理しておく必要がある。

停電作業の安全措置 — 開路しただけでは終わらない

電気工事の作業は、可能な限り電路を止めて(停電させて)から行うのが原則だ。労働安全衛生規則339条1項は、電路を開路してその電路又は支持物の敷設・点検・修理・塗装等の電気工事の作業を行うときに、開路したに講ずべき措置を、次の3つに分けて定めている。

  • 開路に用いた開閉器に、作業中、施錠し、若しくは通電禁止に関する所要事項を表示し、又は監視人を置くこと(1号)
  • 開路した電路が電力ケーブル・電力コンデンサー等を有する電路で、残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものについては、安全な方法により当該残留電荷を確実に放電させること(2号)
  • 開路した電路が高圧又は特別高圧であったものについては、検電器具により停電を確認し、かつ、誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること(3号)
「電路を開路すれば安全」という理解は半分でしかない。開路(電源を切る)ことと、電路に残っている電気的なエネルギーを取り除くことは別の話だ。電力ケーブルや電力コンデンサーのように静電容量を持つ機器を含む電路では、電源を切った後も残留電荷が残る。339条1項2号は、この残留電荷を安全な方法で確実に放電させる措置を、開閉器の施錠・表示等(1号)、高圧・特別高圧電路での検電・短絡接地(3号)と並ぶ、停電作業の一連の安全措置の一つとして義務付けている。開閉器を切って施錠しただけ、検電して短絡接地しただけでは、電力コンデンサーを含む電路の措置としては足りない。

さらに事業者は、この作業中又は作業を終了した場合において、開路した電路に通電しようとするときは、あらかじめ、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのないこと及び短絡接地器具を取りはずしたことを確認した後でなければ、これを行ってはならない(339条2項)。停電作業は、開路して終わりではなく、通電を再開する前の確認まで含めて一つながりの手続きになっている。

高所からの物体投下・低圧活線近接作業・可搬式電動機械器具の漏電防止 — 現場で直接効いてくる措置義務

停電作業(339条)とは別に、労働安全衛生規則には現場作業そのものに関する具体的な措置義務も数多くある。ここでは電気工事の現場に関わりの深いものを取り上げる。

高所からの物体投下については、事業者は3メートル以上の高所から物体を投下するときは、適当な投下設備を設け、監視人を置く等労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない(536条1項)。労働者側にも、この措置が講じられていなければ3メートル以上の高所から物体を投下してはならないという義務が課されている(同条2項)。

低圧活線近接作業については、事業者は、低圧の充電電路に近接する場所で電路又はその支持物の敷設・点検・修理・塗装等の電気工事の作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者が当該充電電路に接触することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない(347条1項)。

低圧活線近接作業の措置でまぎらわしいのが、「絶縁用防具」と「絶縁用保護具」の違いだ。絶縁用防具は、充電電路**側**に取り付けるカバー等の器具であり、347条1項が定める措置の中心になる。これに対して絶縁用保護具は、作業者本人が身につける手袋・長靴等を指す(347条ただし書は、絶縁用保護具を着用させ、かつ充電電路に接触するおそれがない場合には防具の装着を要しないと定めている)。「どちらが充電電路側で、どちらが人側か」を対にして覚えておくと、この分野のひっかけ問題に強くなる。

可搬式電動機械器具の漏電防止については、347条とは別の切り口の規定がある。事業者は、電動機を有する機械又は器具(電動機械器具)で、対地電圧が150ボルトをこえる移動式若しくは可搬式のもの、又は水等導電性の高い液体で湿潤している場所その他鉄板上・鉄骨上・定盤上等導電性の高い場所において使用する移動式若しくは可搬式のものについては、漏電による感電の危険を防止するため、当該電動機械器具が接続される電路に感電防止用漏電しゃ断装置を接続しなければならない(333条1項)。この措置を講ずることが困難なときは、電動機械器具の金属製外わく等を接地して使用する(同条2項)。

347条の絶縁用防具が「充電電路に近づく作業」を対象にしているのに対し、333条の漏電しゃ断装置は「電動工具そのものの漏電」を対象にしている点が違う。数字の基準も、対地電圧150Vという線間電圧ではなく対地電圧の基準だと正確に覚える必要がある。電動ドリルやディスクグラインダーのような可搬式の電動工具を、屋外や水気のある場所で使う機会が多い電気工事の現場では、対地電圧が150Vを超える機器を扱うたびに、この漏電しゃ断装置が接続されているかを確認する習慣が求められる。

明り掘削の作業 — 土止め支保工の点検頻度と、地山の種類ごとの掘削面のこう配

電気工事の現場でも、地中配線のための掘削(明り掘削)は頻繁に発生する。労働安全衛生規則は、この明り掘削の作業についても具体的な数値基準を定めている。

土止め支保工の点検については、事業者は土止め支保工を設けたときは、その後7日をこえない期間ごと、中震以上の地震の後及び大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に、部材の損傷・変形・腐食・変位・脱落の有無及び状態、切りばりの緊圧の度合、部材の接続部・取付け部・交さ部の状態について点検し、異常を認めたときは直ちに補強又は補修しなければならない(373条)。

点検頻度の「7日をこえない期間ごと」という数字は、14日ごとや1か月ごとのような別の期間に置き換えられて出題されやすい。土止め支保工を設置したら終わりではなく、その後も継続して短い周期で点検し続ける義務がある、という点を押さえておく。

掘削面のこう配の基準(356条・357条)は、地山の種類によって細かく分かれている。

地山の種類掘削面の高さこう配の基準
岩盤又は堅い粘土からなる地山5m未満90度以下
その他の地山2m未満90度以下
その他の地山2m以上5m未満75度以下
その他の地山5m以上60度以下
砂からなる地山(高さ区分なし)35度以下、又は高さ5m未満
発破等により崩壊しやすい地山(高さ区分なし)45度以下、又は高さ2m未満
ここで狙われやすいのが、砂からなる地山(35度以下)と、発破等により崩壊しやすい状態になっている地山(45度以下)の数字の取り違えだ。どちらも「掘削面のこう配を○度以下とし、又は掘削面の高さを○メートル未満とする」という同じ形式で定められているため、対象となる地山の種類と数字の組み合わせを正確に対応させて覚える必要がある。

電材商社の現場で、この体制がどう効いてくるか

大規模な工場や商業施設の電気設備更新工事に関わるとき、現場に何人規模の作業員が入るのか、元請・下請がどう構成されているのかを把握しておくと、その現場にどんな安全管理体制が敷かれているべきかの見当がつく。統括安全衛生責任者が選任されているはずの規模の現場で、その体制が見当たらない場合は、施工体制そのものに疑問を持つべきサインにもなる。

安全管理体制は、単独の事業場の内部だけでなく、現場という「場」全体で組み立てるものだ。この二重構造を理解していると、現場の規模を聞いただけで、必要な体制の輪郭が見えてくる。

この資格を取ったあと、現場で何が変わるか

この資格を取ったあと、常時60人規模の現場に配置されたとき、あなたは「この現場には安全管理者・衛生管理者だけでなく、統括安全衛生責任者も必要だ」と、労働者数と元請・下請の構成を見た瞬間に判断できるようになる。単独の事業場の体制だけを整えて満足するのではなく、現場全体という別の階層の体制まで組み立てる責任者としての視点を持つ。

足場の組立て作業やコンクリート破砕器を使う解体作業の計画を見たとき、「この作業には作業主任者の選任が要るはずだ」と、施行令6条に列挙された作業かどうかをその場で確認する側に回る。新しく現場に入ってくる職長に対して、59条の雇入れ時教育とは別に、60条の職長等教育が必要な業種かどうかを判断し、教育記録の抜けがないかを確認するのも、施工管理者としてあなたが担う仕事になる。

電材商社との関係では、大規模な工場・商業施設の更新工事の相談を受けたとき、現場の人数規模から「この案件なら統括安全衛生責任者が選任されているはずだ」と見当をつけられるようになる。施工体制がその規模に見合っているかを、労働者数という具体的な数字から読み取れる担当者として、取引先からの信頼のされ方が変わってくる。

冒頭の疑問、常時60人規模の現場で、単独の事業場の管理体制だけでは足りない理由。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者を、同じ規模基準で選任すべきものだと思い込む

    なぜ引っかかるどれも『安全衛生管理体制』という同じ章に並ぶ役職のため、選任基準も共通していると錯覚しやすい

    見破り方建設業では、総括安全衛生管理者は常時100人以上、安全管理者・衛生管理者は常時50人以上という異なる規模基準が設定されていると確認する。役職ごとに、必要になる労働者数の敷居が違う

  2. 統括安全衛生責任者を、単独の事業場における総括安全衛生管理者と同じ制度だと混同する

    なぜ引っかかる名前が似ており、どちらも現場の安全衛生を統括する立場のため、同一の制度のように錯覚しやすい

    見破り方総括安全衛生管理者(10条)は単独の事業場の安全衛生を統括する役職、統括安全衛生責任者(15条)は元請・下請が混在する現場で、複数の事業者にまたがる作業間の連絡調整等を担う役職だと区別する。建設現場特有の下請混在という状況に対応するための、別の制度になる

  3. 安全衛生教育は、雇入れ時に一度行えば足りると思い込む

    なぜ引っかかる『雇入れ時教育』という名称から、入社時の一度限りの手続きだと連想しやすい

    見破り方59条は、雇入れ時(1項)だけでなく、作業内容を変更したとき(2項)にも安全衛生教育を行う義務を定めていると確認する。異動や配置転換で作業内容が変われば、そのたびに教育が必要になる

  4. 作業主任者の選任義務を『高圧室内作業』のような特殊な作業に限られると思い込み、型枠支保工の組立てや足場の組立てのような一般的な建設作業には及ばないと誤解する

    なぜ引っかかる条文の冒頭に出てくる高圧室内作業の印象が強く、施行令6条には建設現場でごく普通に行われる作業(型枠支保工、足場、コンクリート破砕器を用いる破砕など)も列挙されていることを見落としやすい

    見破り方作業主任者を選任すべき作業は労働安全衛生法施行令6条に列挙された作業に限られると確認したうえで、列挙されている作業(型枠支保工の組立て・解体、つり足場や高さ5m以上の足場の組立て・解体・変更など)と、列挙されていない作業(停電作業など)を区別する。『危険そうに見えるかどうか』ではなく、施行令6条に列挙されているかどうかで判断する

  5. 施工体制台帳の作成のような建設業法上の手続きを、労働安全衛生法上の安全衛生教育の実施義務と同一視する

    なぜ引っかかるどちらも『現場の体制を整えるための書類・手続き』という同じような響きのため、片方を済ませればもう片方も済んだように錯覚しやすい

    見破り方施工体制台帳の作成は建設業法に基づく、下請関係を把握するための書類作成手続きだと確認する。労働安全衛生法上の安全衛生教育(59条・60条)は、労働者本人の雇入れ・作業内容変更・新たに就く職務といった事情を契機に生じる別の義務であり、施工体制台帳を作成したこと自体は教育義務の発生・消滅とは無関係だと区別する

  6. 労働安全衛生規則96条の事故報告の対象を、クレーンや建設用リフトの規模にかかわらず一律だと思い込む

    なぜ引っかかる『事故が起きたら必ず報告』という単純なルールとして覚えると、対象設備自体がクレーン等安全規則の適用除外(小規模なもの)に当たる場合があることを見落としやすい

    見破り方クレーン等安全規則2条は、つり上げ荷重0.5トン未満のクレーン等、及び積載荷重0.25トン未満のエレベーター・建設用リフト等を同規則の適用除外としていると確認する。96条各号もこの適用除外にあたる小規模な設備を対象から除いており、たとえば積載荷重0.2トンの建設用リフトの事故は、96条の事故報告の対象にならない。逆につり上げ荷重0.5トンちょうどの移動式クレーンは適用除外に当たらず(0.5トン『未満』が除外基準)、報告の対象になる

  7. 高所からの物体投下による危険防止の高さ基準を、足場の手すりの高さ(85cm等)や墜落防止の高さ(2m)と混同する

    なぜ引っかかる労働安全衛生規則には『○メートル以上』という高さ基準が複数登場するため、どの規定が何メートルかを混同しやすい

    見破り方高所からの物体投下による危険の防止(536条1項)は『3メートル以上の高所から物体を投下するとき』に投下設備・監視人等の措置を義務付けていると確認する。足場の作業床の高さ基準(2m以上)や墜落制止用器具の使用基準など、他の高さ基準と数字を入れ替えないよう注意する

  8. 電路を開路(停電)させれば、それだけで安全な状態になったと思い込み、残留電荷の放電を省略する

    なぜ引っかかる『開路=電源を切った=もう電気は流れていない』という理解で止まってしまい、電力ケーブルや電力コンデンサーのように静電容量を持つ機器では、電源を切った後も電荷が電路内に残り続けることを見落としやすい

    見破り方労働安全衛生規則339条1項は、開閉器の施錠・通電禁止表示又は監視人の設置(1号)、高圧・特別高圧電路の検電確認と短絡接地(3号)と並んで、電力ケーブル・電力コンデンサー等を有し残留電荷による危険を生ずるおそれのある電路については、安全な方法により残留電荷を確実に放電させること(2号)を、停電作業の措置として義務付けていると確認する。『開路した=安全』ではなく、残留電荷の放電まで済んで初めて停電作業の準備が整う

  9. 低圧活線近接作業で装着する保護具を、絶縁用保護具(作業者が着用するもの)と絶縁用防具(充電電路側に装着するもの)で混同する

    なぜ引っかかるどちらも『絶縁用』という同じ言葉を含み、感電防止のための道具という共通点があるため、装着する対象(人か、電路か)の違いを見落としやすい

    見破り方労働安全衛生規則347条1項は、低圧の充電電路に近接する場所で電気工事の作業を行う場合、当該充電電路に『絶縁用防具』を装着しなければならないと定めていると確認する。絶縁用防具は充電電路側に取り付けるカバー等であり、作業者が身につける絶縁用保護具(手袋・長靴等)とは別のものだと区別する

  10. 感電防止用漏電しゃ断装置が必要になる電圧の基準を、対地電圧ではなく線間電圧だと思い込む、あるいは150Vという数字を100Vや300Vに置き換えてしまう

    なぜ引っかかる電路の電圧を表す言葉には対地電圧・線間電圧の2種類があり、また他の規定(電気設備の技術基準)にも複数の電圧の数字が登場するため、条文ごとの数字と基準の種類を混同しやすい

    見破り方労働安全衛生規則333条1項は、対地電圧が150ボルトをこえる移動式・可搬式の電動機械器具(又は水気の多い場所等で使用するもの)について、感電防止用漏電しゃ断装置の接続を義務付けていると確認する。基準になるのは線間電圧ではなく対地電圧であり、数字も150Vと正確に押さえる

  11. 土止め支保工の点検頻度を、記憶違いで14日ごとや30日ごとなど別の期間に置き換えてしまう

    なぜ引っかかる他の法令にも『○日ごとの点検』という規定が複数登場するため、期間の数字を混同しやすい

    見破り方労働安全衛生規則373条は、土止め支保工を設けたときは、その後『7日をこえない期間ごと』、中震以上の地震の後及び大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に点検しなければならないと定めていると確認する。14日ごとのような別の数字が出てきたら誤りだと見抜く

  12. 元方安全衛生管理者を、単独の事業場の総括安全衛生管理者や、建設現場の統括安全衛生責任者と同じ役職だと混同する

    なぜ引っかかる『安全衛生』『管理者』という似た言葉を含む役職が何種類も登場するため、それぞれの守備範囲を混同しやすい

    見破り方15条の2は、統括安全衛生責任者を選任した事業者が、建設業その他政令で定める業種において、別途、元方安全衛生管理者を選任し、統括安全衛生責任者が統括管理すべき事項のうち技術的事項を管理させると定めていると確認する。統括安全衛生責任者(現場全体を統括する立場)と元方安全衛生管理者(技術的事項を実務レベルで管理する立場)は、上下関係というより役割分担された別のポストだと整理する

  13. 産業医の選任基準を、常時10人以上50人未満のような小規模の事業場にも当てはまると思い込む

    なぜ引っかかる『10人以上』という数字が、安全衛生推進者・衛生推進者の選任基準(常時10人以上50人未満)としてどこかで目にした記憶と結びつき、産業医の基準もこの数字だと錯覚しやすい

    見破り方労働安全衛生法施行令5条は、産業医を選任すべき事業場を『常時50人以上の労働者を使用する事業場』と定めていると確認する。常時50人未満の事業場に産業医の選任義務はなく、10人以上50人未満の事業場に必要なのは、産業医ではなく安全衛生推進者(又は衛生推進者)である

  14. 安全衛生推進者等の選任要件(講習の実施主体)を、安全管理者の報告先(労働基準監督署長)と同じ機関だと思い込む

    なぜ引っかかる同じ労働安全衛生法の手続きという共通点から、『労働基準監督署長』という機関名がどの手続きにも当てはまりそうに感じられる

    見破り方労働安全衛生規則12条の3第1項は、安全衛生推進者等を、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者その他必要な能力を有すると認められる者のうちから選任すると定めていると確認する。安全管理者の選任報告先が所轄労働基準監督署長であるのとは異なり、安全衛生推進者等の講習の登録機関は都道府県労働局長であって、労働基準監督署長ではない。選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任する点は安全管理者と共通するが、原則としてその事業場に専属の者を選任する点も忘れないようにする

  15. 健康診断個人票の保存期間を、労働者名簿や賃金台帳の保存期間と同じだと思い込む

    なぜ引っかかる事業場が労働者に関して保存すべき書類という共通点から、保存期間もひとまとめに覚えてしまいやすい

    見破り方労働安全衛生規則51条は、健康診断個人票を作成し、これを5年間保存しなければならないと定めていると確認する。労働基準法109条は労働者名簿・賃金台帳等の重要書類の保存期間を本則5年と定めるが、同法附則143条1項により当分の間は3年間とされており、根拠法令も期間も異なる別々の規定として区別する

  16. 安全管理者を選任したときの報告先を、都道府県知事だと思い込む

    なぜ引っかかる建設業許可や電気事業法の届出など、他の法律には都道府県知事や主務大臣を名宛人とする手続きが多く登場するため、労働安全衛生法上の報告先もそれらと同じ行政機関だと錯覚しやすい

    見破り方労働安全衛生規則4条3項は、事業者が安全管理者を選任したときは、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告しなければならないと定めていると確認する。都道府県知事ではなく労働基準監督署長が報告先である点は、労働安全衛生法上の他の報告義務(96条の事故報告など)と共通する

  17. 休業日数が4日に満たない軽微な労働災害についても、96条の事故報告と同じく『遅滞なく』労働基準監督署長に報告しなければならないと思い込む

    なぜ引っかかる『労働災害が起きたら遅滞なく報告する』という96条の事故報告のイメージが強く残り、労働者本人の負傷・休業に関する97条の労働者死傷病報告にも同じ『遅滞なく』の原則がそのまま当てはまると錯覚しやすい

    見破り方労働安全衛生規則97条1項は、労働者が労働災害等により死亡し、又は休業したときは遅滞なく報告しなければならないと定める一方、同条2項は、休業の日数が4日に満たないときは、1月から3月まで・4月から6月まで・7月から9月まで・10月から12月までの四半期ごとに、それぞれの期間の最後の月の翌月末日までにまとめて報告すればよいと定めていると確認する。死亡又は休業4日以上は『遅滞なく』、休業4日未満は『四半期ごと』という2段階の報告方法が併存している

  18. 96条の事故報告(クレーン・ゴンドラ等の設備の事故)と、97条の労働者死傷病報告(労働者本人の死傷病)を同じ制度だと混同する

    なぜ引っかかるどちらも『労働災害に関する報告』という共通点があり、報告先も同じ所轄労働基準監督署長であるため、同一の条文に基づく1つの制度だと錯覚しやすい

    見破り方96条は火災・爆発、遠心機械等の破裂、クレーン等の逸走・倒壊等『設備側』に生じた一定の事故を対象にした報告義務、97条は労働者が労働災害等により死亡し又は休業したという『労働者本人』の被災を対象にした報告義務だと確認する。同じクレーンの事故でも、設備の倒壊等の事実そのものは96条、それによって労働者が死傷したことは97条というように、対象が異なる別々の報告義務が同時に生じる場面もある

参考文献・出典

  • 労働安全衛生法(e-Gov法令検索) (1条(目的)、3条(事業者等の責務)、10条(総括安全衛生管理者)、11条(安全管理者)、12条(衛生管理者)、13条(産業医等)、14条(作業主任者)、15条(統括安全衛生責任者)、15条の2(元方安全衛生管理者)、30条(特定元方事業者の講ずべき措置)、59条(安全衛生教育)、60条(職長等の教育)、61条(就業制限))
  • 労働安全衛生法施行令(e-Gov法令検索) (5条(産業医を選任すべき事業場:常時50人以上)、6条(作業主任者を選任すべき作業)、7条(統括安全衛生責任者を選任すべき労働者数)、19条(職長等の教育を行うべき業種)、20条(就業制限に係る業務))
  • 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索・安全管理者の選任) (4条(安全管理者の選任:事由発生から14日以内の選任、選任後の所轄労働基準監督署長への報告)、12条の2(安全衛生推進者等を選任すべき事業場:常時10人以上50人未満)、12条の3(安全衛生推進者等の選任:都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習の修了者等から、事由発生から14日以内に選任)、12条の4(安全衛生推進者等の氏名の周知))
  • 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索・停電作業を行なう場合の措置) (339条(停電作業を行なう場合の措置:開路に用いた開閉器の施錠・通電禁止表示又は監視人の設置、電力ケーブル・電力コンデンサー等を有する電路の残留電荷の放電、高圧・特別高圧電路の検電確認と短絡接地。e-GovのAPI(https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/347M50002000032)で条文本文を直接確認した))
  • クレーン等安全規則(e-Gov法令検索) (2条(適用の除外・つり上げ荷重0.5t未満及び積載荷重0.25t未満の除外基準)、67条(移動式クレーンの特別教育)、68条(移動式クレーンの就業制限・小型移動式クレーン運転技能講習))
  • 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索) (43条(雇入時の健康診断)、44条(定期健康診断)、51条(健康診断結果の記録の作成・5年間保存)、96条(事故報告)、97条(労働者死傷病報告:死亡・休業時は遅滞なく、休業4日未満は四半期ごと)、333条(漏電による感電の防止・対地電圧150Vをこえる可搬式電動機械器具への感電防止用漏電しゃ断装置の接続)、347条(低圧活線近接作業)、356条・357条(掘削面のこう配の基準)、373条(土止め支保工の点検)、536条(高所からの物体投下による危険の防止))

理解度チェック(27問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、27問で確認しよう。 内訳は基本7問・応用8問・ひっかけ12問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 27 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 労働安全衛生法は、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずることなどにより、職場における労働者の安全と健康を確保することを目的とする(1条)
  2. 事業者は、法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない(3条1項)
  3. 一定規模以上の事業場では、事業を実質的に統括管理する者を総括安全衛生管理者として選任し、安全管理者・衛生管理者等を指揮させる(10条)。建設業では常時100人以上の労働者を使用する事業場が対象
  4. 建設業を含む一定の業種・規模の事業場では安全管理者(11条)、業種を問わず常時50人以上の事業場では衛生管理者(12条)を選任し、安全・衛生に係る技術的事項を管理させる
  5. 安全管理者の選任は、安全管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に行わなければならない(労働安全衛生規則4条1号)。また事業者は、安全管理者を選任したときは、遅滞なく、所定の事項を記載した書面等を添えて、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない(同条3項)。報告先は都道府県知事ではない
  6. 高圧室内作業その他政令で定める危険な作業では、作業主任者を選任し、労働者の指揮その他の事項を行わせなければならない(14条)
  7. 作業主任者を選任すべき作業は労働安全衛生法施行令6条に列挙されている。建設現場に関わるものとして、型枠支保工の組立て又は解体の作業(14号)、つり足場・張出し足場又は高さ5メートル以上の構造の足場の組立て・解体・変更の作業(15号)、コンクリート破砕器を用いて行う破砕の作業(8号の2)などがある。停電作業のように同条に列挙されていない作業は、作業主任者の選任義務の対象にはならない
  8. 建設業のように、元請と下請の労働者が同一の場所で混在して作業する場合、元請(特定元方事業者)は統括安全衛生責任者を選任し、協議組織の設置・運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視などの措置を統括管理させる(15条、30条)。対象は現場の労働者数が常時50人以上(ずい道等・橋梁建設・圧気工法の作業は30人以上)の場合(施行令7条)
  9. 統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業その他政令で定める業種に属する事業を行うものは、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから元方安全衛生管理者を選任し、統括安全衛生責任者が統括管理すべき事項(30条1項各号)のうち技術的事項を管理させなければならない(15条の2)。統括安全衛生責任者が現場全体を統括する立場であるのに対し、元方安全衛生管理者はその技術的事項を実務レベルで管理する立場であり、両者は役割分担された別のポストになる
  10. 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、医師のうちから産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせなければならない(13条1項)。産業医の選任が必要になる規模は、業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する事業場(労働安全衛生法施行令5条)。常時50人未満の事業場には産業医の選任義務はない
  11. 常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場(安全管理者・衛生管理者・産業医の選任基準である常時50人以上には満たない規模)では、労働安全衛生法12条の2・労働安全衛生規則12条の2に基づき、安全衛生推進者(業種によっては衛生推進者)を選任しなければならない。選任は、安全衛生推進者等を選任すべき事由が発生した日から14日以内に行う必要があり(労働安全衛生規則12条の3第1項1号)、原則としてその事業場に専属の者を選任する(同項2号)。選任する者は、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者その他必要な能力を有すると認められる者のうちから選ばなければならず、労働基準監督署長の登録を受けた講習ではない点に注意する。事業者は、安全衛生推進者等を選任したときは、その氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければならない(労働安全衛生規則12条の4)
  12. 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、既往歴及び業務歴の調査、自覚症状及び他覚症状の有無の検査など所定の項目について医師による健康診断(雇入時健康診断)を行わなければならない(労働安全衛生規則43条)。また常時使用する労働者に対しては、1年以内ごとに1回、既往歴及び業務歴の調査等を含む定期健康診断を行う(44条)。既往歴及び業務歴の調査は、雇入時・定期のいずれの健康診断にも共通して含まれる項目
  13. 事業者は、雇入時健康診断・定期健康診断等の結果に基づき健康診断個人票を作成し、これを5年間保存しなければならない(労働安全衛生規則51条)
  14. 事業者は、労働者を雇い入れたとき及び作業内容を変更したときに安全衛生教育を行い(59条1項・2項)、危険又は有害な業務に労働者をつかせるときは特別教育を行わなければならない(59条3項)
  15. 事業者は、建設業・製造業(一部除く)・電気業・ガス業・自動車整備業・機械修理業などの政令で定める業種の事業場で、新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く)に対し、作業方法の決定・労働者の配置、労働者への指導監督の方法等について安全衛生教育を行わなければならない(60条、施行令19条)。雇入れ時教育(59条)とは別の、職長等に固有の教育義務
  16. 事業者は、火災・爆発の事故、遠心機械等高速回転体の破裂、クレーン・移動式クレーン・デリック・エレベーター・建設用リフト・簡易リフト・ゴンドラの一定の事故(逸走・倒壊・転倒・ワイヤロープの切断等)が発生したときは、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に事故報告書を提出しなければならない(労働安全衛生規則96条)。ただし、つり上げ荷重0.5トン未満のクレーン等、積載荷重0.25トン未満のエレベーター・建設用リフト等は、クレーン等安全規則の適用除外(同規則2条)に当たり、96条の事故報告の対象からも外れる
  17. 96条の事故報告(設備の事故)とは別に、労働者本人が労働災害等により死亡し、又は休業したときは、事業者は遅滞なく所轄労働基準監督署長に労働者死傷病報告をしなければならない(労働安全衛生規則97条1項)。ただし休業の日数が4日に満たないときは、97条1項の規定にかかわらず、1月から3月まで・4月から6月まで・7月から9月まで・10月から12月までの四半期ごとに、それぞれの期間における最後の月の翌月末日までにまとめて報告すればよい(97条2項)。休業4日未満の労働災害は『遅滞なく』報告する対象ではない
  18. 事業者は、3メートル以上の高所から物体を投下するときは、適当な投下設備を設け、監視人を置く等労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない(労働安全衛生規則536条1項)
  19. 事業者は、電路を開路して当該電路又はその支持物の敷設・点検・修理・塗装等の電気工事の作業を行うときは、開路した後に、開路に用いた開閉器への施錠・通電禁止の表示又は監視人の設置(労働安全衛生規則339条1項1号)に加え、開路した電路が電力ケーブル・電力コンデンサー等を有し残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものについては、安全な方法により当該残留電荷を確実に放電させなければならない(同項2号)。開路した電路が高圧又は特別高圧であったものについては、検電器具により停電を確認し、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地することも必要(同項3号)
  20. 事業者は、低圧の充電電路に近接する場所で電路又はその支持物の敷設・点検・修理・塗装等の電気工事の作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者が当該充電電路に接触することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない(労働安全衛生規則347条1項)
  21. 事業者は、電動機を有する機械又は器具(電動機械器具)で、対地電圧が150ボルトをこえる移動式若しくは可搬式のもの、又は水等導電性の高い液体によって湿潤している場所その他鉄板上・鉄骨上・定盤上等導電性の高い場所において使用する移動式若しくは可搬式のものについては、漏電による感電の危険を防止するため、当該電動機械器具が接続される電路に、その電路の定格に適合し感度が良好で確実に作動する感電防止用漏電しゃ断装置を接続しなければならない(労働安全衛生規則333条1項)。この措置を講ずることが困難なときは、電動機械器具の金属製外わく等を接地して使用する(同条2項)
  22. 施工体制台帳の作成は建設業法に基づく下請関係把握のための書類作成手続きであり、それ自体は労働安全衛生法上の安全衛生教育の義務を発生させるものではない。教育義務は、雇入れ・作業内容変更(59条)や新たに職務につく職長等(60条)といった、労働者本人の状況を契機として生じる
  23. つり上げ荷重1トン以上の移動式クレーンの運転業務(道路上を走行させる運転を除く)は、原則として移動式クレーン運転士免許を受けた者でなければ従事できない(61条、施行令20条7号)。ただしつり上げ荷重1トン以上5トン未満の小型移動式クレーンの運転は、小型移動式クレーン運転技能講習の修了で足りる(クレーン等安全規則68条)。1トン未満の運転は特別教育で足りる(同規則67条)
  24. 事業者は、明り掘削の作業で土止め支保工を設けたときは、その後7日をこえない期間ごと、中震以上の地震の後及び大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に、部材の損傷・変形・腐食・変位・脱落の有無及び状態、切りばりの緊圧の度合、部材の接続部・取付け部・交さ部の状態について点検し、異常を認めたときは直ちに補強又は補修しなければならない(労働安全衛生規則373条)。14日ごとのような別の期間ではない
  25. 手掘りにより地山を掘削する作業における掘削面のこう配の基準(労働安全衛生規則356条・357条)は、地山の種類によって異なる。岩盤又は堅い粘土からなる地山は掘削面の高さ5m未満で90度以下、その他の一般的な地山は高さ2m未満で90度以下・高さ2m以上5m未満で75度以下・高さ5m以上で60度以下、砂からなる地山は掘削面のこう配を35度以下又は高さを5m未満、発破等により崩壊しやすい状態になっている地山は掘削面のこう配を45度以下又は高さを2m未満としなければならない
Xでシェア
打ち合わせを予約 見積依頼