2級電気工事施工管理技士の合格証を手にした新人技術者が、初めての現場で「配線の接続くらい、自分でやってしまおう」と手を動かそうとした。先輩から「それは待て」と止められる。施工管理の資格を持っているのに、なぜ止められるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、施工管理者として現場に立つときの「自分がやってよいこと」と「有資格者にやらせるべきこと」の境界線を、自分で判断できるようになっている。
電気工事士法については、このサイトの電気工事士向けコンテンツですでに条文の詳細を扱っている。ここでは同じ条文を、電気工事の作業をする立場ではなく、その現場を管理する施工管理者の立場から見直す。
電気工事士法3条 — 「誰が作業してよいか」を定める条文
電気工事士法3条は、電気工事の作業に従事できる者を、工事の区分ごとに定めている。
- 第一種電気工事士(1項): 自家用電気工作物に係る電気工事の作業に従事できる
- 第一種または第二種電気工事士(2項): 一般用電気工作物等に係る電気工事の作業に従事できる
- 特種電気工事資格者(3項): 自家用電気工作物のうち経済産業省令で定める特殊電気工事に従事できる
- 認定電気工事従事者(4項): 自家用電気工作物のうち経済産業省令で定める簡易電気工事に従事できる
3条3項が定める特殊電気工事は、「電圧が高い工事」「危険度が高い工事」という漠然とした括りではない。電気工事士法施行規則2条の2は、特殊電気工事の種類をネオン工事(ネオン用として設置される分電盤・主開閉器・タイムスイッチ・点滅器・ネオン変圧器・ネオン管及びこれらの附属設備に係る電気工事)と非常用予備発電装置工事(非常用予備発電装置として設置される原動機・発電機・配電盤及びこれらの附属設備に係る電気工事)の2種に限定列挙している。
「自家用電気工作物」と「事業用電気工作物」は同じ範囲ではない
もう1つ、条文の言葉づかいで見落としやすい点がある。電気事業法上、電気工作物は一般用電気工作物と事業用電気工作物に大別され、事業用電気工作物はさらに、電気事業の用に供する電気工作物(発電所・変電所等)と自家用電気工作物に分かれる(電気事業法38条)。つまり「事業用電気工作物」は、自家用電気工作物よりも広い区分だ。
ところが電気工事士法2条2項は、同法が使う「自家用電気工作物」の範囲をさらに絞り込んでいる。電気事業法38条4項の自家用電気工作物から、小規模事業用電気工作物、発電所、変電所、最大電力500kW以上の需要設備、その他経済産業省令で定めるものを除いたものが、電気工事士法上の「自家用電気工作物」だ。
さらにもう1つ、3条1項の条文そのものにも見落としやすい仕掛けがある。1項本文は「(第三項に規定する電気工事を除く。)」というかっこ書きを含んでおり、第三項に規定する電気工事=特殊電気工事(ネオン工事・非常用予備発電装置工事)は、第一種電気工事士の対象からあらかじめ除かれている。
施工管理者の実務は「自分がやる」ではなく「有資格者にやらせる・確認する」
施工管理技士が電気工事士の免状を別途持っていれば、その範囲で自ら作業に従事することもできる。だが施工管理者としての本来の役割は、現場に配置する作業者がその工事区分に応じた資格(電気工事士免状・特種電気工事資格者認定証・認定電気工事従事者認定証)を持っているかを確認し、無資格者に電気工事の作業をさせないことにある。
電気工事士等には、作業に従事するときに技術基準へ適合するように作業を行う義務(5条1項)と、免状・認定証を携帯する義務(5条2項)が課されている。この2つは、施工管理者が現場でチェックすべき具体的な項目にもなる。
軽微な工事の範囲 — 現場の「これくらいならいいか」を拡大させない
電気工事士法施行令1条は、電気工事士でなくても従事できる軽微な工事を6つ列挙している。
| 号 | 軽微な工事の内容 |
|---|---|
| 1号 | 電圧600V以下で使用する差込み接続器・ソケット・開閉器等にコード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事 |
| 2号 | 電気機器又は蓄電池の端子に電線をねじ止めする工事 |
| 3号 | 電圧600V以下で使用する電力量計・電流制限器又はヒューズを取り付け、又は取り外す工事 |
| 4号 | 電鈴・インターホーン等に使用する小型変圧器(二次電圧36V以下)の二次側の配線工事 |
| 5号 | 電線を支持する柱、腕木その他これらに類する工作物を設置し、又は変更する工事 |
| 6号 | 地中電線用の暗渠又は管を設置し、又は変更する工事 |
とくに見落とされやすいのが5号・6号だ。1号〜4号が「電線の接続・結線」に関わる細かな作業であるのに対し、5号(柱・腕木の設置)と6号(地中電線用の暗渠・管の設置)は、電線そのものを扱う配線技術を伴わない、土木的な性格の強い工事になる。「電線に関わる工事だから電気工事士でなければならない」という直感だけで判断すると、この2つを見落として不要な有資格者を手配してしまいかねない。逆に、柱や管路を設置したあとに実際の電線を接続・結線する作業は、5号・6号の対象外であり、通常どおり電気工事士の資格が必要になる。「土台を作る工程」と「電線をつなぐ工程」を分けて考えると、この境界線が見えやすくなる。
とくに紛らわしいのが、1号の「差込み接続器・開閉器等にコードを接続する工事」と、壁に埋め込まれたコンセント本体に電線を直接ねじ止めする配線工事の違いだ。前者はコンセントやスイッチにコードをつなぐだけの作業で軽微な工事に当たるが、後者は配線器具そのものへの本配線であり、施行令1条には列挙されていない。同じ「コンセント周りの作業」でも、対象が「差し込むだけのコード」なのか「壁内の配線そのもの」なのかで、必要な資格が変わってくる。
「第二種電気工事士=自家用側も少しならできる」わけではない
現場でもう1つ誤解されやすいのが、第二種電気工事士と自家用電気工作物の関係だ。第二種電気工事士(3条2項)が単独で従事できるのは、あくまで一般用電気工作物等の電気工事に限られる。自家用電気工作物のうち簡易なもの(簡易電気工事)に従事できるのは、3条4項が定める認定電気工事従事者(認定電気工事従事者認定証の交付を受けた者)であって、第二種電気工事士の資格だけでは、この簡易電気工事にも従事できない。
免状と認定証、交付する機関が違う
電気工事士免状(第一種・第二種)は都道府県知事が交付する(4条2項)。これに対して、特種電気工事資格者認定証及び認定電気工事従事者認定証は経済産業大臣が交付する(4条の2第1項)。
電材商社の現場で、この関わり方がどう効いてくるか
現場常駐の担当者や施工管理者と話すとき、「その作業は誰の免状で行うのか」という視点を持っておくと、資材の提案時にも役立つ。特殊電気工事や簡易電気工事に該当する製品を扱う場面では、作業に従事できる資格者の範囲が、通常の電気工事士とは異なることもあるため、提案先の現場体制を意識した会話ができるようになる。
この資格を取ったあと、現場で何が変わるか
この資格を取ったあと、現場に新しく入ってきた若手が「これくらいの配線接続なら自分でやってしまいます」と手を動かそうとしたとき、あなたはそれを止める側に回る。施工管理技士の資格が電気工事士の資格を兼ねているわけではないと、電気工事士法3条を根拠に説明できるからこそ、感覚的な注意ではなく、法的根拠を持った指導ができる。
現場に作業者を配置する段階でも、「この工事区分なら第一種電気工事士が必要」「この特殊電気工事には特種電気工事資格者が要る」と、作業者の免状・認定証を工事の区分ごとに確認する管理責任を、あなた自身が負うことになる。免状の携帯を怠っている作業者を見つけたときも、それが5条2項違反だと理解しているからこそ、その場で是正を求められる。
電材商社との関係では、特殊電気工事や簡易電気工事に該当する製品を提案する場面で、「この工事は認定電気工事従事者でも対応できますか、それとも第一種電気工事士でなければなりませんか」という、現場の資格体制を踏まえた会話ができるようになる。作業者の資格範囲まで理解した提案は、取引先の施工計画そのものへの助言としても機能する。
冒頭の新人技術者が先輩に止められた理由。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。