第二種電気工事士は、免状を取得しても3年間は主任電気工事士になれない。ところが2級電気工事施工管理技士は、技術検定に合格したその日から、建設工事現場の主任技術者になれる。同じ「実務経験を問われそうな国家資格」なのに、なぜこの差がつくのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この資格が現場で持つ意味そのものを説明できるようになっている。
主任技術者・監理技術者の制度は、この2級電気工事施工管理技士という資格が現場で価値を持つ、まさにその根拠となる規定だ。ここを正確に理解しておくことが、この科目の中心になる。
すべての工事に必要な主任技術者、一部の工事に必要な監理技術者
建設業者は、請け負った建設工事を施工するときは、工事現場ごとに、当該工事の施工の技術上の管理をつかさどる主任技術者を置かなければならない(建設業法26条1項)。この義務は、一般建設業・特定建設業を問わず、また工事の規模を問わず、建設業許可業者が請け負ったすべての工事に及ぶ。
これに対して監理技術者は、一部の工事にだけ必要になる。発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が、その工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(2以上あるときはその総額)が政令で定める金額以上になる場合、主任技術者に代えて監理技術者を置かなければならない(26条2項)。この政令で定める金額は、現在4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)だ。
技術検定の合格が、そのまま主任技術者の資格証明になる理由
主任技術者になれるのは、建設業法7条2号のイ・ロ・ハのいずれかに該当する者だ。
- イ: 学校教育法による高等学校卒業後5年以上、または大学・高等専門学校卒業後3年以上の実務経験を有する者
- ロ: 学歴を問わず10年以上の実務経験を有する者
- ハ: 国土交通大臣がイ・ロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
技術検定(施工管理技士試験)の合格者は、このハに該当する者として扱われる。イ・ロが実務経験の「年数」で知識・技術を推定する仕組みなのに対し、ハは試験によって「知識・技術そのもの」を直接確認する仕組みだ。
もう1つの「専任の技術者」— 営業所技術者と主任技術者は、場所が違う別ポスト
7条2号は、実は主任技術者の要件を直接定めた条文ではない。正確には、建設業の許可を受けるための要件として、「その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者)を専任の者として置くこと」を求めている条文だ。26条の主任技術者は、この7条2号イ・ロ・ハの基準を借りて「工事現場ごとに置く技術上の管理者」を定義している、という構造になる。
2級と1級の壁 — 主任技術者にはなれても、監理技術者にはなれない
監理技術者になれる資格要件は、建設業法15条2号に定められており、主任技術者の要件(7条2号)よりも一段上に設定されている。原則として1級の国家資格保有者等が対象で、2級電気工事施工管理技士はこの要件を満たさない。
電気工事業は「指定建設業」— 監理技術者の実務経験ルートが封じられている業種
この壁がなぜ生じるのかを、もう一段掘り下げておく。建設業法施行令5条の2は、施工技術の総合性・普及状況その他の事情を考慮して、指定建設業を土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業の7業種に限定している。29業種のうち、この7業種だけが指定建設業に当たり、電気工事業はその一つだ。
指定建設業に係る建設工事の監理技術者になれる者は、建設業法26条2項のかっこ書により、15条2号イ(技術検定合格者等)又はハ(イの者と同等以上の能力を有すると国土交通大臣が認定した者)に該当する者に限られる。15条2号ロが定める実務経験ルート(発注者から直接請け負った請負代金4,500万円以上の工事に関し2年以上指導監督的な実務経験を有する者)は、指定建設業では明文で除外されている。
専任義務 — さらに重い工事には、その現場だけを見る担当者が必要
公共性のある施設もしくは工作物、または多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、主任技術者・監理技術者は工事現場ごとに専任の者でなければならない(26条3項)。専任が必要になる請負代金の基準は4,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)だ。専任とは、他の工事現場の主任技術者・監理技術者を兼任せず、その現場の管理に専念することを指す。
主任技術者・監理技術者の職務そのものは、26条の3に定められている。工事現場における建設工事を適正に実施するため、施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理、および施工に従事する者への技術上の指導監督を誠実に行う、というものだ。
電材商社の現場で、この資格がどう効いてくるか
取引先の電気工事業者と話すとき、「この現場は誰が主任技術者になるのか」「この規模の工事なら監理技術者が必要になるのではないか」という視点を持てるようになると、案件の体制が見えやすくなる。特に、下請への発注額が大きい元請案件では、監理技術者の要件を満たす技術者がいるかどうかが、その業者がその規模の工事を元請として受けられるかどうかの分かれ目になる。
この資格を取ったあと、現場で何が変わるか
合格通知が届いた次の現場で、変わることが一つある。それまでは「主任技術者の下について、指示された範囲を施工する側」だったのが、あなた自身の名前が、その現場の施工計画書と工事台帳に主任技術者として記載される側に変わる。元請の担当者や発注者から「この現場、誰が主任技術者ですか」と聞かれたとき、答えるのがあなた自身になる。
それは同時に、責任の所在があなたに移るということでもある。工程が遅れそうになったとき、「なぜ遅れているのか」「どう挽回するのか」を説明するのはあなただ。品質検査で指摘を受けたとき、是正の判断を下すのもあなただ。事故が起きれば、26条の3の「誠実に行う」義務を実際に負うのもあなただ。この記事の前半で読んだ「専任義務」「職務内容」は、そのときになって初めて、自分ごとの条文として読み返すことになる。
工事現場に出る電気工事士としてキャリアを積んできた人にとって、この資格が変えるのは技術力そのものではない。「指示される側」から「現場の体制を組み、責任を持つ側」への立場の転換だ。取引先の電材商社にとっても、あなたが主任技術者になった瞬間から、あなたへの提案は「この材料で施工できますか」ではなく「この現場、どう進める計画ですか」という一段上の話に変わっていく。
冒頭の疑問、2級電気工事施工管理技士がなぜ合格した瞬間から主任技術者になれるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。