海外メーカー製の制御盤や輸入計装機器の結線図を確認すると、電線サイズが「AWG22」「AWG18」のようにアメリカ式のAWG表記で書かれていることがあります。手元に日本国内のsq規格の電線しかない場合、「数字が近いから」と目分量でサイズを当ててしまうと、実際の断面積がわずかに不足し、許容電流不足や端子の圧着範囲外れといったトラブルにつながりかねません。AWGとsqはそもそも成り立ちからして異なる規格体系であり、単純な四捨五入では正しい変換になりません。
計装盤・制御盤内の信号配線、弱電制御ケーブル、およびLANケーブルの製品カタログを見ていると、導体の太さの表記として「AWG」と「SQ(スケア)」という2つの異なる規格が混在しており、設計や資材調達の段階で混乱を招くことがよくあります。
- AWG(American Wire Gauge): 米国の電線規格。数字が大きくなるほど電線は細くなります。
- SQ(Square Millimeter): 日本(JIS規格)や欧州で一般的な、導体金属部の断面積()を表す単位。数値が大きいほど電線は太くなります。
本ガイドでは、これら2つの規格の「相互換算対応表」と、通信線や信号線を選定する際の実務上の注意点について技術解説します。
1. AWGとSQ(スケア)の相互換算・仕様対応表
一般的に弱電・信号配線やLANケーブルで多用される AWG18 から AWG30 までの電気的特性と、スケア()への換算・外径寸法の一覧表です。
| AWGサイズ | 導体断面積(参考値) | 導体外径(参考値) | 導体抵抗(目安) | 対応するJIS・スケアサイズ(目安) | 主な用途・電線例 |
|---|---|---|---|---|---|
| AWG 18 | 0.823 | 1.02 mm | 約22.4 | 0.75 〜 1.25 | 電源線、制御盤内強電信号線、高出力機器用 |
| AWG 20 | 0.518 | 0.81 mm | 約35.7 | 0.5 | 計装用シールド線、センサー電源線 |
| AWG 22 | 0.326 | 0.64 mm | 約56.7 | 0.3 | 盤内信号配線、リモコン配線 |
| AWG 23 | 0.258 | 0.57 mm | 約71.6 | 0.2 〜 0.3 | Cat6A単線LANケーブル(PoE++対応) |
| AWG 24 | 0.205 | 0.51 mm | 約90.2 | 0.2 | 一般的なCat5e/Cat6単線LANケーブル |
| AWG 26 | 0.129 | 0.40 mm | 約143 | 0.12 | 極細LANケーブル、ヨリ線パッチコード、通信用フラットケーブル |
| AWG 28 | 0.081 | 0.32 mm | 約227 | 0.08 | RS-232Cなどの多芯通信ケーブル、内部配線 |
| AWG 30 | 0.051 | 0.25 mm | 約361 | 0.05 | 超極細信号線、ラッピング用ワイヤ |
- ※導体抵抗値は温度20℃における軟銅線の代表値です。銅の純度(IACS導電率)や規格の前提条件によって数%程度の差が生じるため、目安としてご利用ください。
- ※実際のケーブル選定時には、メーカーの仕様書に記載されている公称断面積および許容電流値を優先して確認してください。
2. 規格の特徴と実務上の注意点
注意点①:AWGの数値と「太さ」の関係
AWGは「電線を引き抜く回数(ダイスを通す回数)」に由来する規格であるため、「番号が大きくなるほど、導体は細くなる(電気抵抗が高くなる)」という特徴があります。
- AWG 18(太い・低抵抗) ➔ AWG 24(普通) ➔ AWG 30(極細・高抵抗)
太さが異なれば許容電流や電圧降下特性が大きく変わります。設計仕様書に「AWG24指定」とある箇所に、誤って「AWG26」を適用してしまうと、許容電流オーバーによる発熱や信号伝送エラー(電圧降下)を引き起こすため注意が必要です。
注意点②:単線(Solid)とヨリ線(Stranded)の外径差
同じAWGサイズであっても、導体が1本の太い銅線でできている「単線(ソリッド)」と、極細の銅線を複数本ねじり合わせて作られている「ヨリ線(ストランド)」では、ヨリ線の方が隙間がある分、ケーブル全体の導体外径がわずかに太くなります。 コネクタ(RJ-45モジュラープラグやピン端子)を取り付ける際、単線用とヨリ線用で仕様が分かれているため、AWGサイズと合わせて単線・ヨリ線の区別を確認してください。
3. 実務での使い分けと選定テクニック
- PoE(Power over Ethernet)給電の設計: 監視カメラ等のPoE給電では、配線長が最大100mに及びます。導体抵抗が低く電圧降下を起こしにくい AWG23(Cat6A単線) または AWG24(Cat6単線) の選定が必須であり、AWG26やAWG28といった極細パッチケーブルを幹線に敷設することは絶対に避けてください。
- 端子(圧着スリーブ等)との適合:
AWG規格の電線を、日本製の圧着端子(JIS規格)に接続する際は、端子側の適合電線範囲(例:
0.2〜0.5mm²等)を必ず確認し、対応するAWGサイズがその範囲内に収まっていることを確認して圧着してください(例:AWG24 = は0.2〜0.5端子に適合)。
4. 一段深い理解:AWGとsqは、なぜ完全には一致しないのか
生まれの異なる2つの規格体系
AWG(American Wire Gauge)は、電線を型(ダイス)に通して引き延ばす「伸線加工」の工程数に由来する規格です。太い母材を繰り返しダイスに通して細くしていくため、番号が大きいほど「より多くダイスを通した=細い電線」を意味します。断面積そのものを定義した規格ではなく、直径を基準に幾何級数的(等比数列的)に太さが決まる点が特徴です。前掲の計算式(直径(mm) = 0.127 × 92^((36-n)/39))から逆算すると、AWGが1段階変わるごとに断面積は約1.26倍ずつ変化します。
一方、日本のsq(スケア、)はJIS規格に基づき、導体の断面積そのものをキリのよい数値(0.2、0.3、0.5、0.75、1.25、2.0…)で規格化したものです。国際的にはIEC規格の表記がこれに近い体系です。
規格の設計思想そのものが異なる2つの数列を重ね合わせているため、AWGのある番号とsqのある数値がぴったり一致することは基本的にありません。換算表の「対応サイズ」は、あくまで最も近い(かつ電流的に不足しない)sqを選ぶための近似値であり、完全に同じ断面積ではない点を必ず押さえておいてください。
米国製盤・輸入機器で実務上つまずきやすい点
- 許容電流の算出基準がそもそも違う:米国では通電する回路数などの条件により許容電流値が定められ、NFPA70(米国電気基準)やNFPA79(米国電気基準産業用機械の電気規定)が基準として参照されます。AWG表記をsqへ変換しても、日本のJIS・内線規程ベースの許容電流表とは前提条件(算定方法や適用条件)が異なるため、「変換したsq値」だけで日本の許容電流表を引くと厳密には整合しません。海外規格の機器を国内向けに配線し直す場合は、変換後のsqサイズで改めて日本の許容電流表から流せる電流を確認するひと手間が欠かせません。
- 切り上げが鉄則、切り下げは事故のもと:本文のFAQでも触れた通り、AWGからsqへ変換する際は必ず「同等以上の断面積」を選ぶ(切り上げる)のが原則です。逆に切り下げてしまうと、換算表の数字上は近く見えても実際の断面積は不足し、許容電流オーバーや電圧降下増大につながります。
- 圧着端子・スリーブのレンジ互換に注意:米国製の圧着端子・スリーブはAWG表記で適合範囲が示されているのに対し、日本製の端子はsq表記です。AWGサイズをsqに変換した数値だけで日本製端子のカタログを探すと、変換誤差の分だけ適合レンジの境界をまたいでしまうことがあります。端子側の適合範囲は必ずメーカーの対応表(AWG表記・sq表記の両方が併記されたもの)で確認し、片方の単位だけで発注しないことが実務上の鉄則です。
まとめ
電線設計や資材発注の際は、AWGとスケアの違いを正しく把握し、相互の対応表を参照することでサイズ間違いによる事故や伝送ロスを防ぐことができます。
- AWGは数字が小さいほど太い。
- 盤内配線やLAN設計時は、抵抗値の差を考慮して適切なsq(スケア)やAWGサイズに置き換える。
- コネクタや圧着端子の適合サイズ表を必ずダブルチェックする。
この換算対応表をデスクや設計室に備え、スムーズな電線選定に役立ててください。
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