古くなった分電盤の交換で、主幹には漏電遮断器を取り付けるはずだった。ところが在庫の都合で、見た目のよく似た配線用遮断器を代わりに取り付けてしまった。「過電流を遮断できるなら、まあ同じようなものだろう」と、そのまま作業を終えた。
数か月後、洗濯機からごくわずかな漏電が続いていた。触れると軽くピリッとする、という声も上がっていた。それなのに、ブレーカーは一度も落ちなかった。
過電流を防ぐブレーカーはちゃんとついているのに、なぜこの異常を一度も検知できなかったのか。
分電盤に組み込まれるブレーカーには、目的が異なる2種類がある。
- 配線用遮断器: 定格電流を超える過電流(ショートや過負荷)を検知して電路を遮断する。漏れ電流を検知する仕組みは持たない。
- 漏電遮断器: 漏電による感電・火災を防ぐため、定格感度電流(一般に15〜30mA程度)を超える漏れ電流を検知して電路を遮断する。過電流保護機能を併せ持つ過負荷保護付(O.C付)と、漏電保護専用の過負荷保護なし(O.Cなし)があり、主流は過負荷保護付のほうだ。
「配線用遮断器があるから漏電遮断器は不要」という考え方は誤りだ。配線用遮断器は漏れ電流を測る仕組みそのものを持たないので、漏電遮断器の代役はできない。
ただし逆向きは成り立たない。漏電遮断器のほうには、過電流保護機能を併せ持つ過負荷保護付(O.C付)と、漏電保護専用の過負荷保護なし(O.Cなし)の2タイプがあり、パナソニックは過負荷保護付のほうを主流としている。分電盤の主幹に座っているのも、図面でBEと描かれるのも、この過負荷保護付だ。「漏電遮断器は過電流を見ない」と丸暗記すると、ここで外す。
実務では住宅の分電盤の主幹に漏電遮断器、各分岐回路に配線用遮断器を組み合わせて設置するのが一般的な構成だ。見た目が似ていて紛らわしい2つを現場で見分けるには、漏電を模擬して動作確認をするためのテスト釦の有無を見るとよい。漏電遮断器には必ずこの釦が付いている。
ただし「釦があれば漏電遮断器」で止めると外れる。赤い「PUSH TO TRIP」は機械的に引き外すトリップ釦で、三菱電機はこれを「遮断器を外部から機械的にトリップさせるボタン」と定義しており、配線用遮断器にも付く。だから釦を見つけたら、脇の語句が「テスト」「T」なのか「PUSH TO TRIP」なのかを読み、定格感度電流(30mAなどのmA表示)があるかまで確かめる。写真から読み分ける手順は写真鑑別 — 図記号と実物をつなぐで詳しく扱っている。
配線用遮断器が切れるまでの時間 — 1.25倍で60分、2倍で2分
配線用遮断器は、定格電流を超える電流が流れ続けたとき、決められた時間の限度までに自動で動作しなければならない。電技解釈第33条第3項の33-2表が、定格電流の区分ごとに、1.25倍の電流と2倍の電流を通じたときの時間を定めている。学科試験に出るのは、いちばん上の行だ。
| 定格電流の区分 | 1.25倍の電流を通じたとき | 2倍の電流を通じたとき |
|---|---|---|
| 30A以下 | 60分以内 | 2分以内 |
| 30Aを超え50A以下 | 60分以内 | 4分以内 |
| 50Aを超え100A以下 | 120分以内 | 6分以内 |
| 100Aを超え225A以下 | 120分以内 | 8分以内 |
(33-2表は2,000A超過まで続く。ここには、ふだん目にする225A以下の4行だけを載せた。)
あわせて、定格電流の1倍の電流では自動的に動作しないことも、同じ項に定められている。1倍までは遮断しない、1.25倍なら1時間以内に切る、2倍なら2分以内に切る、と電流が大きいほど短い時間で切れる。
計算の手順は、先に倍率を出すことだ。たとえば定格電流30Aの配線用遮断器に37.5Aが流れ続けたなら、37.5÷30=1.25倍なので、60分以内に動作する。同じ遮断器に60Aが流れたなら2倍なので、2分以内だ。
1.25倍は「使いすぎ(過負荷)」なので待てる時間が長く、2倍は「明らかな異常」なので短い時間で切れる、と性質で結びつけると、60分と2分を取り違えにくい。
この33-2表を定めた第33条第3項は、電気用品安全法の適用を受ける配線用遮断器を除いている。住宅用の小形の配線用遮断器が属する電気用品安全法側の基準の数値は、このページでは確認できていない。ここに書いた30A以下の「1.25倍で60分、2倍で2分」は、解釈の33-2表の数字で、学科試験の設問(令和6年度下期 問15)もこの数字で出題されている。
太陽光がある家では、遮断器に「向き」の問題が生まれる
ふつうの分電盤では、電気は必ず一方向に流れる。電力会社から主幹へ、主幹から分岐へ、分岐から負荷へ。だから遮断器にも電源側と負荷側という決まった向きがあり、そのつもりで作られている。
ところが屋根に太陽光を載せると、この前提が崩れる。よく発電している昼間は、パワーコンディショナから電気が分電盤に向かって逆流する(余った分は系統へ売られていく)。夜や雨の日は、逆に系統から負荷へ電気が流れる。同じ1つの遮断器を、電気が日によって逆向きに通るわけだ。
パワーコンディショナと分電盤をつなぐ専用回路に、そのへんにある普通の漏電遮断器を付けたとする。切っておけば安全なはずだ——ところがこの遮断器は、OFFにしていても壊れる可能性がある。なぜだろう。
答えは、遮断器を切ったときにどちら側が生きたまま残るかにある。ふつうの使い方なら、OFFにすれば電源側だけが充電され、負荷側は死ぬ。ところが太陽光側から電気が来る回路では、OFFにしても負荷側の端子に電圧が加わり続ける。一般の漏電遮断器は、負荷側から電圧が加わることを想定した内部構造になっていない。
そこで使うのが逆接続可能型の漏電遮断器だ。これは「OFF状態で負荷側に電圧が加わっても支障がないように作られた」もので、系統連系用に限って逆向きの接続が認められている。内線規程(JEAC 8001)にも、系統連系型の小出力太陽光発電設備の配線例として、この形が示されている。
出題は「系統連系型の発電設備を分電盤に接続するとき、その専用回路に使用する漏電遮断器の種類はどれか」という形で来る。答えは逆接続可能型。高感度形・過負荷保護付といった別の軸の言葉が選択肢に混ぜられるが、それらは感度や保護機能の話で、向きの話をしているのはこれだけだ。
注意したいのは、逆接続可能型は「どこでも逆向きに使ってよい万能品」ではないことだ。メーカーは系統連系用に限るとはっきり書いており、一般の商用電力回路を逆接続する用途には使えない。「逆に付けられる便利なブレーカ」と覚えると、実務でも試験でも足をすくわれる。
住宅に太陽光・蓄電池・V2Hが載るのは、もう珍しいことではない。屋根に載った瞬間に、分電盤は「電気が一方通行の箱」ではなくなる。その変化に、器具の側が形で応えているのがこの遮断器だ。
分電盤の扉を開けると、家一軒の守り方が読める
この2つの違いが分かると、「ブレーカーが落ちた」という同じ一言が、まったく別の2つの知らせに聞こえるようになる。分岐の配線用遮断器が落ちたなら、その回路で使いすぎたかショートしたか。主幹の漏電遮断器が落ちたなら、どこかで電気が本来の道筋から外れて漏れている。前者はとりあえず上げ直してよいが、後者を何も調べずに上げ直すのは、警報を止めているのに近い。今日できることは単純で、自宅の分電盤の扉を開け、主幹に小さなテスト釦が付いているかを見てみることだ。付いていれば、その家は漏電から守られている。
この論点が繰り返し出題されるのは、2つの遮断器が見た目で紛らわしいまま、守る対象がまったく違うからだ。過電流は電線の発熱と火災を、漏れ電流は人の感電を防いでいる。片方があるからもう片方は要らない、という代替関係にはならない。
住宅にEV充電器や太陽光、蓄電池を後から足す工事では、この保護の考え方がそのまま設計の入口になる。回路を1つ増やすことは、主幹の容量と保護の組み合わせを見直すことでもあるからだ。選定の考え方はブレーカーの選び方にまとめてある。
冒頭の分電盤で、なぜ配線用遮断器がその漏電にまったく反応しなかったのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。