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ダイヘンの半自動溶接トーチ(BLUE TORCH IV)の型式はどう読むのか|『BT3524』の使用率表示が、型式表示図と取扱説明書で食い違う理由

・ 読了目安: 9分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

CO2/MAG半自動溶接機のトーチを発注するとき、型式の欄に「BT3524」と書かれた見積書を見たことがあるだろうか。350と500はA数だとすぐ分かる。では352の「2」は何を意味するのか。同じ350Aの型式が350、351、352と3種類も並んでいるのを見て、枝番の違いに気づかず、手元にある型式をそのまま書き写したことはないだろうか。

ダイヘンの公式製品ガイドには、この型式がどう組み立てられているかを示す図がちゃんと載っている。ところが、その図を実機の仕様書と突き合わせていくと、ダイヘン自身の資料の中で数字が一致しない箇所に行き当たった。

型式は「BT+溶接法+冷却方式+定格電流+シリーズNo.+仕様-ケーブル長」の組み合わせでできている

ダイヘンの「溶接機・切断機 製品ガイド」(CAT.NO. T122201H、2026年7月現在)には、CO2/MAG/MIGトーチのページに「■形式表示」という図が掲載されている。BT[ ][ ]3510[ ]-30という構成例に対して、6つの区分が線で結ばれている。

先頭のBTはブルートーチという名称そのもの。続く1文字目が溶接法で、無記号なら鉄、Aならアルミ、Sならステンレス。2文字目が冷却方式で、無記号が空冷、Wが水冷。この2文字は、対応する材質・冷却方式でなければ現れない。実際、鉄・空冷用のBT1804やBT3524にはこの2文字が付かず、アルミ用のBTA300やアルミ水冷用のBTAW400にはAの文字が入っている。

そのあとの3桁が定格電流。180、200、400、450、500はそのままA数だが、350の枝番だけ350、351、352と3種類ある。図の凡例には「350:350A(使用率30%)」「351:350A(使用率60%)」「352:350A(使用率30%)」と書かれている。続く1桁がシリーズNo.で、0がブルートーチIII、4がブルートーチIV。最後に仕様(無記号:標準、F:フレキシブル、V:電圧検出線付)とケーブル長(20・30・40・45・60の数字がそれぞれ2.0m・3.0m・4.0m・4.5m・6.0mに対応)が続く。

実在する6機種に当てはめると、ほぼ図の通りにできている

この構成を、製品ガイドの標準仕様表に載っている実在の6機種に当てはめてみる。BT1804-30、BT2004(V・F)-30(40)、BT3504(V・F)-30(45・60)、BT3514(V・F)-30(45・60)、BT3524(F)-30(45・60)、BT5004-30(45・60)。いずれも鉄・空冷用なので溶接法と冷却方式の文字は付かず、末尾の「4」はすべてブルートーチIVを表している。BT3524Fという型式は、BT+352(定格電流)+4(シリーズNo.)+F(フレキシブル仕様)という並びそのもので、図の構成と寸分違わない。ここまでは、型式の桁を一つずつ追う地味な作業が、そのまま報われる展開だ。

「352」の使用率だけ、同じ資料の中で数字が違う

ところが、350・351・352という3つの枝番の中身を、同じ製品ガイドの標準仕様表で確認すると、様子が変わってくる。BT3504(V・F)-30(45・60)の使用率は「30%(CO2)/30%(MAG)」、BT3514(V・F)-30(45・60)は「60%(CO2)/30%(MAG)」、そしてBT3524(F)-30(45・60)は「80%(CO2)/30%(MAG)」。CO2溶接での使用率は30%→60%→80%と、枝番が上がるにつれてきれいに上がっていく。

だとすると、形式表示図の「352:350A(使用率30%)」という表記はおかしい。80%であるはずの352が、350と同じ「30%」と書かれている。念のため、BT3524専用の取扱説明書(取扱説明書番号1U7116-J-3、2026年4月発行)も確認したが、こちらにも「定格電流及び使用率 350A 80%(CO2)/350A 30%(MAG)」とはっきり書かれていた。形式表示図の一行だけが、同じ製品ガイドの数ページ内にある標準仕様表とも、機種専用の取扱説明書とも食い違っている。

なぜ「352」だけ数字が合わないのか

はっきりした理由は、どの資料にも書かれていない。ここから先は、この記事を書く過程での推測に過ぎない。

形式表示図の「350:350A(使用率30%)」と「352:350A(使用率30%)」は、括弧の中身まで一字一句同じ文字列になっている。351の行だけ「使用率60%」と数字が違う。352の行を作る際に、350の行をコピーしてから数字だけ書き換えるつもりが、書き換え漏れのまま資料に残ったのではないか、というのが最も単純な見立てだ。ただし、これはあくまで見た目からの推測であり、ダイヘンが正式に誤りと認めているかどうかは確認できていない。

型式の数字自体も、規格によって基準が違う

型式を追う中で、もう一つ見過ごせない記載に行き当たった。BT3524の取扱説明書には、定格電流の脚注として「※1 ダイヘン社内基準による定格電流、使用率です。IEC60974-7,JIS C9300-7による定格電流、使用率は、330A 60%(CO2)/300A 60%(MAG)です。」とある。つまり型式に埋め込まれた「350」という数字は、国際規格IEC60974-7・JIS規格C9300-7が定める試験条件での定格電流ではなく、ダイヘンが社内で独自に設定した試験条件での数値だということになる。

他の機種の取扱説明書もあわせて確認すると、この社内基準とIEC・JIS基準の差は機種ごとにばらつきがある。BT1804は型式側が180Aなのに対しIEC・JIS基準は220A、BT2004Fは200Aに対し240A、BT3504Fは350Aに対し290A、BT3514Fは350Aに対し280A(CO2)、BT5004は500Aに対し400A(CO2)。BT1804とBT2004Fは型式側の数字がIEC・JIS基準より低いのに、BT3504F以降は型式側のほうが高い。一定の換算式で説明できる関係ではなく、機種ごとに個別に確認するしかない差になっている。

この3段階の使用率は、単なるカタログ上の区分ではなく、実際に選ぶトーチを左右する数字でもある。使用率30%のBT3504Fは、10分のうち3分だけ連続して溶接し、残り7分は休ませる前提の設計だ。厚板を長時間連続で溶接する現場でこれを使うと、規定の使用率を超えてトーチが過熱し、耐久性を落とすことになりかねない。逆に、短時間の溶接を断続的に繰り返すだけの現場に使用率80%のBT3524を選んでも、性能を持て余すだけでコストが上がる。型式の末尾1桁は、価格やA数の違いである以上に、現場の溶接作業パターンに合わせた選定基準そのものだと考えたほうがよい。

現場での実務的な注意点

見積もりや在庫確認で押さえておきたい点を3つ挙げる。

一つめは、350A帯の型式(350・351・352)を図面や仕入先の指示から書き写すとき、末尾1桁を絶対に読み飛ばさないことだ。この1桁だけで連続溶接できる時間の長さが変わる。特に352という型式だけは、製品ガイドの形式表示図に載っている使用率の説明を鵜呑みにせず、実際に発注する機種(BT3524またはBT3524F)の標準仕様表か取扱説明書で使用率を確認したほうがよい。

二つめは、型式に書かれたA数を他社製トーチのA数とそのまま比べないことだ。ダイヘンの型式はダイヘン社内基準の定格電流であり、IEC60974-7・JIS C9300-7という規格ベースの定格電流とは別の数字が型式に使われている。他社製品や、規格準拠の定格電流で仕様を比較したい場面では、取扱説明書の脚注にあるIEC・JIS基準の数値まで確認する必要がある。

三つめは、シリーズNo.の桁(0または4)を見落とさないことだ。0はブルートーチIII、4はブルートーチIVを表し、世代が違えばハンドル形状や対応するオプション部品も変わってくる。旧型のブルートーチIIIから更新する際は、単純に同じA数・同じ仕様の型式へ置き換えるのではなく、対応する送給装置やパワーケーブルの互換性もあわせて確認しておきたい。

型式の桁を一つずつ突き合わせる作業は地味だが、公式資料同士で数字が食い違っている以上、型式だけを見て発注すると意図した使用率のトーチが届かないおそれがある。型式の読み方や在庫状況の確認、見積もりの相談は、以下から受け付けている。

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よくある質問

ダイヘンのBT3524という型式は、どういう仕様を表していますか?

製品ガイド(CAT.NO. T122201H)の形式表示図によれば、BTがブルートーチ、続く2つの空欄が溶接法(無記号=鉄)と冷却方式(無記号=空冷)、352が定格電流(350A)とシリーズ内の使用率区分、4がシリーズNo.(ブルートーチIV)を表します。個別の取扱説明書(1U7116-J-3)には、定格電流及び使用率として「350A 80%(CO2)/350A 30%(MAG)」と明記されています。

なぜ『350』『351』『352』という3つの型式が、すべて『350A』の溶接トーチなのですか?

3つとも定格電流はダイヘン社内基準で350Aですが、使用率(定格時間内で連続してアークを出せる比率)が異なります。個別取扱説明書で確認すると、BT3504Fが30%(CO2)、BT3514Fが60%(CO2)、BT3524が80%(CO2)で、末尾の1桁が0→1→2と上がるごとに使用率が高くなる、つまりより長時間連続で溶接できるトーチになるという対応関係が実機の仕様書から読み取れます。

製品ガイドの形式表示図にある『352:350A(使用率30%)』という表記は誤りですか?

少なくとも、同じ製品ガイドの同じページに載っているBT3524(F)-30の標準仕様表では使用率が80%(CO2)と記載されており、個別の取扱説明書(2026年4月発行)でも80%(CO2)と明記されています。形式表示図側の『352:350A(使用率30%)』という一行だけが、同一資料内の他の記載と食い違っている状態です。ダイヘンに正式な訂正が出ているかどうかは確認できていないため、実務では形式表示図の一覧だけで判断せず、購入予定の形式そのものの仕様表・取扱説明書を必ず突き合わせることをおすすめします。

型式に書かれた『350A』は、他メーカーのカタログにある『350A』とそのまま比較できますか?

単純には比較できません。BT3524の取扱説明書の脚注には『IEC60974-7,JIS C9300-7による定格電流、使用率は、330A 60%(CO2)/300A 60%(MAG)です』とあり、型式の数字(350)はダイヘン社内基準の値で、国際規格・JIS規格ベースの定格電流(330A)とは別の数字です。しかもこの差はBT1804(型式180、IEC・JIS基準220A)のように型式側の数字がIEC・JIS基準より低いケースもあれば、BT3504F(型式350、IEC・JIS基準290A)のように型式側が高いケースもあり、一定の換算式では説明できません。他メーカーの製品と定格電流を比べるときは、両方をIEC60974-7・JIS C9300-7基準の数字で揃えて確認したほうが安全です。

参考文献・出典

  • 株式会社ダイヘン「溶接機・切断機 製品ガイド」(CAT. NO. T122201H、2026年7月現在の記載内容) (p.13「CO2/MAG/MIG TORCH」内「■形式表示」の図。BT[ ][ ]3510[ ]-30という構成例に対し、溶接法(無:鉄、A:アルミ、S:ステンレス)、冷却方式(無:空冷、W:水冷)、定格電流(180:180A、200:200A、350:350A(使用率30%)、351:350A(使用率60%)、352:350A(使用率30%)、400:400A、450:450A、500:500A)、シリーズNo.(0:ブルートーチIII、4:ブルートーチIV)、仕様(無:標準、F:フレキシブル、V:電圧検出線付)、ケーブル長(20:2.0m、30:3.0m、40:4.0m、45:4.5m、60:6.0m)の区分を掲載。同じp.13の「■標準仕様(CO2/MAG用)」表には、形式BT3504(V・F)-30(45・60)の使用率が「30%(CO2)/30%(MAG)」、BT3514(V・F)-30(45・60)が「60%(CO2)/30%(MAG)」、BT3524(F)-30(45・60)が「80%(CO2)/30%(MAG)」と記載されており、形式表示図の「352:350A(使用率30%)」という枝番説明とBT3524本体の仕様表(80%(CO2))が一致していないことを確認。)
  • 株式会社ダイヘン「BLUE TORCH IV BT3524-30,45,60」取扱説明書(取扱説明書番号1U7116-J-3、2026年4月発行) (■定格仕様の表に「定格電流及び使用率※1 350A 80%(CO2)/350A 30%(MAG)」と記載。脚注※1に「ダイヘン社内基準による定格電流、使用率です。IEC60974-7,JIS C9300-7による定格電流、使用率は、330A 60%(CO2)/300A 60%(MAG)です。」の記載があり、型式に埋め込まれた「350」という数字が国際規格(IEC60974-7)・JIS規格(C9300-7)上の定格電流(330A)とは異なる、ダイヘン独自の試験条件による数値であることを確認。)
  • 株式会社ダイヘン BLUE TORCH IV 個別機種取扱説明書(BT1804・BT2004F・BT3504F・BT3514F・BT5004、いずれも2026年発行) (各機種の■定格仕様表と脚注※1を確認。BT1804は「180A 40%(CO2)/130A 30%(MAG)」(IEC・JIS基準は220A 35%(CO2))、BT2004Fは「200A 50%(CO2)/160A 30%(MAG)」(IEC・JIS基準は240A 35%(CO2))、BT3504Fは「350A 30%(CO2)/200A 30%(MAG)」(IEC・JIS基準は290A 35%(CO2))、BT3514Fは「350A 60%(CO2)/300A 30%(MAG)」(IEC・JIS基準は280A 60%(CO2)/240A 60%(MAG))、BT5004は「500A 60%(CO2)/450A 30%(MAG)」(IEC・JIS基準は400A 60%(CO2)/350A 60%(MAG))と記載されていることを確認。社内基準とIEC・JIS基準の定格電流の差は機種ごとに符号も大きさも異なる(型式の数字がIEC・JIS基準より低い機種と高い機種の両方が存在する)。)
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