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IP保護等級(IP54・IP65等)とは|制御盤・電気機器の防塵防水表示の読み方と選び方

・ 読了目安: 8分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

この記事の結論

IPコードは1桁目で固形物(0〜6)、2桁目で水(0〜9)に対する保護等級を別々に表す。IP65は粉塵が入らない耐じん形で、あらゆる方向からの噴流水(毎分12.5L)にも耐え、IP54は動作や安全性を損なう量の粉塵が入らない防じん形で、あらゆる方向からの水の飛まつに耐える。IP68の潜水条件は関係者間で取り決めるもので、噴流水への耐性は別に確認する。規格は2026年1月にJIS C 0920からJIS C 60529へ移り、高温高圧水噴流の9が加わった。

冒頭の場面・会話は、内容の理解を助けるための例示です。特定の現場・企業・案件を指すものではありません。

「IP65はIP54より上位の等級だから、迷ったらIP65にしておけば安心」。この考え方には、実は見落としがある。IPコードの後ろに並ぶ2桁の数字は、1桁目が固形物、2桁目が水という、まったく別の項目を独立に測った結果を並べているだけだからだ。1桁目だけを見ればIP65(6)はIP54(5)より厳しい。ところが2桁目まで見ると、IP65(5=噴流水)とIP54(4=飛まつ)では、想定している水のかかり方自体が違う。つまりこの2つは「どちらが上か」を一列に並べて比較できる数字ではなく、性格の異なる2つの物差しを2桁でひとまとめに表記しているだけなのだ。この誤解は、発注担当者だけでなく、現場で日常的に電気設備を扱う人の間でも珍しくない。

IPコードとは何か——JIS C 0920が定める「固形物」と「水」の2軸

IP(International Protection)コードは、電気機械器具の外郭(ケースや盤の筐体)が、固形物や水の侵入に対してどこまで保護されているかを表す国際的な等級表示で、日本では長らくJIS C 0920(電気機械器具の外郭による保護等級)として規定されてきた。国際規格IEC 60529を基にした規格である(日東工業「IPコード(IP保護等級)とは」による)。

規格番号が変わっている点に注意したい。 日本規格協会の規格詳細によれば、JIS C 0920:2003は2026年1月20日付で廃止され、同じ標題のJIS C 60529:2026「電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」(2026年1月20日発行)へ引き継がれた。新しいJIS C 60529はIEC 60529の2013年の追補(Amendment 2)までを技術的内容を変えずに取り込んでおり(IDT)、主な変更点は水に対する保護等級に9(IPX9:高圧・高温水噴流に対する保護)が加わったことだ(日本規格協会のコラムによる)。仕様書や社内標準で規格番号を引用している場合は、JIS C 0920のままになっていないかを確認しておきたい。以下の等級表は、このIPコードの規定内容として整理したものである。

表記は「IP」に続けて2桁の数字を並べる形をとる(例:IP54、IP65)。このとき、

  • 1桁目(第一特性数字):固形物の侵入に対する保護等級(0〜6)
  • 2桁目(第二特性数字):水の侵入に対する保護等級(0〜9。9はJIS C 60529:2026で追加)

という、それぞれ独立した試験区分になっている(日東工業・日本品質保証機構の解説による)。1桁目の試験では規定サイズの球状プローブが外郭内部に侵入するかどうかを確認し、2桁目の試験では規定の条件で水を当てて内部への浸入がないかを確認する。試験方法自体が別物であるため、片方の数字が大きいからといって、もう片方の性能まで高いとは限らない。

1桁目:固形物に対する保護等級

数字保護の内容
0保護なし
1直径50mmの固形物が侵入しない
2直径12.5mmの固形物が侵入しない
3直径2.5mmの固形物が侵入しない
4直径1.0mmの固形物が侵入しない
5防じん形。動作・安全性を阻害する量のじんあい侵入がない
6耐じん形。じんあいの侵入が全くない(完全防塵)

(日本品質保証機構のIPコード表による)

2桁目:水の侵入に対する保護等級

数字保護の内容試験条件の目安
0保護なし―
1鉛直に落下する水滴に耐える―
215度以内の傾斜でも落下水滴に耐える―
360度までの角度からの噴霧水に耐える―
4あらゆる方向からの水の飛まつに耐える―
5あらゆる方向からの噴流水に耐えるノズル径6.3mm・毎分12.5L
6あらゆる方向からの暴噴流水に耐えるノズル径12.5mm・毎分100L
7一時的潜水に耐える深さ0.15〜1m
8継続的潜水に耐える7より厳しい条件下(関係者間の協議で決める)
9高圧・高温の水噴流に耐える80±5℃の熱水・毎分14〜16L(JIS C 60529:2026で追加)

(日本品質保証機構のIPコード表、IEC 60529の試験項目、日本規格協会のコラムによる)

数字を追っていくと気づくことがある。5番と6番は水量が8倍違う「噴流水」の強さの差でしかなく、7番と8番は「潜水」というまったく別の試験方式に切り替わっている。ここに、実務でつまずきやすい3つの発見が隠れている。

見落としやすい3つの発見

1. IPX5とIPX6の差は「噴流水の量」であって「防水性能の格」ではない

IPX5もIPX6も、想定しているのは「あらゆる方向からのノズル噴流水」という同じ種類の負荷だ。違うのはノズル径と流量で、IPX5が毎分12.5L、IPX6が毎分100Lと、8倍の水量で試験する(日本品質保証機構の解説による)。どちらも高温の水を条件とした試験ではないため、高温・高圧の洗浄水を想定する設備では、別の試験である9番(IPX9)の適合を確認する必要がある。

2. IP68は「水没に耐える」を無条件に保証する表示ではない

IPX7は「深さ0.15〜1mの一時的潜水」という具体的な条件が規格側で決まっている(IEC 60529の試験項目による)。ところがIPX8は「7より厳しい条件」としか規定されておらず、実際の試験条件は関係者間の協議で決める(日本品質保証機構の解説による)。つまり同じ「IP68」表示でも、製品ごとに保証されている潜水条件(深さ・時間)は異なりうる。カタログの「IP68」の文字だけで水没設備への使用を判断せず、実際の使用環境(水深・浸水時間)に対して製品側がどの条件を保証しているかまで確認するのが実務的な安全策になる。

3. 潜水に強い等級が、噴流水に強いとは限らない

2桁目の0〜4番、5〜6番(噴流水)、7〜8番(潜水)は、それぞれ試験方法自体が異なる。IP68表示の製品が、必ずしもIPX5・IPX6の噴流水試験までクリアしているとは限らない。逆に、噴流水に強いIPX6の製品が潜水試験まで通っているとも限らない。屋外の水没リスクと強い噴流水の両方が想定される設備では、「IPX6/IPX8」のように両方の等級が併記されているかを確認する必要がある。

設置環境から逆算する——実務での選び方

IP等級は「高いほど安心」ではなく、設置環境に見合った等級を選ぶのが費用対効果の面でも合理的だ。過剰な等級はパッキン構造の分だけ価格が上がり、内部の放熱性が落ちて余分な設計が必要になることもある。逆に不足した等級は、想定より早い劣化やトラブルにつながる。

設置環境で想定する負荷定義上対応する特性数字補足
水がかりのない屋内(事務所・データセンター内など)第二特性数字は低くてよい。第一特性数字は握り拳・指・工具・針金の接近を防ぐ1〜4噴流水・潜水の等級は過剰になりやすい
粉塵の多い屋内(切削・溶接・製粉等)第一特性数字5(防じん形)または6(耐じん形)入っても動作・安全性を損なわない程度でよいか、侵入ゼロが必要かで分かれる
庇の下など、飛まつ程度の水がかり第二特性数字4あらゆる方向からの水の飛まつ
屋外で雨風に直接さらされる、ホースで水がかかる第二特性数字5または6噴流水(毎分12.5L)か暴噴流水(毎分100L)か
高温・高圧の水で洗浄する設備(食品工場など)第二特性数字980±5℃・毎分14〜16Lの高圧・高温水噴流(JIS C 60529:2026で追加)
一時的な浸水・冠水リスクがある設備第二特性数字7以上8は製品ごとに保証条件(深さ・時間)を確認

(各特性数字の定義から整理したもの。実際の等級選定は個々の設置環境・製品仕様に基づいて判断してください)

制御盤・プルボックスでの実務上の注意点

制御盤筐体やプルボックスのカタログで「防水型」「防塵型」とだけ記載されている製品は、実際のIP等級が何番なのかを型番・仕様書まで遡って確認したい。「防水型」という表記だけでは、第二特性数字のどの試験(飛まつ・噴流水・潜水など)に適合しているかが分からないためだ。

またIP等級は工場出荷時・新品状態での試験結果であり、経年での性能維持を保証するものではない。扉パッキンのゴムは紫外線やオゾン、温度変化で年数を経るごとに硬化・ひび割れが進みやすく、屋外・過酷環境の盤ほど、当初のIP等級より防塵防水性能が落ちていくスピードは速い。選定時点で高い等級を選ぶことと同じくらい、設置後の定期点検・パッキン交換を見込んでおくことが、長期的な信頼性につながる。

まとめ——等級は「設置環境の申告」から逆算するのが最短ルート

IP等級の1桁目と2桁目は別々の基準であり、数字の大小だけで「上位互換」を語れない。IPX5とIPX6は噴流水の強さの違い、IPX7とIPX8は潜水条件の厳しさの違いであり、IP68という表示だけでは高圧洗浄への耐性までは保証されない。屋内か屋外か、粉塵が多いか、水がかりや洗浄作業があるか——この設置環境の情報さえ揃えば、過剰な等級でコストをかけすぎることも、不足した等級で早期劣化を招くことも避けられる。

IP等級指定の製品購入・見積りについて

電材サーチで品種リストを作って見積もり依頼ができます。 設置環境(屋内外・粉塵・水がかり・洗浄有無)と必要なIP等級を書き添えておくと、品番を絞り込みやすくなります。

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よくある質問

IP54とIP65、どちらが「上」の等級ですか?

単純に上下関係で比較できません。IPコードの1桁目(固形物)と2桁目(水)は独立した試験項目で、IP54は「固形物は準完全防塵・水は飛まつ耐性」、IP65は「固形物は完全防塵・水は噴流水耐性」を表します。1桁目はIP65のほうが厳しい条件ですが、2桁目も含めた「総合的な防護力」として一列に並べられる数字ではなく、必要な等級は設置環境の粉塵量と水のかかり方から個別に決めるものです。

IP68と表示されていれば、水没しても洗浄水を当てても安心ですか?

いいえ、そうとは限りません。第二特性数字8は「7より厳しい条件下での継続的な潜水」を指しますが、その具体的な条件は関係者間の協議で決めるもので、統一された基準値ではありません(日本品質保証機構の解説による)。また8番の潜水試験と5番・6番の噴流水試験は別の試験方法のため、IP68表示だけでは高圧洗浄や強い噴流水への耐性は保証されません。両方が必要な設備では「IPX5/IPX8」のように併記された等級を確認する必要があります。

IPX5とIPX6は何が違うのですか?

どちらも「あらゆる方向からの噴流水」に耐えることを求める等級ですが、試験条件の水量が大きく異なります。IPX5は直径6.3mmのノズルから毎分12.5Lの水を、IPX6は直径12.5mmのノズルから毎分100Lの水を噴射します(IEC 60529目次、日本品質保証機構の解説による)。IPX6はIPX5の8倍の水量で試験します。なお高温・高圧の水で洗浄する設備向けには、2026年のJIS C 60529で第二特性数字9(IPX9)が加わっています。

屋内に設置する制御盤でも高いIP等級は必要ですか?

水がかりのない屋内であれば、噴流水(5・6)や潜水(7・8)を想定した等級は設置環境に対して過剰になります。粉塵の少ない事務所内・データセンター内の制御盤にIP65以上の完全防塵・噴流水対応品を選ぶと、パッキン構造や気密性の分だけ価格が上がるうえ、内部の熱がこもりやすくなり放熱設計が余分に必要になることがあります。等級は「高いほど安心」ではなく、設置環境に見合った等級を選ぶのが費用対効果の面でも合理的です。

IP等級は経年劣化しますか?カタログの等級通りの性能がずっと続きますか?

IP等級は工場出荷時の新品状態での試験結果であり、経年での性能維持を保証するものではありません。扉パッキンのゴムは紫外線・オゾン・温度変化で硬化・ひび割れが進み、当初の等級より防塵防水性能が落ちることがあります。屋外・過酷環境の盤では、定期的なパッキンの目視点検と、劣化が見られた時点での交換を選定時から見込んでおくと安心です。

適切なIP等級を選ぶには、設置環境の何を整理すればよいですか?

「屋内か屋外か」「直射日光・雨が直接当たるか、庇があるか」「粉塵が多い作業か(切削・溶接・製粉等)」「高圧洗浄や水拭き掃除をするか」「油や薬品にさらされるか」の5点を整理しておくと確実です。この情報があれば、必要以上に高い等級(=コスト増)を避けつつ、実際の環境で早期劣化しない等級の製品を絞り込めます。

参考文献・出典

確認・変更の記録

出典照合日: (AIによる照合補助)

出典6件の到達を確認(旧4件+日本規格協会のIPX9解説・IEC 60529 Ed.2.2プレビューを追加)。JSA WebdeskでJIS C 60529:2026(発行2026-01-20、IEC 60529:1989+A1:1999+A2:2013のIDT)とJIS C 0920:2003の廃止(2026-01-20)を確認。日本規格協会のコラムで第二特性数字9(IPX9:高圧・高温水噴流、80±5℃・毎分14〜16L)の追加を確認し、本文の『2桁目は0〜8』『数字の意味は変わらない』を0〜9とIPX9追加へ修正。JQAのIPコード表で第一特性数字0〜6(50・12.5・2.5・1.0mm、5防じん・6耐じん)と第二特性数字の噴流水12.5L/min・暴噴流水100L/min、8は協議で条件を決めることを確認。IEC 60529プレビュー目次でノズル径(5は6.3mm、6は12.5mm)とIPX7の0.15〜1mを確認。噴流水の距離2.5〜3mとIPX7の30分間は到達可能な出典で確認できず表から削除。設置環境別の『IP20〜IP44』『IP66〜IP69K』等の目安は出典がなく、IP69KはIPコード(IEC 60529)の等級ではないため、各特性数字の定義から導く表に置換。『防水型にIPX4相当とIPX6相当が混在』『数年単位で劣化』『IPX6以上が実務上の目安』も出典がなく削除・言い換え。自社の提案対応を述べたFAQ1問と本文の提案文言を削除し、中立の見積導線に置換。

個別設備の適合判定・技術者による承認を示すものではありません。

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