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【現場のあるある】灯具の直下は明るいのに、中間地点で被害が起きた
あるマンションの管理組合が、共用駐輪場に防犯灯を設置する際、灯具の間隔を「なんとなく均等に」30mおきに配置した。竣工検査でも灯具の真下はしっかり明るく、問題なさそうに見えた。ところが後日、灯具と灯具のちょうど中間地点で自転車部品の盗難被害が発生してしまう。
原因は、設計時に見ていたのが「灯具直下の明るさ」だけだったことにある。中間地点は平均照度としては基準をクリアしていても、その場所の最小照度がまったく足りていなかったのだ。防犯灯は「平均で明るければよい」設備ではなく、灯具と灯具のスパンの中間地点でも一定の照度を確保できて初めて機能する——この記事では、その設計の勘所を数値基準から解説する。
1. LED防犯灯の設置基準と照度クラス(SES規格)
電気設計や施工において、防犯灯の明るさは感覚ではなく、公益社団法人 日本防犯設備協会が定める技術標準「SES E 1901-4(防犯灯の照度基準)」に準拠して設計します。
基準は以下の2つの「照度クラス」に大別されます。
| 照度クラス | 水平面照度(平均値) | 鉛直面照度(最小値) | 識別能力の目安(距離 4m) |
|---|---|---|---|
| クラスA | 5 lx | 1 lx | 歩行者の顔の概要(目・鼻・口の位置)が識別できる |
| クラスB | 3 lx | 0.5 lx | 歩行者の顔の向きや挙動・姿勢などが分かる |
水平面照度は路面上の平均照度、鉛直面照度は道路の中心線上で路面から1.5mの高さにおける、道路軸に直角な鉛直面の最小照度です。どちらのクラスを採用するかは、道路の交通安全上・防犯上の重要性、歩行者・交通量、周辺の明るさ、照明にかけられるコストなどから設置者が選びます。少なくともクラスBの確保が望まれるとされています。さらに道路端の視認性を考慮し、道路端から0.5m内側(両端)の高さ1.5mの鉛直面照度(最小値)を0.5 lx以上とする「クラスB+(プラス)」も追加されています。
[!IMPORTANT] 「最小照度」が基準を下回ると、防犯灯の直下は明るくても、灯具の中間地点(スパン)に極端に暗い「暗がり(デッドスペース)」が発生し、防犯性能が著しく低下します。設計時は平均照度だけでなく、スパン中間地点の最小照度がクリアできているかを計算(または照度計算ソフトでシミュレーション)する必要があります。
2. 防犯灯の推奨設置間隔とポールの高さ
照度クラスを維持するために最も重要な要素が、「器具の取り付け高さ」と「設置間隔(スパン)」のバランスです。設置間隔は器具の明るさ・取付高さ・道路幅で変わるため、メーカーが公表している参考設置間隔は必ず計算条件とセットで読みます。
① メーカーの参考設置間隔の例
岩崎電気は、LED防犯灯「レディオック ストリート」の参考器具設置間隔を、道路幅5m・取付高さ5mの条件で次のように示しています。
| 器具 | クラスA | クラスB | クラスB+ |
|---|---|---|---|
| 7VA | 21m | 36m | 35m |
| 10VA | 27m | 42m | 39m |
| 20VA | 39m | 51m | 46m |
同じ器具でも、クラスAを狙うと間隔は大きく縮みます。取付高さや道路幅が条件と違えば、この値はそのまま使えません。
② 従来光源との比較に使う「ランク」
LED防犯灯を従来光源の防犯灯と比べる目安として、日本防犯設備協会はクラスB+を満たす設置間隔ごとに「ランク」を定めています。たとえば12〜16mはランクSS(直管形蛍光ランプ20W相当)、17〜21mはランクS(高圧水銀ランプ40W相当)、22〜26mはランクM(高圧水銀ランプ80W相当)、30〜36mはランクL(高圧水銀ランプ100W相当)、37m以上はランクLLです。「FL20形相当」といった表記の器具は、この区分で設置間隔の目安を読み取れます。
③ 取付高さの考え方
- 低すぎる場合: 灯具直下だけが明るくスポットライトのようになり、光が広がらないため設置間隔を短くする必要があります。また、いたずらで破損されるリスクが高まります。
- 高すぎる場合: 光が地盤面に届くまでに減衰し、必要な照度を確保するために明るい器具が必要になります。
[!TIP] アパートやマンションの駐車場・駐輪場などで、周囲に防犯灯を支持するための既存の電柱がない場合は、「防犯灯ポール(鋼管ポール・すっきりポールなど)」をコンクリート基礎で自立埋設し、架空配線または地中配電管(FEP管)を経由して電源を引き込みます。
3. 主要メーカーのLED防犯灯仕様比較
ここでは岩崎電気(Iwasaki)とパナソニック(Panasonic)の防犯灯について、メーカーが公式に示している特徴を並べます。個別型番の光束・消費電力は改廃が早いため、採用時は最新のカタログで確認してください。
| 項目 | 岩崎電気:レディオック ストリート | パナソニック:明光色(アカルミナ)防犯灯 |
|---|---|---|
| ラインアップ | 7VA・10VA・20VA(LED昼白色) | 明光色(昼白色LED 5500K)の防犯灯 |
| 公表されている設計情報 | クラスA・B・B+ごとの参考器具設置間隔(道路幅5m・取付高さ5mの条件) | 照度基準(クラスA・B)の解説。照度の算出例は取付高さ4.5m・道路幅5mを仮定 |
| 特徴・強み | 誘導雷に耐える耐雷サージ電圧15kVの設計(一部商品を除く)、光束維持時間60000時間 | 薄明視環境で目の感度が高い507nm付近の光を多く含め、暗い道を明るく見せる独自技術 |
選定時のポイント
- 設置間隔から器具を選びたい場合: クラス別の参考設置間隔が公表されている器具なら、道路条件が近ければ必要台数を見積もりやすくなります。
- 人の見えやすさを重視する場合: 夜間の見え方を改善する パナソニックの明光色(アカルミナ) が選択肢になります。照度基準を満たすことが前提で、見え方は上乗せの判断材料です。
一段深い理解:なぜ「同じ照度」でも明るく見える光色があるのか
「アカルミナ」のような明光色タイプの防犯灯は、器具の光束(lm)や消費電力ではなく、人間の目の生理的な特性を利用して見えやすさを稼いでいる。
人間の目は、周囲が明るい昼間(明所視)と、暗い夜間(暗所視)とで、色に対する感度のピークが変化する。明るい場所では黄緑色付近に最も敏感だが、暗くなるにつれて感度のピークは短波長側(青緑色、波長507nm付近)へとシフトしていく。この現象は「プルキンエ現象」として知られている。防犯灯が設置される夜間の屋外は、この「明所視と暗所視の中間(薄明視)」に近い環境であることが多い。
明光色タイプのLEDは、この薄明視環境で感度が高まる短波長寄りの光を多く含むように設計されており、同じ照度(ルクス)の光でも人間の目には実際の数値以上に明るく感じられる。逆に言えば、カタログスペック上の照度(lx)だけを比較しても、体感的な明るさの差は見えてこない。設計段階で「クラスAかクラスBか」という数値基準を満たすことは大前提だが、実際に人がどう感じるかという体感照度まで考慮するなら、光色の選定も選定基準に含めておくとよい。
4. 電気工事における防犯灯施工のチェックポイント
防犯灯の設置工事・電源接続を行う際、設計・施工者が注意すべき実務のポイントです。
① 自動点滅器(照度センサー)の向き
夕方に自動点灯し、朝方に自動消灯させる「照度センサー」を設置する際は、取り付け方向に注意します。
- 受光部には、西日や車のヘッドライト、自身や周囲の照明の光が直接入らない向き・位置を選びます。これらの光を拾うと、点灯すべき時間に消灯したり、点滅を繰り返したりする原因になります。
- 取付方向の指定がある製品は、取扱説明書の指定に従います。
② 屋外防雨対策とD種接地
防犯灯は雨風に晒されるため、防雨形の器具を選び、保護等級(IP)は製品仕様で確認します。
- 防水ノックアウトの処理: 配線引き込み部には必ず防水グランド(ケーブルクランプ)を使用し、コーキング材で隙間を完全に塞ぎます。
- D種接地(アース)施工: 使用電圧300V以下の機械器具の金属製外箱等には、原則としてD種接地工事(接地抵抗値100Ω以下)を施します(電気設備の技術基準の解釈 第29条・第17条)。省略できるのは、同第29条第2項に列挙された条件(定格感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以下の漏電遮断器を施設し水気のある場所以外に設置する場合など)に限られます。
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