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電磁接触器の「号機」表記とは|S-N10・S-N20の読み方とメーカー間互換性の限界

・ 読了目安: 11分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

発注書に「20号のマグネットスイッチを1個」とだけ書かれていた。渡された新人は、まず型番のどこを見ればその「20号」にたどり着けるのか分からず、手が止まる。カタログを開いても「20号」という項目はどこにも載っていない。載っているのは「S-N20」「SC-N2」といった型式ばかりだ。

種明かしをしてしまえば、この「20号」は型式の末尾についている数字のことを指している。S-N20なら末尾の「20」、SC-N2なら末尾の「2」——電磁接触器の容量ランクを表すこの数字を、現場や商社間のやり取りでは「号」「号機」と呼ぶことがある。フルスペルの型式を毎回言うより、数字ひとつで伝わるなら都合がいい。だからこそ、この呼び方は広まったのだろう。

ただし、この呼び方がなぜ生まれ、いつから使われているのか、業界団体の公式な定義があるのかまでは、メーカーの技術資料を当たっても裏付けが見つからなかった。以下で扱う「号機」は、あくまで型式末尾の数字を指す業界内の慣用表現として扱う。断定できるのはここまでで、その先——この数字が実際に何を意味し、メーカーをまたいでどこまで通じるのか——は、公開されているカタログの数字で一つずつ確認していく。

号機が指しているもの——型式末尾の数字は容量ランクである

電磁接触器の型式は、シリーズ名と容量を示す数字の組み合わせでできている。富士電機機器制御の公開資料によれば、SC-N1は定格電流26A(JIS, AC-3 200-240V)でAC-3級のモータ容量は200-240Vで5.5kW、380-440Vで11kW。SC-N2は定格電流35A(同条件)でモータ容量は200-240Vで7.5kW、380-440Vで15kWとなっている。N1からN2へ、数字が一つ上がるだけで扱える容量帯がひと回り大きくなる。

三菱電機の現行S-T形も同じ発想で並んでいる。ただし同社が公表する「モータ選定表」の数値は、電磁開閉器自身のAC-3級定格ではなく、そのフレームで駆動できるモータ側の容量・電流を示す値である点に注意が要る。電磁開閉器自身のAC-3級定格使用電流(AC220V)は、公式カタログによればMSO-T10=20A、T12=20A、T20=18A、T21=32A、T25=32A、T35=34A、T50=60Aとなっている。「号機」という呼び方が指しているのは、型式末尾の数字——つまり容量ランクそのものであり、この数字がそのままAC-3級定格電流と一致するとは限らない。

オムロンの電磁接触器(コンタクタ)J7KCシリーズも、型式末尾に数字を持つ点は同じだ。公開情報によれば、J7KC-12はAC-3級・AC200-240Vで定格使用電流12A、モータ容量3kWとされている。フレームを表す数字が容量帯にひもづくという構造そのものは、富士電機・三菱電機・オムロンの三社に共通して見られる。

メーカー・シリーズ号数の一例AC-3級 定格電流AC-3級 モータ容量目安
富士電機 SC-NシリーズSC-N126A(200-240V)5.5kW(200-240V)/11kW(380-440V)
富士電機 SC-NシリーズSC-N235A(200-240V)7.5kW(200-240V)/15kW(380-440V)
三菱電機 MSO-T形MSO-T2018A(220V)3.7kW(220V)
三菱電機 MSO-T形MSO-T3534A(220V)7.5kW(220V)
オムロン J7KCシリーズJ7KC-1212A(200-240V)3kW(200-240V)

数字だけを横並びにすると、三菱電機のT50=60A・T65=65A・T80=80A・T100=100Aのように大容量帯ではフレーム番号がAC-3級定格使用電流とほぼ一致するメーカーもあれば、富士電機のSC-N1・SC-N2のように「数字は容量順の連番であって、電流値そのものではない」メーカーもあることが見える。三菱のT20(18A)・T35(34A)のように、中容量帯ではフレーム番号と定格電流が近いとは限らない例もある。この差は、後の章でもう一度取り上げる。

S-N10・S-N20は今どこにいるのか

ここで一つ確認しておきたいことがある。冒頭の例に出したS-N20は、三菱電機の公式仕様ページによれば2015年9月に受注を終了し、同年10月に生産を終了している。現行のS-T形に置き換わっており、後継機種としてS-T21が案内されている。「20号」という呼び方だけを頼りに古いS-N系の型式で発注を続けていると、実在しない型式を追いかけることになりかねない。号数の見当がついたら、その号数が現行シリーズのどの型式に対応するのか、必ずカタログか販売店で確認する必要がある。

なぜメーカーが違っても、ある程度は号数が通じるのか

ここまでの数字を見ていくと、素朴な疑問が浮かぶ。富士電機のSC-N2も、三菱電機のS-T20やオムロンのJ7KC-12も、末尾の数字はメーカーごとにばらばらのはずなのに、現場では「20号くらいのやつ」で会話が成立しているように見える。これはなぜだろうか。

答えの半分は単純だ。AC-3級のモータ容量・定格電流という土俵そのものは、どのメーカーも同じJIS規格(JIS C 8201-4-1、IEC 60947-4-1に対応)の枠組みで評価している。土俵が共通なら、容量帯ごとにおおよそ近い数字の型式が各社に存在するのは自然なことで、「だいたいこのくらいの号数」という感覚が業種を越えて通じても不思議ではない。

残り半分は、聞こえるほど心強い話ではない。数字の付け方そのものが、メーカーごとに違う理屈で決まっているからだ。三菱電機やオムロンの型式は、末尾の数字がその型式のおおよその電流容量帯に近い値になっている例が見られる。一方で富士電機のSC-N/SW-Nシリーズは、容量の小さい方から大きい方へ向かってN1・N2・N3……と連番を振る方式を採っており、数字そのものが電流値を表しているわけではない。同じ「2」という数字でも、それが何の値に由来するのかはメーカーによって違う。つまり「20号」という呼び方が業界である程度通じるのは、容量帯という土俵の共通性のおかげであって、数字の採番ロジックまで各社が足並みを揃えているからではない。ここを取り違えると、「同じ号数なら同じ電流値のはず」という思い込みにつながる。

紛らわしいもう一つの「号」——JISの「号別」は容量の話ではない

もう一つ、確認しておきたい紛らわしさがある。JIS C 8201-4-1は、電磁接触器の性能区分を「級別」「号別」「種別」という3つの軸で規定している。級別はAC-1・AC-3・AC-4といった使用カテゴリ、つまり電流容量に関わる区分だ。種別は機械的・電気的な耐久性の区分になる。そして号別は、1時間あたりに何回開閉できるかという、開閉頻度の区分を表している。

現場で「20号」と言うときの号数と、JIS規格上の「号別」は、字面が似ているだけで指している中身がまったく違う。前者は容量ランクの話であり、後者は開閉頻度の話だ。カタログや仕様書で「号」という文字を見かけたときは、それが現場慣用の容量ランクの話なのか、JIS上の開閉頻度区分の話なのか、文脈を確認したほうがいい。

号数だけで発注・見積り依頼をするリスク

ここまでを踏まえると、号数は便利な一方で、それだけでは足りない情報があることも見えてくる。同じ容量ランクの型式でも、枝分かれする要素が主に3つある。

  • 補助接点の構成:a接点・b接点の数と組み合わせは、インターロック回路の要不要によって変わる。号数が同じでも補助接点構成が違えば型式は別物になる。
  • コイル電圧:AC100V・AC200V・DC24V等、制御回路の電圧に合わせる必要がある。盤内はDC24Vが主流だが、既設設備の更新では現物の電圧を確認しないと動作しない。
  • 可逆形か非可逆形か:正転・逆転を切り替える可逆形は、単体の型式とは別の品番になる。

号数だけを伝えられた相手は、容量の見当は付いても、この3点までは読み取れない。実際、「20号を手配してほしい」という依頼だけを受けて容量の合う品番を用意したところ、現地では可逆形(正逆転用)が必要だったと分かり、結局仕切り直しになった、という手戻りは珍しくない。号数(またはおおよその容量)に加えて、補助接点の要不要・コイル電圧・可逆形か非可逆形かを一言添えるだけで、見積りの往復は大きく減る。既設設備からの更新であれば、現物の型式・銘板の写真を添えるのが一番確実な近道になる。

電磁接触器の選定・見積りについて

電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、号数からの容量照合、現行型式への読み替え、補助接点・コイル電圧を含めた型式の確定までのご相談を見積フォームで受け付けている。現物の型式が分かる場合は、写真を添えてもらえるとより早く回答できる。

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よくある質問

電磁接触器の「号機」とは何を指す言葉ですか?

電磁接触器・電磁開閉器の型式に含まれる末尾の数字(例:S-N10の「10」、S-N20の「20」、SC-N2の「2」)を、現場や商社間の会話・発注で「10号」「20号」のように呼ぶ慣用表現です。この数字はメーカーが定めるフレーム(容量ランク)の区分に対応しますが、「号機」という呼び方自体がJIS等の公的規格で正式に定義された用語であるという裏付けは確認できていません。あくまで型式末尾の数字を指す業界内の略称として理解しておくのが安全です。

S-N10やS-N20は現在も購入できますか?

三菱電機のS-N20は2015年9月に受注を終了し、同年10月に生産を終了しています。同社は後継機種としてS-T21を案内しており、現行のラインナップはS-T形(電磁接触器)・MSO-T形/MS-T形(電磁開閉器)が中心です。「S-N20」という型式で発注する場合は、現物の生産可否と後継型式を必ず確認する必要があります。

型式末尾の数字が近ければ、メーカーが違っても同じ容量と考えてよいですか?

目安としては近い容量帯を指すことが多いものの、数字の付け方(採番ロジック)自体がメーカーで異なります。三菱電機やオムロンの型式は末尾の数字が定格電流のおおよその区分に近い値になる例が見られる一方、富士電機のSC-N/SW-Nシリーズは容量が大きくなる順にN1・N2・N3…と連番を振る方式で、数字そのものが電流値と一致するわけではありません。「20号相当」という言い方はおおまかな照合の出発点にはなりますが、最終選定は必ず各社カタログのAC-3級定格電流・モータ容量表で確認してください。

見積り依頼で「20号のマグネットスイッチ」とだけ伝えても大丈夫ですか?

容量ランクの見当は付きますが、それだけでは発注に必要な情報が揃いません。同じ容量ランクでも、補助接点の数と構成(a接点・b接点の組み合わせ)、コイル電圧(AC100V・AC200V・DC24V等)、可逆形か非可逆形か、で型式は枝分かれします。号数に加えて、この3点を伝えると見積りがスムーズに進みます。

JISに出てくる「号別」は、この「号機」と同じ意味ですか?

異なります。JIS C 8201-4-1では、電磁接触器の性能区分を「級別」(AC-3等の使用カテゴリ、電流容量に関する区分)「号別」(1時間あたりの開閉頻度の区分)「種別」(機械的・電気的耐久性の区分)の3つの軸で規定しています。ここでいう「号別」は容量ではなく開閉頻度を表す公的な区分であり、現場で型式末尾の数字を指して言う「20号」のような容量ランクの話とは別物です。似た言葉のため混同しやすい点に注意してください。

参考文献・出典

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