制御盤の脇に転がっていたセンサーを1個、外す。側面の刻印は「形E3Z-T61」。予備品の棚から代わりを持ってこようとして、箱のラベルに目が止まる。「形E3Z-T66」。透過形、検出距離も同じ15m表示。数字はほとんど重なっているのに、末尾だけが61と66で違う。同じ棚に並んでいたのだから使えるはずだ、とは思う。だが、その「はずだ」を確かめないまま結線していいのか、指が止まる。
オムロンの光電センサー「形E3Z」は、この手の型番違いが現場でもっとも頻繁に持ち込まれるシリーズの一つだ。オムロン公式サイトの「形E3Z/形式/種類」ページは、検出方式・形状・接続方式・検出距離の組み合わせごとにNPN出力とPNP出力の品番を並べた形式一覧表を掲載している。今回はこの一次資料に沿って、E3Zの型番を検出方式・出力形式・接続方式・検出距離という4つの軸で分解し、末尾に現れるK・M3Jといった記号の意味まで一段ずつ剥がしていく。
「E3Z-」の直後の文字が決めているのは検出方式
型番の骨格をまず決めるのは、「E3Z-」の直後に置かれる文字だ。公式の形式一覧表を通して見ると、この位置には次の文字が現れる。
| 記号 | 検出方式 | 型番の頭 |
|---|---|---|
| T | 透過形 | 形E3Z-T□□ |
| R | 回帰反射形(M.S.R.機能付) | 形E3Z-R□□ |
| B | 透明ペットボトルタイプ回帰反射形(M.S.R.機能なし) | 形E3Z-B□□ |
| D | 拡散反射形 | 形E3Z-D□□ |
| LS | 距離設定形 | 形E3Z-LS□□ |
| L | 拡散反射形の細ビームタイプ(形E3Z-L61系)/透明板ガラスタイプ限定反射形(形E3Z-L63系) | 形E3Z-L□□ |
| G | 溝型タイプ透過形 | 形E3Z-G□□ |
透過形(T)は投光器と受光器が対になり、光を遮ったかどうかで検出する方式。回帰反射形(R・B)は投光器と受光器が同じ本体に収まり、対向に置いた反射板で光を跳ね返して検出する方式。拡散反射形(D)は反射板を使わず、検出物そのものに当たって返ってくる光の有無で検出する方式だ。公式の形式一覧表では、透過形が15m・10m・30mの3グレード、回帰反射形(M.S.R.機能付)が4m〔100mm〕、拡散反射形が5〜100mm(広視野)と1mというように、検出方式ごとに検出距離のレンジがまとめて示されている。
ここで目を引くのが、回帰反射形が「R」と「B」の2系列に分かれている点だ。両方とも投受光一体・反射板併用という点は同じだが、公式の形式一覧表はRを「回帰反射形(M.S.R.機能付)」、Bを「透明ペットボトルタイプ回帰反射形(M.S.R機能なし)」とはっきり書き分けている。Bは透明なペットボトルのような、表面での正反射が強すぎて誤検出を起こしやすい対象向けの専用形式で、通常のR系列とは別枠として型番が立てられている。検出方式の記号1文字は、単なる分類ラベルではなく、その先にどんな用途を想定した設計かまで背負っている。
数字の十の位が分けるのは、NPN出力かPNP出力か
検出方式の記号のあとに続く2桁の数字。この十の位が、出力形式という別の軸を運んでいる。公式の形式一覧表を透過形・回帰反射形・拡散反射形・距離設定形と横断して眺めると、次の規則がすべての系列で崩れずに成立している。
- 十の位が「6」→ NPN出力(形E3Z-T61、形E3Z-R61、形E3Z-D61……)
- 十の位が「8」→ PNP出力(形E3Z-T81、形E3Z-R81、形E3Z-D81……)
つまり形E3Z-T61と形E3Z-T81は、検出方式(透過形)も検出距離(15m)も同じで、出力形式だけが違う組み合わせだ。NPN出力とPNP出力の違いは、センサーが検出物を捉えたときに出力線から流れる電流の向きの違いであり、これはPLC(プログラマブルコントローラ)の入力ユニットがシンク入力かソース入力かに対応させる必要がある。日本国内の設備制御ではNPN出力が主流だが、海外規格に合わせた設備ではPNP出力が使われることも珍しくない。既設設備の更新でセンサーを型番指定発注するときは、この十の位を見落とすと、検出方式まで完全に合っていてもPLCに信号が伝わらないという事態になる。
一の位の数字に「5」を足すと、コネクタタイプの品番になる
冒頭で行き詰まった疑問——形E3Z-T61と形E3Z-T66の違い——に戻ろう。答えは接続方式だ。公式の形式一覧表では、透過形15m・NPN出力という条件のもとに、コード引き出しタイプ(本体から標準2mのリード線が直接出ているタイプ)が形E3Z-T61、コネクタタイプ(本体側がM8コネクタになっていて、中継ケーブルを別途接続するタイプ)が形E3Z-T66として、隣り合う行に並んでいる。
一の位の数字を見比べると、1が6に変わっている。5を足せば、コード引き出しタイプの品番からコネクタタイプの品番に変換できるという計算だ。この対応関係は透過形だけの偶然ではない。同じ表の中で、透過形の30m検出品は形E3Z-T62(コード)↔形E3Z-T67(コネクタ)、拡散反射形の1m検出品は形E3Z-D62(コード)↔形E3Z-D67(コネクタ)、距離設定形の狭レンジ品は形E3Z-LS63(コード)↔形E3Z-LS68(コネクタ)というように、系列をまたいで「+5でコネクタタイプになる」という規則が繰り返し現れる。回帰反射形(形E3Z-R61↔R66)、細ビームタイプ反射形(形E3Z-L61↔L66)、透明ペットボトルタイプ(形E3Z-B61↔B66、B62↔B67)も同様だ。
型番の数字は行き当たりばったりに割り振られているわけではなく、接続方式という1つの軸の変化が、常に同じ「+5」という操作に対応するよう設計されている——ここまで確認すると、そう言い切りたくなる。ただし、この規則がE3Zの全系列で例外なく成り立っているかというと、そうではない。溝型タイプ透過形(形E3Z-G)と、次に見る防油タイプ(K)は、コネクタ側の型番を「+5」ではなく別の作り方で表している。
例外その1:溝型タイプ透過形(G)は、+5ではなく「-M3J」でコネクタ側を示す
形E3Z-G(溝型タイプ透過形)の形式一覧表を見ると、1光軸・コード引き出しタイプは形E3Z-G61(NPN)/G81(PNP)、2光軸・コード引き出しタイプは形E3Z-G62(NPN)/G82(PNP)と、ここまでは他系列と同じ数字の並びだ。ところが、コネクタ側の品番は形E3Z-G66やG67にはならず、形E3Z-G61-M3J、形E3Z-G62-M3Jという形で、コード引き出しタイプの品番の末尾に「-M3J」を付け足す形になっている。同じ形式一覧表の中に、接続方式の違いを一の位の数字で表す系列と、末尾の記号で表す系列が両方存在している。型番の規則性は強力な手がかりだが、それだけで最後まで押し通せる保証ではない、ということでもある。
例外その2:防油タイプ(K)は検出距離まで変わり、コネクタ側は「-M3J」で表す
型番の末尾、あるいは数字のすぐあとに「K」が付く品種がある。形E3Z-T61K、形E3Z-R61K、形E3Z-D61Kといった型番だ。公式の形式一覧表はこれらを「防油タイプ」として別表にまとめており、定格/性能表の保護構造の欄には「IEC規格IP67(社内規格防油、ただし、コード部/コネクタ部を除く)」と書かれている。標準品のIP67(水の浸入に対する保護等級)に加えて、油に対する保護性能を社内規格で確認した仕様、という位置づけだ。
ここで見落とせないのが、防油タイプは検出距離まで変わるという点だ。形式一覧表と定格/性能表を突き合わせると、標準の回帰反射形(形E3Z-R61/R66)が4m〔100mm〕(形E39-R1S使用時)なのに対し、防油タイプ(形E3Z-R61K)は3m〔150mm〕(同)となっている。透過形と拡散反射形の防油タイプは検出距離が標準品と同じだが、回帰反射形だけは油対策と引き換えに検出距離が縮む。型番にKの1文字を見つけたら、検出方式が同じだからと標準品の検出距離をそのまま当てはめるのは危うい。
そして防油タイプのコネクタ側は、標準品の「+5」ルールに乗らない。形式一覧表では、コード引き出しタイプの形E3Z-T61Kに対応するコネクタ側の品番は形E3Z-T66Kではなく、形E3Z-T61K-M3Jという表記になっている。呼び方も「コネクタタイプ」ではなく「コネクタ中継タイプ(M8)」だ。溝型タイプ透過形(G)で見た「-M3J」という記号が、ここでも同じ役割で使われている——防油タイプという特殊仕様の中では、接続方式の違いをコード側品番への追記で表す、という設計に変わっている。
検出距離を追加で分ける「A」「2/7」という数字の系列
同じ検出方式・同じ出力形式でも、検出距離違いのバリエーションが型番のうしろに積み重なることがある。透過形の形式一覧表を追うと、コード引き出しタイプ・NPN出力という条件の中だけでも、次の3種類が並んでいる。
- 形E3Z-T61(検出距離15m)
- 形E3Z-T61A(検出距離10m)
- 形E3Z-T62(検出距離30m)
基本形(61)に対して、末尾に「A」を足すと10m検出品になり、一の位を「2」に変えると30m検出品になる。コネクタタイプ側でも同じ対応が保たれていて、形E3Z-T66(15m)に対して形E3Z-T66A(10m)、形E3Z-T67(30m)が並ぶ。拡散反射形でも同様に、形E3Z-D61/D66が検出距離5〜100mm(広視野)、形E3Z-D62/D67が検出距離1mという2つの検出距離グレードを持つ。距離設定形(LS)も同じ発想で、形E3Z-LS61/LS66が検出距離20〜200mm、形E3Z-LS63/LS68が検出距離2〜80mmという2つのレンジ設定品を型番で分けている。
なぜ「A」という文字を足す系列と、一の位の数字自体を変える系列の両方が存在するのか、その設計判断の理由までは今回参照した資料に書かれていない。ただ、型番のどこに変化が現れているかを見れば、それが接続方式(一の位+5)の変化なのか、検出距離グレード(末尾のA、または一の位の1↔2)の変化なのかは、公式の形式一覧表と照らし合わせれば判別できる。
現行表から消えた記号——「-G0」と「-ECON」は2012年3月末で生産終了
古い図面や現物のラベルには、現行の形式一覧表に載っていない記号が残っていることがある。代表が末尾の「-G0」と「-ECON」だ。
オムロンが2011年8月1日付で出した「生産終了予定商品のご案内」(文書2011240)は、形E3Zシリーズの特殊仕様として「形E3Z-□□□-ECON(-C)」「形E3Z-□□□-G0」「形E3Z-□□□-M5J 0.3M」などをまとめて挙げ、2012年3月末での生産終了を予告している。個別の表を見ると、形E3Z-T62-G0 2Mと形E3Z-T67-G0は「投光停止機能付き」、形E3Z-T61-ECON 2Mと形E3Z-T61-ECON-C 2Mは「e-conコネクタ中継タイプ」と説明されており、-G0が投光停止機能、-ECONがe-CONコネクタでの中継を示す記号だったことがわかる。オムロンの生産終了品データベースでも、形E3Z-T62-G0・形E3Z-T82-G0・形E3Z-T61-ECON/-ECON-Cはいずれも2012年3月生産終了と表示される。
推奨代替品として案内されているのは、いずれも標準品(例:形E3Z-T62-G0 2M→形E3Z-T62 2M、形E3Z-T61-ECON 2M→形E3Z-T61 2M)だ。ただし案内の注記が明示するとおり、代替品では追加機能がなくなる——投光停止機能は引き継がれず、e-CON接続についても「e-conコネクタは別途、e-conコネクタ(圧接)を購入して加工してください」とされている。現物のラベルに-G0や-ECONを見つけたら、記号を読み解いたうえで、同じ機能のまま置き換えられる品番はもう存在しないという前提で代替を検討する必要がある。
型番の外側に置かれる要素——コード長とM12コネクタ中継
ここまでの記号は、ハイフンでつながる形でE3Zの型番本体を構成してきた。だが、型番の外側、スペースを挟んだ末尾に追記する形で指定する要素もある。
コード引き出しタイプの標準品は、定格/性能表の接続方式欄に「コード引き出しタイプ(標準コード長2m/500mm)」とあり、2mのほかに500mm(0.5m)のコード長が標準で用意されている。形式一覧表の品番が「形E3Z-T61 2M」と書かれているとおり、コード長はハイフンではなくスペースを挟んで型番の外側に添える指定事項だ(0.5m品なら「形E3Z-T61 0.5M」)。MYリレーのコイル電圧表記が型番の外側に置かれていたのと同じ扱いになる。なお防油タイプの接続方式欄は「コード引き出しタイプ(標準コード長2m)」で、500mmの設定はない。
さらに、コード引き出しタイプの多くの機種にはM12コネクタ中継タイプが追加設定されており、こちらは形式一覧表の脚注が「形式の末尾に-M1J 0.3Mをつけて指定ください(例. 形E3Z-T61-M1J 0.3M)」と案内している。M12スマートクリックコネクタ中継タイプは「-M1TJ 0.3M」という別の記号だ。M8コネクタタイプ(数字を+5する系列)、M8コネクタ中継タイプ(-M3J)、M12標準コネクタ中継タイプ(-M1J 0.3M)、M12スマートクリックコネクタ中継タイプ(-M1TJ 0.3M)——同じ「コネクタで中継する」という発想でも、コネクタの規格や勘合方式によって、型番上の表し方が枝分かれしている。
型番だけでは決まらないもの
ここまでの規則を積み上げれば、検出方式・出力形式・接続方式・検出距離という4つの軸で、E3Zの型番はかなりの部分まで読み解けるようになる。ただし、公式の形式一覧表が定める型式はここで終わらない。回帰反射形・細ビームタイプ・透明ペットボトルタイプで必要になる反射板(形E39-R1、形E39-R1S等)は本体とは別売の品番として存在し、しかも検出距離によって適合する反射板の型式が変わる。透過形の狭ビーム化に使うスリット(形E39-S65A〜F)や、取りつけ金具(形E39-L153等)も同様に、本体の型番だけでは自動的には決まらない付属品として一覧表に並んでいる。
そして、記号の意味が読み解けることと、その組み合わせが実在する品番であることは別の話だ。溝型タイプ(G)や防油タイプ(K)で見たとおり、E3Zの型式体系は「一の位に5を足す」という一つの規則だけでは説明しきれない例外を含んでいる。型番の桁を分解して仮説を立てたら、最後はメーカーの形式一覧表か見積り時の確認で、その組み合わせが実在するかどうかを裏付ける必要がある。
オムロン製E3Zの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物に残った形E3Z-T61・形E3Z-D81・形E3Z-R66Kといった型番の分解から、検出方式・出力形式・検出距離の確認、反射板やスリットなど付属品との組み合わせ照合、後継品の照合までのご相談を見積フォームで受け付けている。型番の一部が判読できない場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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