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変圧器のタップ切替による電圧調整の仕組み|NVタップの使い方と切替を誤った場合の影響を一次情報で整理

・ 読了目安: 10分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

テナントから「エアコンの効きがおかしい」「コピー機の調子が悪い」と連絡が入る。現場に行って計ってみると、確かにコンセントの電圧が普段より高い。原因を探ってキュービクルを開け、変圧器の銘板をのぞき込む。そこに並んでいるのは「タップ」と刻印された、見覚えのない端子の列だ。

配線図には載っていても、意識して触ったことはない部品かもしれない。電圧を上げたり下げたりする装置が、変圧器の中にひっそり組み込まれている――この事実に、多くの現場担当者は工事の当日に初めて向き合うことになる。

なぜ受電電圧は「ちょうど良い」に収まらないのか

そもそも、なぜ電圧を調整する仕組みがわざわざ必要なのか。電力会社が送ってくる電気は、決められた値できっちり届いているはずではないのか。

答えは半分正しく、半分間違っている。電気事業法施行規則第38条は、電気を供給する場所において標準電圧100Vなら101V±6V(95〜107V)、標準電圧200Vなら202V±20V(182〜222V)を維持するよう電力会社に義務づけている。つまり、需要家の受電地点ではこの範囲に収める約束になっている。

問題はその先だ。三菱電機FAのFAQが説明する通り、タップ切換は受電電圧の変動に対応するために行われる。日本の配電系統は公称6600Vで送り出されているが、変電所からの距離や周辺の負荷状況によって、実際に受電する高圧側の電圧は現場ごとに微妙に異なる。受電地点で基準を満たしていても、そこから変圧器・幹線・分岐回路を経て末端のコンセントに届くまでには、配線の長さと負荷電流に応じた電圧降下が積み重なる。電力会社の義務が及ぶのは受電地点までであり、そこから先、建物の中でどう電圧を整えるかは需要家側の設計と運用にゆだねられている。

タップは、この「受電地点から先」を調整するために変圧器に組み込まれた仕組みだ。

タップとは何か――巻線に開けたもう一つの入り口

変圧器は、一次巻線と二次巻線という二組のコイルが鉄心を介して電磁的に結びついた機器で、一次電圧と二次電圧の比は、両者の巻数の比(巻数比)で決まる。

タップは、この一次巻線の途中から引き出した複数の接続点だ。日本電気技術者協会の解説講座「変圧器の銘板に学ぶ」は、タップを「変圧比を変える目的で巻線に設けられた線路端子」と定義し、そこに対応するタップ電圧を「無負荷時に発生または印加される指定電圧」としている。巻線のどこにタップを設けるかによって、実際に使われる一次側の有効巻数が段階的に変わる、という仕組みだ。使うタップを変えれば巻数比が変わり、巻数比が変われば二次電圧も変わる――でんきメモの解説が示す計算例では、6600Vタップ・二次定格210Vの変圧器で変圧比は約31.4になる。ここでタップをより低い電圧(たとえば6300V)に切り替えると変圧比が下がり、同じ一次電圧でも二次側に現れる電圧は上がる。

実務でよく使われる標準的なタップ電圧は、公称6600Vを基準に6900V・6750V・6600V・6450V・6300Vという5段階だ。でんけんマッスルの解説によれば、これは±4.5%・±2.3%という刻みで、受電電圧がやや高めの現場では低いタップ番号を、やや低めの現場では高いタップ番号を選ぶことで、二次側の電圧を狙った範囲に近づけていく。

銘板の「F」と「R」――全部のタップが定格容量で使えるとは限らない

ここで、銘板を読むときに見落としやすい区別がある。同じ解説講座によれば、タップ電圧は全容量タップ電圧と低減容量タップ電圧の2種類に分かれる。全容量タップ電圧は、巻線の温度上昇限度を超えることなく定格容量のまま使えるタップで、銘板には記号「F」が付く。そのうち定格電圧を印加する基準タップには、さらに記号「R」が付く。

問題は、記号の付かない低減容量タップ電圧のほうだ。こちらは、温度上昇限度を超えないようにするには定格容量を低減して使わなければならないタップとして定義されている。同講座が挙げる三相100kVA変圧器の銘板例では、一次電圧はF6,300Vまでが全容量タップ電圧で、その下の6,150Vは低減容量タップ電圧にあたる。つまり6,150Vへ切り替えたなら、その変圧器はもう100kVAの機器としては扱えず、使える容量を制限しなければならない。

「電圧が合わないから、とりあえず一段下げておこう」という判断が、意図せず変圧器の使用可能容量まで削っていることがある。タップを動かす前に、銘板のタップ電圧表でF記号の範囲がどこまでかを確認しておきたい。

無電圧タップ切換器(NVタップ)――「無電圧」でなければならない理由

一般的な工場やビルの変圧器に搭載されているのが、無電圧タップ切換器だ。現場ではNVタップとも呼ばれる。

名前の通り、この装置は変圧器を無電圧・無励磁の状態にしてからでなければ操作できない前提で作られている。ダイヘンの製品Q&Aが案内する操作手順は、ハンドルを引き上げ、希望するタップ位置番号までハンドルを回し、タップ位置指示穴にハンドルを差し込む、という三段階だ。単純な機械操作に見えるが、この単純さは「電流が流れていない」ことを条件に成り立っている単純さである。

通電中に切替を試みるとどうなるか。タップを一段階移すという操作は、機構上、切替の途中で隣り合う複数のタップ間を一瞬つなぐ動作を伴う。電流が流れている状態でこれをやれば、その瞬間にアークが発生し、接点を焼損させる。油入変圧器であれば、そのアークが絶縁油そのものを汚損し、内部の絶縁性能を落とす。無電圧タップ切換器という名称は、単なる分類名ではなく、通電中の操作を想定していないという設計上の制約そのものを表している。

だからこそ、実際の切替作業は必ず停電から始まる。ダイヘンの別のQ&Aが示す手順では、無電圧を確認したうえでタンク上部のカバーやハンドホールを開き、タップナットを緩め、銘板の接続表に従って切換片を目的のタップ位置へ移し、ナットを締め直してカバーを閉じる。工程自体は数十分で終わる軽作業だが、無電圧を確認するという最初の一手を欠かせば、その先の全工程が危険な作業に変わる。

タップ切替を誤ると何が起きるか

タップの向きを一段間違える、あるいは長年放置して現状に合わなくなる。どちらのケースでも、結果は「過電圧」と「電圧不足」のどちらかに寄る。

過電圧側の被害は、目に見えにくいところから進む。Panasonicの解説によれば、白熱電球は定格電圧より5%高い電圧をかけ続けると寿命が定格の約50%に、10%高いと約30%にまで縮む。LED照明の場合も、内蔵された電子回路(ドライバ)が過電圧や電流変動に弱く、想定を超える電圧が続けば短期間での故障につながる。冒頭のテナントからの苦情も、多くはこの過電圧側で起きる。照明が早く切れる、精密機器の保護回路が働いて止まる、といった形で表面化する。

電圧不足側の被害は、もう少し静かに進行する。電験教室の解説が指摘する通り、電圧が低い状態で同じ負荷を動かそうとすると、その分だけ電流が増える。電流が増えれば変圧器自体の温度が上昇し、内部の絶縁油・絶縁紙の劣化を早める。モーター類は始動しにくくなったり、始動時の電流がさらに膨らんだりし、制御機器では電圧不足による誤動作や停止が起きることもある。過電圧のように「壊れた」と即座にわかる形ではなく、じわじわと寿命を縮めながら進むのが、電圧不足の厄介なところだ。

負荷時タップ切換装置(OLTC)との違い

ここまで見てきたNVタップは、停電させて操作する前提の装置だった。一方、電力会社の配電用変電所などに置かれる大型の変圧器では、通電したまま電圧を調整できる負荷時タップ切換装置(OLTC。国内ではLRTとも呼ばれる)が使われる。

電気学会が運営するパワーアカデミーの用語集は、これを「送電線あるいは配電線の電圧を調整するために、電圧の変動に応じて変圧器の負荷をかけた状態で、巻線のタップを切り換える装置」と定義している。厳密には、切換器そのものが負荷時タップ切換器、その駆動装置や付属装置まで含めたものが負荷時タップ切換装置、そして変圧器と組み合わせたものが負荷時タップ切換変圧器という呼び分けになる。同用語集はまた、切換の瞬間にタップ間に流れる循環電流を制限する方式として抵抗式とリアクトル式があり、現在は抵抗式が多く用いられていると説明している。

構造面はどうか。日立製作所の技術誌『日立評論』が抵抗式負荷時タップ切換器を解説した論文は、負荷時タップ切換装置を「切換開閉器、タップ選択器を一体にして変圧器タンク内に収納する構造」と説明している。どのタップに移るかを選ぶ部分(タップ選択器)と、実際に負荷電流を開閉する部分(切換開閉器)が役割分担しており、切替の瞬間にタップ間へ流れる循環電流は限流抵抗器で制限する。タップを移す瞬間も電流の流れを絶やさないよう、段階的に回路を渡していく仕組みだ。

なお、この装置には電気学会 電気規格調査会の標準規格JEC-2220「負荷時タップ切換装置」が定められており、2007年に制定された版が2023年7月に改正されている。変圧器本体とは別に専用の規格が置かれるほど、独立した一つの機器として扱われている装置だということでもある。

なぜキュービクル内の変圧器はOLTCを使わないのか。答えは単純で、停電を許容できるかどうかの差だ。工場やビルの受変電設備であれば、切替のたびに数十分の停電を計画すればよい。だが変電所の変圧器を止めれば、その下流にぶら下がる無数の需要家すべてが停電する。止められない設備だからこそ、構造が複雑で高価なOLTCを載せる価値がある。逆に言えば、一般の需要家設備でNVタップを選ぶのは、コストを抑えつつ、停電さえ計画できれば十分事足りるという実務上の割り切りでもある。

切替作業の実務上の注意点

NVタップの切替そのものは、有資格者が行えば難しい作業ではない。ただし、いくつかの落とし穴がある。

まず、無電圧の確認は目視や思い込みではなく、テスターや検電器で実際に電位差がないことを確かめてから行う。次に、タンク内部での作業になるため、ナットやワッシャーといった小部品を油入変圧器の内部に落とさないよう、落下防止の対策をしたうえで工具を選ぶ。ダイヘンのQ&Aでも、汗や水滴、金属片が内部に入り込まないよう注意することが案内されている。

そして見落とされがちなのが、切替後の記録だ。今どのタップ位置に設定してあるかは、銘板や保守記録に残しておかなければ、次に電圧トラブルが起きたときに「そもそも今どの設定か」から確認し直す羽目になる。設置工事の担当者と、その後の保守を担う電気管理技術者が別人になるケースは珍しくない。設定変更の日付・理由・変更前後のタップ位置を記録に残しておくことが、将来の自分たちを助ける。

そしてもう一つ、電験教室の解説が示すように、設置時に最適だったタップ設定は、負荷の増減や周辺環境の変化によって、数年後には最適でなくなっていることがある。タップは「工事のときに一度合わせたら触らない部品」ではなく、設備更新や電圧クレームのたびに現状を確認し、必要なら調整し直す対象だと考えたほうが実態に近い。

変圧器・タップまわりの部材調達について

「既設変圧器のタップ設定を見直したいが、現物のタップ電圧一覧を確認してほしい」「変圧器の更新に合わせて、無電圧タップ切換器付きと負荷時タップ切換器付きのどちらを選ぶべきか相談したい」といったご相談を、電気管理技術者・設備工事ご担当者様からよくいただきます。

電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、油入変圧器・モールド変圧器を含む受変電設備の関連資材のお取り寄せ・お見積りに対応している。既設設備のタップ電圧・容量・接続方式を確認したうえで、更新用変圧器の選定からまとめての調達までご相談いただける。

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よくある質問

タップを切り替えるだけで、本当に二次側の電圧は変わるのですか?

変わります。タップは変圧器の巻線の途中に設けた複数の接続点で、どのタップを使うかによって一次側の有効巻数が変わり、一次巻数と二次巻数の比(巻数比)が変化します。二次電圧は一次電圧をこの巻数比で割った値になるため、巻数比を下げれば二次電圧は上がり、上げれば下がります。実際の計算例では、変圧比が6600V/210V=約31.4という形で表され、タップを1段動かすごとに二次側で数V単位の変化が生じます。

無電圧タップ切換器(NVタップ)は、なぜ通電中に操作してはいけないのですか?

通電中にタップを切り替えると、切換の途中で複数のタップ間を短時間ブリッジする瞬間が生じ、そこにアークが発生して接点を損傷させたり、油入変圧器では絶縁油を汚損させたりする恐れがあるためです。無電圧タップ切換器はもともと、変圧器を無電圧・無励磁の状態にしてから手動で操作することを前提に設計されており、通電したまま操作することは想定されていません。切替の際は必ず変圧器への電源を遮断し、無電圧であることを確認したうえで作業します。

タップを一度設定したら、その後は触らなくていいのですか?

そうとは限りません。設置直後に適切だったタップ設定が、その後の負荷増加や電力会社側の供給電圧の変動によって最適でなくなることがあります。電験教室の解説にもある通り、設置時より負荷が増えると電圧は想定より低く出やすくなり、逆にテナントの入れ替わりや周辺の需要変化で電圧が高めに振れることもあります。タップは一度設定して終わりの部品ではなく、設備更新や電圧トラブルの際に見直しの対象になり得る調整箇所だと考えたほうが実態に近いです。

無電圧タップ切換器と負荷時タップ切換装置(OLTC)は、どちらを選べばよいのですか?

一般的な工場やビルの受変電設備(キュービクル内の変圧器)では、無電圧タップ切換器付きの変圧器が広く使われています。停電作業を年に数回行う程度であれば、切替のたびに数分〜数十分停電させる運用で十分対応できるためです。一方、送電線・配電線の電圧を通電したまま調整する用途にはOLTCが用いられます。OLTCはタップ選択器・切換開閉器・限流抵抗器といった専用機構を備える分、構造が複雑で高価になるため、停電を許容できるかどうかが選定の分かれ目になります。

タップ切替の作業は自分たちで行ってもよいのですか?

設備の電気工作物としての区分や契約している電気管理者の体制によりますが、高圧受電設備の停電作業を伴うため、電気主任技術者や有資格者の関与が前提になる作業です。切替そのものはスパナやドライバーで端子を移動させるだけの単純な作業に見えますが、無電圧の確認、ナットやワッシャーの部品の脱落防止、切替後の記録管理まで含めて一連の保安業務です。自己判断で作業を進めず、必ず電気管理技術者や保安協会に相談したうえで実施してください。

参考文献・出典

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