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高圧受電設備保護継電器保護協調

保護継電器(OCR・OCGR)とは何か|過電流継電器と地絡過電流継電器の役割の違い、整定値という考え方

・ 読了目安: 10分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

この記事の結論

保護継電器は、CTやZCTからの電流信号を整定値と比べて異常を判定し、遮断器に遮断指令を出す装置である。OCR(過電流継電器)は短絡と過負荷を、OCGR(地絡過電流継電器、GR)はZCTで捉えた零相電流から地絡を検出する。日本電気技術者協会の解説では、整定の目安はOCR限時要素が契約電力の負荷電流の120〜150%、瞬時要素が1,000〜1,500%、GRが一般に200mAで、電力会社の配電用変電所の保護装置との協調を確認して決める。

キュービクルの年次点検報告書を開いた設備担当者が、指を止める。並んだ項目の中に「OCR整定値:150%」「GR整定値:200mA」という行がある。数字と単位はわかる。だが、それが具体的に何を意味しているのか、この設備の何を守っている数字なのか、説明できる自信がない。

継電器という言葉自体は知っている。事故があったときに電気を止めてくれる機器、という程度の理解だ。だとすれば「整定値」とは、いったい何を決めている数値なのか。継電器そのものの性能表なのか、それとも何か別のものなのか。

保護継電器とは何か——CTとZCTの信号を受け取る「判断装置」

保護継電器は、電流を直接遮断する機器ではない。高圧回路に流れる電流をCT(計器用変流器)やZCT(零相変流器)で電気的に小さな信号に変換し、その信号を受け取って「これは正常か、異常か」を判定し、異常だと判断した場合にだけ遮断器へトリップ指令を送る、いわば判断装置だ。

実際に電流を遮断するのは遮断器の役目であり、継電器はあくまで検出と指令に専念する。日本電気技術者協会の解説でも、系統の区分点ごとに過電流継電器(OCR)と遮断器(CB)を組で設置し、協調の確認ではOCRの動作時間に遮断器の遮断時間を足した「合計遮断時間」で考えている。CT・ZCTという「センサー」、継電器という「判断部」、遮断器という「実行部」の三段構成で、初めて保護という機能が成立する。継電器単体を見て「これが設備を守っている」と考えるのは半分正しく、半分は見落としだ。判断の中身、つまり何をもって異常とするかという基準は、継電器の外側から与えられている。

OCR(過電流継電器)の役割——短絡事故を検出する

OCR(Over Current Relay、過電流継電器)は、電源側から事故点に向かって流れ込む異常な大電流を検出する継電器だ。高圧ケーブルの絶縁が破壊されて相間や相地間が直接つながる短絡事故、あるいは負荷設備の異常で流れ続ける過負荷電流を、CTが捉えた電流値をもとに判定する。

OCRには性質の異なる二つの要素がある。日本電気技術者協会(JEEA)の解説によれば、過電流の大きさに応じて要素を使い分け、短絡領域では瞬時要素を、過負荷領域では限時要素を動作させることで、配電用変電所のOCRと協調をとる。整定の目安として同解説が挙げているのは、瞬時要素は契約電力における負荷電流の1,000〜1,500%(変圧器の励磁突入電流や電動機の始動電流で動作しない値を選ぶ)、限時要素は通常の負荷変動で動作しないよう契約電力の負荷電流に対して120〜150%、という水準だ。整定はこの計算値をもとにCT二次側の「タップ値」として設定し、あわせて「レバー(またはダイヤル)」で動作時間の特性を選ぶ。同解説は、レバー整定値を、変圧器二次側の過負荷後備保護として変圧器一次側の限流ヒューズ(PF)と協調するように選ぶ、という考え方を示している。同じOCRという一つの機器の中に、じわじわ来る異常向けと、いきなり来る異常向けの、二段構えの判定基準が仕込まれているわけだ。

OCGR(地絡過電流継電器)の役割——ZCTと連動し地絡事故を検出する

短絡がわかったところで、次に気になるのは別の事故の形だ。電線の被覆が劣化して、相の電流の一部が大地に漏れ出す——地絡である。これを検出するのがOCGR(Over Current Ground Relay、地絡過電流継電器)で、受電設備の文脈では地絡継電器(GR)とも呼ばれる。日本電気技術者協会の解説も、6kV配電系統の地絡検出では「地絡過電流継電器(OCGR)」、高圧受電設備の保護では「地絡継電器(GR)」という呼び方で、同じ働きの継電器を説明している。

OCGRが受け取る信号はOCRとは別のセンサーから来る。ZCT(零相変流器)は、同一回路の全相導体をまとめて貫通させる形で設置され、常時や短絡故障時には各相の電流のベクトル和がゼロになり、二次側に電流は流れない。JEEAの解説の通り、地絡が発生すると電流の一部が大地へ漏れて各相の和がゼロでなくなり、その差分によってZCTの二次側に電流が流れる。OCGRはこの微小な漏れ電流の信号を受け取って地絡の有無を判定する。

なお、地絡電流の大きさだけを見るOCGR(GR)には弱点がある。JEEAの解説によれば、構内の対地静電容量(構内の高圧ケーブルが長いほど大きくなる)がある程度大きいと、電源側で発生した地絡事故の電流の一部が大地を経由して構内の静電容量へ流入し、母線を通ってZCTを通過して外部へ流出する。これがGRの整定感度を超えると、自分の構内では事故が起きていないのにGRが動作してしまう。いわゆる「もらい事故(もらい動作)」だ。

これを避けるため、零相電流をZCTで検出するのに加えて、零相電圧を接地形コンデンサ(ZPD)で検出し、両者の位相を比較して零相電流の向きを判別するDGR(地絡方向継電器)が使われる。同解説は、不必要動作を確実に防止するには、構内の充電電流がGR感度電流の1/2以上になる場合にDGR方式を採用するのがよいとしている。GRからDGRへの切り替えを判断する目安は、設備の規模や年数ではなく、この充電電流の大きさだという点を押さえておきたい。OCR・OCGR・DGRは、同じ「保護継電器」という括りの中で、見ている物理量も守っている事故の種類も異なる、別の役割を持った機器だ。

整定値とは何か——継電器に教え込む「異常の基準」

ここまでの説明で、点検報告書の「OCR整定値150%」「GR整定値200mA」という数字の意味は、もう半分見えている。整定値とは、継電器が「これ以上の電流が、これだけの時間流れたら異常とみなす」と判断するための、電流値と時間の基準そのものだ。

継電器という機械は、それ自体では「正常」と「異常」を知らない。同じ回路構成、同じ製品を使っていても、整定値の設定次第で、ある工場では平時の負荷変動にすぎない電流を「異常」と判定し、別の工場では実際の短絡電流すら「正常範囲内」として見過ごすことが起こり得る。その継電器が実際に何を守れるかは、整定値という設定にかかっている。「継電器を設置すればあとは自動で守ってくれる」という理解が半分しか正しくないのは、この一点による。

なぜ整定値を電力会社と協議するのか——上位系統との保護協調

では、自社の設備なのだから、自社の判断だけで整定値を決めてよいかというと、そうはいかない。

三菱電機FAのFAQは、整定値の決定には電力会社の配電変電所から需要家までの送電線の過電流要素の特性、受電点以下の過電流検出機器(過電流継電器・ヒューズ・MCCB)、高圧変圧器の過負荷特性、変圧器投入時の励磁突入電流まで、すべてを検討する必要があり、高圧受電設備で適用する1つの値はないと述べている。こうした検討は保安協会や電気管理技術者協会が行うのが一般的だ、とも書いている。

理由は単純だ。需要家の構内で短絡事故が起きたとき、需要家のOCRよりも先に電力会社側のOCRが動作してしまうと、事故と無関係な周辺一帯まで停電させる波及事故になる。日本電気技術者協会の解説は、各区分点のOCRの動作時間を負荷側から電源側に向かって順次長く整定し、事故点を最小範囲で除去する方式を「段階時限による選択遮断方式」と呼んでいる。同解説の計算例でも、需要家のOCRと遮断器の合計遮断時間が、配電用変電所OCRの短絡領域における慣性動作時間0.18sより早いことをもって、協調がとれていると確認している。

つまり整定値は、自社の設備をどう守るかだけの問題ではなく、電力系統全体の中で自社の設備がどの順番で切り離されるべきかという、階層構造の一部を担っている。だからこそ、整定値の決定・変更では電力会社側の保護装置の条件を確認する必要があり、雇用・能力開発機構の資料も、構内充電電流が大きくGRの整定値を600mA程度まで上げる場合は電力会社との協議が必要としている。

整定値が不適切だとどうなるか——動かなさすぎる、動きすぎる

整定値のズレは、二つの正反対の方向に問題を生む。

一つは、整定値が実情に対して敏感すぎる、あるいは前提条件を誤ったことによる不必要動作だ。雇用・能力開発機構の資料は、地絡継電器の不必要動作の要因を、ケーブル遮へい層の接地施工不良やZCT二次配線でのノイズ混入といった回路条件の問題と、継電器自体の特性劣化とに大別している。同資料が示す構内充電電流に応じた整定値の目安——充電電流50mA以下なら200mA程度、50〜100mAなら400mA程度、100mAを超えるなら600mA程度——は、この不必要動作を避けるための現実的な調整幅でもある。事故が起きていないのに継電器が動作すれば、その分だけ不要な停電を発生させることになる。

もう一つは、その逆で、整定値が実情に対して緩すぎる、あるいは上位系統との協調が崩れていることによる不動作・遅延動作だ。本来なら遮断されるべき短絡電流や地絡電流が流れているのに、整定値の設定次第でその判定基準に届かなければ、継電器は「正常」と判断したまま動かない。あるいは動作はしても、電力会社側の保護装置より遅れて動作すれば、需要家の構内事故が周辺の系統を巻き込む波及事故に発展しかねない。どちらの方向にせよ、原因は継電器という機械の故障ではなく、整定値という設定が現場の実情と噛み合っていないことにある場合が多い。

定期点検で整定値を確認する理由

ここまでの話を踏まえると、定期点検で行われる保護継電器の動作試験の意味も変わって見えてくる。単に「継電器が壊れていないか」を確かめる作業ではない。今まさに設定されている整定値が、現在の設備構成・負荷状況・上位系統の保護協調の条件に照らして、なお適切かどうかを確かめる作業だ。

変圧器やコンデンサの増設・更新、負荷設備の入れ替え、ケーブルルートの変更があれば、以前に決めた整定値の前提条件そのものが変わる。地絡継電器の不必要動作の要因に継電器自体の特性劣化が挙げられている以上、整定値は一度決めて終わりにできる数値ではない。設備改修のたびに、整定値が今の設備に合っているかを見直す機会として、定期点検を位置づける必要がある。

保護継電器まわりの部材調達について

整定値の検討・電力会社との協議自体は、電気管理技術者や保安協会が担う領域だ。保護継電器やCT・ZCTなど関連資材のお見積りは、電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)の見積フォームからご依頼いただける。既設品の銘板の型式と、決まっている整定条件を添えてほしい。

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よくある質問

保護継電器を設置しておけば、あとは自動で事故から守ってくれるのですか?

いいえ。保護継電器はCT・ZCTから受け取った電流の大きさを、あらかじめ設定された整定値と比較して初めて『異常』と判断します。整定値が現場の実情に合っていなければ、機器自体は正常でも、動くべき時に動かない、あるいは動く必要のない時に動いてしまうという形で保護が成立しません。継電器は据え付けて終わりの機器ではなく、整定値という設定によって性能が左右される機器です。

OCRとOCGRは、それぞれ何を検出しているのですか?

OCR(過電流継電器)は主に短絡事故を検出します。電源側から事故点に向かって流れ込む異常な大電流をCTで捉え、瞬時要素で短絡を、限時要素で過負荷を判定します。OCGR(過電流地絡継電器)は主に地絡事故を検出します。ZCT(零相変流器)が捉える漏れ電流をもとに、大地に電流が漏れ出す異常を判定します。同じ『異常検出』でも、見ている物理量と事故の種類が異なります。

整定値はなぜ自社だけで決められないのですか?

受電設備のOCRは、電力会社の配電用変電所のOCRよりも速く動作しなければ、需要家の構内事故が周辺一帯を巻き込む波及事故に発展しかねません。三菱電機FAのFAQが示す通り、整定値の決定には電力会社の送電線特性・変圧器の過負荷特性・励磁突入電流などを総合的に検討する必要があり、すべての設備に共通する標準値は存在しません。こうした検討は保安協会や電気管理技術者協会が行うのが一般的とされ、上位系統との時間差を確保する保護協調の考え方から、電力会社の保護装置の条件を確認し、必要に応じて協議して決めます。

整定値が不適切だと、具体的にどんな問題が起きますか?

大きく二方向の問題が起こり得ます。一つは整定値が敏感すぎる、あるいは条件を誤ったことによる不必要動作で、事故が起きていないのに継電器が動作し不要な停電を招きます。もう一つは整定値が実情に対して緩すぎる、あるいは上位系統との協調が崩れていることによる不動作・遅延動作で、実際の事故時に保護が間に合わず被害が拡大したり、波及事故につながったりします。どちらも『継電器が壊れている』のではなく『設定が現場に合っていない』ことが原因になり得ます。

整定値は一度決めたら見直さなくてよいのですか?

見直しが必要です。変圧器やコンデンサの増設・更新、負荷設備の変更、ケーブルの延長などがあれば、それ以前に決めた整定値の前提条件が変わります。加えて、地絡継電器の不必要動作の要因として継電器自体の特性劣化も挙げられており、定期点検で行われる保護継電器の動作試験は、単なる機器の生存確認ではなく、整定値どおりに動作するかを確認する場でもあります。設備改修時には整定値の見直しを必ず検討する必要があります。

参考文献・出典

  • 高圧自家用受電設備の保護について(公益社団法人 日本電気技術者協会) (GRの感度電流は一般に200mAで整定、もらい動作の仕組み、充電電流がGR感度電流の1/2以上ならDGR方式の採用がよいこと、ZPDによる零相電圧検出と位相比較、段階時限による選択遮断方式、OCRの瞬時要素(契約電力の負荷電流の1,000〜1,500%)と限時要素(120〜150%)、タップ値とレバー(ダイヤル)整定値をPFと協調させる考え方、OCRと遮断器の合計遮断時間が配電用変電所OCRの慣性動作時間0.18sより早いことによる協調の確認) 確認日: 2026-10-13
  • 6kV配電系統の地絡検出と保護(公益社団法人 日本電気技術者協会) (地絡故障箇所の検出遮断に地絡過電流継電器(OCGR)が使われること、零相変流器(ZCT)は常時・短絡時には各相電流のベクトル和がゼロで二次側に電流が流れない原理、受電端にZCTを利用した地絡過電流継電器を設置すること) 確認日: 2026-10-13
  • 整定値設定について(三菱電機FA よくある質問 FAQ 13120) (整定値の決定には配電変電所からの送電線の過電流要素の特性、受電点以下の過電流検出機器(過電流継電器・ヒューズ・MCCB)、高圧トランスの過負荷特性、励磁突入電流を全て検討する必要があり、高圧受電設備で適用する1つの値はないこと、検討は保安協会や電気管理技術者協会が行うのが一般的であること) 確認日: 2026-10-13
  • 高圧地絡継電器の不必要動作防止対策について(雇用・能力開発機構 職業能力開発総合大学校 基盤整備センター) (GRの不必要動作の要因が回路条件とGRの特性劣化に大別されること、ケーブル遮へい層接地線の施工やZCT二次配線のノイズ対策、構内充電電流に応じた整定値の目安(50mA以下で200mA、50〜100mAで400mA程度、100mA超で600mA程度、その場合は電力会社と協議)(1995年の資料)) 確認日: 2026-10-13

確認・変更の記録

出典照合日: (AIによる照合補助)

出典4件に到達(三菱電機FAのFAQはcurlが405のためブラウザで本文を確認)。日本電気技術者協会05204でGR感度電流200mA、充電電流がGR感度電流の1/2以上でDGR、OCR瞬時要素1,000〜1,500%・限時要素120〜150%、レバー整定値とPFの協調、段階時限による選択遮断、配電用変電所OCRの慣性動作時間0.18s、同08201でOCGRの呼称とZCTの原理(常時・短絡時はベクトル和ゼロ)、三菱電機FAQ 13120で整定値に共通の1つの値はないこと・検討は保安協会や電気管理技術者協会が一般的、雇用・能力開発機構資料で不必要動作要因(回路条件と特性劣化)と充電電流別の整定目安200/400/600mA(600mAなら電力会社と協議)を確認。是正:第三者の解説サイト3件(chief-engineer.info、けんちくせつび.tech、電験超入門部)を外し、役割分担・選択遮断・OCGRとGRの呼称を日本電気技術者協会の記述に差し替え、『継電器の性能は製品ごとにほぼ一定』を削除、『経年劣化による特性変化も報告』を出典どおり『不必要動作の要因として特性劣化が挙げられている』に修正、自社の取り寄せ・手配対応の記述を見積フォーム案内に変更。雇用・能力開発機構の資料は1995年のもの

個別設備の適合判定・技術者による承認を示すものではありません。

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