候補問題No.3の配線図には「TS」と書かれた器具がある。タイムスイッチだ。時刻で照明を入り切りする、街路灯や看板照明でおなじみのあれである。
ところが公表資料の注記4には、こうある——「器具においては,端子台で代用する場合がある」。つまり試験当日、材料箱を開けても、時計の付いたタイムスイッチは入っていないかもしれない。代わりに置かれているのは、記号や番号だけが振られた、のっぺりした端子台だ。
その端子台のどの端子が電源で、どの端子が負荷で、どの端子が内部の時計回路につながっているのか。公表された配線図には、どこにも書かれていない。
見当がつかなくて当然だ。しかも試験センターは「その他,詳細についてのご質問には一切応じられません」とまで書いている。それでも、この情報は必ずどこかで手に入る。読み終えるころには、それがどこかが分かる。
配線図そのものはここには載せない。公式PDFのNo.3を開いて読み進めてほしい。
図から読み取るもの
No.3 の配線図に描かれているのは、次の要素だ。
- 電源:1φ2W 100V、VVF 2.0-2C
- TS(タイムスイッチ。「イ」)と、同じ「イ」の引掛シーリング(角)
- ランプレセプタクル(図中の「R」。「ロ」)と、点滅器(黒丸。「ロ」)
- 接地極付コンセント(傍記「E」)
- 接地線 E 1.6 と、D種接地工事の接地極(接地線E 1.6は接地極付コンセントの接地極の端子につなぐ。接地極EDは「施工省略」の枠の中)
- 「施工省略」と書かれた部分
13問の中でこの問題を特徴づけているのは、器具代用と接地線の2点だ。回路そのものは複雑ではない。難しいのは「図に書かれていない情報をどこから取ってくるか」である。
端子台代用をどう読むか
端子台で代用される器具が出たとき、当日の試験問題には次の2つがセットで示される。
- 説明図(結線図)——端子台のどの端子に何が対応するかを示した図。
- 施工条件——「端子台は◯◯の代用である」「図に従って結線すること」といった指示。
試験センターの資料には、変圧器を端子台で代用した場合の例として、端子記号と色別が描き込まれた結線図が掲載され、施工条件の例として「変圧器代用の端子台は,図に従って行うこと」が挙げられている。No.3 のタイムスイッチでも同じ形で情報が与えられると考えてよい。
複線図を描くとき、端子台の部分は四角を描いて端子を並べ、当日の説明図どおりに端子名を書き込む。そのうえで、白・黒・戻り線がどの端子に入るかを線で結ぶ。紙の上でここまで決めてから、初めてケーブルを切る。
端子台への結線は「狭い間」を狙う作業
端子台はねじ締め端子だ。判断基準は上下から挟み込んでくる。
- 心線が座金で確実に保持されるよう、ねじで締め付ける。単線は引っ張っても外れないこと。
- ただし必要以上に強く締めない。ねじ山をつぶしたり頭をねじ切ったりすれば「12-5.器具を破損させたもの」になる。
- より線を扱う場合は、素線を1本も外に残さない。
接地線を忘れない
No.3 には接地線(E 1.6)と接地極が現れる。接地線は緑色を使用する、といった色別の指定は施工条件で示される。
そして忘れてはいけないのが、試験センターが「1.未完成のもの」の説明にわざわざ書き添えている一文だ——「接地線を結線し忘れたものなどがこれに当たる」。回路として成立していても、接地線が1本ぶら下がっていれば未完成として扱われる。
複線図では、接地線を「回路とは別の系統」として、色を変えるなり点線にするなりして最後に必ず描き足す癖をつけておくとよい。
踏みやすい欠陥項目
- 1.未完成のもの——接地線の結線忘れ、取付枠の取り付け忘れ。
- 3.誤接続,誤結線のもの——端子台の結線図を読み違えたときの行き先。
- 4.電線の色別,配線器具の極性が施工条件に相違したもの——「接地線には,緑色を使用する。」は施工条件の代表例として試験センターの資料に挙げられている。
- 8-1.心線をねじで締め付けていないもの(イ.単線での結線にあっては,電線を引っ張って外れるもの)
- 8-3ロ.端子台の低圧側の結線にあっては,端子台の端から心線が 5mm 以上露出したもの
- 8-4.絶縁被覆を締め付けたもの
時間配分の目安
試験時間は40分の予定。以下は練習用の目安であり、試験センターが示した配分ではない。
| 工程 | 目安 |
|---|---|
| 施工条件・端子台の説明図の読み込みと複線図 | 7分 |
| 寸法出しとケーブル切断 | 5分 |
| はぎ取り | 6分 |
| 端子台・ランプレセプタクルへの結線 | 10分 |
| 接地線の処理と電線相互の接続 | 7分 |
| 見直し | 5分 |
読み込みに7分。他の問題より1〜2分多い。端子台の説明図を読み違えると、作業をすべてやり直すことになるからだ。逆に読み違えさえしなければ、端子台への結線自体は輪作りより速い。
見直しでは、端子台の結線を問題用紙の説明図と一つずつ突き合わせ、最後に接地線を指差し確認する。
公式の標準解答で答え合わせ
令和8年度上期の第二種技能試験(2026年7月18日・19日実施)では、候補問題13問がすべて出題されました(試験センターの「問題と解答」ページの記載)。No.3 の問題と標準解答も、試験センターが公開しています。
- 候補No.3 の標準解答(PDF):完成作品の概念図、複線図、正解作品の例が載っています。
- 候補No.3 の試験問題(PDF):材料表と施工条件の原文です。
- 一覧は7月18日実施分と7月19日実施分のページにあります。No.3 の問題と標準解答は、両日で同じ内容でした(2026年10月7日確認)。
自分の作品を標準解答と見比べるときの着眼点を挙げます。公式の図や文章は転載せず、見る場所だけを自分の言葉でまとめています。括弧内の番号は、欠陥の判断基準の項目です。
- タイムスイッチは端子台(3極)で代用され、端子の役割は問題の図2に示されます。施工条件では「記号S2の端子に白色」と指定されていました(4)。S2の端子に白線が入っているか、標準解答の複線図と見比べます。
- 接地線は、施工条件で緑色と指定されていました(4)。接地極付コンセントへの結線を忘れていないか(1)を確認します。接地極(ED)は施工省略の範囲です。
- 取付枠は、施工条件でコンセント部分に使います(11-1)。器具が1個なので、中央に付いているかを見ます(11-4イ)。
- 端子台の低圧側の結線で、端子台の端から心線が5mm以上出ていないか(8-3ロ)、座金が絶縁被覆を挟んでいないか(8-4)を見ます。
- 接続方法は、A部分がリングスリーブ、B部分が差込形コネクタです(2-4)。差込形コネクタは2本用・3本用・4本用が1個ずつ支給されているので、複線図から接続する本数を数えて使い分けます。
見比べは目安です。実際の判定は試験センターが判断基準に基づいて行い、欠陥が1つでもあれば不合格です。全細目の確認には欠陥チェックシート(自己採点用)も使えます。令和9年度の候補問題は、例年1月に試験センターが公表しており(令和6〜8年度は1月26日・1月17日・1月16日)、令和8年度から変わる可能性があるので、公表後は公式の配線図で最新の内容を確認してください。
時刻で電気を動かす、という仕事
タイムスイッチが受け持っているのは、看板照明の点灯時刻、街路灯の入り切り、事務所の空調や給湯、農業用ハウスの換気といった「人が毎日操作したくない」仕事だ。この回路を組めるということは、依頼主の「毎晩消しに行くのが面倒だ」を工事で解決できるということでもある。
だが No.3 の本当の収穫は、器具そのものより端子台の読み方にある。現場では、初めて見るメーカーの機器を渡され、付属の結線図だけを頼りに配線する場面がいくらでもある。番号を暗記するのではなく「示された図を自分の複線図に写し取る」手順が身についているかどうかが、そのまま扱える機器の幅になる。
今日できるのは、身近な機器の内側にある結線ラベルを探すことだ。給湯器やエアコン室内機のカバーの裏、分電盤の扉の内側——端子記号と線の行き先が図で書かれている。あれが読めれば、機器は「知らない箱」ではなくなる。電気を「いつ流すか」で制御する発想は、いまはタイマから人感センサ、蓄電池の充放電スケジュールへと広がっている。この1問はその入口にある。
冒頭の「端子の割り当てはどこに書いてあるのか」——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。