技能試験の練習会で、AさんとBさんが同じ候補問題No.6を仕上げた。並べて見比べると、2個の3路スイッチをつなぐ渡り線2本が、二人でちょうど左右逆に入っている。
それなのに、どちらの作品も、どちらのスイッチを操作しても負荷がきちんと点いたり消えたりする。図と同じ向きに入っている方だけが正しくて、もう一方は欠陥なのか。それとも両方とも通るのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、根拠を挙げて答えられるようになっている。
配線図に何が描かれているか
令和8年度の公表資料でNo.6の配線図に示されているのは、次の要素だ。
- 電源 1φ2W 100V と、そこから引き込む VVF 2.0-2C
- 「露出形」と注記されたコンセント
- 「イ」と記された負荷
- 3路スイッチ(傍記「3」の点滅器)が2個、いずれも「イ」
- 「施工省略」の表示
公表資料の注記により、種類が書かれていない電線はすべて VVF1.6 として扱う。つまり太い 2.0-2C は電源引込の部分だけで、残りは 1.6 のケーブルで組むことになる。
複線図を起こす順序
No.6のような「3路スイッチ2個+コンセント」の問題では、次の順に線を引くと迷いが減る。
- 接地側(白)を先に引く。 電源の接地側から、負荷「イ」とコンセントへ直行させる。点滅器は一切経由しない。
- 非接地側(黒)をコンセントへ引く。 コンセントはスイッチを介さず、常に電源につながる。
- 非接地側を電源側の3路スイッチのコモン端子へ。 ここが3路回路の入口だ。
- 2個の3路スイッチのコモン以外の2端子どうしを、渡り線2本で結ぶ。
- もう一方の3路スイッチのコモンから、負荷「イ」へ。 これで回路が閉じる。
この順序で描けば、3路スイッチのどの端子に何が来るかが自動的に決まる。逆に、いきなりスイッチから描き始めると、コモンをどちらに割り当てたか分からなくなりやすい。
この問題特有の難所
難所1:3路スイッチのコモン端子を見失う。 3路スイッチの端子には、器具側に「0」「1」「3」といった表示がある。コモンがどれかは器具の表示で確認するしかない。練習の段階から、支給される器具と同じタイプで端子位置を体に入れておきたい。
難所2:露出形コンセントの輪作り。 No.6で時間を最も消費しやすいのがここだ。露出形コンセントとランプレセプタクルの端子には座金がないため、心線に輪を作ってねじ締めする必要がある。公表資料は輪作りのポイントとして、輪はねじの締め付け方向と同じ右回り、輪が重ならないこと、輪の直径がねじの頭からはみ出さないこと、絶縁被覆をねじで噛み込まないことを挙げている。
難所3:送り端子に触れてしまう。 露出形コンセントには送り用の端子が付いているが、指定されていないのに結線すると余分な工事になる。
踏みやすい欠陥項目
「欠陥の判断基準」から、No.6で特に該当しやすい項目を原文で引く。
- 3.誤接続,誤結線のもの … コモンの取り違えはここに該当する。
- 4.電線の色別,配線器具の極性が施工条件に相違したもの … 回路として動いても、色の指定に反していれば欠陥になる。
- 8-3 結線部分の絶縁被覆をむき過ぎたもの/ニ.ランプレセプタクル又は露出形コンセントの結線にあっては,ねじの端から心線が5mm以上露出したもの
- 8-5.ランプレセプタクル又は露出形コンセントへの結線で,ケーブルを台座のケーブル引込口を通さずに結線したもの
- 8-6.ランプレセプタクル又は露出形コンセントへの結線で,ケーブル外装が台座の中に入っていないもの
- 8-7 ランプレセプタクル又は露出形コンセント等の巻き付けによる結線部分の処理が適切でないもの/イ.心線の巻き付けが不足(4分の3周以下),又は重ね巻きしたもの/ロ.心線を左巻きにしたもの/ハ.心線がねじの端から5mm以上はみ出したもの/ニ.カバーが締まらないもの
- 12-2.不要な工事,余分な工事又は用途外の工事を行ったもの … 送り端子への結線がこの例として挙げられている。
- 11-4.取付枠に配線器具の位置を誤って取り付けたもの … この問題では埋込連用取付枠が2枚支給され、3路スイッチは1枚の枠に1個ずつ付く。器具が1個の場合は中央に取り付ける(イ)。
時間配分の目安
試験時間は全問題40分と公表されている。以下は目安の一例で、公表資料に定めがあるわけではない。
| 作業 | 目安 |
|---|---|
| 施工条件の読み込み・複線図 | 5分 |
| ケーブル切断と寸法取り | 5分 |
| 露出形コンセントの輪作り・結線 | 7分 |
| 3路スイッチ2個・その他器具の結線 | 8分 |
| 電線相互の接続(圧着・差込) | 10分 |
| 見直し | 5分 |
輪作りが1箇所で済むのがNo.6の救いだが、その分3路の渡り線で本数が増える。接続箇所の本数を複線図の段階で数えておくと、リングスリーブの選択で迷わない。
施工条件は当日の問題用紙で確定する
公表資料は「配線図,施工条件等の詳細については,試験問題に明記します」と明記している。ここで扱ったのはあくまで骨格であって、電線の色、リングスリーブか差込形コネクタか、取付枠をどこに使うか、施工省略がどの部分かは、当日の問題用紙で初めて確定する。手順を丸暗記せず、「施工条件を読んでから複線図を描く」順序を練習の段階から崩さないことだ。
公式の標準解答で答え合わせ
令和8年度上期の第二種技能試験(2026年7月18日・19日実施)では、候補問題13問がすべて出題されました(試験センターの「問題と解答」ページの記載)。No.6 の問題と標準解答も、試験センターが公開しています。
- 候補No.6 の標準解答(PDF):完成作品の概念図、複線図、正解作品の例が載っています。
- 候補No.6 の試験問題(PDF):材料表と施工条件の原文です。
- 一覧は7月18日実施分と7月19日実施分のページにあります。No.6 の問題と標準解答は、両日で同じ内容でした(2026年10月7日確認)。
自分の作品を標準解答と見比べるときの着眼点を挙げます。公式の図や文章は転載せず、見る場所だけを自分の言葉でまとめています。括弧内の番号は、欠陥の判断基準の項目です。
- 3路スイッチ2個の端子の使い方は、施工条件に書かれていました。「0」の端子には電源側または負荷側の電線、「1」と「3」の端子にはスイッチ相互間の電線を結びます。標準解答には、「1」と「3」を入れ替えて結線しても正解という公式の注記が付いているので、入れ替わっていても欠陥とは限りません。「0」に入れる線は施工条件で決まっているので、取り違えていないかを必ず確かめます。
- 露出形コンセント(カバーなし)は、ケーブルを台座の引込口から入れ、外装が台座の中に入っているか(8-5、8-6)、輪の向きと巻き付け(8-7)、心線がねじの端から5mm以上出ていないか(8-3ニ)を見ます。施工条件5は、ケーブルを挿入した部分に近い端子へ結線することでした。送り端子に電線をつなぐのは余分な工事です(12-2)。
- 白線は、露出形コンセントの接地側極端子(W表示)と、引掛シーリングローゼットの接地側極端子に入ります(4)。
- 取付枠は2枚、3路スイッチは2個支給されます。1枚の枠に器具が1個だけなら、中央に付いているか(11-4イ)、表裏が合っているか(11-2)を見ます。
- 接続方法は、A部分が差込形コネクタ、B部分がリングスリーブです(2-4)。
- 標準解答の複線図は正解の一例、という公式の注記が付いています。
見比べは目安です。実際の判定は試験センターが判断基準に基づいて行い、欠陥が1つでもあれば不合格です。全細目の確認には欠陥チェックシート(自己採点用)も使えます。令和9年度の候補問題は、例年1月に試験センターが公表しており(令和6〜8年度は1月26日・1月17日・1月16日)、令和8年度から変わる可能性があるので、公表後は公式の配線図で最新の内容を確認してください。
階段の照明を、上でも下でも消せるようにする
3路スイッチ2個の回路は、試験のためだけの練習台ではない。階段の上と下、長い廊下の両端、寝室の入口と枕元——「片方で点けて、もう片方で消したい」は、住宅の改修で最も多い相談のひとつだ。No.6 を組めるということは、その依頼にそのまま応えられるということになる。
面白いのは、3路スイッチにはON・OFFの表示がないことだ。あれはスイッチというより切替器で、2本の渡り線のどちらへ電気を送るかを選んでいるだけになる。2つのスイッチの向きが噛み合ったときだけ点灯する。階段の電灯が「どちらでも点いて、どちらでも消える」のは、この単純な仕掛けの結果だ。
もう一つ、露出形コンセントの輪作りは一生使う技術になる。ねじ端子への結線は、照明器具でも機器の端子でも同じ手つきで求められる。右巻き、ねじ端からのはみ出しなし——この形が身体に入っていれば、器具が変わっても迷わない。家の階段のスイッチを上と下で交互に操作してみると、ここで描いた複線図がそのまま壁の中で働いているのがわかる。
冒頭のAさんとBさんの作品、渡り線が左右逆でどちらも点灯していた件をどう考えるか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。