候補問題No.2とNo.10は、配線図の見た目がよく似ている。どちらも単相2線式100Vの電源から始まり、ランプレセプタクルがあり、パイロットランプ(確認表示灯)が1個ある。使う器具もほとんど同じだ。
違うのは、図の隅に添えられた特記の一語だけ。No.2は「常時点灯」、No.10は「同時点滅」。
ところが、パイロットランプという器具は端子が2つしかない。入る電線は、どちらの条件でも2本のままだ。本数も、器具も、電線の種類も変わらない。それなのに、この一語で作品の合否が分かれる。
本数が変わらないのに、いったい何が変わっているのか。今は見当がつかなくて当然だ。読み終えるころには、パイロットランプの問題を「数える」のではなく「1つ決めるだけ」で片づけられるようになっている。
No.10に何が入っているか
公表された候補問題No.10の配線図には、次の要素が示されている。
- 電源:単相2線式(1φ2W)100V
- 配線用遮断器(B)
- VVF 2.0-2C(電源側の幹線)
- ランプレセプタクル(Rイ)
- 点滅器・確認表示灯(イ)
- 施工省略の部分
- 特記:「確認表示灯(パイロットランプ)は,同時点滅とする。」
公表資料の注記どおり、記載のない電線の種類はVVF1.6、器具においては端子台で代用する場合がある。配線用遮断器も、実物が支給されるか端子台で代用されるかは当日の材料表で分かる。
そして最も重要な注記がこれだ——「配線図,施工条件等の詳細については,試験問題に明記します」。電線の色指定、リングスリーブか差込形コネクタか、施工省略の位置、寸法。これらはすべて当日の問題用紙で初めて確定する。No.10を「この形で作る」と丸暗記しても、条件が一段変わればそのまま欠陥になる。覚えるのは形ではなく、翻訳の手順だ。
なお、試験センターが公表している配線図そのものは同センターの著作物にあたるためここには載せていない。公式PDFを手元に開いて、対応する図を見ながら読み進めてほしい。
複線図を起こす順序
No.10に限らず、複線図は次の順で描くと迷わない。
- 接地側(白)を先に配る。 電源の接地側から、スイッチを経由せずに、照明器具・コンセント・パイロットランプの接地側端子まで直行させる。スイッチには接地側を入れない。
- 非接地側(黒)を配る。 電源の非接地側から、コンセントと点滅器まで引く。この時点では照明器具にはまだ届かせない。
- 点滅器から照明器具へ、戻りの線を引く。 ここが唯一「黒でも白でもない線」で、施工条件では赤などの色が指定されることが多い。
- 最後にパイロットランプを足す。 ——ここでNo.10特有の判断が入る。
1〜3まではどの候補問題も同じだ。No.10で考えることは、実質4番目の一手しかない。
パイロットランプは「何と並列か」で決まる
パイロットランプは端子が2つしかない。だから、この器具について決めるべきことは「2本の線をどこから取るか」=何と並列につなぐか、それだけだ。取りうる答えは3つしかない。
- 常時点灯:スイッチを経由しない電源に直接並列。スイッチの状態に関係なく点きっぱなしになる。廊下や階段の足元灯のように「スイッチの位置を暗闇で知らせる」用途。候補問題No.2がこれ。
- 同時点滅:スイッチの負荷側、つまり照明器具と同じ点に並列。スイッチONで照明と一緒に点く。換気扇や屋外灯のように「見えない場所の器具が動いていること」を手元で知らせる用途。候補問題No.10がこれ。
- 異時点滅:スイッチそのものに並列。スイッチOFFのときだけ点く。
この見方に切り替えると、No.2とNo.10を別々に暗記する必要がなくなる。複線図を3番まで描いたあと、特記を読んで「Pは電源と並列か、負荷と並列か、スイッチと並列か」を判断する。それだけだ。
踏みやすい欠陥項目
No.10で特に注意したい判断基準を、原文のまま挙げる。
3.誤接続,誤結線のもの
同時点滅と常時点灯を取り違えると、電気的には点灯するのでその場では気づきにくい。だがそれは「配線図や施工条件を理解し遵守する能力」を問う試験としては不合格だ。試験センターの資料も「指定された配線図及び施工条件に従って施工されていない作品は,回路が電気的に正しく結線されていたとしても,欠陥であると判断します」と明記している。
4.電線の色別,配線器具の極性が施工条件に相違したもの
配線用遮断器がある問題では、施工条件に「配線用遮断器の接地側極端子(Nと表示)」へ白色を結線する、といった指定が置かれることがある。ランプレセプタクルの受金ねじ部への白色も定番だ。極性の取り違えは作業の丁寧さでは救えない。
8-9.心線が差込口から2mm以上露出したもの
パイロットランプ・タンブラスイッチ・埋込連用コンセントはいずれもねじなし端子で、この2mmが基準になる。器具の外側にあるストリップゲージ通りに絶縁被覆をはぎ取り、奥まで差し込めば露出しない。
8-3ハ.配線用遮断器又は押しボタンスイッチ等の結線にあっては,器具の端から心線が5mm以上露出したもの
配線用遮断器は、判断基準の8(1)でねじ締め端子の器具に分類されている。実物が支給された場合は、心線をねじで確実に締め付けたうえで、心線が器具の端から出ないように被覆をはぎ取る長さを合わせる。
11-4.取付枠に配線器具の位置を誤って取り付けたもの
パイロットランプと点滅器を連用取付枠に付ける問題では、枠に付ける器具が1個なら中央、2個なら中央を空ける、3個なら施工条件で中央に指定された器具を付ける。配線が正しくても位置を誤れば欠陥になる。
時間配分の目安
試験時間はすべての候補問題について40分(公表資料)。以下は練習時の配分例で、公式に定められたものではない。
| 経過 | やること |
|---|---|
| 〜2分 | 問題文と施工条件を読む。特記(同時点滅)と色指定・接続方法に印を付ける |
| 〜7分 | 複線図を描く。パイロットランプの並列先をここで確定させる |
| 〜12分 | ケーブルを寸法どおりに切断し、外装をはぎ取る |
| 〜25分 | ランプレセプタクルの輪作り、連用取付枠への器具取付、配線用遮断器(または端子台)への結線 |
| 〜34分 | ジョイントボックス部分の電線相互の接続 |
| 〜40分 | 見直し。特記どおりの並列先になっているか、圧着マーク、心線の露出を目視 |
見直しの時間を最後に必ず残しておきたい。特に同時点滅は、複線図の段階で決めた並列先が実物の結線に正しく反映されているかを、ジョイントボックスの中身を見て一度確認する価値がある。
公式の標準解答で答え合わせ
令和8年度上期の第二種技能試験(2026年7月18日・19日実施)では、候補問題13問がすべて出題されました(試験センターの「問題と解答」ページの記載)。No.10 の問題と標準解答も、試験センターが公開しています。
- 候補No.10 の標準解答(PDF):完成作品の概念図、複線図、正解作品の例が載っています。
- 候補No.10 の試験問題(PDF):材料表と施工条件の原文です。
- 一覧は7月18日実施分と7月19日実施分のページにあります。No.10 の問題と標準解答は、両日で同じ内容でした(2026年10月7日確認)。
自分の作品を標準解答と見比べるときの着眼点を挙げます。公式の図や文章は転載せず、見る場所だけを自分の言葉でまとめています。括弧内の番号は、欠陥の判断基準の項目です。
- 配線用遮断器(100V、2極1素子)は実物が支給されます。ねじ締め端子なので、心線が器具の端から5mm以上出ていないか(8-3ハ)、引っ張って外れないか(8-1イ)、絶縁被覆を挟んでいないか(8-4)を見ます。施工条件では、配線用遮断器の接地側極端子(N表示)に白線と指定されていました(4)。
- パイロットランプは、施工条件で「引掛シーリングローゼット及びランプレセプタクルと同時点滅」と指定されていました。常時点灯の結線になっていないか、複線図をたどって確かめます(3)。
- 取付枠には、タンブラスイッチ、パイロットランプ、連用コンセントの3個が付きます。中央に付いている器具が配線図で指定された器具か、標準解答の作品例と並べて見ます(11-4ハ)。
- 接続方法は、3本の接続箇所が差込形コネクタ(3本用は1個)、その他の接続箇所がリングスリーブでした(2-4)。リングスリーブは小と中が支給されるので、選択と圧着マークも見ます(6-1イ、6-1ロ)。
- スイッチ、パイロットランプ、コンセントの結線方法には、他にも正解がある、という公式の注記が標準解答に付いています。
見比べは目安です。実際の判定は試験センターが判断基準に基づいて行い、欠陥が1つでもあれば不合格です。全細目の確認には欠陥チェックシート(自己採点用)も使えます。令和9年度の候補問題は、例年1月に試験センターが公表しており(令和6〜8年度は1月26日・1月17日・1月16日)、令和8年度から変わる可能性があるので、公表後は公式の配線図で最新の内容を確認してください。
見えない場所で動いているものを、手元に映す
同時点滅の表示灯が効くのは、負荷が見えない場所にあるときだ。浴室やトイレの換気扇、屋根裏や床下の送風機、離れた倉庫の照明、建物の裏の外灯——スイッチの前に立っても動いているかどうか確かめられない負荷ほど、この結線の価値が出る。切り忘れて何日も回り続ける換気扇を防ぐのは、結局この小さなランプ1個だったりする。
面白いのは、常時点灯との違いが「電線の本数」ではなく「どこから分岐するか」だけだということだ。材料も手間もほとんど変わらないのに、できあがる機能はまるで違う。設計というのは、こういう分かれ道の選択の積み重ねでできている。
今日試せるのは、浴室やトイレのスイッチを操作して、表示灯が光るタイミングを見ることだ。換気扇を回したときに光るなら同時点滅、消したときに光るならスイッチと並列の異時点滅になる。機器の状態を人に見せるという発想は、表示灯からセンサや遠隔監視へと形を変えながら広がっている。何を人に知らせるかを決める仕事は、この2本の線の行き先を選ぶところから始まっている。
冒頭の「本数は変わらないのに何が変わるのか」の答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。