明日の施工に使う材料が、現場の床に4つ並んでいる。600Vビニル絶縁電線(IV 1.6mm)、合成樹脂製可とう電線管(PF管・内径22mm)、定格電流20Aの配線用遮断器、そして交換用の定格消費電力40Wの蛍光ランプ。
どれも電気用品安全法の対象品目で、PSEマークが付いている。だがマークの形は2種類ある。国に登録された第三者検査機関の適合性検査を経た菱形と、事業者自身の自己確認による丸形だ。
この4つのうち、菱形が付いているのはどれで、いくつあるのか。「危なそうなもの」という直感で選ぶと、たいてい外す。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、条文の線がどこに引かれているのかが見えるようになっている。
電気用品安全法は、製造・輸入・販売の事業者に義務を課す法律だ——というのが基本の理解だが、実は電気工事士に直接かかる条文が1本ある。
第28条(使用の制限)
電気事業法第2条第1項第17号に規定する電気事業者、同法第38条第4項に規定する自家用電気工作物を設置する者、電気工事士法第2条第4項に規定する電気工事士、同法第3条第3項に規定する特種電気工事資格者又は同条第4項に規定する認定電気工事従事者は、第10条第1項の表示が付されているものでなければ、電気用品を電気工作物の設置又は変更の工事に使用してはならない。
つまり、表示のない電気用品を工事に使うこと自体が、電気工事士にとっての法令違反になる。しかもこの違反は電気工事士法第4条第6項と直結していて、都道府県知事から免状の返納を命じられうる。「材料の選定」が資格の存続に直結している、という点でこの条文は重い。
なお、事業者側には第27条(販売の制限)があり、表示が付されているものでなければ販売し、又は販売の目的で陳列してはならないとされている。作る側・売る側・使う側の三方向から、表示のない電気用品を市場から締め出す構造になっている。
特定電気用品か、特定以外か — 見分ける3つの手順
学科試験の問29は、令和6年度上期から令和8年度上期までの5回とも、電気用品安全法の特定電気用品を問う設問だった。品目名に数値の条件を添えて4つ並べ、「特定電気用品はどれか」「特定電気用品の組合せとして正しいものはどれか」と聞く形が中心だ。答えは、次の3つの手順で決まる。
- 品目を仕分ける。 電線、ヒューズ、配線器具のうち点滅器・遮断器・接続器は、特定電気用品の側にある(ジョイントボックスも特定)。電線管とその附属品・ダクト・線ぴ、ケーブル配線用スイッチボックス、ライティングダクト、完成品の家電(換気扇・電気ストーブ・電球)は、特定以外の側にある(ボックスのうち特定以外なのは、ケーブル配線用スイッチボックスと電線管の附属品。ジョイントボックスは特定)
- 数値の条件を確かめる。 同じ品目でも、数値が条件の外なら区分が変わる(下の表)
- 例外に当たらないか確かめる。 ヒューズ、スイッチ類、電熱器具、携帯発電機は、仕分けのとおりにならない品目がある(下の「理屈で導けない例外」)
特定電気用品(ひし形のPSE)の定番と、数値の条件
| 品目 | 数値の条件 |
|---|---|
| 絶縁電線 | 導体の公称断面積が100mm²以下 |
| ケーブル | 導体の公称断面積が22mm²以下で、線心が7本以下(22mm²を超え100mm²以下は特定以外) |
| コード、キャブタイヤケーブル | キャブタイヤケーブルは、100mm²以下で線心7本以下 |
| ヒューズ | 温度ヒューズ、その他のヒューズ(定格電流1A以上200A以下。筒形ヒューズ・栓形ヒューズを除く) |
| タンブラースイッチ・中間スイッチ・タイムスイッチなどの点滅器 | 定格電流30A以下 |
| 配線用遮断器・漏電遮断器(箱開閉器・フロートスイッチも) | 定格電流100A以下 |
| 差込み接続器・ねじ込み接続器・ソケット・ローゼット・ジョイントボックス | 定格電流50A以下で、極数5以下 |
どれも、定格電圧100V以上300V以下の交流用(電線は100V以上600V以下)が対象の範囲で、試験の設問はこの範囲に入る値で出る。ケーブルの太さは直径(1.6mm・2.0mmなど)で書かれることがある。断面積はπ×(直径÷2)²なので、直径1.6mmは約2.0mm²、直径2.0mmは約3.1mm²で、どちらも22mm²以下に収まる。
特定電気用品以外(丸形のPSE)の定番
| 区分 | 品目 |
|---|---|
| 電線管類 | 電線管(可とう電線管を含み、内径120mm以下)、フロアダクト(幅100mm以下)、線ぴ(幅50mm以下)、これらの附属品、ケーブル配線用スイッチボックス |
| ヒューズ | 筒形ヒューズ、栓形ヒューズ |
| 配線器具 | リモートコントロールリレー、カットアウトスイッチ、カバー付ナイフスイッチ、分電盤ユニットスイッチ、電磁開閉器、ライティングダクト(その附属品・接続器を含む) |
| 電線 | ケーブルのうち公称断面積が22mm²を超え100mm²以下のもの、蛍光灯電線、ネオン電線 |
| 完成品・ランプ | 換気扇(300W以下)、扇風機、電気ストーブ・電気こたつ・電気トースターなどの電熱器具、白熱電球、蛍光ランプ(40W以下)、LEDランプ・LED電灯器具、単相電動機・かご形三相誘導電動機(3kW以下)、ネオン変圧器 |
マークの見分け方
| 記号 | 範囲・表示事項 |
|---|---|
| ひし形の中にPSE (特定電気用品) | 表示する事項:記号、届出事業者の氏名・名称、検査機関の氏名・名称 |
| <PS>E (特定電気用品) | 文字表記の範囲:電線、ヒューズ、配線器具等の部品材料で、構造上表示スペースの確保が困難なものだけ |
| 丸形の中にPSE (特定以外) | 表示する事項:記号、届出事業者の氏名・名称 |
| (PS)E (特定以外) | 文字表記の範囲:電線、電線管類及びその附属品、ヒューズ、配線器具等の部品材料で、構造上表示スペースの確保が困難なものだけ |
マークの形を決めているのは区分だけで、国産か輸入か、製造か輸入かでは変わらない。換気扇や電気ストーブのような完成品には文字表記がなく、丸形のPSEが付く。VVFケーブルのシースに印字されているのは、部品材料の文字表記のほうだ(施行規則第17条・別表第六/第七)。
理屈で導けない例外
- ヒューズ: 温度ヒューズなどは特定、筒形ヒューズ・栓形ヒューズは特定以外。「ヒューズは全部特定」と覚えると外す
- スイッチ類: 点滅器・箱開閉器(カバー付スイッチを含む)・フロートスイッチ・配線用遮断器・漏電遮断器・カットアウトは特定。カットアウトスイッチ・カバー付ナイフスイッチ・分電盤ユニットスイッチ・電磁開閉器・リモートコントロールリレーは特定以外。名前が似ているが別の品目なので、特定以外の5つを固有名詞で持つ
- 電熱器具と携帯発電機: 電熱器具は品目名で分かれる。特定は電気便座・電気温蔵庫・水道凍結防止器・電気温水器・観賞魚用ヒーターなど、特定以外は電気ストーブ・電気こんろ・電気こたつ・電気トースター・電気カーペット・電気毛布・電気湯沸器・電気がまなど。使われ方の理屈では割り切れない(就寝中に使う電気毛布や、水を扱う電気湯沸器は特定以外)ので、品目名で持つ。電気ストーブは令和7年度下期の問29に特定以外の選択肢として出ている。電気便座は直近5回の学科試験には出ていないが、別表第一に載っている品目だ。携帯発電機(定格電圧30V以上300V以下)は、完成品の機械なのに特定の側にある
多くの品目は、「電気が直接流れる導体と、電気を入り切りする器具は特定、電線を通す容器と完成品の家電は特定以外」という目安で当たる。ただしこれは品目を思い出すための覚え方で、条文が理由を述べているわけではない。上の例外が、この目安の通用しない品目だ。
調べる部分 — 品目の辞書(別表第一・別表第二)
ここから先は、上の表に載っていない品目を調べるときの辞書だ。全部を覚える必要はない。試験で正解になるのは、上の定番と例外でほとんど足りる。
別表第一(特定)・別表第二(特定以外)の品目表と、迷いやすい品目の区分一覧(品目名の辞書。押すと開く)
特定電気用品(施行令別表第一)
| 分類 | 品目と数値条件 |
|---|---|
| 電線(定格電圧100V以上600V以下) | 絶縁電線(公称断面積100mm²以下)、ケーブル(22mm²以下かつ線心7本以下)、コード、キャブタイヤケーブル(100mm²以下かつ線心7本以下) |
| ヒューズ | 温度ヒューズ、その他のヒューズ(定格電流1A以上200A以下。筒形ヒューズ・栓形ヒューズ、半導体保護用速動ヒューズは除く) |
| 配線器具(点滅器) | タンブラースイッチ、中間スイッチ、タイムスイッチその他の点滅器(定格電流30A以下) |
| 配線器具(開閉器・遮断器) | 箱開閉器(カバー付スイッチを含む)、フロートスイッチ、圧力スイッチ、ミシン用コントローラー、配線用遮断器、漏電遮断器(いずれも定格電流100A以下) |
| 配線器具(その他) | カットアウト(100A以下)、差込み接続器・ねじ込み接続器・ソケット・ローゼット・ジョイントボックス(定格電流50A以下かつ極数5以下) |
| 電熱器具(10kW以下) | 電気便座、電気温水器、電気温蔵庫、水道凍結防止器、観賞魚用ヒーター |
| その他 | 電流制限器(100A以下)、小形単相変圧器(定格容量500VA以下)、蛍光灯用安定器・水銀灯用安定器、電気ポンプ(1.5kW以下)、電気マッサージ器、携帯発電機(定格電圧30V以上300V以下) など |
特定電気用品以外の電気用品(施行令別表第二)
| 分類 | 品目と数値条件 |
|---|---|
| 電線 | 蛍光灯電線、ネオン電線、ケーブル(公称断面積22mm²を超え100mm²以下)、電気温床線 |
| 電線管類 | 電線管(可とう電線管を含み内径120mm以下)、フロアダクト(幅100mm以下)、線ぴ(幅50mm以下)、これらの附属品、ケーブル配線用スイッチボックス |
| ヒューズ | 筒形ヒューズ、栓形ヒューズ(定格電流1A以上200A以下) |
| 配線器具 | リモートコントロールリレー(30A以下)、カットアウトスイッチ、カバー付ナイフスイッチ、分電盤ユニットスイッチ、電磁開閉器、ライティングダクト及びその附属品 |
| 電熱器具 | 電気ストーブ、電気こんろ、電気こたつ、電気トースター、電気カーペット |
| その他 | ネオン変圧器、電圧調整器(500VA以下)、小形交流電動機(単相電動機、かご形三相誘導電動機3kW以下)、蛍光ランプ(定格消費電力40W以下)、白熱電球、LEDランプ・LED電灯器具、換気扇(300W以下)、リチウムイオン蓄電池 など |
同じ「ケーブル」でも、公称断面積が22mm²以下なら特定電気用品(別表第一)、22mm²を超え100mm²以下なら特定電気用品以外(別表第二)になる。区分を決めているのは品目名ではなく、条文が添えた数値の条件だ。試験でも「定格電流○Aの△△」という形で数値ごと問われる。
迷いやすい品目の区分一覧
名前に「スイッチ」と付く器具は別表第一にも第二にも散らばっていて、見た目や役割からは区分を導けない。覚えるしかない品目をまとめた一覧だ。
| 品目(数値条件) | 区分 |
|---|---|
| タンブラースイッチ、中間スイッチ、タイムスイッチその他の点滅器(30A以下) | 特定 |
| 箱開閉器(カバー付スイッチを含む・100A以下) | 特定 |
| フロートスイッチ(100A以下) | 特定 |
| 配線用遮断器、漏電遮断器(100A以下) | 特定 |
| カットアウト(100A以下・つめ付ヒューズ等を取り付けるもの) | 特定 |
| 差込み接続器、ソケット、ローゼット、ジョイントボックス(50A以下・極数5以下) | 特定 |
| 電流制限器(100A以下) | 特定 |
| 蛍光灯用安定器(適用放電管の定格消費電力の合計500W以下) | 特定 |
| 電気便座、電気温水器、電気温蔵庫、水道凍結防止器、観賞魚用ヒーター(電熱器具・10kW以下) | 特定 |
| 携帯発電機(定格電圧30V以上300V以下) | 特定 |
| 筒形ヒューズ、栓形ヒューズ(1A以上200A以下) | 特定以外 |
| カットアウトスイッチ | 特定以外 |
| カバー付ナイフスイッチ | 特定以外 |
| 分電盤ユニットスイッチ | 特定以外 |
| 電磁開閉器(箱入りで過電流継電機構を有するもの等) | 特定以外 |
| リモートコントロールリレー(30A以下) | 特定以外 |
| 電線管(可とう電線管を含み内径120mm以下)、その附属品 | 特定以外 |
| フロアダクト(幅100mm以下)、線ぴ(幅50mm以下) | 特定以外 |
| ケーブル配線用スイッチボックス | 特定以外 |
| ライティングダクト及びその附属品 | 特定以外 |
| ネオン変圧器、電圧調整器(500VA以下) | 特定以外 |
| 単相電動機(100V以上300V以下)、かご形三相誘導電動機(3kW以下) | 特定以外 |
| 白熱電球、蛍光ランプ(40W以下)、LEDランプ・LED電灯器具 | 特定以外 |
| 電気ストーブ、電気こんろ、電気こたつ、電気トースター(電熱器具) | 特定以外 |
| 換気扇(300W以下) | 特定以外 |
材料を受け取る手が、免状を守っている
この条文が効いてくるのは、現場に材料が届いた瞬間だ。段ボールを開け、表示のない電線や器具が混じっていないかを確かめる。それだけの動作が、法令上は免状の返納命令と一本の線でつながっている。安く手に入った無表示品を「今日だけ」と使ってしまうことのリスクは、施工不良の話ではなく資格の話になる。材料の受け入れは、雑用ではなく法令上の関門だ。
今日試せるのは、手元のケーブルの表示を読むことだ。VVFのシースには、製造者名・種別・サイズと並んで表示が印字されている。スイッチやコンセントの裏側にも同じように書かれている。工事で使う材料は、それ自体が法律の対象品目なのだという事実は、印字を1度読むだけで実感に変わる。
数値の条件まで条文に書き込まれているのは、品目名だけでは危険の大きさを表せないからだ。同じケーブルでも太さが変われば扱う電流が違う。同じ配線用遮断器でも定格電流が違えば守る回路の規模が違う。だから「ケーブル」ではなく「22mm²以下かつ線心7本以下」と書く。試験で数値ごと問われるのは意地悪ではなく、条文がそう書かれているからだ。住宅に入る機器が増え、通販で買った材料が現場に持ち込まれる場面も増えていく。表示を見る目を持った工事士が入口に立っているという構図は、これから重みを増していく。
冒頭に並んだ4つの材料は、それぞれどちらの表に載っているのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。