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法規 ・ 12 / 12

電気工作物の使用前検査・廃止

読み終えると、こうなる

新設・改修工事から使用開始までの手続きの流れと、設備を廃止したときに必要な報告を、条文の根拠(条・項・号)とあわせて説明できるようになる

  • 一定規模以上の工事計画届出から使用開始までの手続きの順序(工事計画届出→30日経過→工事→使用前自主検査等→使用開始)を説明できる
  • 使用前自主検査と使用前自己確認が、設備の区分によって使い分ける別の制度であることを、電気事業法51条の2第1項の但書と対象設備(施行規則第74条・別表第六)から説明できる
  • 自家用電気工作物を設置する事業場等を廃止したとき、電気関係報告規則第5条第1項第二号により遅滞なく報告が必要になることを説明できる。あわせて、『廃止すれば義務がなくなる』という説明が条文では確認できていない断定であることを見分けられる
  • 使用前自主検査の対象となる需要設備のおおよその規模と、検査の実施『体制』について別途、経済産業大臣の登録を受けた者(登録機関)又は主務大臣の審査を受ける義務があることを、検査内容そのものの確認義務と区別して説明できる
考えてみよう

キュービクル(受変電設備)を新設する工事が終わった。配線もつながり、見た目には いつでも電気を流せそうだ。だが法令上、この設備は「工事が終わった瞬間」に 使い始めてよいわけではない。何を確認し終えて初めて、使用を開始できるのか。

逆に、老朽化した設備の使用をやめるとき、電源を切るだけで済ませてよいのだろうか。 法令上は、どんな報告が要るのだろうか。

このトピックを読み終えるころには、設備が生まれてから役目を終えるまでの 手続きの流れを、条文で確認できる範囲で説明できるようになっている。

種明かしは、設備の「生まれるとき」と「役目を終えるとき」のそれぞれに、 別々の手続きが用意されているという構造にある。

新設・変更工事 — 届け出て、待って、確認してから使う

一定規模以上の事業用電気工作物を新たに設置したり、変更する工事を行おうとする者は、 その工事の計画を主務大臣(経済産業大臣)に届け出なければならない(電気事業法48条)。 そしてこの届出には「待機期間」がある。届出が受理された日から30日を経過した後 でなければ、その届出に係る工事を開始してはならない。国が内容を確認する猶予期間が 置かれている、と理解すればよい。

「届出をすれば即着工できる」と思い込むと、この30日という待機期間を見落とす。 届出は工事計画届出制度の入口であって、着工の合図ではない。届出日と着工日を 別々に管理する必要がある、という実務上の意味もここに含まれている。

使用開始前の確認 — 使用前自主検査と使用前自己確認

工事が終わったからといって、そのまま使い始めてよいわけでもない。電気事業法は、設備の区分に応じて、使用開始前の確認を2つの形で用意している。

まず使用前自主検査(電気事業法51条。条の見出しは「使用前安全管理検査」)。第48条第1項の規定による工事計画の届出をして設置・変更の工事をする事業用電気工作物のうち、主務省令で定めるものを設置する者は、使用開始前に自主検査を行い、結果を記録・保存しなければならない。第2項により、次の2点を確認する。

  • 届出をした工事の計画に従って行われたものであること
  • 技術基準に適合するものであること

もう1つが使用前自己確認(電気事業法51条の2)だ。公共の安全の確保上重要なものとして主務省令で定める事業用電気工作物を設置する者は、使用を開始しようとするとき、その設備が技術基準に適合することを自ら確認しなければならない(第1項)。対象は施行規則第74条が別表第六に掲げる電気工作物と定めており、たとえば太陽電池発電所又は太陽電池発電設備では、出力10kW以上2,000kW未満のものが挙がっている(別表第六第2号)。なお51条の2第3項は、確認した結果を使用開始前に主務大臣へ届け出ることを求めている。

ここで読み落とせないのが、第1項の但書だ。第47条第1項の認可(設置の工事に係るもの)、又は第47条第4項若しくは第48条第1項の届出(設置の工事に係るもの)に係る事業用電気工作物を使用するときは、この限りでない。つまり、工事計画の認可・届出の対象になった設備には、自己確認は求められない。

使用前自主検査と使用前自己確認は、名前が似ているために同じ制度だと誤解されやすい。『自主検査にさらに加わる確認』と覚えてしまう人もいるが、条文はそう書いていない。自己確認の但書は、工事計画の認可・届出の対象になった設備を対象から外している。自己確認は、工事計画の届出に乗らない設備(たとえば太陽電池発電所の出力10kW以上2,000kW未満)に対して使用開始時の確認を求める別の経路、と読むのが条文に沿った整理だ。実際、太陽電池発電所の設置は、出力2,000kW以上になると工事計画の事前届出の対象になる(施行規則別表第二)。どちらが重いかは条文には書かれていないので、軽重で覚えず、『どの設備がどちらの経路に乗るか』で覚える。

使用前自主検査は「対象になる規模」と「検査体制の審査」の2段構え

ここまでは、使用前自主検査を「何を確認するか」という中身の話として見てきた。だが実務では、その手前にもう2つ、見落としやすい論点がある。

1つ目は、使用前自主検査の対象になるかどうかは、工事計画の届出をしたすべての事業用電気工作物に一律に課されるわけではない、という点だ。対象は一定規模以上のものに限られ、需要設備であれば受電電圧1万V(10,000V)以上というのが実務上の目安になる(発電設備・変電所・蓄電所など設備の種類ごとに規模の基準(出力・電圧・容量)は異なるため、具体的な数値は最新の電気事業法施行規則で確認すること)。受電電圧が1万Vを下回る需要設備の工事は、使用前自主検査までは求められないことがある。

2つ目が、検査の「体制」に対する審査だ。使用前自主検査を行う事業用電気工作物を設置する者は、技術基準適合・工事計画どおりの施工という検査の中身を自ら確認するだけでなく、その検査をどのような組織で、どんな方法・工程管理のもとで実施するのかという「体制」についても、審査(設備に応じて、経済産業大臣の登録を受けた者又は主務大臣が行う)を受けなければならない。この審査は、当該事業用電気工作物の安全管理を旨として行われる。

「自主検査」という名前だけを見ると、設置者が自分たちで検査を完結させれば義務は終わりだと思いやすい。だが実際には、①検査そのもの(設置者が自ら行う技術基準適合等の確認)と、②その検査を実施する体制についての審査(主務大臣又は経済産業大臣の登録を受けた者が行う)という、性格の異なる2つの手続きが重なっている。「何を確認するか」という中身の義務と、「どういう体制で確認するか」という手続きの義務を、別の層として区別しておくと、条文の読み違いを防げる。

設備の終わり方 — 廃止したときの報告

自家用電気工作物(原子力発電工作物と小規模事業用電気工作物を除く)を設置する者は、発電所、蓄電所、変電所その他の自家用電気工作物を設置する事業場、又は送電線路若しくは配電線路を廃止した場合、遅滞なく、その旨を設置場所を管轄する産業保安監督部長に報告しなければならない(電気関係報告規則第5条第1項第二号)。

この第5条の見出しは「自家用電気工作物を設置する者の発電所の出力の変更等の報告」で、第1項第一号は、発電所・蓄電所・変電所の出力又は送電線路・配電線路の電圧を変更した場合(工事計画の認可・届出に伴う変更を除く)の報告を定めている。廃止はそれに続く第二号であって、条文の段落(項)ではなく項の中の列挙(号)で定められている。また手続きは「届出」ではなく「報告」だ。

ここまでが条文で確認できることだ。一方で、『廃止の報告をすれば保安規程・主任技術者・技術基準適合維持などの義務がなくなる』という説明や、『ブレーカーを落としただけの状態は休止であり、義務は続く』という説明を、そのままの形で定めた条文は、今回の確認では見つけられていない(原文未確認)。使わなくなった設備について、どの義務がいつまで続くのかを自己判断で決めず、所轄の産業保安監督部に確認するのが安全だ。確実に言えるのは、設備を廃止した場合には第5条第1項第二号の報告が要る、という点である。

電材商社の実務で、この知識がどう効いてくる

設備更新や増設の相談を受けたとき、「工事計画の届出が必要な規模かどうか」「使用前 自主検査・自己確認の対象になるかどうか」を早い段階で把握できていれば、工事スケジュールに 30日の待機期間や検査の工程を組み込んだ、現実的な提案ができる。また、老朽設備の 更新・撤去の相談では、設備を廃止するときに電気関係報告規則第5条第1項第二号の報告が 要ることを顧客に伝えられるようにしておくと、報告漏れを未然に防ぐことにつながる。

キュービクルの新設工事が終わったあと、何を確認し終えて初めて使用を開始できるのか。 答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 工事計画の届出をすれば、届出と同時に着工できると誤解する

    なぜ引っかかる『届出=手続き完了』という感覚から、受理と同時に工事に着手できると考えやすい

    見破り方届出が受理された日から30日を経過した後でなければ着工できない、という『待機期間』があることを条文とセットで覚える。国が事前に内容を確認する猶予期間が置かれている

  2. 電源を切った、あるいは廃止の報告をしたことで、保安規程・主任技術者などの義務が当然になくなったと自己判断する

    なぜ引っかかる『使うのをやめた』という事実と、法令上の義務の有無が直結していると考えやすい。しかも電気関係報告規則第5条は廃止の報告を定めるだけで、報告によって各種の義務がなくなるとは書いていない

    見破り方電気関係報告規則第5条第1項第二号は、廃止した場合に報告を求める条文で、他の義務の消長までは定めていない。電源を切っただけの状態(休止)や、廃止の報告後の義務の扱いは、今回の確認では条文から読み取れていない(原文未確認)。断定せず、所轄の産業保安監督部に確認する

  3. 廃止の報告の根拠を、項と号を取り違えて覚える。あるいは廃止を『届出』だと覚える

    なぜ引っかかる第5条は第1項の中に号が並ぶ構造で、『第5条の何番目』という数字だけ覚えると、項(段落)と号(列挙)を取り違えやすい。見出しも出力変更等の『報告』で、届出という言葉は使われていない

    見破り方廃止は第5条第1項第二号(第一号は発電所・蓄電所・変電所の出力や送電線路・配電線路の電圧の変更)。『項』は条文の段落、『号』は項の中の列挙で、廃止は号の側。手続きは『届出』ではなく『報告』で、時期は『遅滞なく』

  4. 使用前自主検査と使用前自己確認を同じ制度だと混同する。あるいは、自己確認は自主検査に上乗せされる義務だと思い込む

    なぜ引っかかるどちらも『使用開始前に自ら確認する』という共通点を持つ名称で、自己確認のほうが後ろの条番号なので、上乗せの関係だと考えやすい

    見破り方使用前自主検査(51条)は、48条1項の工事計画届出をした工事に関する制度。使用前自己確認(51条の2)は、省令(施行規則第74条・別表第六)で定める設備の使用開始時に、技術基準適合を自ら確認して結果を届け出る制度で、第1項の但書により、工事計画の認可・届出(設置の工事)に係る設備を使用するときは対象外になる。設備の区分によって使い分ける別の経路と整理する。『どちらが重いか』は条文に書かれていない

  5. 使用前自主検査の義務を『検査の内容を自ら確認すれば足りる』という一段階の義務だと思い込み、検査を実施する体制についての審査を見落とす

    なぜ引っかかる『自主検査』という名前から、設置者が自分で検査を完結させれば義務は終わりだと考えやすく、その検査体制そのものを国がチェックする、もう一段階の手続きがあることに気づきにくい

    見破り方使用前自主検査には、①技術基準適合・工事計画どおりの施工を確認する検査そのものと、②その検査を実施する体制(組織・方法・工程管理)についての審査(主務大臣又は経済産業大臣の登録を受けた者が行う)、という性格の異なる2つの手続きが重なっていると確認する。①だけで義務が完結すると思い込まないようにする

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 一定規模以上の事業用電気工作物の設置・変更工事は、工事計画を主務大臣に届け出て、届出が受理された日から30日を経過した後でなければ着工できない(電気事業法48条)
  2. 工事計画の届出をして設置・変更工事をする事業用電気工作物のうち主務省令で定めるものは、使用開始前に設置者自ら自主検査を行い、技術基準への適合・届出した工事計画どおりの施工であることを確認し、結果を記録・保存する義務がある(使用前自主検査、電気事業法51条)
  3. 使用前自己確認(電気事業法51条の2)は、公共の安全の確保上重要なものとして主務省令(施行規則第74条・別表第六)で定める事業用電気工作物について、使用を開始しようとするとき技術基準に適合することを設置者自らが確認し、その結果を使用開始前に主務大臣へ届け出る制度(第1項・第3項)。第1項の但書により、工事計画の認可・届出(設置の工事に係るもの)の対象となった設備を使用するときは対象外で、使用前自主検査に上乗せされる制度ではなく、設備の区分で使い分ける別の経路と読める。条文は両者の軽重を定めていない
  4. 自家用電気工作物(原子力発電工作物と小規模事業用電気工作物を除く)を設置する者が、発電所・蓄電所・変電所その他の自家用電気工作物を設置する事業場や送電線路・配電線路を廃止した場合は、遅滞なく、設置場所を管轄する産業保安監督部長に報告する(電気関係報告規則第5条第1項第二号)。手続きは『届出』ではなく『報告』で、根拠は『項』ではなく第1項の『号』。なお、廃止の報告で保安規程・主任技術者などの義務がなくなるか、電源を切っただけの状態(休止)の義務がどうなるかを定めた条文は確認できていない(原文未確認)
  5. 使用前自主検査の対象は、工事計画届出をしたすべての事業用電気工作物ではなく、一定規模以上のものに限られる。需要設備であれば、受電電圧1万V(10,000V)以上が対象範囲の目安になる(発電設備・変電所・蓄電所など設備の種類ごとに規模の基準(出力・電圧・容量)は異なるため、具体的な数値は最新の電気事業法施行規則で確認すること)
  6. 使用前自主検査を行う事業用電気工作物を設置する者は、検査の『内容』(技術基準適合・工事計画どおりの施工)を自ら確認するだけでなく、その検査を実施する『体制』(検査を実施する組織、検査の方法、工程管理その他)についても、別途、審査を受けなければならない(審査は、設備に応じて、経済産業大臣の登録を受けた者又は主務大臣が行う。電気事業法51条3項)。この審査は、当該事業用電気工作物の安全管理を旨として行われる、体制面の審査である
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