三相200Vの動力回路で、電圧計を線と線の間(線間)に当てると200Vぴったり出る。だが机の上で「1相あたりの電圧×3相分」と単純計算すると、話が合わない。どこにも間違った数字を使っていないのに、なぜ√3(ルート3)という中途半端な係数が割り込んでくるのか。
このトピックを読み終えるころには、三相動力盤の結線図を見て、それがY結線かΔ結線かを判別し、線間電圧・線電流と相電圧・相電流の関係をその場で計算できるようになっている。
種明かしは、三相交流の3つの電圧(電流)が、120°ずつ位相がずれた状態で「同時に」流れている、という点にある。単純に3倍にならないのは、位相がずれたベクトルを合成しているからだ。
Y結線(スター結線)——電圧に√3がつく
Y結線は、3つの巻線(相)の一端をすべて1点(中性点)に集めた結線方式だ。相電圧 は、各巻線の両端——つまり線と中性点の間——の電圧を指す。線間電圧 は、120°位相がずれた2つの相電圧をベクトルで合成した値になる。
線と巻線が1本ずつそのままつながっているため、線電流と相電流は等しい。
例題
Y結線で、相電圧が200Vのとき、線間電圧を求めよ。
Δ結線(三角結線)——電流に√3がつく
Δ結線は、3つの巻線を輪(三角形)につないだ結線方式で、中性点を持たない。各巻線はそのまま線と線の間に接続されるため、相電圧と線間電圧は等しい。線電流 は、120°位相がずれた2つの相電流をベクトルで合成した値になる。
例題
Δ結線で、線電流が10Aのとき、相電流(各巻線を流れる電流)を求めよ。
三相電力の公式——結線方式によらず同じ式で計算できる
三相の消費電力は、線間電圧と線電流を使えば、結線方式によらず同じ式で求められる。
なぜY結線でもΔ結線でも同じ式になるのか。1相あたりの電力を3相分足し合わせて確認してみる。
Y結線:
Δ結線:
Y結線は電圧側の√3が、Δ結線は電流側の√3が、それぞれ式の中で同じように効いてきて、最終的にどちらも同じという形に落ち着く。結線方式を意識せず、線間電圧と線電流さえ分かれば三相電力を計算できるのはこのためだ。
二電力計法——単相電力計2台だけで、三相電力を測る
三相電力を測るには専用の三相電力計を使うのが確実だが、中性線を持たない3線式の三相回路 なら、単相の電力計を2台だけ使う二電力計法でも全消費電力を測定できる。
2台の電力計 、 を回路に正しく接続すると、それぞれが三相電力の一部を分担して 指示する。三相全体の消費電力 は、この2台の指示値の和に等しい。
ただし、負荷の力率が0.5(位相差60°)を下回るような場合、片方の電力計の指針が 逆振れ(マイナス方向に振り切れて指示できない状態)を起こすことがある。この場合は、 逆振れした電力計だけ電圧端子(または電流端子)の極性を反転させて指示値を読み取り、 その値はマイナスの指示として扱う。
ここでは、、 を符号付きの指示値(逆振れ側の は負の値)とし、 を、極性を反転して読んだ正の指示値(大きさ)と書き分けている。符号付きの値で書けば、上の式は ( は負)という足し算と同じ内容だ。問題文の「」が「反転後に読んだ正の値」なのか「符号付きの値」なのかは問題ごとに異なるので、先に確かめてから、足すか引くかを決める。
例題
二電力計法で測定したところ、2台の電力計がともに正常に振れ、、 を示した。三相回路の全消費電力を求めよ。
別の例では、電力計 の指針が逆振れしたため、電圧端子の極性を反転して測定し直したところ (、符号付きの )を示した。もう一方の は だった場合、全消費電力を求めよ。
二電力計法で一番の落とし穴は、逆振れした電力計の指示値を、そのまま普通にプラスとして 足してしまうことだ。逆振れは「その電力計の分担分がマイナスの値になっている」ことを 示すサインであり、極性を反転させて読み取った指示値は、最終的な合計計算では引き算 として扱わなければならない。2台とも正常に振れていれば単純な足し算(W_1+W_2)で よい、と「逆振れの有無」で計算方法を切り替える判断が必要になる。
実務との接点——Y-Δ始動と変圧器の結線
三相誘導電動機の始動方式の1つに、Y-Δ始動がある。始動の瞬間だけ巻線をY結線にして相電圧を下げ、始動電流を抑えてから、運転時にΔ結線へ切り替えて全電圧で運転する方式だ。
なぜ線電流が減るのかを、式で確かめておく。電源の線間電圧を 、電動機の1相あたりのインピーダンスを とし、始動時の は結線を替えても変わらないものとして比べる。
Δ結線では、各巻線に線間電圧 がそのままかかる。相電流は 、線電流は相電流の√3倍になる。
Y結線では、各巻線にかかる相電圧が に下がる。相電流は で、Y結線は線電流と相電流が等しい。
両者の比をとると、
となり、Y結線で始動すると、Δ結線のまま全電圧で始動した場合の線電流の1/3に抑えられる(巻線電圧が1/√3になる効果と、Y結線では線電流が相電流の√3倍にならない効果が、それぞれ1/√3として掛け合わさる)。たとえばΔ結線で全電圧始動すると線電流が60Aになる電動機なら、Y結線での始動電流は60/3=20Aだ。なお、始動トルクも巻線電圧の2乗にほぼ比例して減るため、同じく約1/3になる。だから負荷が軽い状態で始動する用途に向く。
また、三相変圧器では一次側・二次側の結線をY結線・Δ結線の組み合わせで選ぶ(Y-Δ、Δ-Yなど)。結線の組み合わせによって一次・二次間の位相の変位や、中性点接地の可否が変わってくるため、系統設計や機器選定の場面でも、Y結線とΔ結線の違いを正しく理解しておくことが欠かせない。
冒頭の「線間電圧200V」の謎——答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。