現場に搬入された機器の銘板を見ると、「AC200V 50/60Hz」と書かれている。テスタで実際に測ってみると、201Vだったり199Vだったりして、常にぴったり200Vというわけではない。この「200V」とは、そもそも何の値を指しているのか。
そして、周波数の欄になぜ「50Hz」と「60Hz」の2つが並んで書いてあるのか。同じ製品なのに、日本のどこで使うかによって挙動が変わるということなのか。
このトピックを読み終えるころには、現場の銘板や仕様書に書かれた電圧・電流・周波数・力率の数字が何を意味するかを、電気工事士の説明を鵜呑みにせず自分の言葉で確認できるようになっている。
種明かしの前に、まず押さえておきたいのは、電気工事士が「工事する」資格であるのに対し、施工管理技士は「現場を管理する」資格だという点だ。配線の細かい計算そのものは電気工事士や設計者の仕事でも、「この配線・このブレーカーで本当に足りているのか」を現場でその場で見当づけられるかどうかは、施工管理者としての判断力に直結する。そのための最低限の土台が、オームの法則と交流回路の基礎理論になる。
オームの法則 — 電圧・電流・抵抗の関係
電気回路のもっとも基本の式が、オームの法則だ。
は電圧〔V〕、は電流〔A〕、は抵抗〔Ω〕を表す。電圧・電流・抵抗のうち2つが分かれば、残り1つはこの式を変形するだけで求まる。
例題
抵抗20Ωに電圧100Vを加えたとき、流れる電流はいくらか。
静電気とクーロンの法則
電気の基礎理論には、電流が流れる回路の話とは別に、動かない電荷どうしが及ぼし合う力(静電気力)の話がある。同種の電荷(プラスどうし、マイナスどうし)は反発し合い、異種の電荷(プラスとマイナス)は引き合う。この力の大きさを表すのがクーロンの法則だ。
、は2つの点電荷〔C〕、は電荷間の距離〔m〕、は真空の誘電率を表す。力の大きさは電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例する。距離を2倍にすると力は1/4に、3倍にすると1/9になる。
例題
真空中に点電荷C、Cが0.3mの距離にあるとき、両者の間に働く静電力Fを求める。〔F/m〕とする。
コンデンサの合成静電容量 — 抵抗とは逆の関係
2枚の電極板の間に絶縁体(誘電体)を挟んだ部品がコンデンサで、電圧を加えると電極板に電荷を蓄える。電線の抵抗と同じように、複数のコンデンサを接続したときの合成静電容量にも公式があるが、この公式は抵抗の合成公式とちょうど逆の形になる。
抵抗は並列接続で合成値が小さくなり直列接続で大きくなるが、コンデンサは並列接続で合成値が大きくなり直列接続で小さくなる。並列接続は電極板の面積が実質的に増えると考えれば、容量が大きくなる方向は感覚的にも理解しやすい。
例題
静電容量が等しい2個のコンデンサC(=4μF)を並列接続したときの合成静電容量と、直列接続したときの合成静電容量を比べる。
並列合成は直列合成の8/2=4倍になる。
電磁力とフレミングの左手の法則
磁界の中に置かれた導体に電流を流すと、導体には磁界の向きと電流の向きの両方に直交する方向の力(電磁力)が働く。この力の大きさはF=BIL〔N〕(Bは磁束密度、Iは電流、Lは磁界中にある導体の長さ)で求まり、モーター(電動機)が回転する仕組みの土台になっている現象だ。
この力の向きを求めるために使うのがフレミングの左手の法則だ。左手の親指・人差し指・中指を、それぞれ直交するように立てる。
- 中指:電流の向き
- 人差し指:磁界の向き
- 親指:力の向き
抵抗の温度による変化
金属の電気抵抗は、温度が上がると大きくなる。銅やアルミといった導体でできた電線・巻線の抵抗値は、周囲温度や通電による発熱で変化するため、ある基準温度での抵抗値が分かれば、別の温度での抵抗値を計算で求められる。
は温度での抵抗値、は温度での抵抗値、は抵抗温度係数を表す。
例題
ある金属体の温度が20℃のとき抵抗値は10Ωだった。抵抗温度係数を0.004℃⁻¹とすると、抵抗値が12Ωになるときの温度を求める。
交流回路の基礎 — 正弦波・周波数・実効値
直流回路では、電圧・電流は時間が経っても向きも大きさも変わらない。ところが、コンセントや動力盤から得られる電気は交流で、電圧・電流の大きさと向きが周期的に変化する波(正弦波)になっている。
1秒間にこの波を何回繰り返すかを表す数値が周波数〔Hz〕だ。国内では、静岡県の富士川・新潟県の糸魚川付近をおおむねの境に、東日本が50Hz、西日本が60Hzに分かれている(明治期に関東はドイツ製50Hz機、関西はアメリカ製60Hz機を導入したことに由来する)。この境界線付近には両方の周波数が混在する地域もあり、都道府県単位できれいに分かれているわけではない。銘板に「50/60Hz」と両方書かれている機器は、日本国内のどちらの地域に持ち込んでも使えるように設計されているということになる。
交流電圧・電流は刻一刻と大きさが変わるため、「交流の100V」と言うとき、それがどの瞬間の値を指しているのかが問題になる。ここで使われるのが実効値という考え方だ。実効値とは、同じ抵抗に同じ時間流したときに、直流に置き換えても同じ発熱量(仕事量)になるように定義した値のこと。テスタの表示や機器銘板の電圧・電流は、断りがない限りこの実効値を指している。
正弦波の場合、瞬間的な最大値(波高値)は実効値の倍になる。
冒頭のテスタの測定値が199V〜201Vとふらついていたのは、実際の電源電圧に多少の変動があるためで、これは実効値どうしの比較で見ている。仮に瞬間の波形をオシロスコープで見れば、実効値200Vの波は約283V()まで振れていることになる。
インピーダンス — 交流での「抵抗」に相当する量
直流回路では、抵抗Rさえ分かればV=IRで電圧・電流の関係が決まった。ところが交流回路にコイル(インダクタンス)やコンデンサ(キャパシタンス)が混ざると、電圧と電流のタイミング(位相)がずれる現象が起きる。抵抗だけの回路では電圧と電流は同じタイミングで変化する(同位相)が、コイルを含む回路では電流が電圧より90°遅れ、コンデンサを含む回路では逆に電流が電圧より90°進む。
この位相のずれを含めて、交流回路における「電圧と電流の比」を表した量がインピーダンス〔Ω〕だ。抵抗Rによる成分と、コイル・コンデンサによる成分(リアクタンスX)を合わせたもので、直列回路では次の関係になる。
2級電気工事施工管理技士の第一次検定で求められるのは、主に「なぜ交流回路では位相がずれるのか」「インピーダンスが抵抗とは違う、位相を含めた量であること」を理解しておくレベルで、ベクトル図を使った複雑な計算まで踏み込む必要は薄い。より詳しい計算(RLC直列回路のベクトル図や、力率改善用コンデンサの容量計算など)は、電験三種(第三種電気主任技術者)の範囲になる。
例題 — RL直列回路で各素子の電圧を求める
抵抗RとコイルXLの直列回路で、電源電圧E(実効値)=200V、R=16Ω、XL=12Ωのとき、抵抗Rの両端の電圧VRを求める。手順は「①インピーダンスZを求める→②回路全体の電流Iを求める→③各素子の電圧を求める」の3段階になる。
交流の電力と力率
電圧・電流が分かれば直流の電力はP=VIで求まるが、交流ではここに力率という要素が加わる。
- 有効電力 〔W〕:モーターを回す、ヒーターを発熱させるといった、実際に仕事に使われる電力
- 皮相電力 〔VA〕:電源設備が実際に供給しなければならない電力の見かけ上の大きさ()
- 力率 :皮相電力のうち、どれだけが有効電力として実際に仕事に使われているかを表す比率
力率は必ず0以上1以下の値になる。モーターなど誘導性の負荷が多い現場では、力率が0.6〜0.8程度まで下がることがあり、この場合、同じ有効電力(仕事量)を得るために、電源からより多くの電流を引き込まなければならなくなる。電流が増えれば配線の発熱や電圧降下も大きくなるため、電線の太さやブレーカー容量を検討するときに、力率は無視できない要素になる。
例題
電圧200V、電流10A、力率0.8の単相負荷が実際に消費する有効電力はいくらか。
力率改善の効果 — 短絡電流は減らせない
力率が低いままだと、同じ有効電力を得るのにより多くの電流が電源から流れ込むため、送配電設備側にはいくつかの悪影響が生じる。進相コンデンサの設置などで力率を改善すると、次のような効果が得られる。
- 配電設備容量に余裕ができる:同じ変圧器・電線でも、無駄な電流(無効電力分)が減る分、実際に供給できる有効電力の余裕が生まれる
- 系統の電圧変動を抑制できる:電流が減ることで、電線・変圧器のインピーダンスによる電圧降下が小さくなる
- 送電損失を軽減できる:送電損失は電流の2乗に比例するため、電流が減ると損失は大きく減る
- 電気料金の基本料金が割引される:多くの電力会社では、力率が一定水準を超えると基本料金が割引される制度がある
一方で、短絡電流を軽減する効果はない。短絡電流の大きさは、電源側の変圧器・電線のインピーダンスや事故が起きた地点までの回路条件によって決まるものであり、力率改善(進相コンデンサの設置)がこの値に影響することはない。短絡電流を軽減したい場合は、限流リアクトルの挿入など別の対策が必要になる。
電線の抵抗 — 長さ・太さでどう変わるか
現場で電線のサイズを見比べるとき、「太い電線ほど抵抗が小さい」という感覚はあっても、それが具体的にどれくらいの差になるかまで意識することは少ない。電線の抵抗は、抵抗率・長さ・断面積から次の式で求まる。
同じ材質の電線であれば、抵抗は長さに比例し、断面積に反比例する。ここで注意したいのは、断面積が電線の直径の2乗に比例する()という点だ。つまり、直径を2倍にすると断面積は4倍になり、抵抗は1/4に下がる。「太さ2倍→抵抗半分」ではなく、「太さ2倍→抵抗1/4」になる。
例題
直径1.0mm・長さ20mの電線Aと、直径2.0mm・長さ40mの電線Bを比べる(抵抗率・温度は同一)。
長さの比は40/20=2倍、断面積の比は直径が2倍なので2²=4倍。R=ρL/Aに代入すると、電線Bの抵抗は電線Aの倍になる。
電磁誘導 — 磁束の変化がつくる起電力
コイルの近くで磁石を動かしたり、コイルを貫く磁束が変化したりすると、コイルの両端に電圧(起電力)が生じる。これを電磁誘導といい、変圧器・発電機・モーターなど、現場で扱うほぼすべての電気機器の動作原理の土台になっている現象だ。
この誘導起電力の大きさは、ファラデーの法則で求まる。
はコイルの巻数、は磁束の変化量〔Wb〕、はその変化にかかった時間〔s〕を表す。巻数が多いほど、また磁束が短い時間で大きく変化するほど、発生する起電力は大きくなる。
例題
巻数200回のコイルを貫く磁束が、0.1秒間に0.03Wbの割合で増加するときの誘導起電力を求める。
磁石と磁力線 — 目に見えない磁界を線で表す
電磁誘導や誘導電動機、変圧器といった機器の動作原理をたどっていくと、必ず「磁界」の話に行き着く。磁界そのものは目に見えないが、その向きと強さを視覚的に表すために使われるのが磁力線という仮想の線だ。
磁力線には、次のような基本的な性質がある。
- 磁力線はN極から出てS極に入る(向きを持つ)
- 磁力線は途中で折れ曲がったり、分岐したり、他の磁力線と交わったりすることはない
- 磁力線が密な場所ほど磁界が強く、疎な場所ほど磁界は弱い(磁力線の密度=磁界の強さ)
- 磁力線上の任意の点における接線の方向が、その点における磁界の向きを表す
磁石そのものの力については、同種の磁極(N極どうし、S極どうし)は反発し合い、異種の磁極(N極とS極)は引き合うという、静電気のクーロンの法則と対になる基本性質がある。
電気量と電流 — Q=Itが表す「電流の正体」
ここまで扱ってきたオームの法則V=IRは、電圧・電流・抵抗の関係を表す式だが、そもそも「電流」自体が何を表す量なのかを押さえておくと理解が一段深くなる。電流とは、導体の断面を単位時間あたりに通過する電気量(電荷)の大きさのことだ。
は電気量〔C〕、は電流〔A〕、は時間〔s〕を表す。電流の単位A(アンペア)は「1秒間に1C(クーロン)の電気量が流れる状態」と定義されており、電気量を時間で割ることで電流が求まる。
例題
電線の断面を5秒間に10C(クーロン)の電荷が一定の割合で通過したときの電流を求める。
計器の測定範囲の拡大 — 倍率器で電圧計のレンジを広げる
現場でテスタや電圧計を使うとき、測定したい電圧が計器本来の最大目盛を超えている場合がある。このとき、計器そのものを買い替えなくても、倍率器と呼ばれる抵抗器を電圧計と直列に接続することで、測定範囲を拡大できる。
内部抵抗の電圧計で、測定範囲を倍に拡大したいとき、倍率器の抵抗値は次の式で求まる。
なぜ倍ではなく倍なのかというと、電圧計自身がすでに元の測定範囲(1倍分)の電圧降下を受け持っており、倍率器はその残り((n-1)倍分)の電圧降下だけを追加で受け持てばよいためだ。電流計の測定範囲を拡大する場合は、電圧計とは逆に、電流計と並列に分流器と呼ばれる抵抗器を接続する。倍率器は直列、分流器は並列——接続の向きが逆になる点に注意が必要だ。
例題
内部抵抗5kΩ、最大目盛10Vの永久磁石可動コイル形電圧計を使い、最大電圧50Vまで測定するための倍率器の抵抗値を求める。
分流器 — 電流計のレンジを広げるもう1つの方法
倍率器が電圧計のレンジを広げる部品だったのに対し、電流計の測定範囲を広げるときに使うのが分流器だ。電流計に測定範囲を超える電流を直接流すとコイルが焼損する恐れがあるため、電流計と並列に抵抗器(分流器)を接続し、測定したい電流の大部分を分流器側に迂回させ、電流計本体には定格内の一部だけを流す。
内部抵抗の電流計で、測定範囲を倍に拡大したいとき、分流器の抵抗値は次の式で求まる。
倍率器(Rv×(n-1)、掛け算)とは逆に、分流器は割り算になる。これは、電圧計が直列接続で電圧を分担するのに対し、電流計は並列接続で電流を分担する、という接続のしかたの違いから来ている。
例題
内部抵抗0.04Ω・定格電流10Aの電流計を使って、最大50Aまで測定できるようにする分流器の抵抗値を求める。
アナログ計器とデジタル計器 — 何が違うのか
現場で使うテスタやクランプメータには、指針が振れて目盛を読み取るアナログ計器と、数値がそのまま表示されるデジタル計器の2種類がある。デジタル計器がアナログ計器より優れているとされる点は、主に次の4つに整理できる。
- 入力インピーダンス(内部抵抗)が高い:測定回路に流れ込む電流が少なく、測定対象への影響(誤差)を抑えられる。逆に、アナログ計器は内部抵抗が比較的低いため、この点で誤差が出やすい
- 個人差による読み取り誤差がない:指針の位置を目分量で読むアナログ計器と違い、数値がそのまま表示されるため、読み取る人によって値がぶれない
- 内部でA-D変換を行っている:計器内部で、測定したアナログ量(連続的に変化する量)をデジタル量(離散的な数値)に変換する回路(A-D変換部)を持つ
- コンピュータに接続してデータ処理ができる:測定値がデジタル信号のため、他の電子機器やコンピュータへそのままデータを取り込み、記録・処理できる
ブリッジ回路 — 平衡すると検流計に電流が流れなくなる
4つの抵抗をひし形(ブリッジ状)に並べ、対角線の位置に検流計(電流の有無を検出する計器)を接続した回路をブリッジ回路(ホイートストンブリッジ)という。未知の抵抗値を精密に測定する方法の1つとして使われる。
4辺の抵抗値をうまく調整すると、対角線上の検流計にまったく電流が流れなくなる状態が生じる。この状態を「ブリッジが平衡している」といい、このとき対辺(検流計を挟んで向かい合う2辺)どうしの抵抗の積が等しくなるという関係(平衡条件)が成り立つ。
・・は既知の抵抗、は未知の抵抗を表す(PとX、QとRがそれぞれ対辺の関係にあるとする)。この式を使えば、既知の3辺の抵抗値から、残り1辺の未知抵抗を計算で求められる。
例題
抵抗P=5Ω、Q=10Ω、R=8Ωをブリッジ状に接続し(PとX、QとRが対辺)、検流計に電流が流れない(平衡した)ときの未知抵抗Xを求める。
磁性体の分類 — 磁石に強く引き寄せられる物質、弱い物質、逆に反発する物質
金属はすべて磁石に引き寄せられるように思われがちだが、実際には物質ごとに磁界への反応のしかたが大きく異なり、3種類に分類される。
- 強磁性体:外部磁界に強く磁化され、磁界を取り除いても磁気が残る物質。鉄・コバルト・ニッケルが代表例で、日常的な磁石にはっきり引き寄せられる。
- 常磁性体:外部磁界の方向に弱く磁化される物質。アルミニウムなどが該当し、磁化の力は非常に弱く、磁界を除けば磁気は残らない。
- 反磁性体:外部磁界と逆方向にごくわずかに磁化される物質。銀・銅などが該当し、磁石にはほとんど反応しない。
電力量計の計器定数 — 円板の回転数から消費電力量を読む
家庭や工場の電力量を計る誘導形電力量計(積算電力計)は、内部の円板が回転する速さで電力量を計測している。この円板の「回転しやすさ」を表す値が計器定数〔rev/kWh〕で、「1kWhの電力量を計測する間に円板が何回転するか」を表す。
負荷を時間〔h〕流したときの消費電力量〔kWh〕が分かれば、その間の円板の回転数は次の式で求まる。
例題
計器定数1500rev/kWhの単相2線式の電力量計を、電圧100V、電流10A、力率0.9の回路に20分間接続した場合の円板の回転数を求める。
施工管理者として、この基礎理論が現場でどう役に立つか
ここまでの内容は、電気工事士が結線作業をするための知識というより、施工管理者が現場の設備・配線の妥当性を自分の頭で確認するための土台になる。たとえば、次のような場面だ。
- 機器銘板の定格電流とブレーカーの定格を見比べて、「このブレーカー容量で足りているか」を大まかに見当づける(オームの法則・力率の考え方)
- 「50/60Hz両対応」と書かれた機器を見て、それが東西で周波数が異なる日本特有の事情に対応した設計だと分かる(周波数の基礎)
- テスタの測定値がわずかに揺れていても、それが実効値としての正常な範囲内の変動なのか、異常な電圧変動なのかを区別する足がかりを持てる(実効値の考え方)
- 「力率が悪いので改善してほしい」という電力会社や設計者からの指摘の意味を、有効電力・皮相電力の関係から理解できる(力率の考え方)
これらはいずれも、深い計算力よりも「数字が何を表しているか」を正しく読み解く力が問われる場面だ。第一次検定の「電気工学等」科目でも、この読み解く力の土台としてオームの法則・交流回路の基礎が問われる。
この資格を取ったあと、現場で何が変わるか
この資格を取ったあと、現場に搬入された機器の前で、電気工事士が「この容量で問題ないですよ」と説明するのを、そのまま鵜呑みにせず自分の頭で検算できるようになる。銘板に書かれた定格電流とブレーカーの定格を見比べて、V=IRやP=VIcosφをその場で当てはめ、「この力率なら電流はもっと大きくなるのでは」と、疑問点を具体的な数字で指摘できる立場に変わる。
テスタで測った電圧が199Vや201Vとふらついているのを見て、「異常かもしれない」と慌てる新人に対して、それが実効値としての正常な変動範囲なのか、本当に調べるべき異常なのかを、実効値と波高値の関係から冷静に切り分けて説明できるのも、この資格を取った後の変化だ。感覚ではなく数字の意味から判断する側に回る。
電力会社や設計者から「力率が悪いので改善してほしい」という指摘を受けたとき、それを単なる指示として右から左に流すのではなく、有効電力・皮相電力の関係から「なぜ改善が必要なのか」を自分の言葉で施主や現場の作業員に説明できるようになる。この基礎理論を土台に持っているかどうかが、現場で交わされる電気工学的なやり取りに、対等な立場で加われるかどうかを分ける。
冒頭の「なぜテスタの値がぴったり200Vにならないのか」「なぜ周波数欄に50Hzと60Hzの両方が書いてあるのか」という2つの謎の答え合わせは、理解度チェックの問題でしてみよう。
もっと深く学びたい人へ
この記事は、2級電気工事施工管理技士の第一次検定に必要な「施工管理者として最低限おさえる基礎」に絞って解説した。インピーダンスのベクトル計算や、力率改善用コンデンサの容量計算まで踏み込んで理解したい場合は、電験三種(第三種電気主任技術者)向けに書いた次のトピックがより深い内容を扱っている。
- 直流回路の分圧・分流 — オームの法則を直列・並列回路に応用する考え方
- 交流の実効値・平均値・波形率 — 実効値の定義をより厳密に、平均値・波形率まで含めて扱う
- RLC直列回路とベクトル図 — インピーダンスをベクトル図で合成する計算方法
- 交流電力と力率 — 有効電力・無効電力・皮相電力の関係と、力率改善用コンデンサの容量計算