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ケーブルグランドのねじ規格(M・PG・NPT)はなぜ統一されていないのか|『穴には入るのに固定できない』トラブルの原因と見分け方

・ 読了目安: 10分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

輸入した制御盤の側面には、あらかじめ丸い穴が開けられていた。直径はカタログ通りで、手配したケーブルグランドの外径ともほぼ一致している。ところが、いざねじ込もうとすると、途中で止まって前に進まない。無理に力を入れれば、パネル側のねじ山を潰してしまいかねない。穴には確かに入る。入るのに、固定できない。

現場の担当者は最初、寸法を測り間違えたのだと思ったはずだ。だが巻尺を当て直しても、外径の数字はカタログ表示と大きくは違わない。狂っていたのは直径ではなく、その内側にあるねじ山の刻み方——ピッチと角度——の方だった。

ケーブルグランドのねじには、複数の規格が並存している

ケーブルグランドは、電線管や機器の開口部にケーブルを引き込む際、その隙間をパッキンで締め付けて防水・固定する部材だ。この部材が取付穴にねじ込まれる仕組みである以上、グランド側のねじと、穴(またはナット)側のねじが同一規格でなければ、原理的に噛み合わない。

そして、この「ねじの規格」が世界で統一されていない。現在流通しているケーブルグランドには、大きく分けて次の系統がある。

  • メートルねじ(M):ISO規格に基づく、ヨーロッパで現在標準の規格。M16・M20・M25のように呼び径をそのままミリ単位で表記する
  • PGねじ:ドイツ発祥の電線管ねじ。Pg13.5・Pg16のように呼び数字がついているが、この数字はねじの外径そのものではない
  • NPTねじ:アメリカ合衆国の規格。ANSI B2.1で規定され、他の2つとは構造そのものが異なるテーパねじ(先端に向かって細くなるねじ)である
  • G(PF)ねじ:JIS管用平行ねじ系統。日本国内メーカーの標準品で広く採用されている

海外製の制御盤・機器を輸入する場面や、異なるメーカーの部材を組み合わせる場面で起きる「穴には入るのに固定できない」というトラブルの大半は、この4系統のどれかを取り違えたときに発生する。

なぜ4つも並存しているのか——ドイツ規格が「標準」だった時代の名残

PGねじの成り立ちを追うと、この並存の理由が見えてくる。

PGは、装甲電線管(Panzerrohr)のねじを意味するドイツ語Panzergewindeに由来する略称で、鋼製の電線管でケーブルを保護するという発想から生まれ、DIN 40430として規格化された。ねじ工具メーカーBAER Toolsの技術資料によれば、呼び数字(Pg13.5・Pg16など)は「その管に通せる線の直径」を目安にした数字で、ねじの外径そのものを表すわけではない。ただしこの資料は、呼び数字と実際に通せる径が正確に一致するわけではない、とも断っている。目安として読む数字であって、適合ケーブル径は必ず製品ごとの仕様で確認する必要がある。ねじ山角度は80度と特徴的で、彌満和製作所(YAMAWA)の技術資料では「JIS規格の薄鋼電線管ねじ(JIS C 8305)と似た規格」と説明されている。このPGねじは、スイス・オーストリアなど近隣のヨーロッパ諸国にも広がり、長らく事実上の標準として使われてきた。

ところが2000年、ヨーロッパの規格統一の流れの中で、ケーブルグランド用の規格はメートルねじへ置き換えられることになった。同じBAER Toolsの資料は、2000年に新しいDIN規格が導入されてメートルねじに置き換わり、PGねじは新規設置に使ってはならず、現在は用途がごく限られた特殊ねじとして残るだけだと説明している。日本エイ・ヴィー・シー株式会社(AVC)の技術資料も、Pgねじの製品規格が1999年12月31日付で効力を失い、新欧州規格のメートルねじ(M)に置き換えられたと説明している。

なお、そのとき置き換え先となった欧州規格EN 50262(メートルねじのケーブルグランド規格)自体も、その後さらに世代交代している。現在の国際規格はIEC 62444:2010(Cable glands for electrical installations)で、IEC 60423のメートルねじ仕様のグランドを対象に、構造と性能の要求事項および試験を定めている。欧州でもこれを取り込んだEN 62444がEN 50262を置き換えた。ケーブルグランドの規格書を当たるときは、EN 50262の名前で止まっている資料が少なくない点に注意したい。

ただし、この移行が強制的かつ即時に進んだわけではない。既存設備の交換部品需要は残り続けるため、AVCのようなメーカーは今もPGねじ品の製造を続けている。つまり「新しいMねじに統一されたはずが、古いPGねじの現物が今も市場に大量に残っている」という状態が、この20年以上続いていることになる。

そこへ、大西洋の向こう側の事情がもう一つ加わる。アメリカで機器を製造・輸入する場合はNPTねじが標準になる。MONO塾の技術解説によれば、NPTはASME B1.20.1で規定されるテーパねじで、ねじ山角度は60度、JIS規格のテーパねじ(55度)とも異なる別物だ。テーパねじである以上、平行ねじのM・PGとは構造上の互換性がそもそも存在しない。

そして日本国内では、これらとは独立にG(PF)ねじという第4の系統が標準として根づいている。未来工業のケーブルグランド「ミラグランド」を見ると、ねじの呼びはG1/2・G3/4・G1で展開されており、M・PG・NPTのいずれとも異なる規格である。国内の制御盤メーカーの標準品を組み合わせている限り問題は表面化しないが、そこに輸入品が一つ混ざった瞬間、この4系統の並存が現場の問題として立ち上がってくる。

「近いから大丈夫」が一番危ない——ねじの外径がほぼ一致する組み合わせ

厄介なのは、規格が違っても寸法が偶然近い組み合わせが存在することだ。

AVCの技術資料が示す数値を並べると、PG13.5のねじ外径は約20.4mm、対してM20のねじ外径はちょうど20mmとなっている。その差はわずか0.4mm。現場で目視や大まかな計測をした限りでは、ほぼ同じ太さに見えても不思議ではない。

だが、外径が近いことは、そのねじが噛み合うことを何も保証しない。ピッチ(ねじ山1つ分の間隔)を見ると、PG13.5は1.41mm、M20は1.5mmで異なり、さらにねじ山の角度もPGが80度、メートルねじが60度とまったく別の形状をしている。外径というひとつの数字だけを頼りに「このサイズなら合うはずだ」と判断すると、まさにこのPG13.5とM20のような組み合わせで、ねじ込んだ途中で止まる・山を潰すといったトラブルに行き着く。

AVCの技術資料自身も、この点に釘を刺している。ケーブルグランドの取付部ねじは「付属のロックナット等には勘合しますが、精度の高いネジ穴には入らないことがあります」と明記されているのだ。付属のロックナットは、そのグランドと同じ規格でメーカーが作っているのだから当然噛み合う。問題は、そのグランドを、別の規格でタップ加工された盤やボックスの穴に直接ねじ込もうとしたときに起きる。穴の径が目視でほぼ一致していても、ねじ山という「もう一段細かい規格」が一致していなければ、締結は成立しない。

NPTねじについては、事情がむしろ分かりやすい。テーパ形状という見た目の違いがあるため、M・PGとの混同はそれほど起きにくい。本当に注意が要るのは、PGとMのように「平行ねじ同士で、外径が近い」組み合わせの方だ。

見分け方——刻印、実測、そしてPg13.5の罠

手元のケーブルグランドや、輸入機器の取付穴がどの規格かを見分けるには、次の順で確認するのが確実だ。

まず、グランド本体や機器の銘板に刻印がないか探す。輸入機器では「Pg13.5」「M20×1.5」のように、規格と寸法がそのまま刻まれていることが多い。これが見つかれば、それ以上の作業は要らない。

刻印が見当たらない場合は、実測に切り替える。ノギスでねじの外径を測るだけでなく、ピッチゲージ(山のピッチを測る工具)を必ず併用する。前述の通り、外径だけではPG13.5とM20のように別規格が0.4mm差まで近づくことがあるため、外径とピッチの両方が一致して初めて、同一規格だと判断できる。ねじ込んだときにテーパ状に細くなっていくかどうかも、NPTかどうかを切り分ける手がかりになる。

規格を特定できたら、株式会社ハギテックのような専門メーカーが扱う変換アダプタの存在も選択肢に入ってくる。PG7〜PG48、M12〜M80、G(PF)1/2〜4、NPT1/2〜4といった規格間の変換アダプタが実際に市販されており、既存の穴の規格を変えずに、別規格のグランドを取り付けることも技術的には可能だ。ただし、アダプタを一段挟むということは、接続点がひとつ増えるということでもある。屋外設置や高い防水等級が要求される箇所では、この増えた接続点が防水性能や締結の緩みに対する余裕を削ることになりかねない。応急的な対応としては有効でも、恒久設置であれば、取付穴の規格に合ったグランドを選定し直す方が、長期的には安全側の判断になる。

まとめ——「4つの規格が今も現役」という前提から始める

ケーブルグランドのねじ規格がM・PG・NPT・Gの4系統に分かれている背景には、ヨーロッパの旧規格(PG)から新規格(M)への移行が強制ではなく緩やかに進んだこと、アメリカが独自にNPTという別系統を持ち続けていること、そして日本国内ではさらに別のG(PF)ねじが標準として根づいていることが重なっている。

外径だけを見て「サイズが近いから合うだろう」と判断するのが最も危ない。PG13.5とM20のように、規格が違っても外径がわずか0.4mm差まで接近する組み合わせが実在するからだ。刻印の確認、外径とピッチ両方の実測、そして必要であれば変換アダプタの活用——この順番を踏めば、「穴には入るのに固定できない」というトラブルは事前に防げる。輸入機器を扱う機会が一度でもあるなら、この4系統が今も同時に現役だという前提を、発注の前提に組み込んでおく価値がある。

ケーブルグランドのねじ規格確認・選定について

電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)でお見積り・ご相談いただけます。輸入機器・盤の取付部仕様(刻印・実測寸法)と、通したいケーブルの外径をお伝えいただければ、規格の特定から適合するケーブルグランド・変換アダプタの候補選定までご提案します。

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よくある質問

ケーブルグランドのM・PG・NPTは、見た目や号数が近ければ入れ替えて使えますか?

使えないと考えるべきです。たとえばPG13.5とM20は、ねじ外径がPG13.5で約20.4mm、M20で20mmと0.4mmしか違わず、パッと見の太さはほぼ同じです。しかしピッチはPG13.5が1.41mm、M20が1.5mmで、ねじ山角度もPGが80度、メートルねじが60度と別物のため、無理にねじ込むとねじ山を傷めるか、途中までしか入らず固定できません。号数の近さで判断せず、規格記号(M・PG・NPT・G)まで一致させる必要があります。

手元のケーブルグランドや取付穴が、M・PG・NPTのどれか分からないときはどう見分ければいいですか?

まず現物やパネル取付部に刻印がないか確認します。輸入機器では『Pg13.5』『M20×1.5』のように刻印されていることが多く、これが最も確実です。刻印がない場合は、ねじ外径をノギスで実測したうえで、ピッチゲージでねじ山のピッチも測定してください。外径だけでは前述のPG13.5とM20のように別規格が近似することがあるため、外径とピッチの両方が一致して初めて同一規格と判断できます。テーパの有無(ねじ込むほど細くなるか)が確認できればNPTかどうかも切り分けられます。

規格違いのねじ規格変換アダプタを使えば、どんな組み合わせでも解決できますか?

組み合わせによっては変換アダプタが市販されており、PG・M・G(PF)・NPT間の変換に対応する製品があります。ただし、アダプタを介す分だけ接続点が増えるため、防水性能(IP等級)や締結の緩みに対する余裕度は元の直結構成より下がりやすくなります。恒久的な屋外設置や高い防水等級が求められる箇所では、変換アダプタでその場をしのぐより、取付穴やパネル側のねじ規格に合ったケーブルグランドを選定し直す方が、長期的な信頼性は高くなります。

日本国内の制御盤でよく使われているのはどのねじ規格ですか?

国内メーカーの標準品では、G(PF)ねじと呼ばれるJIS管用平行ねじ系統の規格が広く使われています。未来工業のミラグランドもG1/2・G3/4・G1の呼びで展開されており、これは欧州発祥のPGねじ、新欧州規格のMねじ、米国のNPTねじのいずれとも異なる第4の系統です。海外製パネルや機器を国内の盤に組み込む際は、この『国内標準はGねじ』という前提とのズレも含めて確認する必要があります。

ケーブルグランドのねじ規格の確認や選定はどこに相談できますか?

電設資材専門商社の松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)が、輸入機器・盤の取付部仕様(刻印・実測寸法)と、通したいケーブルの外径をお伺いした上で、適合するねじ規格のケーブルグランド・変換アダプタの候補選定と見積りに対応しています。型番が分からない段階でも、見積フォームからお気軽にお問い合わせください。

参考文献・出典

型番不明でもOK

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