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端子ねじの締め付けトルク規定値一覧|サイズ別の目安値とトルクドライバーの正しい使い方

・ 読了目安: 11分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

この記事の結論

端子ねじの締付トルクは呼び径だけでは決まらず、使用する端子台・リレーのカタログや取扱説明書の値で締める。NECA C2811の表(M3=0.5、M3.5=0.8、M4=1.2、M5=2.0 N・m)は締め付け強度試験の条件で、メーカーは製品ごとに別の範囲を示す(例:YOSHIDA端子台のM4は1.2〜1.8 N・m、パナソニックのリレー用端子台のM3.5は0.78〜0.98 N・m)。締めすぎもねじ破損の原因になるため、トルクドライバーで上限と下限を管理する。

制御盤の新設工事が一段落したあと、電気主任技術者の立会い検査で「このねじ、指で回りますよ」と指摘されることがある。作業した本人からすれば納得がいかない。ドライバーを握った手ごたえは十分にあったはずで、「しっかり締めた」という感覚に嘘はないからだ。それなのに、検査の当日にはもう緩んでいる。

締めたはずなのに緩んでいる。この食い違いは、作業が雑だったからではない。原因の多くは、締めた本人の「手ごたえ」という感覚そのものの側にある。

「力いっぱい」が個人差でしかない理由

同じM3.5の端子ねじを、同じドライバーで、10人の作業者に「しっかり締めて」と頼んだとする。出てくる締付トルクはおそらく一本の線には収まらない。体格、握力、その日の疲労度、さらには「しっかり」という言葉から各自が思い描く強さの基準そのものが違う。感覚を管理の手段にするというのは、こういうバラツキをそのまま許容するということだ。

もう一つ、見落とされがちな側面がある。「足りないよりは多いほうが安全だろう」という直感だ。ねじは締めれば締めるほど緩みにくくなる、という素朴な期待は自然に思える。ところが、この期待は途中から事実に裏切られる。ねじには降伏点があり、規定を超えて締め込めば、ねじ山がつぶれる、いわゆる「ねじバカ」を起こす。ねじ山が変形すれば、その後どれだけ丁寧に締め直しても保持力は戻らない。端子台本体が樹脂製であれば、締めすぎで座面が割れることもある。つまり、締付トルクには下限だけでなく上限もある。強さの一本道ではなく、範囲でしか語れない量だということだ。

トルク値が「範囲」で規定されている理由

端子ねじの締付トルクの目安として、フジコンの技術資料はNECA C2811(日本電気制御機器工業会規格)の表1を、呼び径ごとの数値として紹介している。同資料では、この表1は締め付け強度試験で端子ねじに5〜15秒間加えるトルクとして示されている。一方でアメリカン電機は同じ数値(M3.5=0.8、M4=1.2 N・m等)を端子ねじの適正締付トルクとして案内しており、表の数値の位置づけはメーカーによって説明が異なる。実際にカタログへ掲載される締付トルクは各メーカーが自社製品向けに個別の範囲として示しており、範囲になっているのには理由がある。東朋テクノロジー(YOSHIDA端子台)は、締付トルクはボルトやナットの表面状態や締付工具によって変動するため、規格値より高めで、ある範囲を持たせてカタログに表示していると説明している。

下の表は、フジコンの技術資料が「表1(NECA C2811より)」として掲載している、締め付け強度試験の条件値である。

ねじ呼び径締付トルク基準値
M30.5 N・m
M3.50.8 N・m
M41.2 N・m
M52.0 N・m
M62.5 N・m
M85.5 N・m
M1010.0 N・m
M1215.5 N・m

この表の数値をそのまま「NECA C2811の確定値」として扱わないでほしい。 東朋テクノロジーの表の「規格値(JIS)」欄は、M8=6.0、M10=10.0、M12=14.0 N・m(M6は2.5、六角ボルトは3.0)で、フジコンが表1として示すM8=5.5、M12=15.5 N・mとは一致しない。フジコンによれば端子台のJIS規格の代替としてNECA C2811が制定されているが、表の数値がどの版のものかは、有償の現行規格票でしか確認できない。数値そのものより、次の一点を押さえておくことが重要だ——これを丸暗記しても、現場ではあまり役に立たない。理由は次の節で数値そのものが教えてくれる。

同じ「M3.5」でも、製品によって数値は一つに決まらない

実際に手元にある端子台やリレーの型番でメーカーの技術資料を確認すると、上の基準値どおりの数字がそのまま載っていることは少ない。各社が自社製品の構造・接触面積・想定される導体の太さに応じて、独自の許容範囲を設定しているからだ。

メーカー・製品ねじサイズ締付トルク備考
YOSHIDA端子台(東朋テクノロジー)M30.5〜0.75 N・m圧着端子接続時
YOSHIDA端子台M41.2〜1.8 N・m圧着端子接続時
YOSHIDA端子台M52.0〜3.0 N・m圧着端子接続時
日東工業 端子台M30.6〜0.8 N・m座金付なべ小ねじ・線押え端子
日東工業 端子台M3.50.8〜1.2 N・m座金付なべ小ねじ・線押え端子
日東工業 端子台M41.2〜1.8 N・m座金付なべ小ねじ・線押え端子
日東工業 端子台M52.5〜3.5 N・m(ソルダーレス端子2〜3 N・m)なべ小ねじ・線押え/ソルダーレス
日東工業 端子台M86〜8 N・m(六角ボルト等で圧着端子・銅バー8〜13 N・m)ねじの種類で異なる
フエニックスコンタクト UT2,5-3LM30.5〜0.6 N・m積層式端子台
フエニックスコンタクト UT16M52.5〜3.0 N・m大電流用端子台
パナソニック 4点ユニットリレー AY3M30.3〜0.5 N・m小形リレー
パナソニック SPリレー用端子台 AR1922/AR1942M3.50.78〜0.98 N・mリレー用端子台
パナソニック HEリレー用端子台M3.5/M4コイル端子0.78〜0.98 N・m/接点端子1.176〜1.37 N・m同一端子台でも端子の役割で異なる

見るべきは個々の数値ではなく、幅の出方だ。同じM3でも、4点ユニットリレーの0.3〜0.5N・mから汎用端子台の0.6〜0.8N・mまで開きがある。同じM8でも、日東工業の資料では座金付なべ小ねじ・線押え端子が6〜8N・m、六角ボルト等で圧着端子や銅バーを締める場合が8〜13N・mと分かれる。ねじの太さは同じでも、ねじの種類や締め付けている相手によって、必要な締付トルクは変わる。さらに興味深いのは、パナソニックのHEリレー用端子台の例だ。一つの端子台の中で、コイル用の端子(M3.5)と接点用の端子(M4)という役割の違いで、指定トルクが別に設定されている。ねじの呼び径だけを頼りに「M3.5だから0.8N・mでいいはずだ」と決め打ちするのは、この段階でもう危うい。

もう一段深い理解——規格表の数値と、カタログの締付範囲は別物

ここまで基準値と各社のカタログ値を並べてきたが、そもそもNECA C2811の数値自体、何のために定められているのか。フジコンの技術資料では、表1の数値は締め付け強度試験で端子ねじを徐々に締め付けて加えるトルクとして紹介されている。東朋テクノロジーは、締付トルクが表面状態や工具で変動するため、規格値より高めで範囲を持たせた値をカタログに載せている。

端子台の現行JISには、JIS C 8201-7-1(銅導体用端子台、2016年発行)があり、低圧開閉装置及び制御装置の通則であるJIS C 8201-1(2024年改正)とあわせた規格群を構成している。締付具の試験条件の細部は有償の規格票で確認する必要があるが、いずれにしても規格の数値は試験の土台であって、実際に何N・mで締めるべきかの答えは、使用する製品本体の取扱説明書・カタログに書かれている数値にある。東朋テクノロジーが規格値より高めの範囲をカタログに載せているように、前節の表で数値が一つに決まらなかったのは、乱立しているのではなく、各メーカーが自社製品の構造に合わせて範囲を決めているからだ。

トルクドライバー・トルクレンチの使い方

数値が製品ごとに決まっている以上、締め付ける側の道具も、それに合わせて力を数値で止められるものでなければ意味がない。現場で使われるのは、あらかじめ目標トルクを設定しておく「プレセット型」のトルクドライバー・トルクレンチだ。

使い方の骨格は共通している。まず、締める端子の規定トルクをダイヤルまたはスケールで設定する。次に、通常のドライバーと同じ動作で締め込んでいく。設定したトルクに達すると、「カチッ」という音や手に伝わる感触で知らせる(空転して力を伝えなくなる機構の製品もある)。ここで肝心なのは、その瞬間に手を止めることだ。東日エアトルク販売の解説も、カチンと鳴ったら締め付けを止め、その後も力を入れ続けると締めすぎてしまうと注意している。

締め忘れを防ぎたい工程向けには、締め終えたねじの頭に自動でマーキングを施すタイプのトルクドライバーもある(東日製作所のMNTDなど)。設定トルクに達した瞬間にインクで印を付ける機構を持たせることで、後工程や出荷検査で「マークの有無」を目視するだけで締め忘れを検知できるようにする発想だ。締める作業とマーキングの作業を一体化することで、どちらか一方だけをやり忘れるという事態を構造的になくしている。

締め付け後の確認方法——マーキングで見ているのは「力」ではなく「動き」

締め終えたねじには、合いマーク(ねじの頭と周囲の部材にまたがる一本線)を入れておく方法がある。ここで誤解しやすいのは、このマークが締付力の強さを示しているわけではないという点である。マークが教えてくれるのは、あくまで「締めたときの位置から動いたかどうか」という一点に尽きる。

点検のときにマークがずれていれば、それはねじが緩んだ証拠になる。逆にマークが揃っていれば、少なくとも締めた位置から回転していないことは分かる。トルクの絶対値を再測定しなくても、変化の有無だけを目視で追えるようにする——これが合いマークの役割であり、締付トルクという数値そのものを現場で毎回測り直す代わりに使う、簡便な代理指標になっている。

定期点検での増し締め、どこまでやるべきか

規定トルクで正しく締めたはずのねじでも、時間が経つと緩むことがある。東朋テクノロジーの資料は、ボルト頭やナット座面の陥没、締付け面の粗さ・うねりなどで「初期ゆるみ」が発生することがあり、ゆるめる力が加わらなくても緩み回転する場合があると説明している。施工不良でなくても起こりうる現象だということだ。同資料は、定期的な増し締めが必要な場合があること、振動や衝撃のある場所では定期的に増し締めを行うことを求めている。

ただし、増し締めのやり方にも注意がいる。緩んでいるかどうかを確かめるつもりで、規定トルクを超えてまで力任せに締め直してしまえば、今度は締めすぎでねじ山を痛める側のリスクに踏み込むことになる。増し締めは「規定トルクまで再度きちんと締める」作業であって、「前より強く締め直す」作業ではない。トルクドライバーを規定値に設定し直し、合いマークのずれを確認したうえで、必要な箇所だけ規定トルクまで締め直す——この手順を外れないことが、上限と下限の両方を守り続けるということの中身になる。


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よくある質問

端子ねじの締め付けトルクは、すべてのメーカー・製品で共通の数値ですか?

いいえ、共通ではありません。NECA C2811(日本電気制御機器工業会規格)は呼び径ごとの数値を示していますが、フジコンの解説では、これは締め付け強度試験で加えるトルクとして紹介されています。東朋テクノロジーのように、これより高めの範囲をカタログに示すメーカーもあります。実際にカタログへ掲載される締付トルクは製品ごとに異なります。同じM3.5ねじでも、リレー用端子台では0.78〜0.98N・m、汎用端子台では0.8〜1.2N・mです。日東工業の資料では、同じM8でも座金付なべ小ねじ・線押え端子は6〜8N・m、六角ボルト等で圧着端子・銅バーを締める場合は8〜13N・mと分かれています。必ず使用する製品本体の取扱説明書・カタログに記載された数値を優先してください。

トルクドライバーがない場合、代わりに一般的なプラスドライバーで感覚に頼って締めても大丈夫ですか?

推奨できません。手の締付力は作業者の体格や疲労度によってばらつき、感覚だけに頼ると締め不足による緩みだけでなく、締めすぎによるねじ山の破損や端子台本体の割れも起こり得ます。締付トルクには上限と下限の両方が定められているため、数値で管理できるトルクドライバーの使用が基本です。

トルクドライバーで『カチッ』と鳴った後、念のためもう少し力を入れてもいいですか?

してはいけません。プレセット型のトルクドライバー・トルクレンチは、設定したトルクに達すると内部の機構が空転し、力が伝わらなくなる(あるいは音や振動で知らせる)ことで締めすぎを防ぐ構造になっています。空転した後にさらに力を加え続けると、機構によっては設定トルクを超えて締め付けてしまい、ねじ山の破損につながります。

一度規定トルクで締めた端子ねじが、なぜ時間が経つと緩むのですか?

東朋テクノロジー(YOSHIDA端子台)の資料は、ボルト頭やナット座面の陥没、締付け面の粗さ・うねりなどで『初期ゆるみ』が発生することがあり、定期的な増し締めが必要な場合があると説明しています。振動や衝撃のある場所に設置した場合も端子ねじが緩むことがあるため、定期的な増し締めを行うよう求めています。

参考文献・出典

確認・変更の記録

出典照合日: (AIによる照合補助)

出典12件中11件に到達(2026-10-13)。東日製作所MNTDはランサムウェア被害による公式サイト障害で閲覧不可(未確認のまま残置)。フジコンでNECA C2811表1の値と、それが締め付け強度試験の条件である旨、東朋テクノロジーで規格値より高めの範囲をカタログ表示する旨・適正締付トルク・規格値(JIS)欄・初期ゆるみと増し締め、パナソニックFAQでリレー用端子台の品番別値、日東工業カタログの表をブラウザで画像確認、Phoenix Contactはcurlで403のためブラウザで仕様値(UT 2,5-3L M3 0.5〜0.6Nm、UT 16 M5 2.5〜3Nm)を確認しURLを正規URLに更新。旧本文の不一致を修正:①NECA表を『温度上昇試験の条件』としていたのはフジコンの記述(締め付け強度試験)に合わせて訂正、②『温度試験の条件で推奨トルクではない』という東朋テクノロジーの趣旨説明は同社ページに無く削除、③日東工業の銅バー値(M3.5=2〜3、M4=4〜5、M5=8〜13)は表の読み違いで、実際はM5ソルダーレス2〜3、M6 4〜5、M8 8〜13のため訂正、④JIS C 8201-1表4の『製造業者指定トルクの110%』規定はJSAの公開情報で確認できず削除、⑤アジア電子工業に初期ゆるみの記述は無く東朋テクノロジーへ帰属を変更、⑥『数倍のバラツキ』『年に一度』『必須の工程』は出典が無く削除、⑦『表1は推奨締付トルクではない』はフジコン資料に無く、アメリカン電機FAQは同じ数値を適正締付トルクとして案内しているため、出典ごとの説明の違いとして併記に修正。

個別設備の適合判定・技術者による承認を示すものではありません。

この内容は、第二種電気工事士ではこう問われる

「電線の接続は電気抵抗を増加させないこと」という試験の定番論点は、ここで扱う締付トルクの上限・下限という考え方と地続きです。丸暗記ではなく理屈から押さえておくと応用が利きます。

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