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電材基礎ケーブルノイズ対策

対撚り(ツイストペア)はなぜノイズに強いのか|撚りピッチとノイズ除去率の関係、シールドとの違い

・ 読了目安: 10分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

某工場の更新工事だった。制御盤から現場のセンサーまで、シールド付きの信号ケーブルで引き直した。片端接地の処理も、正しく施した。ところが中継用の端子箱のところで、手持ちのシールド線の在庫がわずかに足りず、最後の1.5メートルだけ、手元にあった予備の平行2心線——シールドもなければ撚りもない、ただ2本を並べただけの線——で継ぎ足すことになった。「ほとんどの区間はシールド済みだし、残りはたった1.5メートルだ」。その場の判断としては、無理もないものだった。

試運転では、ほとんどの時間、計器の指示値は落ち着いていた。ただ、近くの動力盤でコンタクタが投入されるたびに、その瞬間だけ指示値が跳ねた。シールドは正しく機能しているはずだった。接地の処理も間違っていない。それでも、この現象だけがどうしても消えなかった。

原因は、継ぎ足した1.5メートルの区間にあった。シールドの有無ではない。その区間だけ、2本の心線が撚られておらず、ただ平行に並んでいたことだった。

ただ束ねるだけでは、なぜ足りないのか

「2本の電線を束ねる」という作業だけを見れば、撚った場合とただ平行に並べた場合とで、大差はないように見える。どちらも2本の線が並んで走っているし、どちらも結束バンドで留めれば1本の線材として扱える。

ここで紛らわしいのが、電線の世界にある「より線」という言葉だ。1本の太い単線ではなく、細い素線を何本もより合わせて1本の導体にしたもので、目的は柔軟性の確保にある。硬い単線を曲げれば折れやすいが、細い素線をより合わせれば同じ太さでもしなやかに曲がる。これは電気的には依然として「1本の導体」であり、電流はそのより合わされた素線全体を1つの塊として流れる。

一方、ここで扱う対撚り(ツイストペア)はまったく別の構造を指す。絶縁された2本の別々の導体を、対として撚り合わせたものだ。同じ「より」という字を使うために現場でも混同されやすいが、より線が柔軟性のための工夫であるのに対し、対撚りはノイズを打ち消すための工夫である。より線を使っていようと単線を使っていようと、2本の導体が撚られていなければ、対撚りの持つノイズ耐性は一切発生しない。

では、なぜ平行に並べただけでは打ち消せないのか。外部の動力線などが発するノイズ源からの距離は、2本の線それぞれで見れば必ずわずかに違う。片方の線がノイズ源にわずかに近く、もう片方がわずかに遠い——この関係は、2本を平行に並べたまま配線した場合、配線の全長にわたって固定されたままになる。近い方の線には常に大きめの誘導電圧が、遠い方の線には常に小さめの誘導電圧が乗り続け、その差はどこまで配線を延ばしても解消されない。受信側の機器は多くの場合、2本の線の電圧差を信号として読み取る差動方式を採っているが、この方式は「2本に等しくノイズが乗ること」を前提にしている。等しく乗らなければ、その差はそのままノイズとして信号に混入する。

撚ることで、何が入れ替わっているのか

対撚りが行っているのは、この「常に固定された近い・遠い」の関係を、配線の途中で意図的に入れ替え続けることだ。2本の線をよじれば、ある地点では線Aがノイズ源に近く、その半ピッチ先では線Bが近くなる。ノイズ源との位置関係は、撚りのたびに反転する。

JMACS株式会社の技術資料は、この仕組みを「ツイストペア構造にすることで、発生した誘導電圧が互いに打ち消され、ノイズが軽減される」と説明している。

ここで効いているのが「不平衡」という考え方だ。日本電気制御機器工業会の教材をもとにしたオムロンのノイズ対策解説は、2本の信号線とアースとの間に共通に加わるノイズをコモンモードノイズと呼び、これが「それぞれの信号線とアースとのインピーダンスや負荷のインピーダンスに不平衡が生じている場合に発生する」と整理している。裏を返せば、2本の線がノイズに対して対称であるほど、乗ったノイズは差として現れずに済む。撚りとは、この対称性を配線の全長にわたって機械的に作り出す手段にほかならない。同解説はノイズ対策の基本をSuppression(抑制)・Shield(遮蔽)・Separate(分離)の3つに整理したうえで、微弱な信号を扱う配線にはシールド線・ツイストペア線を使うことが望ましいとしている。

平行線が長い1本の差を作り続けるのに対し、撚り線は短い区間ごとに符号の反転する小さな差を積み重ねている、と言い換えてもよい。反転する差同士は打ち消し合い、残るのは撚りの端数程度のわずかな不均衡だけになる。同じ「2本の線を束ねる」という見た目の作業が、撚るか撚らないかという一点で、まったく別の物理現象を利用する対策に変わる。

撚りピッチが細かいほど効く——数字で見る打ち消し効果

では、撚りの間隔(撚りピッチ)を詰めれば、どこまで効果は伸びるのか。JMACSの技術資料には、実際に測定された数値が示されている。

試料ピッチ(インチ)雑音除去率(比率)雑音除去率(dB)
並行線-1:10 dB
撚り線4インチ(約100mm)14:123 dB
撚り線3インチ(約75mm)71:137 dB
撚り線2インチ(約50mm)112:141 dB
撚り線1インチ(約25mm)141:143 dB

(出典:JMACS株式会社技術資料、原典は「ノイズ対策ハンドブック」日刊工業新聞社)

並行線を基準にすると、撚りピッチを4インチまで詰めるだけで雑音除去率は14倍(23dB)に達し、1インチまで詰めれば141倍(43dB)まで伸びる。ピッチを短くするほど、1本の配線の中に反転する小さな差が数多く並ぶことになり、打ち消しの機会がそれだけ増えるためだ。

ただし、ピッチを詰めるほど無条件によいわけではない。同じ資料は、ピッチを小さくしすぎることがケーブルの生産性低下によるコストアップにつながり、線心の撚り込み率が大きくなることで導体抵抗が増加するといった副作用も生じると釘を刺している。撚りピッチの設定は、必要なノイズ耐性と、製造コスト・電気的特性とのバランスで決まる。

LANケーブルのカテゴリで、撚りの作り込みはどう変わるか

この関係は、身近なLANケーブルのカテゴリ差にもそのまま表れている。Cat5eからCat6、Cat6Aへとカテゴリが上がるほど、対応する伝送帯域は広がっていく(Cat5eは100MHz、Cat6は250MHzが目安とされる)。より高い周波数帯まで安定して打ち消す必要が出てくる分、撚りの作り込みにも精度が求められるようになる。

もう一つ見落とされがちな作り込みがある。LANケーブルの中には4対、つまり8本の心線が入っているが、対撚りが打ち消せるのは「ケーブルの外から来るノイズ」であって、すぐ隣を走っている別の対から漏れてくる干渉——クロストーク——までは、撚っただけでは片付かない。エイム電子の解説がケーブル内の対間干渉(クロストーク)と隣接ケーブルからの干渉(エイリアンクロストーク)を分けて扱っているのは、この2つが別の対策を要する問題だからだ。

対と対の干渉を抑えるための作り込みとして、実際のLANケーブルでは4対の撚りピッチを対ごとに変えるという設計が広く採られている。同じピッチで撚った対を隣り合わせると、同じ導線同士が周期的に同じ位置関係で並び続けることになり、干渉が打ち消されずに積み上がってしまうためだ。ただし、具体的にどの対をどのピッチにするかは各メーカーの設計値であり、公開の技術資料に数値が示されることはまずない。最終的にはANSI/TIA-568が規定するNEXT(近端漏話)等の特性値を満たすかどうかで評価される、という形になる。

Cat6以上のケーブルでは、さらにもう一段の対策が加わる。パンドウイットの解説によれば、Cat6以上のケーブルには対と対の間を仕切る「十字介在」と呼ばれるセパレータが入っている。撚りピッチの調整だけでは足りなくなった対間の干渉を、物理的な仕切りで補う構造だ。

ケーブル1本の中の対策だけでは終わらない場面もある。東京富士産業株式会社の技術資料は、複数のLANケーブルを束ねて敷設した際に隣のケーブルから受ける「エイリアンクロストーク」という現象を扱っており、実測例として、48本を束ねた状態ではあるペアの余裕(マージン)がわずか0.31dBまで落ち込んでいたものが、束ねる本数を24本まで減らすだけで5.32dBまで改善したという数値を示している。ケーブル1本の中の撚りをどれだけ精密に作り込んでも、隣に別のケーブルを密着させて束ねてしまえば、そちらから新たなノイズを拾ってしまう。対撚りの効果は、あくまで「そのケーブル1本の中」で完結する対策だ、という一点は見落とされやすい。

シールドとの併用(STPケーブル)が、さらに効く理由

対撚りとシールドは、しばしばセットで語られる。だが両者は同じ弱点を補い合っているわけではなく、そもそも防いでいるノイズの経路が異なる。

対撚りが打ち消しているのは、2本の線に誘導された後の電圧の差だ。ノイズが心線に届くこと自体は止めておらず、届いた後の不均衡を打ち消すという、いわば後処理の対策になる。これに対してシールドは、外来のノイズが心線に届く量そのものを、金属の遮へい層で減らす。ノイズが心線に到達する前の段階で効く対策だ。

この違いから、両者を組み合わせる意味が見えてくる。対撚りの打ち消し効果には限界があり、撚りピッチをどれだけ詰めても、2本の線に誘導される電圧を完全に同一にすることはできず、わずかな不均衡は必ず残る。ノイズ源が強力であればあるほど、この残った不均衡の絶対量も大きくなる。シールドを併用しておけば、対撚りに届く前の段階でノイズの絶対量そのものを減らせるため、対撚りが打ち消しきれずに残す分もあらかじめ小さく抑えられる。産業用イーサネットのようにノイズの多い環境で、シールド付きのSTPケーブルが選ばれるのはこのためだ。

なお、シールドをどう接地するか(片端か両端か)は、対撚りとはまた別の判断が必要になる論点であり、その原理と実務上の注意点は別記事で詳しく扱っている。

撚りが甘い・戻ってしまった配線は、何が起きているか

対撚り構造は、配線の途中では正しく機能していても、末端の処理一つで簡単に壊れる。

コネクタや端子に接続するために被覆を剥ぎ、撚られた対をほどく作業を「撚り戻し」と呼ぶ。東京富士産業株式会社の技術資料は、ANSI/TIA-568-Dに基づく実務基準として、接続ハードウェアへ成端する際の対の撚り戻しを13mm以下に抑えること、Cat6以上のケーブルではさらに厳しく6mm以下に抑えることを推奨している。同資料はまた、シースの除去も対の撚り状態を維持するために最小限にとどめるべきだと述べている。

この許容値がなぜ厳しく決められているのか。撚りが打ち消し効果を発揮するのは、あくまで規則正しく撚られた区間に限られる。端末付近でほどいてしまえば、その部分だけ元の平行線に戻ってしまい、しかも配線の中でもっともノイズにさらされやすい端子・コネクタ周辺という場所で、打ち消しの仕組みが丸ごと失われる。ケーブルの大部分をどれだけ精密な撚りピッチで作り込んでも、端末のわずか数ミリの撚り戻しが、その効果を局所的に無効化してしまうということになる。

同じことは、施工中に撚りが乱れて元のピッチに戻らなくなった箇所や、無理な張力で撚りが伸びてしまった箇所にも当てはまる。ピッチが不揃いになれば、規則正しく反転するはずの差が場所によって崩れ、平均化されずに残る不均衡が増える。撚りは、ケーブルを買った時点で決まる仕様であると同時に、施工の最後まで維持されて初めて意味を持つ構造だということになる。

冒頭の1.5メートルは、結局、対撚りの信号ケーブルに引き直された。シールドはそのままで十分だった。足りなかったのはシールドではなく、撚りだった。

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よくある質問

束ねるだけでなく、なぜわざわざ撚る必要があるのですか?

束ねただけでは、2本の線とノイズ源との位置関係(どちらが近く、どちらが遠いか)が配線の全長にわたって固定されたままになるためです。近い側の線には大きな誘導電圧が、遠い側の線には小さな誘導電圧が乗り続け、その差はどこまで配線を延ばしても解消されません。受信側の多くは2本の線の電圧差を信号として読み取る差動方式のため、この差はそのままノイズとして混入します。撚ることで2本の位置関係を周期的に入れ替え、誘導電圧の偏りを打ち消し合わせています。

「より線」と「対撚り(ツイストペア)」は同じものですか?

別物です。より線は、1本の導体を細い素線で撚り合わせたもので、目的は柔軟性の確保です。電気的には依然として1本の導体であり、ノイズを打ち消す仕組みは持ちません。対撚りは、絶縁された2本の別々の導体を対として撚り合わせたもので、2本の電位差を利用してノイズを打ち消すための構造です。より線を使っていても、その2本が対撚りされていなければノイズ耐性は得られません。

撚りピッチはどのくらい詰めれば効果がありますか?

JMACS株式会社の技術資料に示された実験値では、並行線を基準(雑音除去率1:1)とした場合、撚りピッチ4インチ(約100mm)で14:1(23dB)、1インチ(約25mm)まで詰めると141:1(43dB)まで雑音除去率が向上するとされています。ただしピッチを詰めすぎるとケーブルの生産性低下によるコストアップや、線心の撚り込み率増加による導体抵抗の増加といった副作用も生じるため、必要なノイズ耐性と製造コスト・電気的特性のバランスで決まります。

LANケーブルのカテゴリが上がると、撚りの構造はどう変わりますか?

対応する伝送帯域が広がる(Cat5eは100MHz、Cat6は250MHzが目安)のに合わせて、撚りの精度管理が求められます。またケーブル内の4対(8本)は、対同士の干渉(クロストーク)を抑えるため、対ごとに撚りピッチを変えて作られるのが一般的です(具体的なピッチ値は各メーカーの設計値で、ANSI/TIA-568が規定するNEXT等の特性を満たすかどうかで評価されます)。目に見える形の対策としては、パンドウイットの解説にある通り、Cat6以上のケーブルには対と対を仕切る「十字介在」というセパレータが入っており、対策が一段強化されています。

撚り戻し(端末処理でほどけてしまうこと)はどこまで許容されますか?

東京富士産業株式会社の技術資料によれば、ANSI/TIA-568-Dに基づく実務基準として、接続ハードウェアに成端する際の対の撚り戻しは13mm以下、Cat.6以上のケーブルではさらに厳しく6mm以下に抑えることが推奨されています。この範囲を超えてほどいたまま端子に接続すると、ノイズが侵入しやすい端末付近で対撚りの打ち消し構造そのものが失われます。

対撚りとシールドは、どちらか一方で十分ですか?

防いでいるノイズの経路が異なるため、組み合わせるとより高い耐性が得られます。対撚りは、2本の線に誘導された後の電圧の差を打ち消す対策です。シールドは、外来ノイズが心線に到達する量そのものを遮へい層で減らす対策です。対撚りの打ち消し効果には限界があり、ノイズ源が強力であるほど残る不均衡も大きくなるため、シールドで到達量そのものを減らしておくと、対撚りが打ち消しきれずに残す分もあらかじめ小さく抑えられます。

参考文献・出典

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