安いドラム式の延長コードリールを、面倒だからと全部巻いたままコンセントに挿し、消費電力1200W前後の電気ヒーターをつないで使っていた。しばらくすると、コードがだんだん熱くなり、焦げ臭いにおいがしてきた。
電線の材質も長さも太さも、何ひとつ変わっていない。全部伸ばして使ったときと、巻いたまま使ったときとで、流れている電流の大きさも同じはずだ。それなのに、なぜ発熱のしかたがこんなに変わってしまうのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その理由がはっきり分かるようになっている。
電線の抵抗 は、抵抗率 ・長さ ・断面積 を使って次のように表される。
(ロー)は材質で決まる抵抗率〔Ω·m〕で、電気の通しにくさを表す。 は長さ〔m〕、 は電線を輪切りにしたときの切り口の面積、つまり断面積だ。電線の切り口は円なので、直径 が分かれば断面積が出せる。
つまり、電線は長くなるほど抵抗が増え、太くなるほど抵抗が減る。
この関係は公式として覚えるより先に、「長い・細い電線ほど抵抗が大きい」という方向性を体で覚えておくとよい。これは電圧降下や許容電流の計算の土台になる関係だ。
当サイトの電圧降下計算ツールや許容電流早見ツールは、まさにこの関係を使って実際の数値を自動計算している。
抵抗が同じなのに、なぜ発熱が変わるのか
電流が流れている電線には、その抵抗 に応じた熱(ジュール熱)が絶えず発生している。電流が流れ続ける限り、この発熱は巻いてあっても伸ばしてあっても同じように起き続ける。
違うのは、発生した熱がどこへ逃げるかだ。電線を伸ばして使えば、熱は表面から空気中へ広く逃げていく。ところがドラム式のコードリールを巻いたまま使うと、電線同士がぎっしり密着した状態になる。一本一本が発した熱がお互いを温め合い、外へ逃げる前にコードの内部にこもってしまう。逃げ場を失った熱は行き場なく蓄積し、電線の温度をじわじわと押し上げ続ける。
一般的には、ドラム式コードリールの多くは「巻いたまま使う場合」と「全部引き出して使う場合」とで、接続できる消費電力(許容電流)の上限が製品ごとに定められている。これは、巻いたままの状態では放熱が悪く、同じ電流でも温度が上がりやすいことが理由とされている。実際にNITE(製品評価技術基盤機構)や消防機関は、ドラム式コードリールを巻いたまま高出力の暖房器具などに使ったことで異常発熱・出火に至った事例を挙げ、繰り返し注意を呼びかけている。
同じ考え方は、電線管の中に電線を何本も通すときにも出てくる。熱が逃げにくくなるぶん、流してよい電流(許容電流)は下がる。この下げる割合が電流減少係数で、配電理論及び配線設計の科目で計算する。
解き方の手順(長さ・太さが変わる問題は、比で解く)
直径が出てきたら、まず断面積に直す。円の断面積は直径の2乗に比例するので、直径が2倍なら断面積は4倍だ。
- もとの電線の抵抗を、1とおく。
- 長さが何倍になったかを、分子に書く。(そのまま)
- 直径が何倍になったかを、2乗して分母に書く。
- 約分して、抵抗が何倍になるかを出す。
例題:同じ材質の銅線A(長さ10m、直径1.6mm)と銅線B(長さ20m、直径3.2mm)がある。Bの抵抗は、Aの何倍か。
- 長さ: 倍(分子)
- 直径: 倍。2乗して4(分母)
- 抵抗の比: 倍
検算:長くなれば抵抗は増え、太くなれば減る。ここでは、太さの効果(4分の1)のほうが、長さの効果(2倍)より大きいので、全体として減る。答えが1より小さくなるのは、そのためだ。
2乗や約分を手でやるときのコツは、オームの法則のトピックの筆算のコツにある。
式そのものを選ばせる問題 — 直径で書くとどうなるか
「直径〔mm〕、長さ〔m〕、抵抗率〔Ω·m〕の導線の電気抵抗を表す式はどれか」——選択肢に4つの式が並ぶ形式がある。値を計算するのではなく、式の形そのものを問われる。
出発点は だ。ここに、電線の断面が円であることを入れる。半径の円の面積はで、直径を使えば なので、
これを代入すると、
覚えるべき形は R = 4ρ L/π D^2。分子に4とL、分母にπとD^2。選択肢は、4を分母に置いたもの、Dを2乗していないもの、Lを2乗したものといった形で誤りが作られる。「長さは1乗、直径は2乗」だけ確実に押さえれば、たいてい2つは即座に消せる。
もう1つ、単位の落とし穴がある。抵抗率は〔Ω·m〕、長さは〔m〕で与えられるのに、直径だけが〔mm〕で示されることが多い。をmのまま扱わないと桁が合わないので、mm→mの換算が要る。〔mm〕〔m〕で、それが2乗されるから の部分は 倍。分母が倍ということは、全体は倍になる。だから直径をmm、長さをmのまま入れる式には、
という係数が付く。選択肢に が付いているものと付いていないものが混ざっていたら、がmmで与えられているかどうかを見る。 単位の指定は、式を選ばせるための仕掛けとしてわざと入れられている。
過去の学科試験では、同じ関係を抵抗率 を求める向きに書いた式を、選択肢から選ぶ形でも出題されている。 を について解くと、
となる。Rを求める式では掛けていた が、ρを求める式では分母に移る。理由は単位にある。〔mm²〕を〔m²〕に直すには を掛ける。断面積は 〔m²〕で、 に入れると が付く。 を掛けることは で割ることと同じなので、分母に が来る。〔Ω〕× 面積〔m²〕÷ 〔m〕の単位は〔Ω·m〕で、 の単位と合う。
長く引くほど、電気は途中で目減りする
が実務で効いてくるのは、距離が伸びたときだ。直径1.6mmの銅線は断面積が約2mm²で、銅の抵抗率から計算すると片道100mでおよそ0.9Ω。行きと帰りで約1.8Ωになり、そこに10Aを流せば18V近くが電線の中で失われる。100Vで送り出したはずが、機器の手元では80V台まで落ちるということだ。母屋から離れの倉庫へ、分電盤から駐車場のEV充電器へ——距離が出た瞬間、電線の太さは「安全に流せるか」だけでなく「電圧が足りるか」で決まるようになる。配線設計で電圧降下を数パーセント以内に収めるよう求められるのは、このためだ。
同じ理屈が、送電線が超高圧で引かれている理由でもある。電線の抵抗で失われる電力は 、つまり電流の2乗で効く。電圧を上げて電流を減らせば、損失は劇的に小さくなる。鉄塔の上を走る電線が細く見えるのは、大電流を流していないからだ。
今日できるのは、家にあるVVFケーブルや延長コードの表示を読むことだ。「1.6mm」「2.0mm」あるいは「0.75mm²」といった刻印と、そこに併記された許容電流。これまで意味のわからない数字だったものが、式の側から説明できるようになっている。
冒頭のヒーターとコードリールで何が起きていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。